ボクシング 井上尚弥にあって、山中慎介になかったもの

2018.09.06

 (2018年9月6日メルマガより)

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2018年7月28日。伊藤雅雪というボクサーが、日本人として37年ぶりの快挙を成し遂げました。

ディズニーランドに近いアメリカフロリダ州の会場において開催されたWBOスーパーフェザー級王座決定戦で、同級1位のクリストファー・ディアス(プエルトリコ)を圧倒し、判定勝ちを収めました。

日本人がアメリカで世界タイトルを獲得するのは、三原正(スーパーウェルター級)以来37年ぶりだということです。



伊藤は、天性の運動能力に恵まれた上、高いボクシング技術を身に着けた正統派のボクサーです。

この試合の前はWBOランキング2位。

内山高志や三浦隆司が活躍した日本人にとってなじみ深いスーパーフェザー級において、後に続く存在として期待されていました。

ボクシングビジネスの本場アメリカにおいて、タイトルマッチに挑戦できるというだけで大変なことなのに、1回のチャンスをものにするとは、見事というほかありません。


もっとも、今回の伊藤が、アンダードッグ(咬ませ犬:主役に自信をつけさせるための負け役)だったことは、本人も自覚している通りです。

ビジネスにシビアなアメリカで、無名の日本人選手が主役を張れるわけはありません。

主役はあくまで相手側です。プエルトルコ系住民の人気をあてこんだマッチメイクだったはずです。

伊藤が選ばれたのは、ランキング2位だったということだけではなく「そこそこ強いが、ディアスが負けるほどの相手ではない」と思われていたからでしょう。

防御テクニックに優れた伊藤ですが、攻撃に思い切りがないともいわれており、どちらかというと与しやすい相手だったはずです。

ところが今回の伊藤、人が変わったように好戦的なスタイルを貫き、面食らった相手側は調子の出ないまま試合が終わってしまった感があります。

が、どういう事情があろうと、一世一代の大舞台で実力以上のものを出せた伊藤の快挙が薄れるものではありません。

伊藤選手の今後いっそうの活躍を願っております。

海外で活躍する日本人ボクサーが増えている


それにしても最近、世界で活躍する日本人ボクサーが増えてきました。

以前、このメルマガで、ボクシングの話題をとりあげさせていただきましたが、その中で、日本人ボクサーの課題は世界で戦えていないことだとお伝えしました。



ところが、いまは事情がすっかり変わりました。

2017年8月には、亀海喜寛がWBOスーパーウェルター級王座を賭けてアメリカカリフォルニア州で元4階級制覇のミゲール・コットと戦いました。(判定負け)

2017年12月には、本場ラスベガスにおいて、IBFスーパーフェザー級王座決定戦が開かれ、尾川堅一が判定勝ちを収めました。(一時は36年ぶりの快挙だと騒がれたのですが、尾川に禁止薬物反応が出たために無効試合になりました)

今年になり、村田諒太、井上尚弥など実力派チャンピオンの海外進出が話題になっています。

元3階級王者の井岡一翔も、今月9日、海外でのビッグイベントで復帰戦が計画されています。(比嘉大吾も減量失敗さえなければ、同じイベントでアメリカ進出を果たしていたでしょうに...)

また最近になって、海外大手プロモート会社のトップランク社が、スーパーライト級の岡田博喜と3年契約を結んだことがニュースになりました。

内山高志や山中慎介といった強いチャンピオンが、海外でのビッグマッチを望んでも叶えられなかった頃とは隔世の感があります。

いったいどうなってしまったのでしょうか。


世界チャンピオンというだけでは認められない


日本に世界チャンピオンが大勢いるのに、思うようにビッグマッチが組めない。というのは、粗製濫造でチャンピオンの地位が下がったことに遠因があります。

かつて各階級に一人だった世界チャンピオンは、認定団体が4つに増えた現在、単純に4倍に増えてしまいました。

さらに言えば、暫定王者、正規王者、スーパー王者と、同じ認定団体でも各階級チャンピオンが3人も存在する異常事態が発生し、インフレが止まりません。

タイトルマッチを冠してイベントに箔をつけたいテレビ局やプロモーター側の意向によるものとはいえ、それによってチャンピオンの地位が下がってしまったのだから、情けない限りです。

かつては世界チャンピオンといえば、世界で最も強い者だと誰もが認めていましたが、今はそう思われていません。

世界チャンピオンが4人もいるのだから、比較的弱い人もいます。

時に、強いチャンピオンが階級変更などでベルトを返上した穴をねらって、王座決定戦でチャンピオンになる人もいます。

中には、強いチャンピオンにお金を渡して無理に階級変更させたんじゃないかと勘繰りたくなるような例もありますからね。

そんなだから、観客も、チャンピオンが必ずしも1番ではないことを知っています。

1番じゃないチャンピオンの試合を観るぐらいなら、無冠でも1番強いボクサーの試合を観たいものですよ。


ボクシングは一人勝ちビジネス


ボクシングは個人競技ですから、特定の個人にビジネスの恩恵が集中しがちです。

強いボクサー、キャラの立ったボクサー、誰もが試合を観たいと思うボクサーに人気が集まります。

逆に、チャンピオンだけど大した特徴のないボクサー、あるいは実力はあるけれども安全運転ばかりで試合が面白くないボクサーには人気が集まりません。

特にいまはPPV(ペイ・パー・ビュー:テレビ中継で試合ごとにお金を払う仕組み)があるのでボクサーの人気が一目でわかります。

端的にいうと人気のあるボクサーは青天井に稼げるし、人気のないボクサーにはチャンスも与えられません。

1試合で数百億円も稼ぐ無冠のボクサーがいるかと思えば、バイトをやめられないローカルチャンピオンがいるのはそのためです。

ボクシングは危険な競技ですから、そう何試合もできるわけではありません。できれば短期間で稼いで引退したいのが人情です。

だからボクサーは誰と試合をするか、というキャリアマネジメントに敏感です。

人気のない相手と試合をして生命を削るよりは、人気者とビッグマッチをして効率的に稼ぎたいと多くのボクサーは考えているはずです。

文字通り命を賭けて戦う競技ですから、その姿勢に文句をいうことはできません。

実力はあるが、世界的には無名だった内山高志や山中慎介にチャンスが与えられなかったのは、そういう背景があったのです。


有力選手を海外に出したくないテレビ局


日本の場合は、PPVという形式はまだ一般的ではありません。

地上波の各テレビ局は看板チャンピオンを抱えており、熱心に売り出します。年末のボクシング中継は定番コンテンツですし、ある程度の視聴率は稼げるからです。

そんな時、看板選手に海外進出でもされようものなら、テレビ放映権さえもらえない事態もあり得ます。(何しろ海外は権利関係がシビアですから)しかも負けてしまって王座陥落なんてことになれば、今まで熱心に売り出した費用が大損になります。

テレビ局側は内心、海外進出なんてしてほしくないと思っているのです。

チャンピオン側としても、1試合数千万円、年間1億円ほど稼げるようになると、これで充分か、と思ってしまうかも知れません。

チャンピオン本人はボクサーの本能として強い相手と戦いたいと思っても、まわりにいる人たちは、確実に稼げる方法をとろうとします。

井岡一翔が、不可解な引退の後、すぐに海外で復帰したのは、トレーナーである父親の「テレビ局の意向に沿って安全に稼いでいこう」という方針に嫌気がさしたからだと噂されていますが、これは井岡一翔の父親が特殊なわけではなく、多くのボクシング関係者がそう考えていたといった方がいいと思います。

だから、海外のボクシング関係者が、わざわざ日本人を連れてこなくてもいいやん。と思うと同時に、日本側もわざわざ海外に行かなくてもいいやという風潮があったということです。


海外で活躍する日本人ボクサーが増えた理由


ところがここ数年、急に風向きが変わってきました。

海外のボクシング関係者が、にわかに日本人選手に注目しはじめたのです。

その理由の1つは、やはり海外で活躍した日本人選手の評判が高いことがあげられます。

西岡利晃(元WBC世界スーパーバンタム級王者)、高山勝成(元WBC、WBA、IBF、WBO世界ミニマム級王者)、石田順裕(元WBA世界スーパーウェルター級暫定王者)、三浦隆司(元WBC世界スーパーフェザー級王者)、亀田和毅(元WBO世界バンタム級王者)といった日本人ボクサーたちは総じてまじめで勤勉、体重管理もしっかりこなした後、試合に臨みます。

そんなのボクサーとして当たり前やろ。体重管理は最低限の約束事やないか。と思われるでしょうが、海外の選手はわりといい加減で、特に近年は意図的な減量失敗が相次いでいます。

上にも書きましたが、ボクシングというビジネスは人気商売です。まじめでも負けたら人気は落ちてしまう。それなら、体重超過してでも勝ってやろうと考える輩が頻出しているのです。

たとえば、現代最高のボクサーの一人だといわれるワシル・ロマチェンコという人がいます。(ウクライナ出身。元WBOフェザー級王者、元WBOスーパーフェザー級王者、現WBA世界ライト級スーパー王者)オリンピックで2大会連続金メダルという偉業を成し遂げたのち、鳴り物入りでプロ転向。わずか2戦目で、世界タイトルマッチに挑戦しました。

その時のチャンピオンがメキシコのオルランド・サリドです。まともにやっては勝てないと思ったのか、サリドはこの時、王座剥奪を覚悟のうえで、意図的に体重超過をして試合に臨みました。

体格的なアドバンテージを得たサリドは、頭突き、ローブロー、腕がらみ、組みつきといった実にいやらしいダーティなテクニックを駆使して、ロマチェンコを煙に巻きました。

サリド自身も王座を失ったのですが、これで彼の価値が下がったのかといえばそうではありません。むしろダーティな技術を使ってでもロマチェンコを退けた男として、名をあげました。

逆に、勝ち目がないと思ったら、あっさりギブアップしてしまうのも、海外の選手に多くみられます。

上のロマチェンコはその後、技術をさらに磨き、異次元と思えるほどの強さを発揮するようになりました。

だからロマチェンコと試合をする多くのボクサーが、途中でやる気をなくして、棄権してしまいます。これを俗にロマチェンコ勝ちというそうです。

勝てるとなれば汚い手を使ってでも勝ちにいく。勝ち目がないと思えば、余分なダメージを負う前に試合放棄してしまう。

確かに、ボクシングを個人のビジネスとして考えるなら、合理的な行動です。

しかし、これでは、観ている方は、面白くない。やるなら正々堂々と最後までスリリングな試合を展開してほしい。

その点、日本人選手は、国民性なのか、ズルして勝つことを良しとせず、最後まで諦めない精神をもっています。

海外の選手がちゃっかりすればするほど、日本人選手の価値が上がるというものです。


アメリカ側がボクシング選手を買い漁っている


理由の2つ目は、海外のメディアがボクシング放送を増やす傾向にあり、選手不足にあるという事情です。

これまでアメリカのボクシング中継といえばケーブルテレビ局が担っていました。

ところが今は、ネット配信の時代です。スポーツ中継の世界にもネット配信業者が参入してきており、競争が激化しています。

そうなると人気スポーツは放送権料が高騰してしまいます。

アメリカで人気のアメフト、バスケットボール、メジャーリーグベースボール、サッカー、ゴルフ、テニスなどは、そうたやすく放映できる値段ではなくなってしまいました。

特にアメフトは、自分たちでネット配信してやろうと思っているふしがあるので強気です。相当の金額を積まないと放送もできません。

そこで、放送権料が比較的安価なボクシングに脚光が当たってきたのです。

何しろ、ボクシングは、一般的にはまだそこまで人気のスポーツではないものの、一部の熱狂的なファンが存在します。

このボクシングというコンテンツを盛り上げて、人気番組にしていけば、テレビ局もボクシング業界も潤います。

そこで今までボクシングに興味のなかったスポーツ放送局や、ネット配信メディアなどが、次々とボクシング中継に乗り出してきたのです。

テレビ局は人気選手を抱え込もうとしますから、勢い、選手が足りなくなります。

そこで、真面目で勤勉、どのような時でも試合を投げ出したりしない日本人選手にも、海外メディアが触手を伸ばし始めたというわけです。

海外大手プロモート会社のトップランク社が、世界チャンピオンでもない岡田博喜と3年契約を結んだのは、海外勢による日本人の青田買いが始まったことを示しています。


僻地のボクサーでも見つけられてしまう時代


理由の3つ目は、ネットによる情報の拡散です。

以前は、日本のローカル王者の試合が、海外ファンに知られることはまずありませんでした。

しかし今は、ユーチューブがあります。

たとえ地球の果ての試合でも簡単に観ることができる環境になっています。

そんな中、海外メディアから大きな期待を寄せられているのが、日本ボクシング史上の最高傑作とまで言われる井上尚弥です。(WBA世界バンタム級正規王者)

高校生の時、スパーリングで日本ランカーを滅多打ちにしたモンスターぶりは一部のボクシング関係者にこそ知られていましたが、一般的ではありませんでした。

ところが、井上がプロ入りし、勝ち進むようになると、海外の選手が対戦を拒否するようになりました。

試合動画を観た海外の選手が「こんなやつと戦ったら潰される」と思うようになったのです。

井上がプロ入りする時の条件として挙げたのが「アンダードッグとは試合しない」というものでした。とにかく強いやつと試合させてほしい。と望んだのです。

ところが意に反して、井上陣営は対戦相手選びに苦慮するようになります。

そりゃそうですよ。こんなモンスターと試合して選手生命を潰されたら、一生の大損です。

海外の名のあるチャンピオンも、井上と戦う際には、無茶苦茶なファイトマネーを要求するそうです。

井上側はそれをすべて飲んだ上で対戦要求するのですが、それでもドタキャンされる例が相次いでいるといいます。

モンスターという称号のわりに、有名選手との試合が少ないのは、知名度に比べて実力があり過ぎるからなのです。

今のところ世界で認められた対戦相手は、アルゼンチンのオマール・ナルバエスと、イギリスのジェームズ・マクドネルだけです。

ナルバエスは当時スーパーフライ級11度防衛中の絶対王者でした。だからライトフライ級から2階級もあげてきた井上を軽く見たのかも知れません。果たして、2ラウンドで4度のダウンを奪われてKOされるという惨劇を味わうことになりました。

マクドネルは、亀田和毅を2度も破った実力者です。井上側に法外なファイトマネーをふっかけ、それを丸のみされて試合をすることになりました。減量の失敗も伝えられていましたが、計量時、失礼な態度をとったことが井上の怒りを買い、試合が始まると、滅多打ちされて、わずか112秒でKOされる羽目となりました。

こんな試合をしていたら、それは対戦相手がいなくなりますよ。

ところがユーチューブも悪いばかりではありません。井上の圧倒的な試合ぶりを観た海外ファンが騒ぎ始めまたのです。

「日本には恐ろしく強いモンスターがいるらしい」

評判を聞きつけた海外メディアがこれを放っておくことはありません。

折しも、ファイトマネーの安い軽量級の試合を多く放送したいという海外メディアの意向もあり、井上に対する期待が非常に大きなものになってきたのです。


WBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)


そしてこのたびWBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)がバンタム級で開催されることになりました。

WBSSとは、各階級のチャンピオンクラスを一同に会して、トーナメント形式で最も強いボクサーを決めようという壮大なシリーズです。

人気選手を囲い込んで離さないアメリカのテレビ局や大手プロモーターのビジネス手法に対抗し、欧州系のプロモーターやネットメディアが中心になって、主にスター選手がいない階級での開催を目論んでいます。

第一期は、クルーザー級とスーパーミドル級で、賞金総額55億円というビッグイベントとして開催されました。

そして第二期は、スーパーライト級とバンタム級で開催されます。

バンタム級の優勝賞金は約4億円といわれています。もともとファイトマネーに恵まれない軽量級のボクサーにとっては、夢のような報酬です。

だからなのか、バンタム級のトーナメントには、各団体の王者が4人も参加するという豪華な陣容となりました。

もちろん、そこには井上も参加しています。いや、このイベントそのものが、井上の出場を前提に企画されたものだと言っても過言ではないでしょう。当然ながら優勝候補筆頭と目されています。


井上尚弥の強すぎるゆえの悩み


WBSSの開催を受けて最も安堵しているのは井上陣営の大橋ジム会長でしょうね。

何せ、井上が試合するとなれば、強いやつから順番にオファーして交渉するということを繰り返してきました。

それでも決まらない。のらりくらりかわされて、挙句の果てにドタキャンです。だってみんな井上とはやりたくないのだから仕方ありません。

結果として試合を受けてくれるのは、普通ならタイトルマッチに挑戦できないような実力のない相手です。

強い相手と戦いたいという井上の要望を充分に知りながら、叶えてやれないのはもどかしい思いだったことでしょう。

が、トーナメントで対戦順が決まっていれば、さすがに逃げることはできません。

しかも、ここで圧倒的な実力差をみせて優勝すれば、名実ともに世界のモンスターと認知されます。

そうなると、世界のボクサーから最終的な目標にされる存在となります。

最後の稼ぎ時を避けるボクサーはさすがにいません。

初めて対戦相手に困らなくなることでしょう。

大橋会長の苦悩の日々も終わります。


最終目標まであと一歩の村田諒太

いっぽうミドル級のWBAチャンピオン村田諒太は、10月にラスベガスで防衛戦を行う予定です。

村田の場合、最終目標はミドル級の帝王ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)とのビッグマッチです。

幸いゴロフキン側も、村田との対戦に前向きであると伝えられています。

だから、村田側は、ゴロフキンと戦うまでは何がなんでも生き残りたいと考えていることでしょう。

対戦相手には慎重にならざるを得ません。あまり強い相手だと負けてしまう恐れがあるし、むっちゃ弱い相手だとヘタレ王者の烙印を押されてしまいます。

井上尚弥ほどの実力があれば余計な気を遣うことはないのでしょうが、村田の実力はそこまでではありませんからね。

次戦、ラスベガスのお披露目戦でいい試合をして、次のゴロフキン戦(東京ドームでの開催が噂されています)につなげてほしいと思います。


井上尚弥は持っていた


内山高志や山中慎介が望んでやまなかった海外のビッグネームとの試合。

それをいともあっさりと叶えてしまいそうな井上尚弥です。

それは、井上の実力が、先達に比べて並外れているというわけではなく、世界のボクシングビジネス全体が変化する流れに乗った結果だったとうことがわかっていただけたでしょうか。

いうなれば、井上尚弥は「運」も持っていたということです。


これからも日本人ボクサーの海外進出という流れは加速していくことと思います。


 (2018年9月6日メルマガより)

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2018年7月28日。伊藤雅雪というボクサーが、日本人として37年ぶりの快挙を成し遂げました。

ディズニーランドに近いアメリカフロリダ州の会場において開催されたWBOスーパーフェザー級王座決定戦で、同級1位のクリストファー・ディアス(プエルトリコ)を圧倒し、判定勝ちを収めました。

日本人がアメリカで世界タイトルを獲得するのは、三原正(スーパーウェルター級)以来37年ぶりだということです。



伊藤は、天性の運動能力に恵まれた上、高いボクシング技術を身に着けた正統派のボクサーです。

この試合の前はWBOランキング2位。

内山高志や三浦隆司が活躍した日本人にとってなじみ深いスーパーフェザー級において、後に続く存在として期待されていました。

ボクシングビジネスの本場アメリカにおいて、タイトルマッチに挑戦できるというだけで大変なことなのに、1回のチャンスをものにするとは、見事というほかありません。


もっとも、今回の伊藤が、アンダードッグ(咬ませ犬:主役に自信をつけさせるための負け役)だったことは、本人も自覚している通りです。

ビジネスにシビアなアメリカで、無名の日本人選手が主役を張れるわけはありません。

主役はあくまで相手側です。プエルトルコ系住民の人気をあてこんだマッチメイクだったはずです。

伊藤が選ばれたのは、ランキング2位だったということだけではなく「そこそこ強いが、ディアスが負けるほどの相手ではない」と思われていたからでしょう。

防御テクニックに優れた伊藤ですが、攻撃に思い切りがないともいわれており、どちらかというと与しやすい相手だったはずです。

ところが今回の伊藤、人が変わったように好戦的なスタイルを貫き、面食らった相手側は調子の出ないまま試合が終わってしまった感があります。

が、どういう事情があろうと、一世一代の大舞台で実力以上のものを出せた伊藤の快挙が薄れるものではありません。

伊藤選手の今後いっそうの活躍を願っております。

海外で活躍する日本人ボクサーが増えている


それにしても最近、世界で活躍する日本人ボクサーが増えてきました。

以前、このメルマガで、ボクシングの話題をとりあげさせていただきましたが、その中で、日本人ボクサーの課題は世界で戦えていないことだとお伝えしました。



ところが、いまは事情がすっかり変わりました。

2017年8月には、亀海喜寛がWBOスーパーウェルター級王座を賭けてアメリカカリフォルニア州で元4階級制覇のミゲール・コットと戦いました。(判定負け)

2017年12月には、本場ラスベガスにおいて、IBFスーパーフェザー級王座決定戦が開かれ、尾川堅一が判定勝ちを収めました。(一時は36年ぶりの快挙だと騒がれたのですが、尾川に禁止薬物反応が出たために無効試合になりました)

今年になり、村田諒太、井上尚弥など実力派チャンピオンの海外進出が話題になっています。

元3階級王者の井岡一翔も、今月9日、海外でのビッグイベントで復帰戦が計画されています。(比嘉大吾も減量失敗さえなければ、同じイベントでアメリカ進出を果たしていたでしょうに...)

また最近になって、海外大手プロモート会社のトップランク社が、スーパーライト級の岡田博喜と3年契約を結んだことがニュースになりました。

内山高志や山中慎介といった強いチャンピオンが、海外でのビッグマッチを望んでも叶えられなかった頃とは隔世の感があります。

いったいどうなってしまったのでしょうか。


世界チャンピオンというだけでは認められない


日本に世界チャンピオンが大勢いるのに、思うようにビッグマッチが組めない。というのは、粗製濫造でチャンピオンの地位が下がったことに遠因があります。

かつて各階級に一人だった世界チャンピオンは、認定団体が4つに増えた現在、単純に4倍に増えてしまいました。

さらに言えば、暫定王者、正規王者、スーパー王者と、同じ認定団体でも各階級チャンピオンが3人も存在する異常事態が発生し、インフレが止まりません。

タイトルマッチを冠してイベントに箔をつけたいテレビ局やプロモーター側の意向によるものとはいえ、それによってチャンピオンの地位が下がってしまったのだから、情けない限りです。

かつては世界チャンピオンといえば、世界で最も強い者だと誰もが認めていましたが、今はそう思われていません。

世界チャンピオンが4人もいるのだから、比較的弱い人もいます。

時に、強いチャンピオンが階級変更などでベルトを返上した穴をねらって、王座決定戦でチャンピオンになる人もいます。

中には、強いチャンピオンにお金を渡して無理に階級変更させたんじゃないかと勘繰りたくなるような例もありますからね。

そんなだから、観客も、チャンピオンが必ずしも1番ではないことを知っています。

1番じゃないチャンピオンの試合を観るぐらいなら、無冠でも1番強いボクサーの試合を観たいものですよ。


ボクシングは一人勝ちビジネス


ボクシングは個人競技ですから、特定の個人にビジネスの恩恵が集中しがちです。

強いボクサー、キャラの立ったボクサー、誰もが試合を観たいと思うボクサーに人気が集まります。

逆に、チャンピオンだけど大した特徴のないボクサー、あるいは実力はあるけれども安全運転ばかりで試合が面白くないボクサーには人気が集まりません。

特にいまはPPV(ペイ・パー・ビュー:テレビ中継で試合ごとにお金を払う仕組み)があるのでボクサーの人気が一目でわかります。

端的にいうと人気のあるボクサーは青天井に稼げるし、人気のないボクサーにはチャンスも与えられません。

1試合で数百億円も稼ぐ無冠のボクサーがいるかと思えば、バイトをやめられないローカルチャンピオンがいるのはそのためです。

ボクシングは危険な競技ですから、そう何試合もできるわけではありません。できれば短期間で稼いで引退したいのが人情です。

だからボクサーは誰と試合をするか、というキャリアマネジメントに敏感です。

人気のない相手と試合をして生命を削るよりは、人気者とビッグマッチをして効率的に稼ぎたいと多くのボクサーは考えているはずです。

文字通り命を賭けて戦う競技ですから、その姿勢に文句をいうことはできません。

実力はあるが、世界的には無名だった内山高志や山中慎介にチャンスが与えられなかったのは、そういう背景があったのです。


有力選手を海外に出したくないテレビ局


日本の場合は、PPVという形式はまだ一般的ではありません。

地上波の各テレビ局は看板チャンピオンを抱えており、熱心に売り出します。年末のボクシング中継は定番コンテンツですし、ある程度の視聴率は稼げるからです。

そんな時、看板選手に海外進出でもされようものなら、テレビ放映権さえもらえない事態もあり得ます。(何しろ海外は権利関係がシビアですから)しかも負けてしまって王座陥落なんてことになれば、今まで熱心に売り出した費用が大損になります。

テレビ局側は内心、海外進出なんてしてほしくないと思っているのです。

チャンピオン側としても、1試合数千万円、年間1億円ほど稼げるようになると、これで充分か、と思ってしまうかも知れません。

チャンピオン本人はボクサーの本能として強い相手と戦いたいと思っても、まわりにいる人たちは、確実に稼げる方法をとろうとします。

井岡一翔が、不可解な引退の後、すぐに海外で復帰したのは、トレーナーである父親の「テレビ局の意向に沿って安全に稼いでいこう」という方針に嫌気がさしたからだと噂されていますが、これは井岡一翔の父親が特殊なわけではなく、多くのボクシング関係者がそう考えていたといった方がいいと思います。

だから、海外のボクシング関係者が、わざわざ日本人を連れてこなくてもいいやん。と思うと同時に、日本側もわざわざ海外に行かなくてもいいやという風潮があったということです。


海外で活躍する日本人ボクサーが増えた理由


ところがここ数年、急に風向きが変わってきました。

海外のボクシング関係者が、にわかに日本人選手に注目しはじめたのです。

その理由の1つは、やはり海外で活躍した日本人選手の評判が高いことがあげられます。

西岡利晃(元WBC世界スーパーバンタム級王者)、高山勝成(元WBC、WBA、IBF、WBO世界ミニマム級王者)、石田順裕(元WBA世界スーパーウェルター級暫定王者)、三浦隆司(元WBC世界スーパーフェザー級王者)、亀田和毅(元WBO世界バンタム級王者)といった日本人ボクサーたちは総じてまじめで勤勉、体重管理もしっかりこなした後、試合に臨みます。

そんなのボクサーとして当たり前やろ。体重管理は最低限の約束事やないか。と思われるでしょうが、海外の選手はわりといい加減で、特に近年は意図的な減量失敗が相次いでいます。

上にも書きましたが、ボクシングというビジネスは人気商売です。まじめでも負けたら人気は落ちてしまう。それなら、体重超過してでも勝ってやろうと考える輩が頻出しているのです。

たとえば、現代最高のボクサーの一人だといわれるワシル・ロマチェンコという人がいます。(ウクライナ出身。元WBOフェザー級王者、元WBOスーパーフェザー級王者、現WBA世界ライト級スーパー王者)オリンピックで2大会連続金メダルという偉業を成し遂げたのち、鳴り物入りでプロ転向。わずか2戦目で、世界タイトルマッチに挑戦しました。

その時のチャンピオンがメキシコのオルランド・サリドです。まともにやっては勝てないと思ったのか、サリドはこの時、王座剥奪を覚悟のうえで、意図的に体重超過をして試合に臨みました。

体格的なアドバンテージを得たサリドは、頭突き、ローブロー、腕がらみ、組みつきといった実にいやらしいダーティなテクニックを駆使して、ロマチェンコを煙に巻きました。

サリド自身も王座を失ったのですが、これで彼の価値が下がったのかといえばそうではありません。むしろダーティな技術を使ってでもロマチェンコを退けた男として、名をあげました。

逆に、勝ち目がないと思ったら、あっさりギブアップしてしまうのも、海外の選手に多くみられます。

上のロマチェンコはその後、技術をさらに磨き、異次元と思えるほどの強さを発揮するようになりました。

だからロマチェンコと試合をする多くのボクサーが、途中でやる気をなくして、棄権してしまいます。これを俗にロマチェンコ勝ちというそうです。

勝てるとなれば汚い手を使ってでも勝ちにいく。勝ち目がないと思えば、余分なダメージを負う前に試合放棄してしまう。

確かに、ボクシングを個人のビジネスとして考えるなら、合理的な行動です。

しかし、これでは、観ている方は、面白くない。やるなら正々堂々と最後までスリリングな試合を展開してほしい。

その点、日本人選手は、国民性なのか、ズルして勝つことを良しとせず、最後まで諦めない精神をもっています。

海外の選手がちゃっかりすればするほど、日本人選手の価値が上がるというものです。


アメリカ側がボクシング選手を買い漁っている


理由の2つ目は、海外のメディアがボクシング放送を増やす傾向にあり、選手不足にあるという事情です。

これまでアメリカのボクシング中継といえばケーブルテレビ局が担っていました。

ところが今は、ネット配信の時代です。スポーツ中継の世界にもネット配信業者が参入してきており、競争が激化しています。

そうなると人気スポーツは放送権料が高騰してしまいます。

アメリカで人気のアメフト、バスケットボール、メジャーリーグベースボール、サッカー、ゴルフ、テニスなどは、そうたやすく放映できる値段ではなくなってしまいました。

特にアメフトは、自分たちでネット配信してやろうと思っているふしがあるので強気です。相当の金額を積まないと放送もできません。

そこで、放送権料が比較的安価なボクシングに脚光が当たってきたのです。

何しろ、ボクシングは、一般的にはまだそこまで人気のスポーツではないものの、一部の熱狂的なファンが存在します。

このボクシングというコンテンツを盛り上げて、人気番組にしていけば、テレビ局もボクシング業界も潤います。

そこで今までボクシングに興味のなかったスポーツ放送局や、ネット配信メディアなどが、次々とボクシング中継に乗り出してきたのです。

テレビ局は人気選手を抱え込もうとしますから、勢い、選手が足りなくなります。

そこで、真面目で勤勉、どのような時でも試合を投げ出したりしない日本人選手にも、海外メディアが触手を伸ばし始めたというわけです。

海外大手プロモート会社のトップランク社が、世界チャンピオンでもない岡田博喜と3年契約を結んだのは、海外勢による日本人の青田買いが始まったことを示しています。


僻地のボクサーでも見つけられてしまう時代


理由の3つ目は、ネットによる情報の拡散です。

以前は、日本のローカル王者の試合が、海外ファンに知られることはまずありませんでした。

しかし今は、ユーチューブがあります。

たとえ地球の果ての試合でも簡単に観ることができる環境になっています。

そんな中、海外メディアから大きな期待を寄せられているのが、日本ボクシング史上の最高傑作とまで言われる井上尚弥です。(WBA世界バンタム級正規王者)

高校生の時、スパーリングで日本ランカーを滅多打ちにしたモンスターぶりは一部のボクシング関係者にこそ知られていましたが、一般的ではありませんでした。

ところが、井上がプロ入りし、勝ち進むようになると、海外の選手が対戦を拒否するようになりました。

試合動画を観た海外の選手が「こんなやつと戦ったら潰される」と思うようになったのです。

井上がプロ入りする時の条件として挙げたのが「アンダードッグとは試合しない」というものでした。とにかく強いやつと試合させてほしい。と望んだのです。

ところが意に反して、井上陣営は対戦相手選びに苦慮するようになります。

そりゃそうですよ。こんなモンスターと試合して選手生命を潰されたら、一生の大損です。

海外の名のあるチャンピオンも、井上と戦う際には、無茶苦茶なファイトマネーを要求するそうです。

井上側はそれをすべて飲んだ上で対戦要求するのですが、それでもドタキャンされる例が相次いでいるといいます。

モンスターという称号のわりに、有名選手との試合が少ないのは、知名度に比べて実力があり過ぎるからなのです。

今のところ世界で認められた対戦相手は、アルゼンチンのオマール・ナルバエスと、イギリスのジェームズ・マクドネルだけです。

ナルバエスは当時スーパーフライ級11度防衛中の絶対王者でした。だからライトフライ級から2階級もあげてきた井上を軽く見たのかも知れません。果たして、2ラウンドで4度のダウンを奪われてKOされるという惨劇を味わうことになりました。

マクドネルは、亀田和毅を2度も破った実力者です。井上側に法外なファイトマネーをふっかけ、それを丸のみされて試合をすることになりました。減量の失敗も伝えられていましたが、計量時、失礼な態度をとったことが井上の怒りを買い、試合が始まると、滅多打ちされて、わずか112秒でKOされる羽目となりました。

こんな試合をしていたら、それは対戦相手がいなくなりますよ。

ところがユーチューブも悪いばかりではありません。井上の圧倒的な試合ぶりを観た海外ファンが騒ぎ始めまたのです。

「日本には恐ろしく強いモンスターがいるらしい」

評判を聞きつけた海外メディアがこれを放っておくことはありません。

折しも、ファイトマネーの安い軽量級の試合を多く放送したいという海外メディアの意向もあり、井上に対する期待が非常に大きなものになってきたのです。


WBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)


そしてこのたびWBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)がバンタム級で開催されることになりました。

WBSSとは、各階級のチャンピオンクラスを一同に会して、トーナメント形式で最も強いボクサーを決めようという壮大なシリーズです。

人気選手を囲い込んで離さないアメリカのテレビ局や大手プロモーターのビジネス手法に対抗し、欧州系のプロモーターやネットメディアが中心になって、主にスター選手がいない階級での開催を目論んでいます。

第一期は、クルーザー級とスーパーミドル級で、賞金総額55億円というビッグイベントとして開催されました。

そして第二期は、スーパーライト級とバンタム級で開催されます。

バンタム級の優勝賞金は約4億円といわれています。もともとファイトマネーに恵まれない軽量級のボクサーにとっては、夢のような報酬です。

だからなのか、バンタム級のトーナメントには、各団体の王者が4人も参加するという豪華な陣容となりました。

もちろん、そこには井上も参加しています。いや、このイベントそのものが、井上の出場を前提に企画されたものだと言っても過言ではないでしょう。当然ながら優勝候補筆頭と目されています。


井上尚弥の強すぎるゆえの悩み


WBSSの開催を受けて最も安堵しているのは井上陣営の大橋ジム会長でしょうね。

何せ、井上が試合するとなれば、強いやつから順番にオファーして交渉するということを繰り返してきました。

それでも決まらない。のらりくらりかわされて、挙句の果てにドタキャンです。だってみんな井上とはやりたくないのだから仕方ありません。

結果として試合を受けてくれるのは、普通ならタイトルマッチに挑戦できないような実力のない相手です。

強い相手と戦いたいという井上の要望を充分に知りながら、叶えてやれないのはもどかしい思いだったことでしょう。

が、トーナメントで対戦順が決まっていれば、さすがに逃げることはできません。

しかも、ここで圧倒的な実力差をみせて優勝すれば、名実ともに世界のモンスターと認知されます。

そうなると、世界のボクサーから最終的な目標にされる存在となります。

最後の稼ぎ時を避けるボクサーはさすがにいません。

初めて対戦相手に困らなくなることでしょう。

大橋会長の苦悩の日々も終わります。


最終目標まであと一歩の村田諒太

いっぽうミドル級のWBAチャンピオン村田諒太は、10月にラスベガスで防衛戦を行う予定です。

村田の場合、最終目標はミドル級の帝王ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)とのビッグマッチです。

幸いゴロフキン側も、村田との対戦に前向きであると伝えられています。

だから、村田側は、ゴロフキンと戦うまでは何がなんでも生き残りたいと考えていることでしょう。

対戦相手には慎重にならざるを得ません。あまり強い相手だと負けてしまう恐れがあるし、むっちゃ弱い相手だとヘタレ王者の烙印を押されてしまいます。

井上尚弥ほどの実力があれば余計な気を遣うことはないのでしょうが、村田の実力はそこまでではありませんからね。

次戦、ラスベガスのお披露目戦でいい試合をして、次のゴロフキン戦(東京ドームでの開催が噂されています)につなげてほしいと思います。


井上尚弥は持っていた


内山高志や山中慎介が望んでやまなかった海外のビッグネームとの試合。

それをいともあっさりと叶えてしまいそうな井上尚弥です。

それは、井上の実力が、先達に比べて並外れているというわけではなく、世界のボクシングビジネス全体が変化する流れに乗った結果だったとうことがわかっていただけたでしょうか。

いうなれば、井上尚弥は「運」も持っていたということです。


これからも日本人ボクサーの海外進出という流れは加速していくことと思います。


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