心理学はビジネスに生かせるのか

2012.01.26

(2012年1月26日メルマガより)


■最初からこんなことを言ってナンですが、
私は心理学の類が嫌いです。

いや、違う。心理学は好きですね^^

心理学を使って、表面的に相手を操ろうとする似非占い師の類が嫌いです。

■例えばこういうことがありました。

あるコンサルタントの方と初めて会った時に握手を求められました

芝居がかったことをするなあ。。というのは、その人が両手を使って、ちょ
っと変わった握手の仕方をされたからです。

その時は、何か不思議な握手をする人だなあと思ったぐらいでした。

ところが、しばらくして、何の気なしに心理テクニックの本を読んでいると、
その変な握手の仕方が紹介されていました。

それは「相手を心理的に威圧し、支配下に置く握手」なんだそうです^^;

一気にそのコンサルタントが胡散臭い奴に思えたことは言うまでもありません。

■そのコンサルタントが心理テクニックを使ったのか、偶然だったのか、そ
れは分かりません。まあ、多分、テクニックを使ったつもりなんでしょうね。

相当下手な使い方です。

私を操るどことか、胡散臭い奴というレッテルを貼られているわけですから、
そのテクニック本に操られているんですな。

これはまだかわいい方です。

伝聞情報ですが、ある著名なコンサルタントで、そうした心理や感情の操作
に長けている人がいるそうです。

何とかのカリスマとか言われている人です。

その人は裏では「正しいことなど言う必要はない。皆が信じたいことをもっ
ともらしく言っておけばいい」と言っているとか。。。

伝聞情報ではありますが、その人のことも胡散臭い奴だなあと私は見ています。

■こんな詐欺師のような使い方でなくても、心理テクニックを使えたらいい
なあという場面はあるのではないでしょうか。

私も、営業マン時代は、営業に催眠術のテクニックを使えないだろうか、と
思ったりもしました^^;

売れる営業は手のひらをヒラヒラさせて相手を催眠状態にしてから販売し
ている」ということが書いてあるバカな本もありましたし。

こういうのは、妄想の類ですね。

■たぶん、営業など仕事に心理テクニックを使おうと考える気持ちの中には、
本来必要なプロセスを省略しようという思いがあるのでしょうね。

ありていに言えば、楽したい、という思いです。

「営業の秘訣は、なるべく手間がかからない仕組みを作ること」といえばも
っともらしいですが、営業経験のない人がそういう話に飛びつくのは危険だ
と思います。

どこか「1日3時間働くだけで年収1億円」とか「預けておくだけで年利3
0%」などという胡散臭い話につながるかも知れませんので、気を付けなけ
ればなりません。

■このメルマガで何度か買いたかもしれませんが、セミナーや研修をやって
いて聞く「具体的なことを教えてほしい」という声も気になっています。

受講者から直接言われることもありますし、主催者から言われることもあり
ます。

いわく「原理原則は聞き飽きた。だからどうすればいいんだ?」

「理屈はいいから、どうすれば売上が上がるのか教えてほしい」

「明日から使えるようなノウハウを教えてほしい」

■要するに、全体の体系や理論と、現実的な行動までの道筋が、見えていな
いわけです。

どんな立派な理論や原理原則も、実際の行動に結びつかなければ意味があり
ません。

だから「具体的なことがわからない」という声は聞き捨てなりません。

私は評論家ではなくコンサルタントですから、そういう声には真摯に向き合
わなければなりません。

■ただし、多様な人たちが集まるセミナーや研修の場において、一人一人具
体的な行動策を示すわけにはいきません。

だから、なるべく具体的な事例や、演習の時間を入れて、現実的なものとし
て実感し、応用できるような工夫を凝らします。

あるいは、理論から行動に結びつけるまでの手順を細かく説明して、プラモ
デルを組み立てるかのように、行動設計ができるようにします。

実際のところ、それで理解していただける方もおられますし、それでも分か
らんと言う方もおられます。

私の伝え方が拙いということですな...

■自分の無能力は棚に上げますが、どうも最近、理論から実践への途中のプ
ロセスをすっ飛ばそうとする人が多いような気がしてなりません。

「自分のビジネスにあてはまらない」「自分のビジネスでは、そんなことは
しない」そう言って、途中から考えることを放棄するような人たちです。

プラモデルでいうと、パーツにバリがあるからやすりで削って使おうとは思
わずに「不良品だから作るの止めや!」と放り出す人ですね^^;

そういう人は「今の話を自分のビジネスに置き換えたらどうなるだろう」と
は考えずに「手っ取り早く、どうすればいいのかを教えてくれ」となるらしい。

いわゆる「実践ノウハウ」待望です。

このメルマガを何度か読んでいただいている方ならお分かりかも知れませ
んが、私は「実践ノウハウ」なるものを心理テクニックと同じぐらい信用し
ていません。

特定の現場で特殊な状況において使うノウハウを一般向けに伝えることなど
無意味です。

普遍的な情報として伝えるためには、ある程度抽象化しなければならず、そ
の抽象化した情報を活用できる人にならば、原理原則を伝えた方がずっと有
益だからです。

■それでも「実践ノウハウ」を伝えるコンサルタントは未だに多いのでしょ
うかね。

需要があるので、多いのでしょう。

私が独立した7~8年前は、実践コンサルタントの全盛だったような気がし
ます。

「事業所を訪問する時は、まず営業車が駐車場にあるかどうか見てからにせ
よ」とか「売り込んだら嫌がられるから、アンケートを申し込む体裁でいけ」
とか言う人がいっぱいいました。

それはまだ良心的な方です。ひどいのは、お涙頂戴のたとえ話(たいていは、
苦労の末、大逆転で成功した話)をした後に「この手帳を使えば成功する」
とか「この会に参加すれば儲かる」とか平気で言う人もいました。

こうなれば、理論と実践が論理的に結びつかないことを逆手にとった一種の
詐欺商法です。

■いささか極端な例でしたけど、下の記事を読むと、やはり時代は端的、単
純、小手先のものが喜ばれるようになっているのだろうかと思ってしまいます。

「本に書かれた「処方箋」に頼ることで自分の知らない世界を理解する力が
身につけられるか」
http://diamond.jp/articles/-/15687

この記事を書いたのは精神科医の香山リカさんです。

よくマスコミに登場する方ですが、精神科医に求められることも、背景や前
提としての理論や解釈ではなく「どうすればいいか」というノウハウになっ
てきているらしい。

この記事にあるように、理屈は不要、「処方箋」さえあればいい、という風
潮が一般的になれば、深く考えたり工夫したりすることがなくなり、一部の
考える人たちの思うがままにコントロールされる状態となります。

とても危険なことだと思います。

■一方で、従来の心理学や精神分析学の「解釈や分析」は、我々の生活に殆
ど役に立たないので、見直さなければならないという批判も根強いようです。

下記は、いかにもお手軽な雰囲気の本ですが、著者の従来の心理学に対する
メッセージは辛辣です。

「フシギなくらい見えてくる!本当にわかる心理学」植木理恵著
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4534046839/lanchesterkan-22/ref=nosim

この本によると、心理学は「深層心理学」と「実験心理学」に分けられるの
だそうです。

我々、というか私が慣れ親しんだのは、フロイトやユングが提唱した深層心
理学のようです。

そこでは、精神を意識と無意識に分けて、意識の及ばない無意識の領域が、
人間の様々な行動や感情に大きな影響を及ぼすとしました。

夢の中に無意識の思いや欲望が表れるのだという説は、とても興味深く、夢
分析の本などをワクワクしながら読んだ記憶があります。

しかし、フロイトやユングの学説が、我々の生活に直接どのような影響を与
えるのかと言われれば、答えにくい。

確かに無意識の抑圧などという考えは魅惑的であり、自分の精神を見直すた
めめの一視点ではありますが、実生活への影響と言う意味では、文学や神話
に近いものかも知れません。

植木理恵氏は「無意識や自我の存在を科学的に証明した人はいない」だから
「深層心理学は科学ではない」と言います。

科学ではないから、解釈に止まり、応用するに至らない。応用するためには、
科学でなければならない。

だから、実験心理学は「科学的に証明されたものしか認めない」という態度
をとります。

実験心理学は、化学や物理学のように、実生活に応用できるような科学であ
ることを目指しているようです。

■例えば、無軌道に電気ショックを与えた犬は無気力になるが、解除ボタン
を示した上で同じ電気ショックを与えた犬は無気力にならないそうです。

そこから動物は、自分では解決できない事態を経験した時に無気力になると
いうことが推察されます。

あるいは、報酬を与えてパズルに挑戦させたグループと、無報酬でパズルに
挑戦させたグループでは、無報酬の方が意欲が高いという実験結果があるそ
うです。

そこから、人間は外的よりも内的なモチベーションにより強く意欲を掻き立
てられると推察されます。

■要するに、様々なシチュエーションで実験や観察を重ねて、演繹的に人間
心理の動きを理解していこうというのが実験心理学です。

まだ歴史が浅いので、深層心理学のような体系を組み立てるところまでいっ
ていないのかもしれません。

しかし、こういう心理学なら、様々な場面で活かしやすいですね。

例えば、どういう状況になれば人間は勉強したくなるのか?

どういう状況になれば記憶力は高まるのか?

どういう状況になれば助け合うようになるのか?

精神疾患の治療だけではなく、我々の生活やビジネスの場面で、端的に使え
るような気がします。

■同じような動きは、経済学の世界でも起こっています。

1月16日の日経新聞に掲載されていた「行動経済学」は、上の実験心理学の
考え方に近いのではないでしょうか。

「人間のクセ 政策に生かす」
http://s.nikkei.com/Ag3VI4

要するに、人間は合理的に行動するとは限らない。解決策を提示されても、
今のままがいいと行動に移らない場合もある。だから、人間の心理の綾を読
んで、行動を促すという方法をここに書いてあります。

これらのことを考えると、やはり、心理学の研究成果は、ビジネスやその他
様々なところに有効に生かせるようですね。

■こうなると、営業において心理学を活用しようという試みが、あながち胡
散臭いものばかりでもないと考えなければなりません。

例えば、店舗販売に心理学を活用しようという例。

「目からウロコ 販売心理学 93の法則」
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4785502142/lanchesterkan-22/ref=nosim

男性に比べて、女性は長時間買い物をする傾向がある。だから、女性をター
ゲットにした店は、長時間いても飽きない店作りが必要。これに対して男性
をターゲットにした店は、短時間で買いやすい店作りにすること。

音楽は声が入ったものよりも、曲のみのものの方が感情に訴える。だからB
GMは、インストロメンタルにすべき。

などといった法則らしきものが書きつねられているわけです。

あるいは営業マンが使う心理テクニック。

「トップ営業マンが使っている買わせる営業心理術」
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4756914373/lanchesterkan-22/ref=nosim

例えば、人は未完成なものに惹かれる傾向がある(ツァイガルニック効果)
ので、アプローチトークはわざとたどたどしさを残しておく。

人は一部分を見ただけで全体の印象を決める(ラベリング効果)ので、第一
印象や提案書の装丁には気を使うこと。などです。

■ただ、ここに紹介しておいてナンですが、こうした心理学や心理術の活用
は、あくまで実践ノウハウの類であり、小手先の技術です。

こうしたテクニックに頼って一時的に業績改善できたとしても、長続きしま
せん。

そもそも努力の方向性が間違っているかも知れないからです。

使う側はそれを十分に承知しておかなければなりません。

■実践ノウハウは、道具を取り替えるだけの作業で済み、方向性から練り直
す必要がないので手軽です。

方向性を変えるということは、これまでの自分の経験や方針を一部否定する
ことでもあり、痛みを伴います。

もしかすると、勉強をしなおしたり、経験の浅い部下と同じ土俵で戦わなけ
ればならない事態になるかも知れません。

厳しい言い方をすると、努力はしないけど、今よりよくなりたいという虫の
いい心性です。

それが人情といえばそうなのですが、結局は、改革が進まずに時間が過ぎて
いきます。

■今日の話の結論としては、心理学はどうやらビジネスに応用できそうだ。

ただし、それは実践のフェーズにおいてである。

戦略や仕組みづくりは、きっちりと理解して、作りこまなければならない。

というものです。

変に心理テクニックに頼ると、表面的な効き目があるだけに、もっと大きな
改革を遅らせてしまう恐れがあります。

「楽して成果を得たい」という欲望は強いので、相当注意しておかなければ
ならないのです。

■経営コンサルティングの現場は、まさに原理原則や理論を現実的な行動に
結びつけることに費やされます。

私は「営業戦略の立案」をお手伝いすることが多いのですが、実を言うと戦
略づくりはそれほど難しいものではありません。

というか、ある程度、知識のある者なら、似たような戦略を作るはずです。

時間がかかるし、難しいのは、その戦略を具体的な行動に結びつける作業です。

■仕組みを機能させるためには、行動の手順を作りこまなければなりません。

集客、リスト作り、訪問の準備、訪問...それぞれに細かな手順があります。

「そんなゴチャゴチャ考えてる間に、お客さんのとこ行って、どないでっか
ーーって言うたら、何とかなるんや」と言えば楽ですが、それは戦略に沿っ
た仕組みを作りこんで、十分に理解したベテラン営業だけに当てはまるやり
方です。

ここをすっ飛ばしたら、いつか「どうも最近、うまくいかんな」という時が
きて、やがて「催眠術でお客さんを操れんかな」と妄想するかつての私のよ
うになってしまいます^^;



(2012年1月26日メルマガより)


■最初からこんなことを言ってナンですが、
私は心理学の類が嫌いです。

いや、違う。心理学は好きですね^^

心理学を使って、表面的に相手を操ろうとする似非占い師の類が嫌いです。

■例えばこういうことがありました。

あるコンサルタントの方と初めて会った時に握手を求められました

芝居がかったことをするなあ。。というのは、その人が両手を使って、ちょ
っと変わった握手の仕方をされたからです。

その時は、何か不思議な握手をする人だなあと思ったぐらいでした。

ところが、しばらくして、何の気なしに心理テクニックの本を読んでいると、
その変な握手の仕方が紹介されていました。

それは「相手を心理的に威圧し、支配下に置く握手」なんだそうです^^;

一気にそのコンサルタントが胡散臭い奴に思えたことは言うまでもありません。

■そのコンサルタントが心理テクニックを使ったのか、偶然だったのか、そ
れは分かりません。まあ、多分、テクニックを使ったつもりなんでしょうね。

相当下手な使い方です。

私を操るどことか、胡散臭い奴というレッテルを貼られているわけですから、
そのテクニック本に操られているんですな。

これはまだかわいい方です。

伝聞情報ですが、ある著名なコンサルタントで、そうした心理や感情の操作
に長けている人がいるそうです。

何とかのカリスマとか言われている人です。

その人は裏では「正しいことなど言う必要はない。皆が信じたいことをもっ
ともらしく言っておけばいい」と言っているとか。。。

伝聞情報ではありますが、その人のことも胡散臭い奴だなあと私は見ています。

■こんな詐欺師のような使い方でなくても、心理テクニックを使えたらいい
なあという場面はあるのではないでしょうか。

私も、営業マン時代は、営業に催眠術のテクニックを使えないだろうか、と
思ったりもしました^^;

売れる営業は手のひらをヒラヒラさせて相手を催眠状態にしてから販売し
ている」ということが書いてあるバカな本もありましたし。

こういうのは、妄想の類ですね。

■たぶん、営業など仕事に心理テクニックを使おうと考える気持ちの中には、
本来必要なプロセスを省略しようという思いがあるのでしょうね。

ありていに言えば、楽したい、という思いです。

「営業の秘訣は、なるべく手間がかからない仕組みを作ること」といえばも
っともらしいですが、営業経験のない人がそういう話に飛びつくのは危険だ
と思います。

どこか「1日3時間働くだけで年収1億円」とか「預けておくだけで年利3
0%」などという胡散臭い話につながるかも知れませんので、気を付けなけ
ればなりません。

■このメルマガで何度か買いたかもしれませんが、セミナーや研修をやって
いて聞く「具体的なことを教えてほしい」という声も気になっています。

受講者から直接言われることもありますし、主催者から言われることもあり
ます。

いわく「原理原則は聞き飽きた。だからどうすればいいんだ?」

「理屈はいいから、どうすれば売上が上がるのか教えてほしい」

「明日から使えるようなノウハウを教えてほしい」

■要するに、全体の体系や理論と、現実的な行動までの道筋が、見えていな
いわけです。

どんな立派な理論や原理原則も、実際の行動に結びつかなければ意味があり
ません。

だから「具体的なことがわからない」という声は聞き捨てなりません。

私は評論家ではなくコンサルタントですから、そういう声には真摯に向き合
わなければなりません。

■ただし、多様な人たちが集まるセミナーや研修の場において、一人一人具
体的な行動策を示すわけにはいきません。

だから、なるべく具体的な事例や、演習の時間を入れて、現実的なものとし
て実感し、応用できるような工夫を凝らします。

あるいは、理論から行動に結びつけるまでの手順を細かく説明して、プラモ
デルを組み立てるかのように、行動設計ができるようにします。

実際のところ、それで理解していただける方もおられますし、それでも分か
らんと言う方もおられます。

私の伝え方が拙いということですな...

■自分の無能力は棚に上げますが、どうも最近、理論から実践への途中のプ
ロセスをすっ飛ばそうとする人が多いような気がしてなりません。

「自分のビジネスにあてはまらない」「自分のビジネスでは、そんなことは
しない」そう言って、途中から考えることを放棄するような人たちです。

プラモデルでいうと、パーツにバリがあるからやすりで削って使おうとは思
わずに「不良品だから作るの止めや!」と放り出す人ですね^^;

そういう人は「今の話を自分のビジネスに置き換えたらどうなるだろう」と
は考えずに「手っ取り早く、どうすればいいのかを教えてくれ」となるらしい。

いわゆる「実践ノウハウ」待望です。

このメルマガを何度か読んでいただいている方ならお分かりかも知れませ
んが、私は「実践ノウハウ」なるものを心理テクニックと同じぐらい信用し
ていません。

特定の現場で特殊な状況において使うノウハウを一般向けに伝えることなど
無意味です。

普遍的な情報として伝えるためには、ある程度抽象化しなければならず、そ
の抽象化した情報を活用できる人にならば、原理原則を伝えた方がずっと有
益だからです。

■それでも「実践ノウハウ」を伝えるコンサルタントは未だに多いのでしょ
うかね。

需要があるので、多いのでしょう。

私が独立した7~8年前は、実践コンサルタントの全盛だったような気がし
ます。

「事業所を訪問する時は、まず営業車が駐車場にあるかどうか見てからにせ
よ」とか「売り込んだら嫌がられるから、アンケートを申し込む体裁でいけ」
とか言う人がいっぱいいました。

それはまだ良心的な方です。ひどいのは、お涙頂戴のたとえ話(たいていは、
苦労の末、大逆転で成功した話)をした後に「この手帳を使えば成功する」
とか「この会に参加すれば儲かる」とか平気で言う人もいました。

こうなれば、理論と実践が論理的に結びつかないことを逆手にとった一種の
詐欺商法です。

■いささか極端な例でしたけど、下の記事を読むと、やはり時代は端的、単
純、小手先のものが喜ばれるようになっているのだろうかと思ってしまいます。

「本に書かれた「処方箋」に頼ることで自分の知らない世界を理解する力が
身につけられるか」
http://diamond.jp/articles/-/15687

この記事を書いたのは精神科医の香山リカさんです。

よくマスコミに登場する方ですが、精神科医に求められることも、背景や前
提としての理論や解釈ではなく「どうすればいいか」というノウハウになっ
てきているらしい。

この記事にあるように、理屈は不要、「処方箋」さえあればいい、という風
潮が一般的になれば、深く考えたり工夫したりすることがなくなり、一部の
考える人たちの思うがままにコントロールされる状態となります。

とても危険なことだと思います。

■一方で、従来の心理学や精神分析学の「解釈や分析」は、我々の生活に殆
ど役に立たないので、見直さなければならないという批判も根強いようです。

下記は、いかにもお手軽な雰囲気の本ですが、著者の従来の心理学に対する
メッセージは辛辣です。

「フシギなくらい見えてくる!本当にわかる心理学」植木理恵著
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4534046839/lanchesterkan-22/ref=nosim

この本によると、心理学は「深層心理学」と「実験心理学」に分けられるの
だそうです。

我々、というか私が慣れ親しんだのは、フロイトやユングが提唱した深層心
理学のようです。

そこでは、精神を意識と無意識に分けて、意識の及ばない無意識の領域が、
人間の様々な行動や感情に大きな影響を及ぼすとしました。

夢の中に無意識の思いや欲望が表れるのだという説は、とても興味深く、夢
分析の本などをワクワクしながら読んだ記憶があります。

しかし、フロイトやユングの学説が、我々の生活に直接どのような影響を与
えるのかと言われれば、答えにくい。

確かに無意識の抑圧などという考えは魅惑的であり、自分の精神を見直すた
めめの一視点ではありますが、実生活への影響と言う意味では、文学や神話
に近いものかも知れません。

植木理恵氏は「無意識や自我の存在を科学的に証明した人はいない」だから
「深層心理学は科学ではない」と言います。

科学ではないから、解釈に止まり、応用するに至らない。応用するためには、
科学でなければならない。

だから、実験心理学は「科学的に証明されたものしか認めない」という態度
をとります。

実験心理学は、化学や物理学のように、実生活に応用できるような科学であ
ることを目指しているようです。

■例えば、無軌道に電気ショックを与えた犬は無気力になるが、解除ボタン
を示した上で同じ電気ショックを与えた犬は無気力にならないそうです。

そこから動物は、自分では解決できない事態を経験した時に無気力になると
いうことが推察されます。

あるいは、報酬を与えてパズルに挑戦させたグループと、無報酬でパズルに
挑戦させたグループでは、無報酬の方が意欲が高いという実験結果があるそ
うです。

そこから、人間は外的よりも内的なモチベーションにより強く意欲を掻き立
てられると推察されます。

■要するに、様々なシチュエーションで実験や観察を重ねて、演繹的に人間
心理の動きを理解していこうというのが実験心理学です。

まだ歴史が浅いので、深層心理学のような体系を組み立てるところまでいっ
ていないのかもしれません。

しかし、こういう心理学なら、様々な場面で活かしやすいですね。

例えば、どういう状況になれば人間は勉強したくなるのか?

どういう状況になれば記憶力は高まるのか?

どういう状況になれば助け合うようになるのか?

精神疾患の治療だけではなく、我々の生活やビジネスの場面で、端的に使え
るような気がします。

■同じような動きは、経済学の世界でも起こっています。

1月16日の日経新聞に掲載されていた「行動経済学」は、上の実験心理学の
考え方に近いのではないでしょうか。

「人間のクセ 政策に生かす」
http://s.nikkei.com/Ag3VI4

要するに、人間は合理的に行動するとは限らない。解決策を提示されても、
今のままがいいと行動に移らない場合もある。だから、人間の心理の綾を読
んで、行動を促すという方法をここに書いてあります。

これらのことを考えると、やはり、心理学の研究成果は、ビジネスやその他
様々なところに有効に生かせるようですね。

■こうなると、営業において心理学を活用しようという試みが、あながち胡
散臭いものばかりでもないと考えなければなりません。

例えば、店舗販売に心理学を活用しようという例。

「目からウロコ 販売心理学 93の法則」
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4785502142/lanchesterkan-22/ref=nosim

男性に比べて、女性は長時間買い物をする傾向がある。だから、女性をター
ゲットにした店は、長時間いても飽きない店作りが必要。これに対して男性
をターゲットにした店は、短時間で買いやすい店作りにすること。

音楽は声が入ったものよりも、曲のみのものの方が感情に訴える。だからB
GMは、インストロメンタルにすべき。

などといった法則らしきものが書きつねられているわけです。

あるいは営業マンが使う心理テクニック。

「トップ営業マンが使っている買わせる営業心理術」
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4756914373/lanchesterkan-22/ref=nosim

例えば、人は未完成なものに惹かれる傾向がある(ツァイガルニック効果)
ので、アプローチトークはわざとたどたどしさを残しておく。

人は一部分を見ただけで全体の印象を決める(ラベリング効果)ので、第一
印象や提案書の装丁には気を使うこと。などです。

■ただ、ここに紹介しておいてナンですが、こうした心理学や心理術の活用
は、あくまで実践ノウハウの類であり、小手先の技術です。

こうしたテクニックに頼って一時的に業績改善できたとしても、長続きしま
せん。

そもそも努力の方向性が間違っているかも知れないからです。

使う側はそれを十分に承知しておかなければなりません。

■実践ノウハウは、道具を取り替えるだけの作業で済み、方向性から練り直
す必要がないので手軽です。

方向性を変えるということは、これまでの自分の経験や方針を一部否定する
ことでもあり、痛みを伴います。

もしかすると、勉強をしなおしたり、経験の浅い部下と同じ土俵で戦わなけ
ればならない事態になるかも知れません。

厳しい言い方をすると、努力はしないけど、今よりよくなりたいという虫の
いい心性です。

それが人情といえばそうなのですが、結局は、改革が進まずに時間が過ぎて
いきます。

■今日の話の結論としては、心理学はどうやらビジネスに応用できそうだ。

ただし、それは実践のフェーズにおいてである。

戦略や仕組みづくりは、きっちりと理解して、作りこまなければならない。

というものです。

変に心理テクニックに頼ると、表面的な効き目があるだけに、もっと大きな
改革を遅らせてしまう恐れがあります。

「楽して成果を得たい」という欲望は強いので、相当注意しておかなければ
ならないのです。

■経営コンサルティングの現場は、まさに原理原則や理論を現実的な行動に
結びつけることに費やされます。

私は「営業戦略の立案」をお手伝いすることが多いのですが、実を言うと戦
略づくりはそれほど難しいものではありません。

というか、ある程度、知識のある者なら、似たような戦略を作るはずです。

時間がかかるし、難しいのは、その戦略を具体的な行動に結びつける作業です。

■仕組みを機能させるためには、行動の手順を作りこまなければなりません。

集客、リスト作り、訪問の準備、訪問...それぞれに細かな手順があります。

「そんなゴチャゴチャ考えてる間に、お客さんのとこ行って、どないでっか
ーーって言うたら、何とかなるんや」と言えば楽ですが、それは戦略に沿っ
た仕組みを作りこんで、十分に理解したベテラン営業だけに当てはまるやり
方です。

ここをすっ飛ばしたら、いつか「どうも最近、うまくいかんな」という時が
きて、やがて「催眠術でお客さんを操れんかな」と妄想するかつての私のよ
うになってしまいます^^;



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