山形の洋菓子店がフォーカスしたもの

2008.03.13

(2008年3月13日メルマガより)

■「フォーカス!」(アル・ライズ著)という本を本屋さんで見つけて読みました。

これは、ビジネスにおいて焦点を絞ることがいかに重要かを説いた本です。

昨年の8月に発売された本ですが、掲載されている事例が10年ぐらい前のも
のなので、アメリカではその頃に刊行されたものなんでしょう。

ノーマークだったこの本。驚いたのは、内容が「ランチェスター戦略」によ
く似ていること。

法則を導き出すアプローチはないものの、結論として主張することは、ほと
んどランチェスター戦略です。

まさか、意識したわけではないでしょうがね。

■ここには「市場を小さく絞ることが成功の鍵であること」

「トップ企業に対抗するためには差別化が有効であること」

「メーカーでも小売でも、フォーカスすることが成功要因であること」

「商品の品質向上よりも顧客のマインドシェアを高めることがより重要であ
ること」

「万人受けを狙わずに、ターゲット顧客を明確にすること」

「市場の変化に合わせてフォーカスすべきところを変えること」

「小さな市場を占拠することが重要であること」

などが主張されています。

これって私がセミナーで言っていることと同じです。

ここまで考えが同じであれば、他人のような気がしませんなーーー^^

■それにこの本に出てくる事例の量が半端ではない。凄まじい勢いで事例が
羅列されております。

セミナーでこれをやれば、受講生は圧倒されるでしょうね。

ただ、事例がやや一方的で実証性に乏しいのがこの本の限界です。ここが論
理的に構成されていれば「ビジョナリー・カンパニー」のような名著になっ
たかも知れませんね。惜しい。

しかし、私としても、随所にひらめきをいただきました。これからも手元に
置いておきたいと思います。

■ちなみに私は「勝つための5つの鉄則」として

1.小さな市場に絞る

2.差別化する

3.一点集中する

4.勝てない戦いはしない

5.ナンバーワンを目指す

を提唱しています。

フォーカスというのは、3の「一点集中」にあたります。

非常に重要な概念であることは間違いありません。

■山形市にシベールという洋菓子屋さんがあります。

和菓子屋さんの3代目が「父が和菓子なら自分は洋菓子だ」と1966年に
創業したお店です。

創業して42年だから老舗といえば老舗ですか。

今では山形、仙台、東京、名古屋、大阪に23店舗を持ち、40億円を売り
上げています。

大したもんです。

■ただ当初は、製菓業の宿命である利益率の低さに苦しんだようです。

ケーキやパンは日持ちがしないため、余った商品を廃棄せざるを得ません。

需要予測が難しいので、販売と廃棄ロスのバランスを考えると、売上規模を
拡大することもままならない。

多くのお店は地域に密着して、一定の規模で均衡を保っています。

もちろん、それはそれで立派な経営です。

■ただ、シベールは、規模の拡大を志向しました。

そのためには全国に販路を拡大したい。

かといって、いきなり全国に店舗展開をする資本もない。

そこで、シベールが目をつけたのは通信販売を行うことでした。

■もっとも一概に通信販売といっても簡単ではありません。

商品ならなんでもいいというわけではない。

まず、贈答品になるような高級なもの。利益率の高いもの。

通販で買いたくなるような珍しいもの。

なにより日持ちがするもの。

こうした条件をクリアしなければなりません。

■相当に悩んだのでしょうが、同店が選んだのは店の片隅にあった「ラスク」
というお菓子でした。

ラスクとは、フランスパンを薄く切ったものにバターと砂糖をぬったもの。

これって、実は、売れ残りパンで作ったお菓子です。硬くなったパンを再利
用するための苦肉の策なのですが、同店ではいつもすぐに売り切れる人気商
品でもありました。

日持ちはするし、あまり知られたお菓子ではない。包装することで高級そう
に見えるのではないか。。。

シベールはその商品を「ラスクフランス」と名づけて、売り出しました。

■もちろん同店の成功要因は「ラスクフランス」を中途半端な位置に置かず、
あくまで中心商品としてフォーカスしたことです。

一定のテスト期間を経ると、2年をかけて量産体制を整え、全国展開してい
きます。この商品に命運を賭けたのです。

当初、洋菓子職人は「ラスクなんかのためにフランスパンを作りたくない」
と反発したそうです。

しかし、作り手の思いと顧客の受け止め方が違うことはよくあること。
精魂こめて作ったものが顧客には全く受け入れられなかったり、あるいはこ
の事例のように、ついでに作ったものが顧客には新鮮だったり。

戦略を貫くためには、職人の意地と戦わなければならないこともあります。
社長は根強い説得を重ね、職人たちの協力を取り付けていきました。

「シベールのラスクフランス」は、口コミで広がり、今では75万人の登録
顧客を抱え、20億円を売り上げる同店の主力商品となっています。

まさにラスクとともにシベールは大きくなっていったのです。

■以前にも書きましたが、ランチェスター戦略には「グー、パー、チョキ戦
略」というものがあります。

導入期には商品を絞り込め(グー)。成長期に入れば手を広げよ(パー)。
成熟期に入る前に広げた部分をカットせよ(チョキ)。

特に経営資源が少ない中小企業や起業者は、焦点を絞りに絞って、最小のリ
ソース(資源)を最大限活用しなければ展開は望めません。

商品ラインやチャネルを広げるのは、利益率を犠牲にしてキャッシュを浅く
広く集める方策です。だから、手を広げるのは、十分発展して「もうこれで
いいや」と思ってからで遅くありません。

■シベールがもしラスクに集中せず、洋菓子業界の常識に止まっていたなら
ば、今の状況があったとは思えません。

常識では超えられない壁を突破するためには、常識外れに思えるようなフォ
ーカスが必要だったというわけです。

参考:日経ベンチャー2007年12月号


(2008年3月13日メルマガより)

■「フォーカス!」(アル・ライズ著)という本を本屋さんで見つけて読みました。

これは、ビジネスにおいて焦点を絞ることがいかに重要かを説いた本です。

昨年の8月に発売された本ですが、掲載されている事例が10年ぐらい前のも
のなので、アメリカではその頃に刊行されたものなんでしょう。

ノーマークだったこの本。驚いたのは、内容が「ランチェスター戦略」によ
く似ていること。

法則を導き出すアプローチはないものの、結論として主張することは、ほと
んどランチェスター戦略です。

まさか、意識したわけではないでしょうがね。

■ここには「市場を小さく絞ることが成功の鍵であること」

「トップ企業に対抗するためには差別化が有効であること」

「メーカーでも小売でも、フォーカスすることが成功要因であること」

「商品の品質向上よりも顧客のマインドシェアを高めることがより重要であ
ること」

「万人受けを狙わずに、ターゲット顧客を明確にすること」

「市場の変化に合わせてフォーカスすべきところを変えること」

「小さな市場を占拠することが重要であること」

などが主張されています。

これって私がセミナーで言っていることと同じです。

ここまで考えが同じであれば、他人のような気がしませんなーーー^^

■それにこの本に出てくる事例の量が半端ではない。凄まじい勢いで事例が
羅列されております。

セミナーでこれをやれば、受講生は圧倒されるでしょうね。

ただ、事例がやや一方的で実証性に乏しいのがこの本の限界です。ここが論
理的に構成されていれば「ビジョナリー・カンパニー」のような名著になっ
たかも知れませんね。惜しい。

しかし、私としても、随所にひらめきをいただきました。これからも手元に
置いておきたいと思います。

■ちなみに私は「勝つための5つの鉄則」として

1.小さな市場に絞る

2.差別化する

3.一点集中する

4.勝てない戦いはしない

5.ナンバーワンを目指す

を提唱しています。

フォーカスというのは、3の「一点集中」にあたります。

非常に重要な概念であることは間違いありません。

■山形市にシベールという洋菓子屋さんがあります。

和菓子屋さんの3代目が「父が和菓子なら自分は洋菓子だ」と1966年に
創業したお店です。

創業して42年だから老舗といえば老舗ですか。

今では山形、仙台、東京、名古屋、大阪に23店舗を持ち、40億円を売り
上げています。

大したもんです。

■ただ当初は、製菓業の宿命である利益率の低さに苦しんだようです。

ケーキやパンは日持ちがしないため、余った商品を廃棄せざるを得ません。

需要予測が難しいので、販売と廃棄ロスのバランスを考えると、売上規模を
拡大することもままならない。

多くのお店は地域に密着して、一定の規模で均衡を保っています。

もちろん、それはそれで立派な経営です。

■ただ、シベールは、規模の拡大を志向しました。

そのためには全国に販路を拡大したい。

かといって、いきなり全国に店舗展開をする資本もない。

そこで、シベールが目をつけたのは通信販売を行うことでした。

■もっとも一概に通信販売といっても簡単ではありません。

商品ならなんでもいいというわけではない。

まず、贈答品になるような高級なもの。利益率の高いもの。

通販で買いたくなるような珍しいもの。

なにより日持ちがするもの。

こうした条件をクリアしなければなりません。

■相当に悩んだのでしょうが、同店が選んだのは店の片隅にあった「ラスク」
というお菓子でした。

ラスクとは、フランスパンを薄く切ったものにバターと砂糖をぬったもの。

これって、実は、売れ残りパンで作ったお菓子です。硬くなったパンを再利
用するための苦肉の策なのですが、同店ではいつもすぐに売り切れる人気商
品でもありました。

日持ちはするし、あまり知られたお菓子ではない。包装することで高級そう
に見えるのではないか。。。

シベールはその商品を「ラスクフランス」と名づけて、売り出しました。

■もちろん同店の成功要因は「ラスクフランス」を中途半端な位置に置かず、
あくまで中心商品としてフォーカスしたことです。

一定のテスト期間を経ると、2年をかけて量産体制を整え、全国展開してい
きます。この商品に命運を賭けたのです。

当初、洋菓子職人は「ラスクなんかのためにフランスパンを作りたくない」
と反発したそうです。

しかし、作り手の思いと顧客の受け止め方が違うことはよくあること。
精魂こめて作ったものが顧客には全く受け入れられなかったり、あるいはこ
の事例のように、ついでに作ったものが顧客には新鮮だったり。

戦略を貫くためには、職人の意地と戦わなければならないこともあります。
社長は根強い説得を重ね、職人たちの協力を取り付けていきました。

「シベールのラスクフランス」は、口コミで広がり、今では75万人の登録
顧客を抱え、20億円を売り上げる同店の主力商品となっています。

まさにラスクとともにシベールは大きくなっていったのです。

■以前にも書きましたが、ランチェスター戦略には「グー、パー、チョキ戦
略」というものがあります。

導入期には商品を絞り込め(グー)。成長期に入れば手を広げよ(パー)。
成熟期に入る前に広げた部分をカットせよ(チョキ)。

特に経営資源が少ない中小企業や起業者は、焦点を絞りに絞って、最小のリ
ソース(資源)を最大限活用しなければ展開は望めません。

商品ラインやチャネルを広げるのは、利益率を犠牲にしてキャッシュを浅く
広く集める方策です。だから、手を広げるのは、十分発展して「もうこれで
いいや」と思ってからで遅くありません。

■シベールがもしラスクに集中せず、洋菓子業界の常識に止まっていたなら
ば、今の状況があったとは思えません。

常識では超えられない壁を突破するためには、常識外れに思えるようなフォ
ーカスが必要だったというわけです。

参考:日経ベンチャー2007年12月号


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