TSUTAYAやDMMはしたたかに生き残っていくだろうが限界もある

2017.11.30

(2017年11月30日メルマガより)

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TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が事業転換を急いでいます。

CCCは、日本最大のレンタルDVD・CD店と日本最大の書店チェーンを持つ売上高2500億円超の企業です。

しかし、収益頭のDVDレンタルも、書店も、今や斜陽産業の最たるものです。

事業転換を急がなければならない所以です。


文化を発信する企業


CCCは、1985年、大阪府吹田市において設立されました。

創業者の増田宗昭社長は、婦人服大手の鈴屋に勤めていた人ですが「もうデザインの時代じゃない。顧客はスタイルを完成させるための情報を求めている」と感じて脱サラし、大阪府枚方市で、レンタルレコード店や蔦屋書店を開設しました。CCCはそれをフランチャイズ展開するためのものでした。

ビデオをレンタルするようになった1994年頃から、TSUTAYAの出店が加速していき、2013年には1468店に達しています。

現在、DVD・CDのレンタルにおいては、売上高国内トップ。(2位はゲオ)

書店チェーンとしても売上高国内トップ(2位は紀伊国屋書店)です。

増田社長は、TSUTAYAのことを単なる書店やレンタルビデオ店ではなく「文化を発信する場」だと規定しています。

なぜなら人は本や映像の情報に触れている時、自ら生きるスタイルを選択するための情報を得ているのだから。

本を売るのではなく、スタイルを提案している。それが増田社長によるTSUTAYAの自己認識です。

ちなみに蔦屋とは、増田氏の祖父が運営していた置屋の屋号だったということですが、TSUTAYAを「文化発信の場所」だと位置付ける今日は、江戸時代の文化人・蔦屋重三郎にあやかった説を主張しています。

ところが周知の通り、DVD・CDのレンタル事業も、書店も、市場規模そのものが急減している絶滅危惧種です。

いわば沈没する船に乗っているようなものですから、なんとかしなければならない。ということで、2000年に株式上場したものを2011年には上場廃止。フリーハンドでの事業転換を進めてきました。


小売業再生の救世主


CCCの業態転換の皮切りになったのが、2011年の「代官山T-SITE」です。

こちらは蔦屋書店を中核テナントとする新感覚の商業施設で、同社がプロデュースを担い、人気を博しています。

T-SITEは、代官山の成功を受けて、函館、湘南、枚方などに展開を進めています。

あるいは、公共施設である図書館の運営を手掛け、こちらも地方の観光スポットになるほど話題になったところもあります。

こうした商業施設運営の前提となるのが、Tポイントから集まる膨大なデータです。

現在、CCCグループは、

(1)商業施設の企画設計を手掛けるCCCデザインカンパニー

を中心に、

(2)TSUTAYAの運営会社

(3)出版・映像・音楽などの制作会社

(4)Tポイントの運営。および収集したデータを基にしたマーケティング会社

から成り立っています。

これまでは、消費者を相手にした(2)(3)が事業の中心でしたが、今後は、事業者を相手にした(1)(4)を中心にしていこうとしています。

同社の商業施設運営の手腕に対する評価は高く、地方の小売業からの提携依頼が多く寄せられていると聞きます。

その手腕が、増田宗昭氏自身の個人的能力に依存しているといわれているのが、若干心配ではありますが、まずは順調に事業転換の船出をしたというところです。



TSUTAYAは賞味期限切れではないのか


しかし、...です。

現在のCCCが、TSUTAYAの収益に依存しているのは事実です。

そのTSUTAYAが、ビデオレンタル店としても書店としても寿命を迎えつつあります。

そんな店を中核にした商業施設がいつまで消費者に受け入れられるというのでしょうか。

確かにCCCは、書店やレンタル店を既存のままにせず、ライフスタイル提案の場としてリニューアルしていっており、それなりの成果も上げているようです。

が、それが延命処置にとどまらないと言えるのでしょうか。

TSUTAYAや蔦屋書店をさらに魅力的な中核店舗として蘇らせることができるのか、あるいは全く違う魅力的な商業集積を生み出すことができるのか。

それがCCCに与えられた短い期限の課題だと言えます。

ネット動画配信ビジネスの台頭


ビデオレンタル店や書店を追い込んでいるのが、ネットの存在です。

書店においては、電子書籍やネットニュースが、紙の書籍や雑誌の存在意義を薄れさせています。

ビデオレンタル店においては、ネットフリックスを代表とする動画配信サービスがやはりその存在意義を無くそうとしています。

例えばネットフリックスは、国内では最低月650円で映画やドラマが見放題です。(観られる映画やドラマには限りがありますが)

それは、わざわざレンタルビデオ店に行く理由がなくなるというものですよ。


ネットフリックスを中心に競争激化


ネットフリックスが生まれたのは、1997年アメリカです。

レンタルビデオを返し忘れて延滞料金をしこたまとられたオヤジが憤って始めた宅配DVDレンタル会社をもとにしています。

ネットで借りて家まで届く。月定額で借り放題。延滞料金もかからない。というサービスが当たって急成長します。

ネットでの動画配信を始めたのが2007年。高速通信とスマホの時代に、これが当たってさらに発展を加速させます。

今では、売上高約2800億円。全世界で1億人近い会員を持つトップ企業です。

ディズニーが、ネットフリックスへの配信を停止するというニュースが先頃流れましたが、ディズニーが脅威に思うほどの存在になったということです。

もっとも技術的な参入障壁が低い事業なので、多くの企業が新規参入し、競争激化するのは必然です。

日本でも、NTTドコモ系のdTV、日本テレビ系のhulu、USENが運営するU-NEXT、アマゾンプライムビデオなどがしのぎを削っています。

なにしろ会員規模が勝負を決める世界ですから、初動の今が大事です。消耗戦であろうとどうであろうと、戦い抜かなければなりません。

え?TSUTAYAは?

と思うでしょうが、そうなんですね。あまり本気を出していません。


なぜネットフリックスを目指さなかったのか


ネットフリックスが宅配DVDサービスを開始したのが1998年。ネット配信が2007年からです。

CCCは、2002年に宅配DVDサービス(TSUTAYA DISCAS)を開始。さらに2008年にはTSUTAYA-TVを開始しています。

いちおう形としては追尾しているんですな。

ところが、それほど本気にはならなかった。

その理由を増田社長は「加盟店のビジネスを毀損することに遠慮した」と言っています。

そうなんですね。もともとネットフリックスは、店舗型のビデオレンタル店への対抗として起業し、宅配レンタルを始めた企業です。

既存店などというしがらみがありません。

それに対してCCCにはTSUTAYAのフランチャイズ網が既にありました。

そのフランチャイズオーナーを敵に回してまで新しい事業に飛びつけないというのは正論ですが、まったくもって、イノベーションのジレンマにはまってしまった事例ともいえます。

※イノベーションのジレンマとは、先行企業が、既存事業の強みゆえに、新たな事業(破壊的イノベーション)に対応できない事象を言います。

フランチャイズビジネスに徹する


だけど、ジレンマを破れないのだから仕方がありません。

増田社長は、はっきりとCCCはフランチャイズビジネスだと宣言し「アマゾンにできないことをする」という方向に舵を切りました。

それはそれで潔い決断だと思います。

増田社長は、自分たちがやっているのは、

(1)リアルなプラットフォームの提供:TSUTAYAや蔦屋書店のこと。

(2)データベースマーケティング:Tポイントカードから得られる情報を基にしたマーケティング施策

(3)コンテンツ作り:音楽、映像、出版物などのコンテンツ制作

と規定し、あくまでフランチャイズ加盟店が儲かるようにするんだと語っています。



アダルト関連事業を中心とした異色の企業グループ


一方、ネットフリックスと同じく宅配DVDレンタル事業で急成長したのが、DMMです。

同社がオンラインレンタル事業を開始したのが2000年。TSUTAYA DISCASより先に始めています。

同社の特徴は、アダルト関連の国内トップ企業であり、その収益をもとに多様な事業展開をしていることです。

創業者の亀山敬司氏は、根っからの商売人のようです。もとは石川県のビデオ店でしたが、このままではTSUTAYAに勝てないからと、アダルトビデオの制作や販売を始めて、それが当たりました。

アダルト関連事業は、大手企業が参入しない分野です。そこで成功したことが、DMMの考え方の根底にあるようです。

現在では、アダルト関連以外にも、オンラインゲーム、システム開発、FX、オンライン英会話などに進出しており、それは多様であるというより、無軌道というべきものです。

ただ、その事業の選び方には、やはり大手企業が手掛けないようなニッチな分野で勝負する。という考えが見えます。

亀山氏自身「小さい領域で世界一をとった方が生き残れる」とランチェスター戦略通のような発言しており、全くもって正しい見解であると思う次第です。

現在、DMMグループの売上高は1700億円に達するほどで、堂々の大企業です。



面白いこと、新しいことをやりたい集団


亀山氏がいま力を入れているのが、新しい才能の発掘です。

若くてやる気のある人間を見出しては、彼に新規事業を任せて、ビジネス化するための支援を行っています。

DMM自身がベンチャーキャピタルの役割を担っているかのようで、そこから新たなビジネスが続々と生まれてきています。

ただ通常のベンチャーキャピタルは、最終的に株式上場させた上、保有株式の売却益で稼ぐビジネスモデルですが、DMMは上場させずにグループの一員としてしまいます。(というかアダルト関連会社なので、上場させられないわけですが)

だから事業規模も得られるキャッシュも小粒なまま、多様性が広がっていくばかりです。

亀山氏も「最後はどこかに会社ごと買ってもらってもいい」「僕が死んだ後は、僕の言ったことは忘れて仕事をやってもらいたい」と、欲がないのか、諦めているのか分からない発言をしています。

要するに、こんな社会ニーズを満たしたい。社会問題を解決したい。という明確なビジョンがなく、ただ面白いこと、新しいことをやりたいという集団です。


現実的で柔軟な経営スタイル


これはある意味、CCCの増田社長にもいえる特徴です。

増田社長もかっきりしたビジョンを持たずに、現場を重視し、柔軟に対応するというスタイルです。

敢えて言えば「加盟店が儲かり、生き残っていけるようにする」ことが方針です。

さらには「何が正しいか分からない世の中。方向性は、現場にいる加盟店に教えてもらうことが多い」と、フランチャイズ加盟店と共に成長してく意味のことを語っています。


社会の流れに逆らわず、現実的、柔軟に形を変えて生きていく。これは「孫子」のいう「兵の形は水に象る」に通じるものであり、生き残るための最大の秘訣だと言えるでしょう。

私も同意見であり、同じ考えでコンサルティングを行います。

多くの日本企業が、こうした経営スタイルを否定するものでないでしょう。


社会の流れを作る企業ではない


ただ同時に、グーグルやアップルなど自ら社会の流れを作るような企業は、このような経営の仕方はしていないと感じます。

彼らは、あるべき社会の姿という大きなビジョンを見定めて、それに向けて突き進んでいく経営スタイルです。

もちろんリスクも高い。ビジョンが大きすぎて、中途で斃れてしまう企業も多くあるでしょう。

しかし、だからこそ大きな変革を社会にもたらすことができるのではないか。

そしてこれが日本にはグーグルやアップルのような企業が生まれにくい理由なのではないかと思います。

もちろんグーグルとか、アップルとか、社会の流れを作るとか、CCCやDMMにとっては知ったことではないでしょう。

私も自分が問われれば「知ったこっちゃない」と答えます。

私は「生き残る」ことを最上位の目的とする「孫子」の信奉者ですからね。


(2017年11月30日メルマガより)

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TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が事業転換を急いでいます。

CCCは、日本最大のレンタルDVD・CD店と日本最大の書店チェーンを持つ売上高2500億円超の企業です。

しかし、収益頭のDVDレンタルも、書店も、今や斜陽産業の最たるものです。

事業転換を急がなければならない所以です。


文化を発信する企業


CCCは、1985年、大阪府吹田市において設立されました。

創業者の増田宗昭社長は、婦人服大手の鈴屋に勤めていた人ですが「もうデザインの時代じゃない。顧客はスタイルを完成させるための情報を求めている」と感じて脱サラし、大阪府枚方市で、レンタルレコード店や蔦屋書店を開設しました。CCCはそれをフランチャイズ展開するためのものでした。

ビデオをレンタルするようになった1994年頃から、TSUTAYAの出店が加速していき、2013年には1468店に達しています。

現在、DVD・CDのレンタルにおいては、売上高国内トップ。(2位はゲオ)

書店チェーンとしても売上高国内トップ(2位は紀伊国屋書店)です。

増田社長は、TSUTAYAのことを単なる書店やレンタルビデオ店ではなく「文化を発信する場」だと規定しています。

なぜなら人は本や映像の情報に触れている時、自ら生きるスタイルを選択するための情報を得ているのだから。

本を売るのではなく、スタイルを提案している。それが増田社長によるTSUTAYAの自己認識です。

ちなみに蔦屋とは、増田氏の祖父が運営していた置屋の屋号だったということですが、TSUTAYAを「文化発信の場所」だと位置付ける今日は、江戸時代の文化人・蔦屋重三郎にあやかった説を主張しています。

ところが周知の通り、DVD・CDのレンタル事業も、書店も、市場規模そのものが急減している絶滅危惧種です。

いわば沈没する船に乗っているようなものですから、なんとかしなければならない。ということで、2000年に株式上場したものを2011年には上場廃止。フリーハンドでの事業転換を進めてきました。


小売業再生の救世主


CCCの業態転換の皮切りになったのが、2011年の「代官山T-SITE」です。

こちらは蔦屋書店を中核テナントとする新感覚の商業施設で、同社がプロデュースを担い、人気を博しています。

T-SITEは、代官山の成功を受けて、函館、湘南、枚方などに展開を進めています。

あるいは、公共施設である図書館の運営を手掛け、こちらも地方の観光スポットになるほど話題になったところもあります。

こうした商業施設運営の前提となるのが、Tポイントから集まる膨大なデータです。

現在、CCCグループは、

(1)商業施設の企画設計を手掛けるCCCデザインカンパニー

を中心に、

(2)TSUTAYAの運営会社

(3)出版・映像・音楽などの制作会社

(4)Tポイントの運営。および収集したデータを基にしたマーケティング会社

から成り立っています。

これまでは、消費者を相手にした(2)(3)が事業の中心でしたが、今後は、事業者を相手にした(1)(4)を中心にしていこうとしています。

同社の商業施設運営の手腕に対する評価は高く、地方の小売業からの提携依頼が多く寄せられていると聞きます。

その手腕が、増田宗昭氏自身の個人的能力に依存しているといわれているのが、若干心配ではありますが、まずは順調に事業転換の船出をしたというところです。



TSUTAYAは賞味期限切れではないのか


しかし、...です。

現在のCCCが、TSUTAYAの収益に依存しているのは事実です。

そのTSUTAYAが、ビデオレンタル店としても書店としても寿命を迎えつつあります。

そんな店を中核にした商業施設がいつまで消費者に受け入れられるというのでしょうか。

確かにCCCは、書店やレンタル店を既存のままにせず、ライフスタイル提案の場としてリニューアルしていっており、それなりの成果も上げているようです。

が、それが延命処置にとどまらないと言えるのでしょうか。

TSUTAYAや蔦屋書店をさらに魅力的な中核店舗として蘇らせることができるのか、あるいは全く違う魅力的な商業集積を生み出すことができるのか。

それがCCCに与えられた短い期限の課題だと言えます。

ネット動画配信ビジネスの台頭


ビデオレンタル店や書店を追い込んでいるのが、ネットの存在です。

書店においては、電子書籍やネットニュースが、紙の書籍や雑誌の存在意義を薄れさせています。

ビデオレンタル店においては、ネットフリックスを代表とする動画配信サービスがやはりその存在意義を無くそうとしています。

例えばネットフリックスは、国内では最低月650円で映画やドラマが見放題です。(観られる映画やドラマには限りがありますが)

それは、わざわざレンタルビデオ店に行く理由がなくなるというものですよ。


ネットフリックスを中心に競争激化


ネットフリックスが生まれたのは、1997年アメリカです。

レンタルビデオを返し忘れて延滞料金をしこたまとられたオヤジが憤って始めた宅配DVDレンタル会社をもとにしています。

ネットで借りて家まで届く。月定額で借り放題。延滞料金もかからない。というサービスが当たって急成長します。

ネットでの動画配信を始めたのが2007年。高速通信とスマホの時代に、これが当たってさらに発展を加速させます。

今では、売上高約2800億円。全世界で1億人近い会員を持つトップ企業です。

ディズニーが、ネットフリックスへの配信を停止するというニュースが先頃流れましたが、ディズニーが脅威に思うほどの存在になったということです。

もっとも技術的な参入障壁が低い事業なので、多くの企業が新規参入し、競争激化するのは必然です。

日本でも、NTTドコモ系のdTV、日本テレビ系のhulu、USENが運営するU-NEXT、アマゾンプライムビデオなどがしのぎを削っています。

なにしろ会員規模が勝負を決める世界ですから、初動の今が大事です。消耗戦であろうとどうであろうと、戦い抜かなければなりません。

え?TSUTAYAは?

と思うでしょうが、そうなんですね。あまり本気を出していません。


なぜネットフリックスを目指さなかったのか


ネットフリックスが宅配DVDサービスを開始したのが1998年。ネット配信が2007年からです。

CCCは、2002年に宅配DVDサービス(TSUTAYA DISCAS)を開始。さらに2008年にはTSUTAYA-TVを開始しています。

いちおう形としては追尾しているんですな。

ところが、それほど本気にはならなかった。

その理由を増田社長は「加盟店のビジネスを毀損することに遠慮した」と言っています。

そうなんですね。もともとネットフリックスは、店舗型のビデオレンタル店への対抗として起業し、宅配レンタルを始めた企業です。

既存店などというしがらみがありません。

それに対してCCCにはTSUTAYAのフランチャイズ網が既にありました。

そのフランチャイズオーナーを敵に回してまで新しい事業に飛びつけないというのは正論ですが、まったくもって、イノベーションのジレンマにはまってしまった事例ともいえます。

※イノベーションのジレンマとは、先行企業が、既存事業の強みゆえに、新たな事業(破壊的イノベーション)に対応できない事象を言います。

フランチャイズビジネスに徹する


だけど、ジレンマを破れないのだから仕方がありません。

増田社長は、はっきりとCCCはフランチャイズビジネスだと宣言し「アマゾンにできないことをする」という方向に舵を切りました。

それはそれで潔い決断だと思います。

増田社長は、自分たちがやっているのは、

(1)リアルなプラットフォームの提供:TSUTAYAや蔦屋書店のこと。

(2)データベースマーケティング:Tポイントカードから得られる情報を基にしたマーケティング施策

(3)コンテンツ作り:音楽、映像、出版物などのコンテンツ制作

と規定し、あくまでフランチャイズ加盟店が儲かるようにするんだと語っています。



アダルト関連事業を中心とした異色の企業グループ


一方、ネットフリックスと同じく宅配DVDレンタル事業で急成長したのが、DMMです。

同社がオンラインレンタル事業を開始したのが2000年。TSUTAYA DISCASより先に始めています。

同社の特徴は、アダルト関連の国内トップ企業であり、その収益をもとに多様な事業展開をしていることです。

創業者の亀山敬司氏は、根っからの商売人のようです。もとは石川県のビデオ店でしたが、このままではTSUTAYAに勝てないからと、アダルトビデオの制作や販売を始めて、それが当たりました。

アダルト関連事業は、大手企業が参入しない分野です。そこで成功したことが、DMMの考え方の根底にあるようです。

現在では、アダルト関連以外にも、オンラインゲーム、システム開発、FX、オンライン英会話などに進出しており、それは多様であるというより、無軌道というべきものです。

ただ、その事業の選び方には、やはり大手企業が手掛けないようなニッチな分野で勝負する。という考えが見えます。

亀山氏自身「小さい領域で世界一をとった方が生き残れる」とランチェスター戦略通のような発言しており、全くもって正しい見解であると思う次第です。

現在、DMMグループの売上高は1700億円に達するほどで、堂々の大企業です。



面白いこと、新しいことをやりたい集団


亀山氏がいま力を入れているのが、新しい才能の発掘です。

若くてやる気のある人間を見出しては、彼に新規事業を任せて、ビジネス化するための支援を行っています。

DMM自身がベンチャーキャピタルの役割を担っているかのようで、そこから新たなビジネスが続々と生まれてきています。

ただ通常のベンチャーキャピタルは、最終的に株式上場させた上、保有株式の売却益で稼ぐビジネスモデルですが、DMMは上場させずにグループの一員としてしまいます。(というかアダルト関連会社なので、上場させられないわけですが)

だから事業規模も得られるキャッシュも小粒なまま、多様性が広がっていくばかりです。

亀山氏も「最後はどこかに会社ごと買ってもらってもいい」「僕が死んだ後は、僕の言ったことは忘れて仕事をやってもらいたい」と、欲がないのか、諦めているのか分からない発言をしています。

要するに、こんな社会ニーズを満たしたい。社会問題を解決したい。という明確なビジョンがなく、ただ面白いこと、新しいことをやりたいという集団です。


現実的で柔軟な経営スタイル


これはある意味、CCCの増田社長にもいえる特徴です。

増田社長もかっきりしたビジョンを持たずに、現場を重視し、柔軟に対応するというスタイルです。

敢えて言えば「加盟店が儲かり、生き残っていけるようにする」ことが方針です。

さらには「何が正しいか分からない世の中。方向性は、現場にいる加盟店に教えてもらうことが多い」と、フランチャイズ加盟店と共に成長してく意味のことを語っています。


社会の流れに逆らわず、現実的、柔軟に形を変えて生きていく。これは「孫子」のいう「兵の形は水に象る」に通じるものであり、生き残るための最大の秘訣だと言えるでしょう。

私も同意見であり、同じ考えでコンサルティングを行います。

多くの日本企業が、こうした経営スタイルを否定するものでないでしょう。


社会の流れを作る企業ではない


ただ同時に、グーグルやアップルなど自ら社会の流れを作るような企業は、このような経営の仕方はしていないと感じます。

彼らは、あるべき社会の姿という大きなビジョンを見定めて、それに向けて突き進んでいく経営スタイルです。

もちろんリスクも高い。ビジョンが大きすぎて、中途で斃れてしまう企業も多くあるでしょう。

しかし、だからこそ大きな変革を社会にもたらすことができるのではないか。

そしてこれが日本にはグーグルやアップルのような企業が生まれにくい理由なのではないかと思います。

もちろんグーグルとか、アップルとか、社会の流れを作るとか、CCCやDMMにとっては知ったことではないでしょう。

私も自分が問われれば「知ったこっちゃない」と答えます。

私は「生き残る」ことを最上位の目的とする「孫子」の信奉者ですからね。


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