P&Gの戦略-強者はこれだけ有利だ

2007.12.06


(2007年12月6日メルマガより)

■私のランチェスター戦略セミナーでは「生き残るために必要な5つの鉄則」
と称して、次の5つを提示しています。

1.小さな市場で戦え
2.差別化せよ
3.一点集中せよ
4.勝ちやすきに勝て
5.ナンバーワンになれ

■最後の「ナンバーワンになれ」というところが結論です。ランチェスター
戦略は、ナンバーワンになることを戦略の目標としています。

なにしろ、ナンバーワンになれば、他を圧倒するような強さを手に入れるこ
とができます。

知名度が高く、パートナーや人材に恵まれ、スケールメリットと交渉力を持
ち、利益率が高くなります。

一度ナンバーワンになれば、自然にシェアが上がっていく、そんな状況を見
ることができます。

それほど強者の戦略とは有利なものなのです。

■ただ、多くの人にとってナンバーワンになった状況は想像しにくいようで
す。この部分はそんなもんかいな~と聞いておられる方がほとんどですね^^

だから、いつもは弱者の立場から書いているこのメルマガを、今日は強者の
戦略を中心に書いてみたいと思います。

■今日採り上げるのは、文句なしのリーディングカンパニーです。

売上高約8兆4千億円。純利益約1兆1400億円。

株式時価総額は、花王の約13倍。ROE(株主資本利益率:株主資本の何
%の利益を上げたか)は花王の約1.4倍。

家庭用雑貨のメーカーとして、1100億円以上の売上があるブランドを2
3種類も抱えている超優良企業です。

分かりますか?

P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)のことです。

■P&Gは、1837年、石鹸業者のジェームス・ギャンブルとローソク業
者のウィリアム・プロクターが共同出資で設立した会社です。

積極的なM&Aを繰り返した結果、世界80カ国以上に拠点を持ち、従業員
は約13万8千人。

真のグローバル企業となっています。

20世紀の終わりには、規模の拡大に社内体制がついていかず苦労したよう
ですが、1999年の大掛かりな社内改革に成功し、今はわが世の春を謳歌
しています。

パンパース(おむつ)、アリエール(洗剤)、ウィスパー(生理用品)、ブ
リングルス(ポテトチップス)、レノア(仕上剤)、クレスト(歯磨き)、
ジレット(剃刀)。。。日本でも馴染みのある商品が少なくありません。

繰り返しますが、1100億円以上の売上のあるブランドを23種類も抱え
ています。

この会社、どうしてこんなに強いのでしょうか。

■P&Gの戦略の1つは本業の強化。

規模が途方もなく大きいですが、無軌道に広げているわけではありません。

同社は自社の中核ビジネスを、ビューティ・ヘルス部門、ハウスホールドケ
ア部門、ジレット部門の3つと位置づけています。

これらの本業の研究開発に年間2200億円(!)を投じています。

この金額は同業他社のすべての研究開発費を足したよりも大きいと言われて
います。

儲かったお金をさらに本業に投資し、強くしていくという理想的な流れが、
ナンバーワンの地位をゆるぎないものにしているのです。

■ナンバーワンになればパートナーに恵まれます。

P&Gの戦略のもう1つは、強い小売業と協働でブランドを育てること。

いくら強い小売業でも、ナンバーワンメーカーを無視できるはずがありませ
ん。

P&Gほどになれば、あらゆる国で、最も有力な小売業とパートナーシップ
をとり、発言権を持ちます。

このWIN-WINの提携が、有利なビジネス展開を可能にしています。

強者は、最も強いパートナーと組むこと。これが鉄則です。

■さらにナンバーワンになれば人材に恵まれます。もちろん報酬は高いでし
ょうが、そうでなくても優秀な人材はナンバーワン企業に集まります。

P&Gは、それぞれのブランドごとに責任者を置き、さらに地域ごとに責任
者を置いています。

商品の責任者と地域の責任者同士が侃侃諤々とやりあうわけです。

こうした組織は優秀な人材を前提としており、その人材をさらに優秀にしま
す。

世界各国から人材を登用しますから、当然、社内の競争は激しくなります。

こうして同社は人材の宝庫としても有名となっています。

■強者の戦略の鉄則は大市場を狙うこと。

P&Gは紛れもない強者だから、アメリカ、日本、ヨーロッパというメイン
市場で激しい競争を繰り広げています。

この徹底した覇権主義が、業界全体を活性化させているという考えを持って
いるようです。

例えば、アリエールは花王のアタックという洗剤の影響を受けているといわ
れます。ライバル会社もパートナーの1つと考えれば、すべては自社のため
に資することができます。

ちょうど、往年の松下電器がソニーを「わが社の開発部隊」と呼んだように、
市場のあらゆる状況を自社の強みとしてしまう貪欲さが感じられます。

強者は最も大きな市場で、競争を勝ち抜くこと。これが強者たる所以です。

■もちろん大市場を狙うからには、スケールメリットを追求することができ
ます。

一番売っている企業が、一番価格競争力を持つのは当然です。

これが、ナンバーワン企業の交渉力を高め、利益率を高くします。

■さらにP&Gの戦略には、BOP市場の開拓という一条が加わっています。

BOPとは「ボトム・オブ・ピラミッド」のこと。つまり、貧困層のことで
す。

世界には40億人の貧困層がいると言われますが、ここに有効なマーケティ
ングを行えている企業はありません。

しかし、この40億という凄まじく大きな成長市場を逃すことはできません。
ビジネスとして、この市場を制した者が、21世紀の覇者となると言われて
います。

この層に商品を提供するためには、今までの延長では通用しません。ものづ
くりの設計からシステムから流通まで変革する必要があります。それができ
るのは、やはり研究開発資金が潤沢なトップ企業でしょう。

P&Gは、BOP市場への参入を明確に戦略としています。

この市場を押えることが、新興の廉価品メーカーの参入を食い止めることに
なり、地位を磐石のものとするのです。

■まとめましょう。

リーディング企業は、メイン市場を狙うこと。最もお客さんが多い市場が、
強者にふさわしい市場です。

メイン市場では徹底して競争すること。激しい競争が業界を活性化させるこ
とになります。業界を生かすも殺すも、リーディング企業の責任です。

そうして儲かった資金は本業に投資すること。それがやはり業界を活性化さ
せることにつながります。

また最も強いパートナーと組むこと。リーディング企業は、他のリーディン
グ企業と組むことで、さらに大きな力を得ることができます。

さらには、市場のあらゆる階層にビジネス展開をすること。特に、規模が大
きなBOP市場はリーディング企業の責任の上で、開拓すること。
最も力を持つ者が最も大きな社会的責任を持つのです。

■いかがでしょうか。強者になりたいと思いませんか?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■私が昔いたメーカーは、現在、市場シェアトップとなっています。

廃業寸前の状態から、トップ企業になった奇跡の会社です。

それはともかく、昔を知る人は、しみじみ言っています。

「トップ企業というのは、いい商売ができるぞ~」

今日あげたような戦略展開が実際に可能になるのです。3位の時代から知っている人は実感していることでしょうな。

しかし、1位の時代しか知らない人は、それはそれで不幸かも知れません。厳しい弱者の営業をやはり1度は経験しておかないと、営業として鍛えられませんよ。

と、言っていること自体が、ロートルの愚痴なんでしょうかね...






(2007年12月6日メルマガより)

■私のランチェスター戦略セミナーでは「生き残るために必要な5つの鉄則」
と称して、次の5つを提示しています。

1.小さな市場で戦え
2.差別化せよ
3.一点集中せよ
4.勝ちやすきに勝て
5.ナンバーワンになれ

■最後の「ナンバーワンになれ」というところが結論です。ランチェスター
戦略は、ナンバーワンになることを戦略の目標としています。

なにしろ、ナンバーワンになれば、他を圧倒するような強さを手に入れるこ
とができます。

知名度が高く、パートナーや人材に恵まれ、スケールメリットと交渉力を持
ち、利益率が高くなります。

一度ナンバーワンになれば、自然にシェアが上がっていく、そんな状況を見
ることができます。

それほど強者の戦略とは有利なものなのです。

■ただ、多くの人にとってナンバーワンになった状況は想像しにくいようで
す。この部分はそんなもんかいな~と聞いておられる方がほとんどですね^^

だから、いつもは弱者の立場から書いているこのメルマガを、今日は強者の
戦略を中心に書いてみたいと思います。

■今日採り上げるのは、文句なしのリーディングカンパニーです。

売上高約8兆4千億円。純利益約1兆1400億円。

株式時価総額は、花王の約13倍。ROE(株主資本利益率:株主資本の何
%の利益を上げたか)は花王の約1.4倍。

家庭用雑貨のメーカーとして、1100億円以上の売上があるブランドを2
3種類も抱えている超優良企業です。

分かりますか?

P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)のことです。

■P&Gは、1837年、石鹸業者のジェームス・ギャンブルとローソク業
者のウィリアム・プロクターが共同出資で設立した会社です。

積極的なM&Aを繰り返した結果、世界80カ国以上に拠点を持ち、従業員
は約13万8千人。

真のグローバル企業となっています。

20世紀の終わりには、規模の拡大に社内体制がついていかず苦労したよう
ですが、1999年の大掛かりな社内改革に成功し、今はわが世の春を謳歌
しています。

パンパース(おむつ)、アリエール(洗剤)、ウィスパー(生理用品)、ブ
リングルス(ポテトチップス)、レノア(仕上剤)、クレスト(歯磨き)、
ジレット(剃刀)。。。日本でも馴染みのある商品が少なくありません。

繰り返しますが、1100億円以上の売上のあるブランドを23種類も抱え
ています。

この会社、どうしてこんなに強いのでしょうか。

■P&Gの戦略の1つは本業の強化。

規模が途方もなく大きいですが、無軌道に広げているわけではありません。

同社は自社の中核ビジネスを、ビューティ・ヘルス部門、ハウスホールドケ
ア部門、ジレット部門の3つと位置づけています。

これらの本業の研究開発に年間2200億円(!)を投じています。

この金額は同業他社のすべての研究開発費を足したよりも大きいと言われて
います。

儲かったお金をさらに本業に投資し、強くしていくという理想的な流れが、
ナンバーワンの地位をゆるぎないものにしているのです。

■ナンバーワンになればパートナーに恵まれます。

P&Gの戦略のもう1つは、強い小売業と協働でブランドを育てること。

いくら強い小売業でも、ナンバーワンメーカーを無視できるはずがありませ
ん。

P&Gほどになれば、あらゆる国で、最も有力な小売業とパートナーシップ
をとり、発言権を持ちます。

このWIN-WINの提携が、有利なビジネス展開を可能にしています。

強者は、最も強いパートナーと組むこと。これが鉄則です。

■さらにナンバーワンになれば人材に恵まれます。もちろん報酬は高いでし
ょうが、そうでなくても優秀な人材はナンバーワン企業に集まります。

P&Gは、それぞれのブランドごとに責任者を置き、さらに地域ごとに責任
者を置いています。

商品の責任者と地域の責任者同士が侃侃諤々とやりあうわけです。

こうした組織は優秀な人材を前提としており、その人材をさらに優秀にしま
す。

世界各国から人材を登用しますから、当然、社内の競争は激しくなります。

こうして同社は人材の宝庫としても有名となっています。

■強者の戦略の鉄則は大市場を狙うこと。

P&Gは紛れもない強者だから、アメリカ、日本、ヨーロッパというメイン
市場で激しい競争を繰り広げています。

この徹底した覇権主義が、業界全体を活性化させているという考えを持って
いるようです。

例えば、アリエールは花王のアタックという洗剤の影響を受けているといわ
れます。ライバル会社もパートナーの1つと考えれば、すべては自社のため
に資することができます。

ちょうど、往年の松下電器がソニーを「わが社の開発部隊」と呼んだように、
市場のあらゆる状況を自社の強みとしてしまう貪欲さが感じられます。

強者は最も大きな市場で、競争を勝ち抜くこと。これが強者たる所以です。

■もちろん大市場を狙うからには、スケールメリットを追求することができ
ます。

一番売っている企業が、一番価格競争力を持つのは当然です。

これが、ナンバーワン企業の交渉力を高め、利益率を高くします。

■さらにP&Gの戦略には、BOP市場の開拓という一条が加わっています。

BOPとは「ボトム・オブ・ピラミッド」のこと。つまり、貧困層のことで
す。

世界には40億人の貧困層がいると言われますが、ここに有効なマーケティ
ングを行えている企業はありません。

しかし、この40億という凄まじく大きな成長市場を逃すことはできません。
ビジネスとして、この市場を制した者が、21世紀の覇者となると言われて
います。

この層に商品を提供するためには、今までの延長では通用しません。ものづ
くりの設計からシステムから流通まで変革する必要があります。それができ
るのは、やはり研究開発資金が潤沢なトップ企業でしょう。

P&Gは、BOP市場への参入を明確に戦略としています。

この市場を押えることが、新興の廉価品メーカーの参入を食い止めることに
なり、地位を磐石のものとするのです。

■まとめましょう。

リーディング企業は、メイン市場を狙うこと。最もお客さんが多い市場が、
強者にふさわしい市場です。

メイン市場では徹底して競争すること。激しい競争が業界を活性化させるこ
とになります。業界を生かすも殺すも、リーディング企業の責任です。

そうして儲かった資金は本業に投資すること。それがやはり業界を活性化さ
せることにつながります。

また最も強いパートナーと組むこと。リーディング企業は、他のリーディン
グ企業と組むことで、さらに大きな力を得ることができます。

さらには、市場のあらゆる階層にビジネス展開をすること。特に、規模が大
きなBOP市場はリーディング企業の責任の上で、開拓すること。
最も力を持つ者が最も大きな社会的責任を持つのです。

■いかがでしょうか。強者になりたいと思いませんか?

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■私が昔いたメーカーは、現在、市場シェアトップとなっています。

廃業寸前の状態から、トップ企業になった奇跡の会社です。

それはともかく、昔を知る人は、しみじみ言っています。

「トップ企業というのは、いい商売ができるぞ~」

今日あげたような戦略展開が実際に可能になるのです。3位の時代から知っている人は実感していることでしょうな。

しかし、1位の時代しか知らない人は、それはそれで不幸かも知れません。厳しい弱者の営業をやはり1度は経験しておかないと、営業として鍛えられませんよ。

と、言っていること自体が、ロートルの愚痴なんでしょうかね...





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