子供に自慢できる人生を送りたいなら

2016.02.11

(2016年2月11日メルマガより)



■私事ですが、今年になって講演活動が増えています。

これはやはり昨年出した著書の影響です。

「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語

先日、ある団体で招かれたセミナーで、サーモスの話をさせていただきました。

その際、参加されたあ経営者の方からこう言われました。

「うちの会社は、戦略も仕組みも実践指導も全部やってきた。だけど何か足りないという気がしていた。その何かが、今日の話にはあった」

これほどうれしい言葉はなかったです。

■だけど「足りなかった何か」とはなんでしょうか。

言葉にするのは難しいですね。

でも、あえていうと、みなを一丸にするための要素とでもいいましょうか。

要するに、「サーモスの人たちは、なぜ劣悪な環境下でも前向きさを維持して、一体になれたのか」ということです。

言葉にしても難しい。それってどうすればいいのでしょうか。

今回のメルマガは、その難しいことを書いています。

実は、相当の時間をかけて書いております^^;


===============================================================


■昨年、『「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語
を上梓してから、その内容をテーマとしたセミナーをさせていただくことが増えています。

その際、よくいただく質問です。

「サーモスではなぜ社員が一丸となれたのですか?」

おそらくその裏には、うちの会社では、みんなバラバラだよ。とか、あんなに皆が一丸になるわけないよ。という気持ちがあるのでしょうか。

■その気持ち、わかります。

サーモスだって、決して一枚岩ではありませんでした。

抵抗勢力もいましたし、無関心な人たちも多かったです。

熱くなっていた一部のメンバーでさえ、モチベーションは上がったり下がったりでした。

というか、わりと淡々とやっていたように思います。

それが、チームがバラバラにならず、一応にもまとまっていられたのは、それが「物語」だからです。

■などというと、身も蓋もないことを言っているように聞こえますかね^^;

でも本当です。

「物語」は、人を結びつけ、熱くさせるものです。

当時から私たちは、物語に乗っかっていたと思います。

■私は、物語を「自分と他をつなぐもの」だと考えています。

たとえば優秀な営業は、無機質なものと顧客を結びつけるのが得意です。

求めるもの、必要とするものを顧客に提案するのが営業の役割ですが、ロジックで伝えるだけでは届かないこともあります。

そんなとき、優秀な営業は、情緒に訴える手段を持っています。

それが物語です。それは、情緒や感動やワクワクする気持ち、そうした無意識の部分に働きかけます。

「その商品、頑固すぎて左遷されかけていた技術者が長年の研究を結実させたものですよ」とか。

「創業者が何度も破産をしかけながらも守り抜いてきたのが、このこだわりです」とか。

「最初は誰にも相手にされなかったが、一人の熱烈なファンがブログに書いたことがきっかけで売れるようになった商品だ」とか。

論理的に考えれば、お客さんには関係のないことやんか、ということも、物語という形式で語られれば、心に響くことがあります。

物語が、自分とは関係のない何かと自分をつなぐものだという所以です。

■おそらく人間の本性として、物語という形式を受け入れやすいという特徴があるのでしょう。

神話にしろ、伝説にしろ、民話にしろ、昔から人々が物語を語り継いできたのは、それが世界と個人を結びつけるために必要なものだったからではないでしょうか。

物語は万人の心に届きます。

むしろ論理よりも幅広い範囲の人に届くはずです。

■人は本来、自分を何かに結びつけようとする精神性を持っています。

小さな頃は、母親に依存しています。それから家庭。大きくなれば学校。地域。大人になれば会社。

何かにつながらずに生きている人などいません。

成長の段階によって、結びつくものが変わり、その時折に痛みを覚えながら、人は社会的な存在となっていきます。

(多くの神話が、父殺しをテーマにしているのは、家族から離れて社会に結びつく男子の恐れや痛みを物語化したからだと言われています)

会社でワクワクすることがない。コミットできない。という人は、おそらく、自分と会社を結びつける物語がないのです。

むしろ「あんな会社のために働けるか」というマイナスの物語を持っているのかも知れません。

■サーモスのメンバーは「今は廃業寸前だが、いつかは世界トップ企業になって、ライバル会社や他事業部の連中を見返してやる」という情緒豊かな物語を描きました。

その物語に何人かのメンバーがコミットすることによって、組織は変革するエネルギーを持つことができました。

物語が成就した今、私は「廃業寸前から世界トップ企業になった奇跡」を経験した者と自分を認識しています。

その認識(立ち位置)が自分を支えていると言ってもいいでしょう。

■あの頃のメンバーはその後どうなったのか。

サーモスでそのまま頑張っている人もいます。当時のメンバーは軒並み上級職や幹部になっています。

他の業種に転職して頑張っている人もいます。ある人は、外資系会社のトップ(CEO)になりました。

私のように独立した人もいます。

そして、経営コンサルタントになった私は、「サーモスの奇跡を経験した者が、多くの企業に奇跡を伝播させる」という物語の中に生きています。

なにしろ一度、物語の力を知った者は、それに乗っかることが、人生を豊かにすることを知っていますから。

それぞれが、サーモスでの経験を糧に新たな物語を作っていることでしょう。

■会社人生を充実させたいというならば、ぜひ魅力的な物語を作ってください。

経営者は、社員が気持ちを寄せることができるような魅力的な物語を作って提示してください。

例えば、社是、経営理念、信条、ミッション。

あるいは、社史。

こういったものは、物語の宝庫です。

そこには必ず、豊かで魅力的な物語の要素があるはずです。

社史が会社の書庫に埋もれているならば、もう一度、日に当ててみてください。

きっとオリジナルな物語が見つかります。

なければ、ベテラン社員から、過去の話を聞いて、自分たちの言葉で書き起こしてみてください。

自分たちで、過去と現在と未来を結ぶ物語ができるかも知れません。

■私が思うに、魅力的な物語を作る秘訣は、まずシンプルであることです。

過去にはこんな歴史があった。

現在はこういう状況である。

だから未来はこうなる。なっていたい。

それで十分です。

シンプルな方が、皆が気持ちを寄せることができます。

ディテールを作って、物語を肉付けするのは、それぞれの社員がやればいいのです。

■もう一つの秘訣は、会社の物語と個人の距離が健全であることです。

物語は強力であるゆえに危険性もあります。

公の物語が強くなりすぎると、組織がカルト化してしまうかも知れません。

特定の宗教やマルチビジネスにはまりこんでいる人たちを思い浮かべてください)

だから、ブラック企業のようにならないようにしなければなりません。

コンプライアンスの遵守はもちろんですし、定期的に客観的な視点からの点検が必要です。

■私は、自分の子供に、何度もサーモスのことを話してきました。

かつて廃業寸前だった小さな事業部にいた父は、人生の一時期、それなりに頑張って、会社が世界トップ企業になるプロセスの当事者の一人となったのだと。

子供に自慢できるような会社人生でよかったと思います。

(「聞き飽きた」とたまに言われますが^^;)

サーモスの奇跡をもっと多くの会社で再現したい。

そして、多くの人たちに子供に自慢できるような会社人生だったと言ってほしい。

それが今の私の願いであり、成就しようとしている新たな物語の出発点です。

その思いが成就するとき、私の次の物語が完結するのだと考えています。



(2016年2月11日メルマガより)



■私事ですが、今年になって講演活動が増えています。

これはやはり昨年出した著書の影響です。

「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語

先日、ある団体で招かれたセミナーで、サーモスの話をさせていただきました。

その際、参加されたあ経営者の方からこう言われました。

「うちの会社は、戦略も仕組みも実践指導も全部やってきた。だけど何か足りないという気がしていた。その何かが、今日の話にはあった」

これほどうれしい言葉はなかったです。

■だけど「足りなかった何か」とはなんでしょうか。

言葉にするのは難しいですね。

でも、あえていうと、みなを一丸にするための要素とでもいいましょうか。

要するに、「サーモスの人たちは、なぜ劣悪な環境下でも前向きさを維持して、一体になれたのか」ということです。

言葉にしても難しい。それってどうすればいいのでしょうか。

今回のメルマガは、その難しいことを書いています。

実は、相当の時間をかけて書いております^^;


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■昨年、『「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語
を上梓してから、その内容をテーマとしたセミナーをさせていただくことが増えています。

その際、よくいただく質問です。

「サーモスではなぜ社員が一丸となれたのですか?」

おそらくその裏には、うちの会社では、みんなバラバラだよ。とか、あんなに皆が一丸になるわけないよ。という気持ちがあるのでしょうか。

■その気持ち、わかります。

サーモスだって、決して一枚岩ではありませんでした。

抵抗勢力もいましたし、無関心な人たちも多かったです。

熱くなっていた一部のメンバーでさえ、モチベーションは上がったり下がったりでした。

というか、わりと淡々とやっていたように思います。

それが、チームがバラバラにならず、一応にもまとまっていられたのは、それが「物語」だからです。

■などというと、身も蓋もないことを言っているように聞こえますかね^^;

でも本当です。

「物語」は、人を結びつけ、熱くさせるものです。

当時から私たちは、物語に乗っかっていたと思います。

■私は、物語を「自分と他をつなぐもの」だと考えています。

たとえば優秀な営業は、無機質なものと顧客を結びつけるのが得意です。

求めるもの、必要とするものを顧客に提案するのが営業の役割ですが、ロジックで伝えるだけでは届かないこともあります。

そんなとき、優秀な営業は、情緒に訴える手段を持っています。

それが物語です。それは、情緒や感動やワクワクする気持ち、そうした無意識の部分に働きかけます。

「その商品、頑固すぎて左遷されかけていた技術者が長年の研究を結実させたものですよ」とか。

「創業者が何度も破産をしかけながらも守り抜いてきたのが、このこだわりです」とか。

「最初は誰にも相手にされなかったが、一人の熱烈なファンがブログに書いたことがきっかけで売れるようになった商品だ」とか。

論理的に考えれば、お客さんには関係のないことやんか、ということも、物語という形式で語られれば、心に響くことがあります。

物語が、自分とは関係のない何かと自分をつなぐものだという所以です。

■おそらく人間の本性として、物語という形式を受け入れやすいという特徴があるのでしょう。

神話にしろ、伝説にしろ、民話にしろ、昔から人々が物語を語り継いできたのは、それが世界と個人を結びつけるために必要なものだったからではないでしょうか。

物語は万人の心に届きます。

むしろ論理よりも幅広い範囲の人に届くはずです。

■人は本来、自分を何かに結びつけようとする精神性を持っています。

小さな頃は、母親に依存しています。それから家庭。大きくなれば学校。地域。大人になれば会社。

何かにつながらずに生きている人などいません。

成長の段階によって、結びつくものが変わり、その時折に痛みを覚えながら、人は社会的な存在となっていきます。

(多くの神話が、父殺しをテーマにしているのは、家族から離れて社会に結びつく男子の恐れや痛みを物語化したからだと言われています)

会社でワクワクすることがない。コミットできない。という人は、おそらく、自分と会社を結びつける物語がないのです。

むしろ「あんな会社のために働けるか」というマイナスの物語を持っているのかも知れません。

■サーモスのメンバーは「今は廃業寸前だが、いつかは世界トップ企業になって、ライバル会社や他事業部の連中を見返してやる」という情緒豊かな物語を描きました。

その物語に何人かのメンバーがコミットすることによって、組織は変革するエネルギーを持つことができました。

物語が成就した今、私は「廃業寸前から世界トップ企業になった奇跡」を経験した者と自分を認識しています。

その認識(立ち位置)が自分を支えていると言ってもいいでしょう。

■あの頃のメンバーはその後どうなったのか。

サーモスでそのまま頑張っている人もいます。当時のメンバーは軒並み上級職や幹部になっています。

他の業種に転職して頑張っている人もいます。ある人は、外資系会社のトップ(CEO)になりました。

私のように独立した人もいます。

そして、経営コンサルタントになった私は、「サーモスの奇跡を経験した者が、多くの企業に奇跡を伝播させる」という物語の中に生きています。

なにしろ一度、物語の力を知った者は、それに乗っかることが、人生を豊かにすることを知っていますから。

それぞれが、サーモスでの経験を糧に新たな物語を作っていることでしょう。

■会社人生を充実させたいというならば、ぜひ魅力的な物語を作ってください。

経営者は、社員が気持ちを寄せることができるような魅力的な物語を作って提示してください。

例えば、社是、経営理念、信条、ミッション。

あるいは、社史。

こういったものは、物語の宝庫です。

そこには必ず、豊かで魅力的な物語の要素があるはずです。

社史が会社の書庫に埋もれているならば、もう一度、日に当ててみてください。

きっとオリジナルな物語が見つかります。

なければ、ベテラン社員から、過去の話を聞いて、自分たちの言葉で書き起こしてみてください。

自分たちで、過去と現在と未来を結ぶ物語ができるかも知れません。

■私が思うに、魅力的な物語を作る秘訣は、まずシンプルであることです。

過去にはこんな歴史があった。

現在はこういう状況である。

だから未来はこうなる。なっていたい。

それで十分です。

シンプルな方が、皆が気持ちを寄せることができます。

ディテールを作って、物語を肉付けするのは、それぞれの社員がやればいいのです。

■もう一つの秘訣は、会社の物語と個人の距離が健全であることです。

物語は強力であるゆえに危険性もあります。

公の物語が強くなりすぎると、組織がカルト化してしまうかも知れません。

特定の宗教やマルチビジネスにはまりこんでいる人たちを思い浮かべてください)

だから、ブラック企業のようにならないようにしなければなりません。

コンプライアンスの遵守はもちろんですし、定期的に客観的な視点からの点検が必要です。

■私は、自分の子供に、何度もサーモスのことを話してきました。

かつて廃業寸前だった小さな事業部にいた父は、人生の一時期、それなりに頑張って、会社が世界トップ企業になるプロセスの当事者の一人となったのだと。

子供に自慢できるような会社人生でよかったと思います。

(「聞き飽きた」とたまに言われますが^^;)

サーモスの奇跡をもっと多くの会社で再現したい。

そして、多くの人たちに子供に自慢できるような会社人生だったと言ってほしい。

それが今の私の願いであり、成就しようとしている新たな物語の出発点です。

その思いが成就するとき、私の次の物語が完結するのだと考えています。



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