マフィアにビジネスの極意を聞く

2011.08.25

(2011年8月25日メルマガより)


■営業マンにとって、売るための秘訣があるとすれば、たった一つ。顧客第
一に考えることです。

これは、不変の真実です。

今まで様々な会社のトップ営業と会ってきましたが、顧客を第一に考えない
人でトップを続けている人を見たことがありません。

トップ営業は、会社の言うことを無視してでも顧客のために何かをしようと
する人たちです。

中には問題のある人もいます。顧客第一はいいのだが、迎合してしまう人と
か。利益管理が甘い人とか。コンプライアンス意識が低い人とか。

もちろん、それは問題なのですが、顧客第一の基本がなければ、どんな理論
やノウハウを以ってしてもトップ営業にはなれません。

だから、私は営業にマーケティング理論を学ぶことを推奨しています。マー
ケティングとはまさに顧客を出発点にすべてのビジネスを組み立てる方法論
です。

経験から顧客志向を身に着ける人もいるでしょうが、それよりも、新人営業
時代にマーケティングを叩きこんでおくべきです。

参考:なぜ我々にはマーケティングが必要なのか?
http://www.createvalue.biz/column2/post-192.html

■新入社員研修などでマーケティングの講義を行っていると、若い人たちの
目の輝きがはっきりと分かります。

特にマーケティングの基本理念を説明する時に、彼らが身を乗り出すのが分
かります。

マーケティングの本質は、モノを売ることなどではありません。

このメルマガの中で何度も言ってきましたが、また言います。

マーケティングの専門家は「仕事とは、よりよい社会に進歩・発展させるた
めの人々に与えられた社会的分担である」と言います。

つまり、マーケティングの目標は、よりよい社会を作ることです。

すべてのマーケティングの信奉者は、それぞれ仕事という役割を通じて、社
会に参加しているという実感を持っているはずです。

若い時の毎日を無駄にしないためにも、社会人になった際には、すべての人
がマーケティングを学ぶべきであると考えます。

■ところが、ある程度のベテランになると懐疑的になってきます。

トップ営業は「会社の言うことなんか聞いてられるか。営業は、お客さんの
味方にならなあかん」という信念を持っているのですが、残念ながらその他
大勢の人々は、そこまで真剣に仕事をしているわけではありません。

失礼ながら中途半端な営業は「顧客志向なんかお題目や」「会社の言うとお
りやっとったらええねん」ぐらいの気持ちでいるのでしょうね。

■気持ちが分からないでもありません。

というのも、現場で起こることはイレギュラーばかりで、理念通り、戦略通
りで対応できるとは思えないことがいっぱいあるからです。

だから現場の営業は「経営陣は現場を分かっていない」「戦略なんて机上の
空論や」と言いたくもなるでしょう。

■そんな現場主義者の営業に人気なのが「実践ノウハウ」などといわれるも
のです。

「○○を年間100個売りました!」

「○○業界で10年間トップでした!」

と称する人たち(○○の部分を書くと語弊があるので自重します^^;)の
経験を基にしたノウハウが主流となっています。

特に出版業界は、そういうノウハウ本が大好きです。要するに売れるからです。

ノウハウを余すところなく開示する!といいながら、ただの自慢話に終始し
ている本も多々ありますので注意しなければなりませんが...

■「最強マフィアの仕事術」という本が出ています。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4799310119/lanchesterkan-22/ref=nosim

著者はマイケル・フランゼーゼ。ニューヨークに拠点を置く強大マフィアで
あるコロンボファミリーの元幹部という人物です。

ビジネスに才能を発揮し「アル・カポネの再来」「若き天才」と持て囃され
ましたが、逮捕されたことをきっかけに足を洗い現在はコンサルティングや
講演活動などをしているようです。

■自分で紹介しておいてなんですが、これもノウハウ本の一つでしょうね。

ヤクザとか、傭兵とか、警察とか、弁護士とか、ある特定の業種でトップク
ラスの業績を残した人の人生訓やノウハウを知って、一般人が自分の生き方
の参考にしようという意図の本です。

多くは修羅場を経験した人たちなので、いささか極端ですが、説得力があり
ます。

営業コンサルタントが「こういう場面では、こうすれば売れる」と説明して
も「業界が違うのでピンと来ない」と言われてしまいますが、元傭兵が「銃
を突きつけられたが、このようにして難を逃れた」と説明すると、生死に関
わることなので、実感をもって捉えられます。

自分のビジネスに応用できないことは同じなんですが、要するに、凄い人が
いるなーー、俺も頑張ろう!と精神的な高揚感を得られるわけです。

■ただし、この本は、かなり真っ当なことを書いています。

いわく「基本を知らないヤツは何をやっても成功できない」

マフィアの基本とは、

目標を定め、計画を立てる。

早起きしてハードに働く。

自分のすべきことに集中する。

信頼できる人物を仲間に引き込む。

客観的にアドバイスしてくれる人物を身近に置く。

というものです。

まるでドラッカーが言っているかのごとき真っ当さでしょう^^

■この本の面白いところは、マフィアのバイブルとしてマキャベリの「君主
論」を挙げているところです。

マキャベリは、15世紀イタリア、フィレンツェ共和国の外交官です。

当時一般的だった理想主義に異を唱え、政治は利害に従うべきだという現実
主義をその著作で展開しています。

「政治と道徳は無関係である」「愛されるより恐れられるほうがはるかに安
全である」「法律の最大の利点は、民衆に力や富を持たせないようにするこ
とである」

また結果のためには手段を選ばなくてよいという主張もマキャベリの思想の
特徴です。だから、国家の安全のためには、君主は残忍なことでも卑怯なこ
とでもやっていいと述べています。

身も蓋も無い。でも、今でも為政者の帝王学に取り入れられているのではな
いかと思いたくなるほどリアルです。

■確かにこのリアリズムは、超競争社会であるマフィアの世界に相応しいも
のなのでしょう。

マフィアも結果を求められる世界のようです。お題目はいいから、現金を用
意しろ。やり方は任せる。結果が出せなければ終わりだ。

一般社会や警察当局との軋轢もさることながら、仲間うちの足の引っ張り合
いも凄まじいものがあるようです。

だからその中でのし上がってきた者は、総合的に優れた能力を持ったエリー
トです。年功序列などという制度はないようですね。

ぬるま湯のような日常に慣れた私のような者からすれば、新鮮に思えます。

■ただし、この著者は、そのようなマフィアのやり方はいずれ破綻すると断
じています。

まずは、社会の敵となることの摩擦。もう一つは、内部抗争の苛烈さが、そ
の理由です。

実際に著者は、内部の競争に疲弊した上、当局に摘発されて全財産を失うこ
とになります。

手段を選ばない結果主義は、本人が望まなくても短期利益の追求につながり、
内部抗争を生み、全体の仕組みを破綻させてしまうという実例がそこにあり
ました。

■実はこうした内容は映画「ゴッドファーザー」などで予見されていたこと
でした。

古きよき時代(といえばいいのかな?)のマフィアのファミリーは強固な団
結力を誇っていました。

彼らは社会のルールには従わなくても、組織のルールには従う存在です。

なぜなら、WASP(ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント)が中
心となったアメリカ社会は、イタリア系移民に公正な競争環境を与えていな
いと彼らは考えたからです。

だから、自分たちのルールで団結し、自らの利益を守ることは当然であると
しました。

「ゴッドファーザー」に登場する大ボス、ビトー・コルレオーネは、仲間
(ファミリー)のことは命を賭けて守るが、敵には容赦ない人物です。

それでも、ビトー・コルレオーネが圧倒的な共感で受け入れられたのは、社
会全体の不公正の中で弱者である自分の権利を身体を張って守る立場である
と描かれていたためです。

仲間に対しては愛情と絶対の信頼で接し、敵に対してはどんな手段を使って
も対抗する頼もしい姿は理想的なボスに思えたものです。(ただし、ビトー
はやりすぎることはありませんでした。やられた以上のことは返しませんで
したから)

■しかし、マフィアが社会で強大な影響力を持つようになると、本来持って
いたマイノリティの正義という大義名分が薄れてしまいます。

それは単に利益を出すための集団となり、内部抗争が生まれます。

「ゴッドファーザー」でも、ラストでは、自分の身内を排除しなければなら
ないという本末転倒な状況に陥ってしまいました。

■この本の著者は、真の成功を手に入れたければ、マキャベリではなく、ソ
ロモンの教えに従えと説きます。

ソロモンとは、古代イスラエルを最も繁栄させた王で、知恵の象徴として知
られます。(私は詳しいわけではありません)

ソロモンは「正しいことを公正かつ公平」に行えと教えます。

勤勉、信頼、誠実などに価値を置き、裏技や秘策などに頼ることを諌めます。

いわば、古今東西の一般民衆が普遍的に持っている道徳的な価値観を示した
ものであるといっていいのではないでしょうか。

真面目にコツコツ努力し、強欲を捨て、仲間には誠実に接していれば、敵を
作らず、恨まれず、長期的な成功を手にすることができる。

なんとも当たり前で凡庸な結論ではないですか^^

でも、それを元マフィアが言うのだから説得力があるという仕掛けとなっ
います。

私が言っても「当たり前のことを言うな」と失笑を買うかも知れませんね。

でも私はこの著者の考え方に全面的に賛成します。

当たり前のことをまじめにちゃんとやることが唯一無二の成功法則だと信じ
ます。

なにしろ私には「一攫千金」だとか「ショートカット」だとかいう気持ちか
らの行動に悉く失敗してきた歴史がありますのでね^^;

■このように、実践ノウハウを開示すると言いながら、実は極めて当たり前
の正統的なことを説くというのは、いいことだと思います。

そうなんですね。

世の中には「秘密のノウハウ」などと釣っておきながら、その実、極めて真
っ当な常識を説くコンサルタントもいます。

マイケル・フランゼーゼ氏もそのうちの一人なんでしょう。

これはむしろ良識のある人でしょうね。

逆に気を付けなければならないのは、チラシの書き方とか、営業トークとか、
営業マナーとか、一つの技術を徹底することで、全てが上手くいく、などと
喧伝するやり口です。

要するにマーケティング施策のほんの一部分を徹底するだけの方法です。

万が一実績が出たとしても、応用が利かないので、こんなことに時間を使う
のは、いかながものかと思ってしまうのですがね...

■さて、フランゼーゼ氏は、自身のマフィアでの経験から、人生で成功する
ためには、マキャベリのような行き過ぎた競争主義ではダメだ、ソロモンの
博愛主義でいくべきだという結論を導き出しました。

それはそれで重い結論です。

ちなみに、経験から一般的な法則を抽出することを「抽象化」といいます。

ただし、これだけではビジネスに応用することはできません。

次に一般法則を現場で応用することが必要になります。これが「具体化」です。

つまり、現実の経験や状況を見て、それをビジネスに応用するためには、抽
象化と現実化という2つのプロセスを経なければなりません。

私が以前見たテレビ(題名失念)では、この2つの方法を操る能力がある者
は、全体の2割程度であると言っていました。

ソースが曖昧な話で恐縮ですが...私のコンサル経験から言っても、理論を応
用できる人は稀ですし、理論を抽出できる人はさらに稀です。

だから、実践ノウハウが持て囃されるわけです。出版業界が、8割のマジョ
リティをターゲットにするのは、極めて正当なことなんですね。

■経営戦略の話でいうと、全体の方向性がそのまま現場の営業戦略として使
えることはまずありません。

必ず現場サイドで戦略の意図を解釈し、現場の営業戦略に落とし込んでいか
なければなりません。

少し具体的にいうと、全体の方向性は、企業が成長するためにはどうすれば
いいのかという視点から作られています。

いわゆる成長戦略というもので、ターゲットとする特定の顧客にファンにな
ってもらうための方法と言い換えてもいいでしょう。

これに対して、現場では、競争の視点をより強くしなければなりません。

現場ではリアルな市場範囲が見えているので、その中で、ライバル会社に勝
つためにはどうすればいいのかという方法を作っていきます。

私が普段行っている営業戦略の立案とは、まさに現場で営業が競合他社に負
けずに実績を上げるためにするものです。

■抽象化・具体化という作業ができる人が全体の2割しかいないのなら、最
初から具体的なノウハウしか言わなければいいじゃないか。というのも一つ
の見識かも知れません。

メンタル面のケアと具体策を同時に行って実績を上げるという方法も、やり
方さえ間違わなければ有効なのでしょうね。

ただ、それは、人をミスリードする恐れがある上に、応用が利かない方法です。

将校が戦略を考えて、兵隊はひたすら言うとおりやればいいんだ、というの
では、昆虫と変わりありません。

やはり私は、戦略立案の方法を丹念に伝えて、一緒に戦略づくりに取り組む
方法をとりたいと思います。

「無理に売るな、客の好むものも売るな、客のためになるものを売れ」

それが私の生む価値であるとこれからも信じていきたいと考えます


(2011年8月25日メルマガより)


■営業マンにとって、売るための秘訣があるとすれば、たった一つ。顧客第
一に考えることです。

これは、不変の真実です。

今まで様々な会社のトップ営業と会ってきましたが、顧客を第一に考えない
人でトップを続けている人を見たことがありません。

トップ営業は、会社の言うことを無視してでも顧客のために何かをしようと
する人たちです。

中には問題のある人もいます。顧客第一はいいのだが、迎合してしまう人と
か。利益管理が甘い人とか。コンプライアンス意識が低い人とか。

もちろん、それは問題なのですが、顧客第一の基本がなければ、どんな理論
やノウハウを以ってしてもトップ営業にはなれません。

だから、私は営業にマーケティング理論を学ぶことを推奨しています。マー
ケティングとはまさに顧客を出発点にすべてのビジネスを組み立てる方法論
です。

経験から顧客志向を身に着ける人もいるでしょうが、それよりも、新人営業
時代にマーケティングを叩きこんでおくべきです。

参考:なぜ我々にはマーケティングが必要なのか?
http://www.createvalue.biz/column2/post-192.html

■新入社員研修などでマーケティングの講義を行っていると、若い人たちの
目の輝きがはっきりと分かります。

特にマーケティングの基本理念を説明する時に、彼らが身を乗り出すのが分
かります。

マーケティングの本質は、モノを売ることなどではありません。

このメルマガの中で何度も言ってきましたが、また言います。

マーケティングの専門家は「仕事とは、よりよい社会に進歩・発展させるた
めの人々に与えられた社会的分担である」と言います。

つまり、マーケティングの目標は、よりよい社会を作ることです。

すべてのマーケティングの信奉者は、それぞれ仕事という役割を通じて、社
会に参加しているという実感を持っているはずです。

若い時の毎日を無駄にしないためにも、社会人になった際には、すべての人
がマーケティングを学ぶべきであると考えます。

■ところが、ある程度のベテランになると懐疑的になってきます。

トップ営業は「会社の言うことなんか聞いてられるか。営業は、お客さんの
味方にならなあかん」という信念を持っているのですが、残念ながらその他
大勢の人々は、そこまで真剣に仕事をしているわけではありません。

失礼ながら中途半端な営業は「顧客志向なんかお題目や」「会社の言うとお
りやっとったらええねん」ぐらいの気持ちでいるのでしょうね。

■気持ちが分からないでもありません。

というのも、現場で起こることはイレギュラーばかりで、理念通り、戦略通
りで対応できるとは思えないことがいっぱいあるからです。

だから現場の営業は「経営陣は現場を分かっていない」「戦略なんて机上の
空論や」と言いたくもなるでしょう。

■そんな現場主義者の営業に人気なのが「実践ノウハウ」などといわれるも
のです。

「○○を年間100個売りました!」

「○○業界で10年間トップでした!」

と称する人たち(○○の部分を書くと語弊があるので自重します^^;)の
経験を基にしたノウハウが主流となっています。

特に出版業界は、そういうノウハウ本が大好きです。要するに売れるからです。

ノウハウを余すところなく開示する!といいながら、ただの自慢話に終始し
ている本も多々ありますので注意しなければなりませんが...

■「最強マフィアの仕事術」という本が出ています。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4799310119/lanchesterkan-22/ref=nosim

著者はマイケル・フランゼーゼ。ニューヨークに拠点を置く強大マフィアで
あるコロンボファミリーの元幹部という人物です。

ビジネスに才能を発揮し「アル・カポネの再来」「若き天才」と持て囃され
ましたが、逮捕されたことをきっかけに足を洗い現在はコンサルティングや
講演活動などをしているようです。

■自分で紹介しておいてなんですが、これもノウハウ本の一つでしょうね。

ヤクザとか、傭兵とか、警察とか、弁護士とか、ある特定の業種でトップク
ラスの業績を残した人の人生訓やノウハウを知って、一般人が自分の生き方
の参考にしようという意図の本です。

多くは修羅場を経験した人たちなので、いささか極端ですが、説得力があり
ます。

営業コンサルタントが「こういう場面では、こうすれば売れる」と説明して
も「業界が違うのでピンと来ない」と言われてしまいますが、元傭兵が「銃
を突きつけられたが、このようにして難を逃れた」と説明すると、生死に関
わることなので、実感をもって捉えられます。

自分のビジネスに応用できないことは同じなんですが、要するに、凄い人が
いるなーー、俺も頑張ろう!と精神的な高揚感を得られるわけです。

■ただし、この本は、かなり真っ当なことを書いています。

いわく「基本を知らないヤツは何をやっても成功できない」

マフィアの基本とは、

目標を定め、計画を立てる。

早起きしてハードに働く。

自分のすべきことに集中する。

信頼できる人物を仲間に引き込む。

客観的にアドバイスしてくれる人物を身近に置く。

というものです。

まるでドラッカーが言っているかのごとき真っ当さでしょう^^

■この本の面白いところは、マフィアのバイブルとしてマキャベリの「君主
論」を挙げているところです。

マキャベリは、15世紀イタリア、フィレンツェ共和国の外交官です。

当時一般的だった理想主義に異を唱え、政治は利害に従うべきだという現実
主義をその著作で展開しています。

「政治と道徳は無関係である」「愛されるより恐れられるほうがはるかに安
全である」「法律の最大の利点は、民衆に力や富を持たせないようにするこ
とである」

また結果のためには手段を選ばなくてよいという主張もマキャベリの思想の
特徴です。だから、国家の安全のためには、君主は残忍なことでも卑怯なこ
とでもやっていいと述べています。

身も蓋も無い。でも、今でも為政者の帝王学に取り入れられているのではな
いかと思いたくなるほどリアルです。

■確かにこのリアリズムは、超競争社会であるマフィアの世界に相応しいも
のなのでしょう。

マフィアも結果を求められる世界のようです。お題目はいいから、現金を用
意しろ。やり方は任せる。結果が出せなければ終わりだ。

一般社会や警察当局との軋轢もさることながら、仲間うちの足の引っ張り合
いも凄まじいものがあるようです。

だからその中でのし上がってきた者は、総合的に優れた能力を持ったエリー
トです。年功序列などという制度はないようですね。

ぬるま湯のような日常に慣れた私のような者からすれば、新鮮に思えます。

■ただし、この著者は、そのようなマフィアのやり方はいずれ破綻すると断
じています。

まずは、社会の敵となることの摩擦。もう一つは、内部抗争の苛烈さが、そ
の理由です。

実際に著者は、内部の競争に疲弊した上、当局に摘発されて全財産を失うこ
とになります。

手段を選ばない結果主義は、本人が望まなくても短期利益の追求につながり、
内部抗争を生み、全体の仕組みを破綻させてしまうという実例がそこにあり
ました。

■実はこうした内容は映画「ゴッドファーザー」などで予見されていたこと
でした。

古きよき時代(といえばいいのかな?)のマフィアのファミリーは強固な団
結力を誇っていました。

彼らは社会のルールには従わなくても、組織のルールには従う存在です。

なぜなら、WASP(ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント)が中
心となったアメリカ社会は、イタリア系移民に公正な競争環境を与えていな
いと彼らは考えたからです。

だから、自分たちのルールで団結し、自らの利益を守ることは当然であると
しました。

「ゴッドファーザー」に登場する大ボス、ビトー・コルレオーネは、仲間
(ファミリー)のことは命を賭けて守るが、敵には容赦ない人物です。

それでも、ビトー・コルレオーネが圧倒的な共感で受け入れられたのは、社
会全体の不公正の中で弱者である自分の権利を身体を張って守る立場である
と描かれていたためです。

仲間に対しては愛情と絶対の信頼で接し、敵に対してはどんな手段を使って
も対抗する頼もしい姿は理想的なボスに思えたものです。(ただし、ビトー
はやりすぎることはありませんでした。やられた以上のことは返しませんで
したから)

■しかし、マフィアが社会で強大な影響力を持つようになると、本来持って
いたマイノリティの正義という大義名分が薄れてしまいます。

それは単に利益を出すための集団となり、内部抗争が生まれます。

「ゴッドファーザー」でも、ラストでは、自分の身内を排除しなければなら
ないという本末転倒な状況に陥ってしまいました。

■この本の著者は、真の成功を手に入れたければ、マキャベリではなく、ソ
ロモンの教えに従えと説きます。

ソロモンとは、古代イスラエルを最も繁栄させた王で、知恵の象徴として知
られます。(私は詳しいわけではありません)

ソロモンは「正しいことを公正かつ公平」に行えと教えます。

勤勉、信頼、誠実などに価値を置き、裏技や秘策などに頼ることを諌めます。

いわば、古今東西の一般民衆が普遍的に持っている道徳的な価値観を示した
ものであるといっていいのではないでしょうか。

真面目にコツコツ努力し、強欲を捨て、仲間には誠実に接していれば、敵を
作らず、恨まれず、長期的な成功を手にすることができる。

なんとも当たり前で凡庸な結論ではないですか^^

でも、それを元マフィアが言うのだから説得力があるという仕掛けとなっ
います。

私が言っても「当たり前のことを言うな」と失笑を買うかも知れませんね。

でも私はこの著者の考え方に全面的に賛成します。

当たり前のことをまじめにちゃんとやることが唯一無二の成功法則だと信じ
ます。

なにしろ私には「一攫千金」だとか「ショートカット」だとかいう気持ちか
らの行動に悉く失敗してきた歴史がありますのでね^^;

■このように、実践ノウハウを開示すると言いながら、実は極めて当たり前
の正統的なことを説くというのは、いいことだと思います。

そうなんですね。

世の中には「秘密のノウハウ」などと釣っておきながら、その実、極めて真
っ当な常識を説くコンサルタントもいます。

マイケル・フランゼーゼ氏もそのうちの一人なんでしょう。

これはむしろ良識のある人でしょうね。

逆に気を付けなければならないのは、チラシの書き方とか、営業トークとか、
営業マナーとか、一つの技術を徹底することで、全てが上手くいく、などと
喧伝するやり口です。

要するにマーケティング施策のほんの一部分を徹底するだけの方法です。

万が一実績が出たとしても、応用が利かないので、こんなことに時間を使う
のは、いかながものかと思ってしまうのですがね...

■さて、フランゼーゼ氏は、自身のマフィアでの経験から、人生で成功する
ためには、マキャベリのような行き過ぎた競争主義ではダメだ、ソロモンの
博愛主義でいくべきだという結論を導き出しました。

それはそれで重い結論です。

ちなみに、経験から一般的な法則を抽出することを「抽象化」といいます。

ただし、これだけではビジネスに応用することはできません。

次に一般法則を現場で応用することが必要になります。これが「具体化」です。

つまり、現実の経験や状況を見て、それをビジネスに応用するためには、抽
象化と現実化という2つのプロセスを経なければなりません。

私が以前見たテレビ(題名失念)では、この2つの方法を操る能力がある者
は、全体の2割程度であると言っていました。

ソースが曖昧な話で恐縮ですが...私のコンサル経験から言っても、理論を応
用できる人は稀ですし、理論を抽出できる人はさらに稀です。

だから、実践ノウハウが持て囃されるわけです。出版業界が、8割のマジョ
リティをターゲットにするのは、極めて正当なことなんですね。

■経営戦略の話でいうと、全体の方向性がそのまま現場の営業戦略として使
えることはまずありません。

必ず現場サイドで戦略の意図を解釈し、現場の営業戦略に落とし込んでいか
なければなりません。

少し具体的にいうと、全体の方向性は、企業が成長するためにはどうすれば
いいのかという視点から作られています。

いわゆる成長戦略というもので、ターゲットとする特定の顧客にファンにな
ってもらうための方法と言い換えてもいいでしょう。

これに対して、現場では、競争の視点をより強くしなければなりません。

現場ではリアルな市場範囲が見えているので、その中で、ライバル会社に勝
つためにはどうすればいいのかという方法を作っていきます。

私が普段行っている営業戦略の立案とは、まさに現場で営業が競合他社に負
けずに実績を上げるためにするものです。

■抽象化・具体化という作業ができる人が全体の2割しかいないのなら、最
初から具体的なノウハウしか言わなければいいじゃないか。というのも一つ
の見識かも知れません。

メンタル面のケアと具体策を同時に行って実績を上げるという方法も、やり
方さえ間違わなければ有効なのでしょうね。

ただ、それは、人をミスリードする恐れがある上に、応用が利かない方法です。

将校が戦略を考えて、兵隊はひたすら言うとおりやればいいんだ、というの
では、昆虫と変わりありません。

やはり私は、戦略立案の方法を丹念に伝えて、一緒に戦略づくりに取り組む
方法をとりたいと思います。

「無理に売るな、客の好むものも売るな、客のためになるものを売れ」

それが私の生む価値であるとこれからも信じていきたいと考えます


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