プレーヤーからマネージャーへ

2011.02.24

(2011年2月24日メルマガより)


■野村克也の「野村ボヤキ語録」が面白い。


今までの著作の焼き直しの感がなきにしもあらずですが^^;それでも、新
しいエピソードがいくつか加えられており、野球ファンにとって必ず楽しめ
る内容となっています。

若い方にとって、野村克也といえば、ボヤキが多い陰険な野球じじいにしか
見えないかも知れませんね。でも、現役時代は考えられないぐらい偉大な選
手でした。

【野村克也の現役時代のタイトル】wikipediaより
MVP:5回 (1961年、1963年、1965年、1966年、1973年)
三冠王:1回 (1965年)※戦後初。
首位打者:1回 (1965年)
本塁打王:9回 (1957年、1961年 - 1968年)※9回獲得、8年連続獲得はいずれもパ・リーグ記録。
打点王:7回 (1962年 - 1967年、1972年)※7回獲得、6年連続獲得はいずれもパ・リーグ記録。
ベストナイン:19回 (1956年 - 1968年、1970年 - 1973年、1975年、1976年)※通算19回受賞は、史上最多。
ダイヤモンドグラブ賞:1回 (1973年)

本人は、才能がないから頭を使って工夫したんだと言っていますが、この輝
かしい成績を見る限り、才能に恵まれていないわけはない。

やはり、野村克也は、選ばれた人なのですよ。

■ただし、同じプロ野球の一流選手の中では、さらに才能に恵まれたと思え
るような人たちも存在します。

王貞治や江川卓やイチローやダルビッシュ有。

一体、彼らは何者なんでしょうかね。

あるいは、超一流になりえる才能を持ちながら、才能を活かすことができな
かった無名選手たちもいるかも知れません。

ドラフト1位の選手がすべて活躍しているとは言えない残念な状況がありま
すからね。

■選手としての野村克也は、南海ホークスのテスト生上がりですから、最初
はその才能を認められていたわけではないようです。

しかも1年目には早くもクビを言い渡されそうになったとか。ここで辞める
なら、南海電車に飛び込んで死んでやるとゴネて事なきを得たようですが^^;
生き残るためには、他と同じ調子で練習してはいられない事情があったよう
です。

野村克也選手の弱点は、カーブを打てないことでした。練習に練習を重ねて、
カーブが来ると分かった状況では打てるようになったのですが、当然のこと
ながら、次にどんなボールを投げるのか教えてくれるような人のよい投手は
いません。

そこで彼が考えたのが「配球を読むこと」投手の思考を読み取り、次に何を
投げるのかを予測することでした。

詳細は省きますが、配球を読むことに始まった「考える野球」への取り組み
が、野村克也を超一流選手に押し上げていきます。

その輝かしい成績については、誰も文句をつけることができないでしょう。

■野村克也のキャリアの特徴は、現役でありながら、監督の役割も担う「プ
レーイングマネージャー」を勤めたことです。

非常に難しい役割なので「やるもんじゃなかった」と本人はボヤいています。

なぜ難しいのかというと、プレーヤーとマネージャーでは必要とされる能力
が全く異なるからです。

私が野村克也の著作が好きなのは、このプレーヤーからマネージャーになる
時の苦労や面白さが実感として書かれているからです。

私も、営業コンサルティングの現場で、この問題に向き合っています。

様々な企業とお付き合いしてきましたが、この問題に無頓着な企業は未だに
多いと思います。すなわち、プレーヤーとして実績を上げた人をそのままノ
ープランでマネージャーに昇格させる人事を続けている企業です。

この無頓着さは、組織に甚大な被害をもたらす怖れがあります。

■私は、営業には「戦略・管理・実践」が必要だという考えに基づいてコン
サルティングをしています。SMPメソッドと称していますが。

言葉にしてみれば簡単に思えるかも知れませんが、実際には一筋縄ではいき
ません。

というのも、戦略と実践では使う能力が全く異なるから。まさに、マネージ
ャーとプレーヤーの違いです。

戦略を立案する、あるいは理解するということは、物事を抽象的に捉える能
力が必要になります。

逆に、実践においては、物事をありのままに、具体的に捉え行動に結びつけ
る能力が必要になります。

(そういえば往年の名F1ドライバーであるニキ・ラウダは、優れたドライ
バーに必要な能力は「ケツと地面を結びつける能力だ」と言っていました)

だから、それまで現場で柔軟に対応することを求められた営業マンが、いき
なり戦略的に考えろと言われるのはつらいものがあります。

■私もそうでした。私は営業マンでした。しかも「考えない」「勢い中心」
の営業マンでした。

その時に使っていたのは、その場の状況を素早く読み取って、少々強引にで
も販売につなげていこうとする認識と行動の能力です。

対象となる人の表情や声色や雰囲気の変化(タイミングを測ること)を特に
気にしていたように思います。

確率は低くても、切り込んでいく回数が多ければ、結果としての成績はそれ
なりについてきます。

これは、直感の営業ですね。でも、狭い範囲で繰り返し営業している場合に
は、直感にも一定の意味があります。

後は、皆が当たり前にする部分でミスをしないこと。これさえ守れば、何と
かなりました。

■ところが、自分がマネージャーになろうとすると、このやり方は壁に当た
ってしまいます。

営業の方法を全く知らない部下に、どのように教えていけばいいのか。

ミスばかりする部下を、ミスしないようにするにはどうすればいいのか。

顧客に切り込むタイミングを測ることができない部下に、タイミングを分か
らせるにはどうすればいいのか?

あるいは、一通りやっているにも関わらず成績が伸びない部下をどのように
指導すればよいのか?

勘と経験で行動している者には、自分のやっていることを分かりやすく噛み
砕いて伝えることなどできません。

「アホなやつに教えるのは難しいよなーー」と自分が一番アホの癖に、飲み
屋で愚痴を言っていたのを思い出します。

■私が営業マンとしての自分に限界を感じて、中小企業診断士の勉強を始め
たのは35歳ぐらいでした。

その時に決定的に思い知ったことがありました。

私は、論理的に思考することができなかったのです。

中小企業診断士の資格試験は無駄に難しいことで知られています。

中小企業経営に関する膨大な分野の知識を浅く広く記憶することが求められ
ると同時に、複雑な経営の現場をシンプルに整理して、課題を見つけ出して、
解決の方向性を示す能力を問われます。

私の場合、記憶の部分は、パワープレイ(根性でひたすら反復記憶する)で
なんとかすることができましたが、目の前の事象を分かりやすく整理して把
握するという能力に欠けていました。

「そんなもん、さっさと客のところへ行って、何が欲しいか聞いてきたらえ
えやんか」というのが、それまでの発想です。

考えるぐらいなら行動。

営業マンとしては、それで許されたとしても、営業マンをマネジメントする
立場の者が、そんなことを言っていたのでは、組織は迷走してしまいます。

その当時の私は、マネージャーになってはいけない人間だったのです。

だから、私の場合、問題解決思考が問われる二次試験に落ちて苦労しました
よーー。

■その私が、十数年かけて、何とか、論理的、戦略的に考える癖を身に着け
るようにしてきました。

こうして戦略に関するメルマガを書いているのも、自分の直感や思索を言葉
にする訓練を長い間しているようなものなのですね。

コンサルタントとして戦略的思考の浸透を業務の一つにできているのも、才
能に劣る自分が苦労して身に着けてきたプロセスに意味があったのだと思っ
ています。

最初から豊かな才能を持っていたならば、それを言語にできなかったかも知
れません。

まだまだ未熟ですけどね...

■茂木健一郎氏の「脳の中の人生」という本の中に、写真のように見事なス
ケッチをする5歳児の話がでてきます。


5歳というと、回りの子供が「へのへのもへじ」か「ハマムラ」のような落
書きを大真面目に書いている年齢です。そんな中、大人でも描けないような
写実的なスケッチをものにする天才児がいたらしい。

その子供は自閉症でした。しかもその子が成長して言葉が話せるようになる
と、スケッチの能力はなくなってしまったということです。

茂木氏は、実は、その天才児には、へのへのもへじのような絵を描く能力が
欠けていたのではないかと言っています。

子供が丸に点を二つ描いて人の顔だと認識するのは、人間の顔をシンボルと
して捉える能力が備わっているということを意味しています。

その天才児は、実は、人間をシンボルとして捉えることができずに、写実的
にしか見ることができなかったのではないか。

脳の機能の不思議さを感じさせるエピソードですね。

■20世紀の天才画家であるパブロ・ピカソは、小さなころから、極めて写
実的なスケッチを描くことができる天才少年でした。

ところが、彼は、成長と共に、写実的なデッサン力は維持したまま、高度に
抽象化された絵画を描くようになっていきます。

全盛期に描かれたゲルニカなどを観ていると、それが、力強い構成力や写実
力に裏打ちされた、優れた象徴性、抽象性を感じさせる稀有な作品であるこ
とが分かります。

こうした本当の天才は希少な例なのかも知れませんが、彼こそが、具象性と
抽象性の双方の能力を苦闘して獲得した人間です。

■野村克也もそうでした。

彼は現役引退後、野球評論家として、自分の経験を言葉にするための訓練を
重ねていきます。

おせじにも口がうまい人ではありませんが、経験を人に語ることで、その蓄
積を体系として整理することに成功していきます。

一般人にも分かりやすく伝えるとは、論理的かつ具体的に語ることです。

野村が一方的にライバル視していた長嶋茂男の野球解説を聞いているとその
違いがよく分かります。長嶋は「ブンと振る」「ビューと投げる」など、極
めて感覚的で実感のこもった言葉を使いますが、それを体験していない人に
は何のことやら分かりません。

それに比べて、一般人にも分かりやすく語る論理性を身に着けた野村克也は、
評論家としても、その後の指導者としても、大成していきます。

■私がコンサルタントとして関わった優秀な営業マンの中には、自分の経験
やノウハウを人に語ることを嫌がる人が少なくありません。

それは1つには、自分のノウハウを隠しておきたいという心情があることで
しょう。

しかし実際には、多くのベテラン営業マンが、自分の経験やノウハウを体系
的に人に語る能力を持っていないという実情があります。

マネージャーとして、さらには経営陣としてスキルアップしていくためには、
いつまでも「出来ない」と言っていてはスタートすらできません。

どんな人でも遅すぎるということはないので、戦略的に考えるという癖を持
つことを試みていただきたいと思います。

■ただ、どうしても無理だという人がいるかも知れませんね。例は適切では
ないかも知れませんが、上記の5歳児のように、ある特定の能力に秀でてい
るものの、他の能力は完全に欠けているという場合です。

実感でいうと、そんな人が実際にはいます。

営業成績は抜群にいいものの、皆と同じように管理されることを嫌がり、協
調性を見いだせないような人です。

論理的に長い話をすることができず、雑談以外でまともなコミュニケーショ
ンをとることができません。(大抵は、話そうと思えば話せるのに、わざと
大事なことは話さないというフリをしています)

物事を整理して提示しても「何を当たり前のことを言っているんだ」という
反応しか返ってこないので、そもそも「体系化」という概念を理解していな
いのではないかと思われます。

そういう人を無理やりマネージャーに昇格してしまえば、持ち味を殺してし
まいますし、回りが迷惑を蒙ります。

その場合は、プライドを傷つけないように、営業専門職という立場で処遇す
るべく人事制度を改変しなければならないと私は思います。

■言葉にするというのは、高度な抽象化能力が求められる作業です。

「なんか違う」と直感で感じていても、それを言葉で的確に言えないことは
多い。

野村克也の著作にみられるのは「言葉にできないものは、無いのと同じだ」
という徹底した姿勢です。

プレーヤーとしての実践能力を否定してまで、抽象化することにこだわった
覚悟が、彼を超一流のマネージャーにしていきました。

我々、ビジネスをする人間にとっても、非常に参考になる事例だと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■今日は取り上げませんでしたが、抽象と具象を結びつけるために、言葉と
同じぐらい重要なのが、数値です。

抽象的な方向性を具体的な行動に落とし込むには、行動を数値で管理する必
要があります。

マネジメントの仕組みは、行動を抽象化して、すべて数値で測れるようにす
ることです。

それがなければ、方向性と行動が結びつきません。

またの機会に詳しく書きたいと思います。

(2011年2月24日メルマガより)


■野村克也の「野村ボヤキ語録」が面白い。


今までの著作の焼き直しの感がなきにしもあらずですが^^;それでも、新
しいエピソードがいくつか加えられており、野球ファンにとって必ず楽しめ
る内容となっています。

若い方にとって、野村克也といえば、ボヤキが多い陰険な野球じじいにしか
見えないかも知れませんね。でも、現役時代は考えられないぐらい偉大な選
手でした。

【野村克也の現役時代のタイトル】wikipediaより
MVP:5回 (1961年、1963年、1965年、1966年、1973年)
三冠王:1回 (1965年)※戦後初。
首位打者:1回 (1965年)
本塁打王:9回 (1957年、1961年 - 1968年)※9回獲得、8年連続獲得はいずれもパ・リーグ記録。
打点王:7回 (1962年 - 1967年、1972年)※7回獲得、6年連続獲得はいずれもパ・リーグ記録。
ベストナイン:19回 (1956年 - 1968年、1970年 - 1973年、1975年、1976年)※通算19回受賞は、史上最多。
ダイヤモンドグラブ賞:1回 (1973年)

本人は、才能がないから頭を使って工夫したんだと言っていますが、この輝
かしい成績を見る限り、才能に恵まれていないわけはない。

やはり、野村克也は、選ばれた人なのですよ。

■ただし、同じプロ野球の一流選手の中では、さらに才能に恵まれたと思え
るような人たちも存在します。

王貞治や江川卓やイチローやダルビッシュ有。

一体、彼らは何者なんでしょうかね。

あるいは、超一流になりえる才能を持ちながら、才能を活かすことができな
かった無名選手たちもいるかも知れません。

ドラフト1位の選手がすべて活躍しているとは言えない残念な状況がありま
すからね。

■選手としての野村克也は、南海ホークスのテスト生上がりですから、最初
はその才能を認められていたわけではないようです。

しかも1年目には早くもクビを言い渡されそうになったとか。ここで辞める
なら、南海電車に飛び込んで死んでやるとゴネて事なきを得たようですが^^;
生き残るためには、他と同じ調子で練習してはいられない事情があったよう
です。

野村克也選手の弱点は、カーブを打てないことでした。練習に練習を重ねて、
カーブが来ると分かった状況では打てるようになったのですが、当然のこと
ながら、次にどんなボールを投げるのか教えてくれるような人のよい投手は
いません。

そこで彼が考えたのが「配球を読むこと」投手の思考を読み取り、次に何を
投げるのかを予測することでした。

詳細は省きますが、配球を読むことに始まった「考える野球」への取り組み
が、野村克也を超一流選手に押し上げていきます。

その輝かしい成績については、誰も文句をつけることができないでしょう。

■野村克也のキャリアの特徴は、現役でありながら、監督の役割も担う「プ
レーイングマネージャー」を勤めたことです。

非常に難しい役割なので「やるもんじゃなかった」と本人はボヤいています。

なぜ難しいのかというと、プレーヤーとマネージャーでは必要とされる能力
が全く異なるからです。

私が野村克也の著作が好きなのは、このプレーヤーからマネージャーになる
時の苦労や面白さが実感として書かれているからです。

私も、営業コンサルティングの現場で、この問題に向き合っています。

様々な企業とお付き合いしてきましたが、この問題に無頓着な企業は未だに
多いと思います。すなわち、プレーヤーとして実績を上げた人をそのままノ
ープランでマネージャーに昇格させる人事を続けている企業です。

この無頓着さは、組織に甚大な被害をもたらす怖れがあります。

■私は、営業には「戦略・管理・実践」が必要だという考えに基づいてコン
サルティングをしています。SMPメソッドと称していますが。

言葉にしてみれば簡単に思えるかも知れませんが、実際には一筋縄ではいき
ません。

というのも、戦略と実践では使う能力が全く異なるから。まさに、マネージ
ャーとプレーヤーの違いです。

戦略を立案する、あるいは理解するということは、物事を抽象的に捉える能
力が必要になります。

逆に、実践においては、物事をありのままに、具体的に捉え行動に結びつけ
る能力が必要になります。

(そういえば往年の名F1ドライバーであるニキ・ラウダは、優れたドライ
バーに必要な能力は「ケツと地面を結びつける能力だ」と言っていました)

だから、それまで現場で柔軟に対応することを求められた営業マンが、いき
なり戦略的に考えろと言われるのはつらいものがあります。

■私もそうでした。私は営業マンでした。しかも「考えない」「勢い中心」
の営業マンでした。

その時に使っていたのは、その場の状況を素早く読み取って、少々強引にで
も販売につなげていこうとする認識と行動の能力です。

対象となる人の表情や声色や雰囲気の変化(タイミングを測ること)を特に
気にしていたように思います。

確率は低くても、切り込んでいく回数が多ければ、結果としての成績はそれ
なりについてきます。

これは、直感の営業ですね。でも、狭い範囲で繰り返し営業している場合に
は、直感にも一定の意味があります。

後は、皆が当たり前にする部分でミスをしないこと。これさえ守れば、何と
かなりました。

■ところが、自分がマネージャーになろうとすると、このやり方は壁に当た
ってしまいます。

営業の方法を全く知らない部下に、どのように教えていけばいいのか。

ミスばかりする部下を、ミスしないようにするにはどうすればいいのか。

顧客に切り込むタイミングを測ることができない部下に、タイミングを分か
らせるにはどうすればいいのか?

あるいは、一通りやっているにも関わらず成績が伸びない部下をどのように
指導すればよいのか?

勘と経験で行動している者には、自分のやっていることを分かりやすく噛み
砕いて伝えることなどできません。

「アホなやつに教えるのは難しいよなーー」と自分が一番アホの癖に、飲み
屋で愚痴を言っていたのを思い出します。

■私が営業マンとしての自分に限界を感じて、中小企業診断士の勉強を始め
たのは35歳ぐらいでした。

その時に決定的に思い知ったことがありました。

私は、論理的に思考することができなかったのです。

中小企業診断士の資格試験は無駄に難しいことで知られています。

中小企業経営に関する膨大な分野の知識を浅く広く記憶することが求められ
ると同時に、複雑な経営の現場をシンプルに整理して、課題を見つけ出して、
解決の方向性を示す能力を問われます。

私の場合、記憶の部分は、パワープレイ(根性でひたすら反復記憶する)で
なんとかすることができましたが、目の前の事象を分かりやすく整理して把
握するという能力に欠けていました。

「そんなもん、さっさと客のところへ行って、何が欲しいか聞いてきたらえ
えやんか」というのが、それまでの発想です。

考えるぐらいなら行動。

営業マンとしては、それで許されたとしても、営業マンをマネジメントする
立場の者が、そんなことを言っていたのでは、組織は迷走してしまいます。

その当時の私は、マネージャーになってはいけない人間だったのです。

だから、私の場合、問題解決思考が問われる二次試験に落ちて苦労しました
よーー。

■その私が、十数年かけて、何とか、論理的、戦略的に考える癖を身に着け
るようにしてきました。

こうして戦略に関するメルマガを書いているのも、自分の直感や思索を言葉
にする訓練を長い間しているようなものなのですね。

コンサルタントとして戦略的思考の浸透を業務の一つにできているのも、才
能に劣る自分が苦労して身に着けてきたプロセスに意味があったのだと思っ
ています。

最初から豊かな才能を持っていたならば、それを言語にできなかったかも知
れません。

まだまだ未熟ですけどね...

■茂木健一郎氏の「脳の中の人生」という本の中に、写真のように見事なス
ケッチをする5歳児の話がでてきます。


5歳というと、回りの子供が「へのへのもへじ」か「ハマムラ」のような落
書きを大真面目に書いている年齢です。そんな中、大人でも描けないような
写実的なスケッチをものにする天才児がいたらしい。

その子供は自閉症でした。しかもその子が成長して言葉が話せるようになる
と、スケッチの能力はなくなってしまったということです。

茂木氏は、実は、その天才児には、へのへのもへじのような絵を描く能力が
欠けていたのではないかと言っています。

子供が丸に点を二つ描いて人の顔だと認識するのは、人間の顔をシンボルと
して捉える能力が備わっているということを意味しています。

その天才児は、実は、人間をシンボルとして捉えることができずに、写実的
にしか見ることができなかったのではないか。

脳の機能の不思議さを感じさせるエピソードですね。

■20世紀の天才画家であるパブロ・ピカソは、小さなころから、極めて写
実的なスケッチを描くことができる天才少年でした。

ところが、彼は、成長と共に、写実的なデッサン力は維持したまま、高度に
抽象化された絵画を描くようになっていきます。

全盛期に描かれたゲルニカなどを観ていると、それが、力強い構成力や写実
力に裏打ちされた、優れた象徴性、抽象性を感じさせる稀有な作品であるこ
とが分かります。

こうした本当の天才は希少な例なのかも知れませんが、彼こそが、具象性と
抽象性の双方の能力を苦闘して獲得した人間です。

■野村克也もそうでした。

彼は現役引退後、野球評論家として、自分の経験を言葉にするための訓練を
重ねていきます。

おせじにも口がうまい人ではありませんが、経験を人に語ることで、その蓄
積を体系として整理することに成功していきます。

一般人にも分かりやすく伝えるとは、論理的かつ具体的に語ることです。

野村が一方的にライバル視していた長嶋茂男の野球解説を聞いているとその
違いがよく分かります。長嶋は「ブンと振る」「ビューと投げる」など、極
めて感覚的で実感のこもった言葉を使いますが、それを体験していない人に
は何のことやら分かりません。

それに比べて、一般人にも分かりやすく語る論理性を身に着けた野村克也は、
評論家としても、その後の指導者としても、大成していきます。

■私がコンサルタントとして関わった優秀な営業マンの中には、自分の経験
やノウハウを人に語ることを嫌がる人が少なくありません。

それは1つには、自分のノウハウを隠しておきたいという心情があることで
しょう。

しかし実際には、多くのベテラン営業マンが、自分の経験やノウハウを体系
的に人に語る能力を持っていないという実情があります。

マネージャーとして、さらには経営陣としてスキルアップしていくためには、
いつまでも「出来ない」と言っていてはスタートすらできません。

どんな人でも遅すぎるということはないので、戦略的に考えるという癖を持
つことを試みていただきたいと思います。

■ただ、どうしても無理だという人がいるかも知れませんね。例は適切では
ないかも知れませんが、上記の5歳児のように、ある特定の能力に秀でてい
るものの、他の能力は完全に欠けているという場合です。

実感でいうと、そんな人が実際にはいます。

営業成績は抜群にいいものの、皆と同じように管理されることを嫌がり、協
調性を見いだせないような人です。

論理的に長い話をすることができず、雑談以外でまともなコミュニケーショ
ンをとることができません。(大抵は、話そうと思えば話せるのに、わざと
大事なことは話さないというフリをしています)

物事を整理して提示しても「何を当たり前のことを言っているんだ」という
反応しか返ってこないので、そもそも「体系化」という概念を理解していな
いのではないかと思われます。

そういう人を無理やりマネージャーに昇格してしまえば、持ち味を殺してし
まいますし、回りが迷惑を蒙ります。

その場合は、プライドを傷つけないように、営業専門職という立場で処遇す
るべく人事制度を改変しなければならないと私は思います。

■言葉にするというのは、高度な抽象化能力が求められる作業です。

「なんか違う」と直感で感じていても、それを言葉で的確に言えないことは
多い。

野村克也の著作にみられるのは「言葉にできないものは、無いのと同じだ」
という徹底した姿勢です。

プレーヤーとしての実践能力を否定してまで、抽象化することにこだわった
覚悟が、彼を超一流のマネージャーにしていきました。

我々、ビジネスをする人間にとっても、非常に参考になる事例だと思います。

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■今日は取り上げませんでしたが、抽象と具象を結びつけるために、言葉と
同じぐらい重要なのが、数値です。

抽象的な方向性を具体的な行動に落とし込むには、行動を数値で管理する必
要があります。

マネジメントの仕組みは、行動を抽象化して、すべて数値で測れるようにす
ることです。

それがなければ、方向性と行動が結びつきません。

またの機会に詳しく書きたいと思います。

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