儲ける方法をタネ明かしする

2012.08.23

(2012年8月23日メルマガより)


■前回に引き続き、ビジネスモデルの話をしたいと思います。


今回参考にした本は「なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編」です。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4532318211/lanchesterkan-22/ref=nosim

ちなみに、この本は「なぜ、あの会社は儲かるのか?」の続編です。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4532194989/lanchesterkan-22/ref=nosim

前著は、主に会計の視点から、企業の経営戦略やビジネスモデルについて論じるもので、
とても分かりやすく、刺激になる内容でした。

今回は、副題の通り、ビジネスモデルそのものをテーマに取り上げており、やはり良著です。

■少し基本的なことを書かせていただきます。回りくどくなるかも知れませんが、お許し
ください。

企業の目的が収益を上げることだとすれば、その目的を直接達成するのは、現場の従業員
一人一人です。

端的にいうと、現場に出ている営業が、売上を上げない限り、企業に収益は発生しません。

店舗型のビジネスであれば店頭に立つ者、ネット型のビジネスであればサイト運営をする
者、顧客対応をする者、つまり顧客に直に接する者です。

売上の出所が顧客である限り、顧客に近い者が収益の鍵を握っていることは当然です。

■だから、現場に近い者が、理屈はどうあれ、行動を起こさなければならない。

現場に立つ人間が、自己目標を立て、自己管理し、モチベーションを上げて、与えられた
仕事を一所懸命に頑張っているならば、それは健全な組織の姿であるといえます。

ただし、それだけでは、組織は維持できません。

今、良くても、将来もそのまま良いままであるとは限りません。それどころか、明日突然、
変調が訪れるかも知れません。

今、調子がいいからといって、流れに任せるだけでいいならば、マネージャーは不要にな
ってしまいます。

マネージャーは、プレーヤーと一緒になって闇雲に頑張る、というだけでは、役割を果た
したことにはなりません。

一見、うまくいっていると思える組織の中でも、小さな綻びや変調の兆しがあるかも知れ
ません。

あるいは、もっと効率を高められるようなやり方があるかも知れません。

それを見極めて、必要であれば修正して、より高い効率性で企業目標を達成することこそ
が、マネージャーの仕事となります。

■以前、ある経営者が「従業員を頑張らせるからには、収益を上げなければならない」と
いう発言をしており、大変感心したことがありました。

「従業員一丸となって頑張り、収益を上げよう」と言っているのではありません。「頑張
らせるからには、収益を上げなければならない」と言っているのです。

つまりこの経営者は「ある一定の方法で頑張れば、収益が上がる仕組み」を作ることは経
営者の責任である。と言っているわけです。

この「収益が上がる仕組み」のことを、ビジネスモデルを呼んでいます。

■一心不乱に頑張れば、必ず報われる、というのは残念ながら間違いです。

頑張って報われたとすれば、それは頑張りが報われるような仕組みがあったということで
す。(そうでなければ、単なるラッキーです)

正直にいって、現場に立つ者は、そこまで考える余裕はないかも知れない。現場で顧客に
接するということは、実に多くの能力を要することだからです。

私は現場に立つ営業の様子を見ることが多いのですが、顧客対応がマニュアル通りいくこ
となど稀の稀。たいていは、その場で臨機応変の対応を迫られます。

瞬時に判断し、対応しなければならない複雑事が実に多い。

しかも顧客は人間ですから、感情的な軋轢も非常に多い。時によっては人間存在を問い直
したくなるような厄介事にも見舞われます。

そんな現場営業に、全体のことを考えて動け、などといっても混乱するだけかも知れません。

その分、マネージャーが、仕組みと行動が合致しているかどうかをよく見て、必要であれ
ば修正しなければなりません。

プレーヤーからマネージャーになることで、やるべき仕事は大きく変わってしまうのです。

■各企業は、それぞれ「収益を上げる仕組み」を持っています。持っていないと、成立し
ません。

マネージャーになった者は、プレーヤーの時には必ずしも意識しないでよかった仕組みの
全体像を掴まなければなりません。

だからこそ、マネージャーは「収益を上げる仕組み=ビジネスモデル」の基本を学ばなけ
ればならない。

もちろん起業者は、待ったなしで、学ばなければなりません。

■さて「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」では、ビジネスモデルをでき
るだけ分かりやすく図式化しようとしています。

前回も述べましたが、この分野には「プロフィットゾーン経営戦略」という名著が存在し
ます。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4478372667/lanchesterkan-22/ref=nosim

ただし、「プロフィットゾーン経営戦略」の方は、どちらかというと様々なビジネスモデ
ルの羅列にとどまっており、その共通要素や作り方までに言及したものではありませんで
した。

今回の「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」では、その難題に挑戦してい
ます。

■この本は、ビジネスモデルの形を古典的な事業ドメイン(誰に、何を、どのように提供
するのか:WHO、WHAT、HOW)に集約しています。

たとえば、ある化粧品会社は「30歳代の女性に、アンチエイジングという価値を、特殊
なフェイスクリームを通販で販売する」ことで提供しています。

あるいは、ある介護用品の会社は「介護が必要な高齢者のいる家庭に、介護の労力やコス
ト負担を下げるという価値を、必要な介護用品をレンタルする」ことで提供しています。

シンプルで分かりやすい。ビジネスを他人に説明しようとする時、この枠組みにあてはめ
ると容易です。

ただし、これだけだとビジネスを表面的に説明しているに過ぎず、自己紹介程度にしか使
えません。

なぜそのビジネスが成立するのか。数多のライバル企業がいる中で、生き残っていける理
由は何なのか。

その理由が分からなければ、企業はどの方向に向かっていけばいいのかを導き出すことが
できません。

端的にいうと、日本のような成熟市場の中で、企業が収益を上げて、生き残っていけるの
は、他の企業よりも優れた何かがあるからです。

その何かのことをビジネス用語で競争優位性といい、それを作ることこそが、ランチェス
ター戦略の基本である差別化です。

「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」は、事業ドメインという分かりやす
いフレームワークを使って、企業が差別化していくための方法を書いているところに特徴
があります。

■ちなみに差別化と一概にいっても、様々なレベルがあります。形を変えたり、色を変え
たり、名前を変えたりすることも差別化です。

ただし、そのような小手先の差別化は、いくらしたところですぐに真似されてしまって、
無効化されてしまいます。

ところが、ビジネスモデルレベルの差別化は、他社が容易に真似できません。企業の在り
方に関わることですので、経営資源や管理システムを大きく変えなければならなくなるか
らです。

たとえば、化粧品会社の例でいえば、30歳代の女性ではなく、60歳代の女性を顧客と
する。

あるいは、アンチエイジングではなく、美白という価値を提供する。

通販で販売するのではなく、訪問販売でリースする、などといった差別化が考えられます。

いうのは簡単ですが、商品そのものも、価格も、プロモーション手法も、販売ルートも全
て変更しなければならないわけですから、時間とコストがかかります。簡単に真似すると
いうわけにはいきません。

■最も根本的な差別化は、顧客を変えること。事業ドメインの中の「誰に」という部分を
差別化することです。

例えば、地域、顧客層、業種・業態などで細かくセグメント分けして、標的とする顧客を
先鋭化していく方法が、一般的な「誰に」の差別化です。

ランチェスター戦略では、地域戦略というカテゴリーの中で、地域を細かく分けて攻略す
る方法を提示していますが、これも「誰に」の差別化の例の一つだといえます。

ちなみに「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」の中では「誰に」という部
分を差別化する方法として、以下の2つをあげています。

(1)真の顧客は誰かを考える

表面に出ている顧客ではなく、背後にいる意思決定者をつかむことで差別化を行う。

例えば、青梅慶友病院は、患者だけではなくその家族を顧客と捉えることで差別化し、様
々なサービスを展開しています。患者の介護者に向けたケアサービス、24時間面会対応、
徹底した病状説明、看護婦が患者の家族の顔を覚えて名前で呼びかけることなどです。

あるいは、ハウスウェディングのテイク・アンド・ギブ・ニーズは、結婚する二人だけで
はなく、その家族を顧客と捉えています。

(2)C(消費者)とB(事業者)を変える

CとBを入れ替える。普通、Bを顧客としている企業はCを意識する。Cを顧客としてい
る企業はBを意識することで、差別化する。

例えば、ベネッセは学校に向けて事務用品を販売する会社でしたが、学生に直接教育シス
テムを提供するビジネスにシフトしました。

あるいは、製薬会社のエーザイは、普通の製薬会社がドクターへの営業に力を入れるのに
対して、薬を服用する患者を顧客だと捉えて製品差別化を行っています。

■「何を」という部分を差別化するというと、製品差別化を思い浮かべるかも知れません
が、そのような表面的なものではなく、製品の背後にある価値に着目した差別化でなけれ
ば、すぐに真似されてしまいます。

マーケティングの世界でも、製品の本質は、機能や品質ではなく、顧客に対する便益であ
ると捉えられています。この本質部分を差別化しなければなりません。

「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」では下記の3つをあげています。

(1)製品はサービスの一部だと考える

特に製造業は、サービスは製品の付属であると考える傾向にありますが、実際は、顧客が
求めているのは価値であり物体ではありません。その製品を使って何ができるかにこそ価
値があります。

例えば電気工具メーカーのヒルティ(米)は、電気工具の販売を取りやめて、建築業者に
管理の行き届いた工具をリースするビジネスに切り替えました。

セオドア・レビットのいう「ドリルではなく、穴を売れ」という言葉にそのまま従ったビ
ジネスを展開することで、高収益企業となっています。

(2)できないことを決める

顧客の求めることはすべてする、というのは素晴らしい心がけですが、コストのかかるこ
とですから、大企業との体力勝負になってしまう危険性があります。

そこで敢えて、これはやらない、と決めてしまう差別化の方法です。

「ブルーオーシャン戦略」に取り上げられているので有名な理容のQBハウスは、洗髪し
ないと決めて、10分1000円の散髪を実現しました。

スポーツジムのカーブスは、シャワー室を設置しないことで、同じく低料金を実現してい
ます。

(3)顧客の経済性に着目する

それを使用することで、顧客のトータルコストや、固定費が削減できるようにすることです。

例えば、カーリースやカーシェアなど、自動車を所有するよりも顧客のトータルコストが
減ることを明確にすることで成り立つビジネスです。

あるいは一部の損保会社は、保険金の多寡ではなく、トータルコストやバランスを説明す
ることで、差別化しています。

■「どのように」という部分が、事業ドメインの中では、バラエティに富んだものとなり
ます。

「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」では、次の2つをあげています。

(1)バンドリング、アンバンドリング

バンドリングとは、ビジネスプロセスの全体を範囲とすること、アンバンドリングとは、
ビジネスプロセスの一部だけを範囲とすることです。

プロセスの一部に特化する、あるいは別のプロセスを取り込むことで、大きな差別化が可
能となります。

大手商社は商品の流通だけではなく、製造を押さえてメーカーポジションをとることで、
ビジネスの収益性を高めてきました。

大手広告代理店も広告の仲介だけではなく、コンテンツ作成やマーケティング調査なども
取り込むことで、ビジネスの範囲を広げてきています。

逆に、セブン銀行は、ATM窓口業務に特化することで、手数料収入を稼ぐビジネスです。

電子部品の小口配送に特化して3年でマザーズに上場したチップワンストップという会社
もあります。

(2)経営資源の扱い

従業員の能力を開発し、多能工化することで業績アップを図るという方法もありますし、
逆にマニュアル通りのことしかさせないという方法もあります。

マクドナルドやブックオフは、誰でにでもできることに従業員の業務を絞ることで、効率
化を図っています。

(3)その他

ジレットモデルやレベニューマネジメント、裁定取引など、定番となっているビジネスモ
デルについて言及されていますが、ここでは省略します。

■このように「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」という本は、事業ドメ
インというシンプルなフレームワークの中に、様々な優良企業の儲け方を当てはめていく
という構成となっています。

企業の儲け方は様々で「頑張ったからだ」「思いが強かったからだ」と片付けてしまいた
くなるほど複雑に思える様相も、こうしてフレームワークに当てはめてみると、一定の理
屈に沿っていることが分かります。

要するに、儲けている企業は、どこかで他社と違うビジネスの仕方をしている。それが競
争優位性というものであり、ランチェスター戦略のいう差別化です。

フレームワークにまとめてしまったところが、「プロフィットゾーン経営戦略」よりも整
理されているという印象を与えます。

ただ、実際のところは、それぞれの事例が体系的にMECE(もれなくダブりなく)とし
て提示されているわけではありません。

あくまで、整理の仕方を提示しているだけです。読者には、さらなる事例採取や検証の余
地が残されています。

それはそうと、フレームワークがシンプルなので、ビジネスに当てはめやすい。

我々は、このフレームワークをもとに、「誰に」の部分をどうとらえ直すか。「何を」の
部分をどう発想するか。「どのように」の部分をどう工夫していくかを考えていけばいい
のです。

■もっとも、ビジネスモデルをこれから作るという場合は、前回紹介した「ビジネスモデ
ル・ジェネレーション」の方が、優れていると感じます。

この本では、ビジネスモデルの構成要素を9つに分解していたので、再掲いたします。

(1)まずは顧客セグメント。誰を顧客にするかという選択です。

(2)その選択した顧客に、どのような価値を提供するのか。

(3)価値を提供するためのチャネル。販売ルート。

(4)顧客とどのような関係を築きたいか。

(5)収益の上げ方。どうやって売上を上げるのか。

(6)リソース。ビジネスを行うための自社が持っている資源。

(7)実際の活動。

(8)パートナー。足りない資源を誰と組むことで補うのか。

(9)コスト構造。

これを事業ドメインに当てはめると、「誰に(1)、何を(2)、どのように(3)~
(9)」という形になります。

シンプルで分かりやすいのは、事業ドメインでまとめてしまう方法です。だから、ビジネ
スモデルの整理や説明、分類をする場合には、こちらがいいでしょう。

が、ビジネスモデルを検証したり、再構成したりする場合には、「ビジネスモデル・ジェ
ネレーション」のフレームワークの方が、実効的です。

ついでにいうと、ビジネスモデルの種類を多く知りたいという場合は「プロフィットゾー
ン経営戦略」がおすすめです。

だから「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」「ビジネスモデル・ジェネレ
ーション」「プロフィットゾーン経営戦略」を併せて読まれることをおススメいたします。

■繰り返しになりますが、ビジネスモデルとは、日々の経営活動がどのように収益に結び
ついているのかを分かりやすく提示したものです。

もし一所懸命がんばっても昔ほど収益が上がらないという企業があれば、ビジネスモデル
が有効に機能しているかどうかを疑わなければなりません。

社会情勢の変化でビジネスモデルが現実と解離しつつあるのかも知れません。

特に「誰に」の部分。10年も20年も同じ顧客を標的としているならば、それはもう一
度、選択しなおす必要があるでしょう。

あるいは、強力なライバル企業が出現して、自社の収益を奪っているのかも知れません。

それならば、ライバルのビジネスモデルを研究して、必要な差別化を行わなければなりま
せん。

戦略の見直しとは、ビジネスモデル(儲ける仕組み)を組み直す作業のことだと私は考え
ています。

■戦略とは、企業がどの方向へ進むべきかを示したものです。

それを収益を上げる仕組みとして構成したものがビジネスモデル。

その枠内で、我々は一所懸命に努力するから、報われるのです。

そのシンプルな理屈を忘れないようにしたいと思います。


(2012年8月23日メルマガより)


■前回に引き続き、ビジネスモデルの話をしたいと思います。


今回参考にした本は「なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編」です。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4532318211/lanchesterkan-22/ref=nosim

ちなみに、この本は「なぜ、あの会社は儲かるのか?」の続編です。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4532194989/lanchesterkan-22/ref=nosim

前著は、主に会計の視点から、企業の経営戦略やビジネスモデルについて論じるもので、
とても分かりやすく、刺激になる内容でした。

今回は、副題の通り、ビジネスモデルそのものをテーマに取り上げており、やはり良著です。

■少し基本的なことを書かせていただきます。回りくどくなるかも知れませんが、お許し
ください。

企業の目的が収益を上げることだとすれば、その目的を直接達成するのは、現場の従業員
一人一人です。

端的にいうと、現場に出ている営業が、売上を上げない限り、企業に収益は発生しません。

店舗型のビジネスであれば店頭に立つ者、ネット型のビジネスであればサイト運営をする
者、顧客対応をする者、つまり顧客に直に接する者です。

売上の出所が顧客である限り、顧客に近い者が収益の鍵を握っていることは当然です。

■だから、現場に近い者が、理屈はどうあれ、行動を起こさなければならない。

現場に立つ人間が、自己目標を立て、自己管理し、モチベーションを上げて、与えられた
仕事を一所懸命に頑張っているならば、それは健全な組織の姿であるといえます。

ただし、それだけでは、組織は維持できません。

今、良くても、将来もそのまま良いままであるとは限りません。それどころか、明日突然、
変調が訪れるかも知れません。

今、調子がいいからといって、流れに任せるだけでいいならば、マネージャーは不要にな
ってしまいます。

マネージャーは、プレーヤーと一緒になって闇雲に頑張る、というだけでは、役割を果た
したことにはなりません。

一見、うまくいっていると思える組織の中でも、小さな綻びや変調の兆しがあるかも知れ
ません。

あるいは、もっと効率を高められるようなやり方があるかも知れません。

それを見極めて、必要であれば修正して、より高い効率性で企業目標を達成することこそ
が、マネージャーの仕事となります。

■以前、ある経営者が「従業員を頑張らせるからには、収益を上げなければならない」と
いう発言をしており、大変感心したことがありました。

「従業員一丸となって頑張り、収益を上げよう」と言っているのではありません。「頑張
らせるからには、収益を上げなければならない」と言っているのです。

つまりこの経営者は「ある一定の方法で頑張れば、収益が上がる仕組み」を作ることは経
営者の責任である。と言っているわけです。

この「収益が上がる仕組み」のことを、ビジネスモデルを呼んでいます。

■一心不乱に頑張れば、必ず報われる、というのは残念ながら間違いです。

頑張って報われたとすれば、それは頑張りが報われるような仕組みがあったということで
す。(そうでなければ、単なるラッキーです)

正直にいって、現場に立つ者は、そこまで考える余裕はないかも知れない。現場で顧客に
接するということは、実に多くの能力を要することだからです。

私は現場に立つ営業の様子を見ることが多いのですが、顧客対応がマニュアル通りいくこ
となど稀の稀。たいていは、その場で臨機応変の対応を迫られます。

瞬時に判断し、対応しなければならない複雑事が実に多い。

しかも顧客は人間ですから、感情的な軋轢も非常に多い。時によっては人間存在を問い直
したくなるような厄介事にも見舞われます。

そんな現場営業に、全体のことを考えて動け、などといっても混乱するだけかも知れません。

その分、マネージャーが、仕組みと行動が合致しているかどうかをよく見て、必要であれ
ば修正しなければなりません。

プレーヤーからマネージャーになることで、やるべき仕事は大きく変わってしまうのです。

■各企業は、それぞれ「収益を上げる仕組み」を持っています。持っていないと、成立し
ません。

マネージャーになった者は、プレーヤーの時には必ずしも意識しないでよかった仕組みの
全体像を掴まなければなりません。

だからこそ、マネージャーは「収益を上げる仕組み=ビジネスモデル」の基本を学ばなけ
ればならない。

もちろん起業者は、待ったなしで、学ばなければなりません。

■さて「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」では、ビジネスモデルをでき
るだけ分かりやすく図式化しようとしています。

前回も述べましたが、この分野には「プロフィットゾーン経営戦略」という名著が存在し
ます。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4478372667/lanchesterkan-22/ref=nosim

ただし、「プロフィットゾーン経営戦略」の方は、どちらかというと様々なビジネスモデ
ルの羅列にとどまっており、その共通要素や作り方までに言及したものではありませんで
した。

今回の「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」では、その難題に挑戦してい
ます。

■この本は、ビジネスモデルの形を古典的な事業ドメイン(誰に、何を、どのように提供
するのか:WHO、WHAT、HOW)に集約しています。

たとえば、ある化粧品会社は「30歳代の女性に、アンチエイジングという価値を、特殊
なフェイスクリームを通販で販売する」ことで提供しています。

あるいは、ある介護用品の会社は「介護が必要な高齢者のいる家庭に、介護の労力やコス
ト負担を下げるという価値を、必要な介護用品をレンタルする」ことで提供しています。

シンプルで分かりやすい。ビジネスを他人に説明しようとする時、この枠組みにあてはめ
ると容易です。

ただし、これだけだとビジネスを表面的に説明しているに過ぎず、自己紹介程度にしか使
えません。

なぜそのビジネスが成立するのか。数多のライバル企業がいる中で、生き残っていける理
由は何なのか。

その理由が分からなければ、企業はどの方向に向かっていけばいいのかを導き出すことが
できません。

端的にいうと、日本のような成熟市場の中で、企業が収益を上げて、生き残っていけるの
は、他の企業よりも優れた何かがあるからです。

その何かのことをビジネス用語で競争優位性といい、それを作ることこそが、ランチェス
ター戦略の基本である差別化です。

「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」は、事業ドメインという分かりやす
いフレームワークを使って、企業が差別化していくための方法を書いているところに特徴
があります。

■ちなみに差別化と一概にいっても、様々なレベルがあります。形を変えたり、色を変え
たり、名前を変えたりすることも差別化です。

ただし、そのような小手先の差別化は、いくらしたところですぐに真似されてしまって、
無効化されてしまいます。

ところが、ビジネスモデルレベルの差別化は、他社が容易に真似できません。企業の在り
方に関わることですので、経営資源や管理システムを大きく変えなければならなくなるか
らです。

たとえば、化粧品会社の例でいえば、30歳代の女性ではなく、60歳代の女性を顧客と
する。

あるいは、アンチエイジングではなく、美白という価値を提供する。

通販で販売するのではなく、訪問販売でリースする、などといった差別化が考えられます。

いうのは簡単ですが、商品そのものも、価格も、プロモーション手法も、販売ルートも全
て変更しなければならないわけですから、時間とコストがかかります。簡単に真似すると
いうわけにはいきません。

■最も根本的な差別化は、顧客を変えること。事業ドメインの中の「誰に」という部分を
差別化することです。

例えば、地域、顧客層、業種・業態などで細かくセグメント分けして、標的とする顧客を
先鋭化していく方法が、一般的な「誰に」の差別化です。

ランチェスター戦略では、地域戦略というカテゴリーの中で、地域を細かく分けて攻略す
る方法を提示していますが、これも「誰に」の差別化の例の一つだといえます。

ちなみに「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」の中では「誰に」という部
分を差別化する方法として、以下の2つをあげています。

(1)真の顧客は誰かを考える

表面に出ている顧客ではなく、背後にいる意思決定者をつかむことで差別化を行う。

例えば、青梅慶友病院は、患者だけではなくその家族を顧客と捉えることで差別化し、様
々なサービスを展開しています。患者の介護者に向けたケアサービス、24時間面会対応、
徹底した病状説明、看護婦が患者の家族の顔を覚えて名前で呼びかけることなどです。

あるいは、ハウスウェディングのテイク・アンド・ギブ・ニーズは、結婚する二人だけで
はなく、その家族を顧客と捉えています。

(2)C(消費者)とB(事業者)を変える

CとBを入れ替える。普通、Bを顧客としている企業はCを意識する。Cを顧客としてい
る企業はBを意識することで、差別化する。

例えば、ベネッセは学校に向けて事務用品を販売する会社でしたが、学生に直接教育シス
テムを提供するビジネスにシフトしました。

あるいは、製薬会社のエーザイは、普通の製薬会社がドクターへの営業に力を入れるのに
対して、薬を服用する患者を顧客だと捉えて製品差別化を行っています。

■「何を」という部分を差別化するというと、製品差別化を思い浮かべるかも知れません
が、そのような表面的なものではなく、製品の背後にある価値に着目した差別化でなけれ
ば、すぐに真似されてしまいます。

マーケティングの世界でも、製品の本質は、機能や品質ではなく、顧客に対する便益であ
ると捉えられています。この本質部分を差別化しなければなりません。

「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」では下記の3つをあげています。

(1)製品はサービスの一部だと考える

特に製造業は、サービスは製品の付属であると考える傾向にありますが、実際は、顧客が
求めているのは価値であり物体ではありません。その製品を使って何ができるかにこそ価
値があります。

例えば電気工具メーカーのヒルティ(米)は、電気工具の販売を取りやめて、建築業者に
管理の行き届いた工具をリースするビジネスに切り替えました。

セオドア・レビットのいう「ドリルではなく、穴を売れ」という言葉にそのまま従ったビ
ジネスを展開することで、高収益企業となっています。

(2)できないことを決める

顧客の求めることはすべてする、というのは素晴らしい心がけですが、コストのかかるこ
とですから、大企業との体力勝負になってしまう危険性があります。

そこで敢えて、これはやらない、と決めてしまう差別化の方法です。

「ブルーオーシャン戦略」に取り上げられているので有名な理容のQBハウスは、洗髪し
ないと決めて、10分1000円の散髪を実現しました。

スポーツジムのカーブスは、シャワー室を設置しないことで、同じく低料金を実現してい
ます。

(3)顧客の経済性に着目する

それを使用することで、顧客のトータルコストや、固定費が削減できるようにすることです。

例えば、カーリースやカーシェアなど、自動車を所有するよりも顧客のトータルコストが
減ることを明確にすることで成り立つビジネスです。

あるいは一部の損保会社は、保険金の多寡ではなく、トータルコストやバランスを説明す
ることで、差別化しています。

■「どのように」という部分が、事業ドメインの中では、バラエティに富んだものとなり
ます。

「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」では、次の2つをあげています。

(1)バンドリング、アンバンドリング

バンドリングとは、ビジネスプロセスの全体を範囲とすること、アンバンドリングとは、
ビジネスプロセスの一部だけを範囲とすることです。

プロセスの一部に特化する、あるいは別のプロセスを取り込むことで、大きな差別化が可
能となります。

大手商社は商品の流通だけではなく、製造を押さえてメーカーポジションをとることで、
ビジネスの収益性を高めてきました。

大手広告代理店も広告の仲介だけではなく、コンテンツ作成やマーケティング調査なども
取り込むことで、ビジネスの範囲を広げてきています。

逆に、セブン銀行は、ATM窓口業務に特化することで、手数料収入を稼ぐビジネスです。

電子部品の小口配送に特化して3年でマザーズに上場したチップワンストップという会社
もあります。

(2)経営資源の扱い

従業員の能力を開発し、多能工化することで業績アップを図るという方法もありますし、
逆にマニュアル通りのことしかさせないという方法もあります。

マクドナルドやブックオフは、誰でにでもできることに従業員の業務を絞ることで、効率
化を図っています。

(3)その他

ジレットモデルやレベニューマネジメント、裁定取引など、定番となっているビジネスモ
デルについて言及されていますが、ここでは省略します。

■このように「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」という本は、事業ドメ
インというシンプルなフレームワークの中に、様々な優良企業の儲け方を当てはめていく
という構成となっています。

企業の儲け方は様々で「頑張ったからだ」「思いが強かったからだ」と片付けてしまいた
くなるほど複雑に思える様相も、こうしてフレームワークに当てはめてみると、一定の理
屈に沿っていることが分かります。

要するに、儲けている企業は、どこかで他社と違うビジネスの仕方をしている。それが競
争優位性というものであり、ランチェスター戦略のいう差別化です。

フレームワークにまとめてしまったところが、「プロフィットゾーン経営戦略」よりも整
理されているという印象を与えます。

ただ、実際のところは、それぞれの事例が体系的にMECE(もれなくダブりなく)とし
て提示されているわけではありません。

あくまで、整理の仕方を提示しているだけです。読者には、さらなる事例採取や検証の余
地が残されています。

それはそうと、フレームワークがシンプルなので、ビジネスに当てはめやすい。

我々は、このフレームワークをもとに、「誰に」の部分をどうとらえ直すか。「何を」の
部分をどう発想するか。「どのように」の部分をどう工夫していくかを考えていけばいい
のです。

■もっとも、ビジネスモデルをこれから作るという場合は、前回紹介した「ビジネスモデ
ル・ジェネレーション」の方が、優れていると感じます。

この本では、ビジネスモデルの構成要素を9つに分解していたので、再掲いたします。

(1)まずは顧客セグメント。誰を顧客にするかという選択です。

(2)その選択した顧客に、どのような価値を提供するのか。

(3)価値を提供するためのチャネル。販売ルート。

(4)顧客とどのような関係を築きたいか。

(5)収益の上げ方。どうやって売上を上げるのか。

(6)リソース。ビジネスを行うための自社が持っている資源。

(7)実際の活動。

(8)パートナー。足りない資源を誰と組むことで補うのか。

(9)コスト構造。

これを事業ドメインに当てはめると、「誰に(1)、何を(2)、どのように(3)~
(9)」という形になります。

シンプルで分かりやすいのは、事業ドメインでまとめてしまう方法です。だから、ビジネ
スモデルの整理や説明、分類をする場合には、こちらがいいでしょう。

が、ビジネスモデルを検証したり、再構成したりする場合には、「ビジネスモデル・ジェ
ネレーション」のフレームワークの方が、実効的です。

ついでにいうと、ビジネスモデルの種類を多く知りたいという場合は「プロフィットゾー
ン経営戦略」がおすすめです。

だから「なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編」「ビジネスモデル・ジェネレ
ーション」「プロフィットゾーン経営戦略」を併せて読まれることをおススメいたします。

■繰り返しになりますが、ビジネスモデルとは、日々の経営活動がどのように収益に結び
ついているのかを分かりやすく提示したものです。

もし一所懸命がんばっても昔ほど収益が上がらないという企業があれば、ビジネスモデル
が有効に機能しているかどうかを疑わなければなりません。

社会情勢の変化でビジネスモデルが現実と解離しつつあるのかも知れません。

特に「誰に」の部分。10年も20年も同じ顧客を標的としているならば、それはもう一
度、選択しなおす必要があるでしょう。

あるいは、強力なライバル企業が出現して、自社の収益を奪っているのかも知れません。

それならば、ライバルのビジネスモデルを研究して、必要な差別化を行わなければなりま
せん。

戦略の見直しとは、ビジネスモデル(儲ける仕組み)を組み直す作業のことだと私は考え
ています。

■戦略とは、企業がどの方向へ進むべきかを示したものです。

それを収益を上げる仕組みとして構成したものがビジネスモデル。

その枠内で、我々は一所懸命に努力するから、報われるのです。

そのシンプルな理屈を忘れないようにしたいと思います。


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