阪神タイガースはなぜ優勝できないのか?

2014.10.02

(2014年10月2日メルマガより)


■2014年のプロ野球も大詰めを迎えております。


パ・リーグは面白いですね。

10月になってもペナントレースの優勝争いを続けています。

圧倒的に優勢だったソフトバンクホークスが、ここにきてまさかの失速。

そのため、息を吹き返したオリックス・バッファローズが、持ち前の投手力を活かして気勢をはいています。

近年稀に見るデッドヒートですな。

■セ・リーグは、既に読売ジャイアンツの優勝が決まっています。

が、広島カープと阪神タイガースによる2位争いはし烈です。

本来、2位争いなどどうでもいいようなもんですが、CS(クライマックス・シリーズ)があるために、どうでもいいとは言えません。

なにしろ、2位のチームは、自軍のホーム球場で戦うことができます。

阪神タイガースなど甲子園で戦う時は、ファンの声援を受けて、実力以上の力を発揮するものですから、2位になってホーム球場で戦う権利を得ることは大きい。

CSなんて邪道だーーと思うこともありますが、プロ野球を最後の最後まで面白くさせてくれているのですから、いい制度でもあるんですね。

■まあ、それにしてもですよ。。。

読売ジャイアンツは、3年連続のセ・リーグ制覇です。

嫌になりますね。

あれだけ資金力にものをいわせて、有望選手を集めてくれば、そりゃあ勝てるでしょうよ。

なにしろ、この10年で、読売は優勝6回。(中日が3回、阪神1回)

優勝しすぎやないか(ーー;

パ・リーグなど戦力の均衡がとれているので、ここ10年では、日本ハム4回、ソフトバンク2回、西武1回、ロッテ1回、楽天1回。今年、オリックスが優勝すれば、すべての球団が10年で優勝を分け合う形となります。

これぞリーグの正しい姿です。ファンは面白でしょうねーー^^

それに比べて、セ・リーグはいかにもバランスが悪い。

「球界の盟主」とか言っているわりには、戦力差をつくって、セ・リーグを面白くなくしているのは、読売ジャイアンツじゃないか。

わがまま放題やりやがって。

■と愚痴をいいたくなりますが、振り返って、わが阪神タイガースの状況を見てみると、決して弱いわけではありません。

ここ10年で3位以内に入らなかったのは3回だけです。

少なくとも、CS挑戦権は得ています。

ただし、優勝できない。

どういうわけか、最後のところで失速し、競い負けしてしまう。

なんででしょうね。

■と思っていたら、元阪神タイガース監督の野村克也氏が、また本を出しました。

なんと「阪神タイガースの黄金時代が永遠に来ない理由」という著作です。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4800227895/lanchesterkan-22/ref=nosim

野村本は、どれも似たようなものなので、もういいやと思っていたのですが、そんな本を出されたら気になって仕方ありませんや。

果たして、勝手なこと言いやがって。ええ加減にせえよ。と言いたくなる箇所もあるのですが、全体としてはごもっともな御説を述べておられます。

ファンとしても耳の痛い話が多い著作でした。

■そもそも、なんで阪神タイガースはいつもいつも終盤に失速してしまって優勝できないのでしょうか。

和田監督などは「選手層の薄さ」を理由に挙げています。

確かに読売は、選手層が厚い。ベテランが怪我をして休んでも、控え選手が遜色ないような活躍をします。

ところが阪神の場合、夏場に主力級が調子を落としても、代わりに出てくる選手がパッとしないので、休ませることができません。

同じように若手も夏場にバテて、調子を落とすので、全体として失速することになってしまいます。

野村監督時代の阪神が後半に失速したのは、そこに原因があったと感じます。

(野村監督の場合、選手をまとめきれなかったというのが最大の理由でしょうが)

■落合監督時代の中日は、そこに目をつけて、選手の基礎体力を徹底して鍛える手法で常勝軍団を作り上げました

プロなんだからスキルはどの球団も似たようなもの、差がつくのは夏場の体力だ、と落合監督は考えたようです。

選手層の薄さを主力級の耐久力でカバーするというのは、ベタな手法ですが、新鮮だったと思いますし、実際に機能しました。

■阪神も同じようにできないのでしょうかね。

やればええやん。と思うのですが、野村氏によると、選手を甘やかす在阪マスコミのおかげできついことはやりにくいらしい。

落合氏も解説者時代「阪神の選手は練習していない」と発言していましたから、野村氏の言うことも真実を含んでいるのかも知れません。

■が、それだけで、終盤の弱さを説明することはできません。

今年にしろ、去年にしろ、「天王山」といわれる試合で必ず負けるのは、体力だけの問題ではありません。

基礎的な能力は、長期でみた時の結果に影響を与えます。

そういう意味では、阪神タイガースの基礎能力は高いのです。

しかし、短期決戦の成績は、そこで測ることはできません。

いわゆる弱者の戦法とは、用兵の妙です。

総合的な能力に劣っていても、強みを活用することで、ここぞという試合に勝つことはできるはずです。

要するに、指揮官の能力に問題があるということです。

■なにしろ、阪神タイガースの短期決戦の弱さは際立っています。

クライマックスシリーズにおける成績は通算1勝6敗。

今まで、4度挑戦して、一度も勝ち上がったことがありません。

この実績をみると、レギュラーシーズンの終盤、勝ち残り戦のような状況になった時の戦い方を知らないのだと言わざるを得ませんな。

■孫子は「戦いは正をもって合い、奇をもって勝つ」と記しています。

堂々たる正攻法で戦うのはもちろんですが、勝ちきるためには奇策を用いる必要があります。

ところが和田監督は、いついかなる時も普段通りの野球を志向しています。

真面目なのはいいことですが、正攻法ばかりだと、相手に読まれてしまって、ここぞという時に足元をすくわれてしまいます。

■それに対して、悔しいかな、読売の原監督は、シーズン中盤あたりから、主力を二軍に落としたり、代打を使ったり、動きすぎの感はあるものの変化をつけて戦おうとしています。

そしてここぞという時には、主力級そろい踏みで勝ちきってしまいます。

悲しいかな、阪神タイガースは、岡田監督時代から、シーズン通して同じ戦い方をして、最後に競い負けてしまうということが多かったのです。

用兵が単純すぎると相手に読まれてしまうでしょうし、同じ選手ばかりでは消耗も早くなってしまいます。

これは現場を預かる者の責任です。

だから、和田監督は、現場の責任者として、選手層の薄さなどを言い訳にしてはダメですよ。

あなたが、与えられた戦力をうまく使えていないだけやないか!

■むしろ長期戦でみた場合、阪神タイガースは弱いわけではありません。

参考:今季3位の阪神と日ハム 過去10年成績"雲泥の差"の理由
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/153572

こういう記事があるものの、私自身は、現在の阪神のフロントが昔ながらの無策でいるわけではないと考えています。

この記事にもありますし、野村氏の著作にもたびたび出てくることですが、阪神の昔の編成はひどかったらしい。

なにせスカウトの人は、自分が推した選手が入団すれば金一封をもらえるものですから、競合の少ない選手を選ぼうとします。

結果として一時期の阪神には、他球団が興味を示さないような特徴のない選手がいっぱい入ってきたようです。

これでは強くなりようがありませんわな。

今は違います。競合を怖れずに、いい選手、必要な選手をとりにいきます。

一昨年は、4球団競合の末、みごと甲子園優勝投手である藤浪晋太郎を引き当てました。

この一事をもってしても、阪神球団フロントの本気度がうかがえるというものです。

■しかし、皆が諦めていた大谷翔平を強行指名し、みごと入団させて、二刀流などという前代未聞の育成プランに取り組んでいる日本ハムとはレベルが違います。

これは比べてはダメです。

なにしろ、日本ハムは、10年前に北海道に本拠地を移したばかりの球団です。新参者ですから、強くなければ客も入りません。

フロントも生き残るためには真剣にならざるを得ません。

方や、80年近い歴史を誇る人気球団の阪神タイガースです。

勝っても勝たなくても、何をしてもしなくても、客が入って、儲からない時はありません。

そんな球団のフロントが、危機感を持つ方が不思議です。

■球界の盟主を自認する読売ジャイアンツは、彼らなりにプロ野球界の未来に危機感を抱き、「プロ野球が発展するためには、読売ジャイアンツが強くなければならない」という信念をもって、せっせと球団づくり、球界づくりに取り組んでいます。

はなはだ身勝手な信念ではあるもののその姿勢は一貫しています。

それに対して、阪神タイガースは「ジャイアンツの好敵手でいいや」という立場を動こうとしませんでした。

徹底したフォロワーです。

確かに儲かる。儲かる間は、このままでええやん。というファンをバカにした姿勢であるものの、やはり民間企業として利益を確保しようとする姿勢は一貫しています。

外国人選手にええのんを連れてきたらそこそこ勝てる。FAでもたまにええのんをとればええ。

そんな思惑が見え隠れする補強戦略ですが、企業として利益を上げているのだから一定の評価をしなければならないでしょう。

■そんな阪神のフロントが、さすがに変わり始めたのは、10年前の球界再編騒動あたりからでしょうか。

近鉄バッファローズの身売りに端を発したこの騒動は、プロ野球の収益構造が変わらざるを得ないことを晒しました。

それまでのプロ野球は、読売が作ったテレビ放映権をあてにした収益モデルでした。

ところがプロスポーツが多様化し、プロ野球だけが儲かるテレビコンテンツではなくなってきました。

読売戦のおこぼれをもらうセ・リーグの球団はまだしも、人気のないパ・リーグは縮小する収益(拡大する赤字)に耐え切れなくなっていたのです。

あの時、読売グループの総帥渡邉恒雄氏は、強引に1リーグ制にしてしまって、収益モデルはそのままに縮小均衡することで難局を乗り切ろうとしました。

それに反対したのは、フォロワーであるはずの阪神タイガースでした。1リーグになると、読売戦が減ってしまって、儲けが減るからです。

渡邉氏の思惑通りにはいかず、2リーグ制は維持されました。

その代わり、パ・リーグの諸球団は、テレビ放映権以外の収益モデルを作らざるを得なくなったのです。

それから10年。日本ハムもソフトバンクも楽天も、地方都市を拠点に、入場料収入や広告収入をもとにした地域密着型収益モデルを築きつつあります。

その様子をみていたセ・リーグの各球団が、脱読売モデルを志向するのは自然な流れです。

■先ほどの阪神と日ハムを比較した記事で、光明を見たのは、阪神フロントが実は主導的な立場で動いているというところでした

これは日本ハムの運営のやり方に通じるところがあります。

日本ハムのフロントは、選手の採用や育成に全面的に関与しています。

監督は、現場の指導者に過ぎません。

ビジネスに置き換えるまでもなく、現場レベルのマネージャーがいくら頑張っても、やれることは知れています。

戦いが始まった時点で、ほとんど勝負がついている。ということは、フロントがチーム編成をした時点で、勝負の趨勢は決まっているのです。

そればかりか、日本ハムのフロントは、采配にも口出しをしようとしているらしい。記事によると、監督が若手を使わない場合、主力のベテランを放出することも辞さない。

(糸井嘉男選手の移籍は記憶に新しいところです)

日本ハムの編成の全責任を負うのは、山田正雄GMです。

■阪神タイガースにはご存じ中村勝広GMがいます。

ところが記事によると、中村GMにほとんど権限はなく、お飾りに過ぎないとのこと。

ひどい話に思えますが、なぜかホッとしたのは私だけでしょうか^

中村GMや実直な和田監督を風除けにして、フロントがぬくぬくと過ごしているといえば、いかにも悪代官の所作のように思えますが、曲がりなりにもCSに4度挑戦という結果は残しているのです。

確かにドラフトやFAでは、日本ハムに比べて甘い部分があるようですが、現場任せにしないという姿勢は、過去の「ええ外人を連れてきたらええ」「勝つのは監督の手腕やろ」という放任主義よりよほどいいと思います。

少なくとも、14年前に、野村克也監督が久万オーナーに「チームが弱いのは、あなたの責任です!」と噛みついた頃よりは、進んでいるのではないでしょうか。

■惜しむらくは、読売ジャイアンツが強いこと。

フロントは、資金力にものをいわせていい選手をかき集めてくるし、現場の原監督は長い経験のうちに一年を戦う駆け引きを覚えて、隙がありません。

阪神フロントとしては、頑張っているし、そこそこの成績も残しているのでしょうが、それにしてはインパクトがない。

なぜかというと、シーズンの終盤やCSにおいて勝てないから、いつも未達感が残ってしまうのです。

そこそこ頑張ってこの結果では、なんとも残念です。

ここは戦略を変えるべきでしょう。

■まずは目標を変えること。

阪神タイガースは嘘か本当か「毎年優勝」を目標に掲げているようです。

無理でしょ。

それで9年間、優勝から遠ざかっているのですから、無理なんですよ。

私なら優勝など目指しません。

シーズンの優勝は、毎年、読売で結構です。

3位、できれば2位を狙う。

それで、CSで暴れまわって、日本シリーズ進出を目指します。

■そのためには、シーズン通して、愚直に正攻法をやり続けるような愚は犯しません。

とにかく阪神は手の内を晒しすぎます。

呉昇桓(オ・スンファン)をあれだけ酷使してどうすんだーということです。

シーズン終盤にこれだけ投げさせられれば、CSで打たれるのは当たり前です。

あの藤川球児でさえ、CSや日本シリーズではヘロヘロになっていたのですから。

序盤戦で、読売ジャイアンツや広島カープに通用した投手は、中盤には投げさせないで、終盤になってぶつけまくるぐらいの工夫はしてほしいものですよ。

毎回、総力戦を挑んで、終盤打つ手がなくなるようなお粗末なペナントレースは見たくない

鳥谷敬がフルイニング出場にこだわるのはわかりますが、それは個人の事情です。夏場に調子を落とすような選手を出場させ続けるわけにはいきません。

(鳥谷は、夏場になると調子を上げた金本を見習え!)

個人の記録などチームの勝利の前では取るに足らないことです。それを堂々といえる人が監督にならなければなりません。

結論としては、和田監督では役不足です。監督には、チームの勝利を最優先だと言える人。そのために、正攻法と奇策を組み合わせることができる策士を選んでほしいものです。

■記事によると、日本ハムは、3年に1度の優勝を目標に掲げているそうじゃないですか。

フロントもそのつもりで、チームを編成し、選手を育成しているようです。

そのメリハリは見習ってもらいたい。

あえて連覇など望みません。

3年に1度の優勝で十分ですから。

いや。優勝しなくてもいい。3年に1度、CSを勝ち上がって、日本シリーズに進出してもらいたい。

それが、六甲おろしをアカペラで3番まで歌う熱狂的なファンの願いです!

■確かに、お飾りのGMを置いて、風除けにするフロントというのは卑劣ですな。。。

それでも、阪神球団は、フロント主導によるイノベーションの途上にあると思いたい。

あと3年後、CSにおける常勝チームが出来上がっていることを楽しみにしておきます。

(2014年10月2日メルマガより)


■2014年のプロ野球も大詰めを迎えております。


パ・リーグは面白いですね。

10月になってもペナントレースの優勝争いを続けています。

圧倒的に優勢だったソフトバンクホークスが、ここにきてまさかの失速。

そのため、息を吹き返したオリックス・バッファローズが、持ち前の投手力を活かして気勢をはいています。

近年稀に見るデッドヒートですな。

■セ・リーグは、既に読売ジャイアンツの優勝が決まっています。

が、広島カープと阪神タイガースによる2位争いはし烈です。

本来、2位争いなどどうでもいいようなもんですが、CS(クライマックス・シリーズ)があるために、どうでもいいとは言えません。

なにしろ、2位のチームは、自軍のホーム球場で戦うことができます。

阪神タイガースなど甲子園で戦う時は、ファンの声援を受けて、実力以上の力を発揮するものですから、2位になってホーム球場で戦う権利を得ることは大きい。

CSなんて邪道だーーと思うこともありますが、プロ野球を最後の最後まで面白くさせてくれているのですから、いい制度でもあるんですね。

■まあ、それにしてもですよ。。。

読売ジャイアンツは、3年連続のセ・リーグ制覇です。

嫌になりますね。

あれだけ資金力にものをいわせて、有望選手を集めてくれば、そりゃあ勝てるでしょうよ。

なにしろ、この10年で、読売は優勝6回。(中日が3回、阪神1回)

優勝しすぎやないか(ーー;

パ・リーグなど戦力の均衡がとれているので、ここ10年では、日本ハム4回、ソフトバンク2回、西武1回、ロッテ1回、楽天1回。今年、オリックスが優勝すれば、すべての球団が10年で優勝を分け合う形となります。

これぞリーグの正しい姿です。ファンは面白でしょうねーー^^

それに比べて、セ・リーグはいかにもバランスが悪い。

「球界の盟主」とか言っているわりには、戦力差をつくって、セ・リーグを面白くなくしているのは、読売ジャイアンツじゃないか。

わがまま放題やりやがって。

■と愚痴をいいたくなりますが、振り返って、わが阪神タイガースの状況を見てみると、決して弱いわけではありません。

ここ10年で3位以内に入らなかったのは3回だけです。

少なくとも、CS挑戦権は得ています。

ただし、優勝できない。

どういうわけか、最後のところで失速し、競い負けしてしまう。

なんででしょうね。

■と思っていたら、元阪神タイガース監督の野村克也氏が、また本を出しました。

なんと「阪神タイガースの黄金時代が永遠に来ない理由」という著作です。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4800227895/lanchesterkan-22/ref=nosim

野村本は、どれも似たようなものなので、もういいやと思っていたのですが、そんな本を出されたら気になって仕方ありませんや。

果たして、勝手なこと言いやがって。ええ加減にせえよ。と言いたくなる箇所もあるのですが、全体としてはごもっともな御説を述べておられます。

ファンとしても耳の痛い話が多い著作でした。

■そもそも、なんで阪神タイガースはいつもいつも終盤に失速してしまって優勝できないのでしょうか。

和田監督などは「選手層の薄さ」を理由に挙げています。

確かに読売は、選手層が厚い。ベテランが怪我をして休んでも、控え選手が遜色ないような活躍をします。

ところが阪神の場合、夏場に主力級が調子を落としても、代わりに出てくる選手がパッとしないので、休ませることができません。

同じように若手も夏場にバテて、調子を落とすので、全体として失速することになってしまいます。

野村監督時代の阪神が後半に失速したのは、そこに原因があったと感じます。

(野村監督の場合、選手をまとめきれなかったというのが最大の理由でしょうが)

■落合監督時代の中日は、そこに目をつけて、選手の基礎体力を徹底して鍛える手法で常勝軍団を作り上げました

プロなんだからスキルはどの球団も似たようなもの、差がつくのは夏場の体力だ、と落合監督は考えたようです。

選手層の薄さを主力級の耐久力でカバーするというのは、ベタな手法ですが、新鮮だったと思いますし、実際に機能しました。

■阪神も同じようにできないのでしょうかね。

やればええやん。と思うのですが、野村氏によると、選手を甘やかす在阪マスコミのおかげできついことはやりにくいらしい。

落合氏も解説者時代「阪神の選手は練習していない」と発言していましたから、野村氏の言うことも真実を含んでいるのかも知れません。

■が、それだけで、終盤の弱さを説明することはできません。

今年にしろ、去年にしろ、「天王山」といわれる試合で必ず負けるのは、体力だけの問題ではありません。

基礎的な能力は、長期でみた時の結果に影響を与えます。

そういう意味では、阪神タイガースの基礎能力は高いのです。

しかし、短期決戦の成績は、そこで測ることはできません。

いわゆる弱者の戦法とは、用兵の妙です。

総合的な能力に劣っていても、強みを活用することで、ここぞという試合に勝つことはできるはずです。

要するに、指揮官の能力に問題があるということです。

■なにしろ、阪神タイガースの短期決戦の弱さは際立っています。

クライマックスシリーズにおける成績は通算1勝6敗。

今まで、4度挑戦して、一度も勝ち上がったことがありません。

この実績をみると、レギュラーシーズンの終盤、勝ち残り戦のような状況になった時の戦い方を知らないのだと言わざるを得ませんな。

■孫子は「戦いは正をもって合い、奇をもって勝つ」と記しています。

堂々たる正攻法で戦うのはもちろんですが、勝ちきるためには奇策を用いる必要があります。

ところが和田監督は、いついかなる時も普段通りの野球を志向しています。

真面目なのはいいことですが、正攻法ばかりだと、相手に読まれてしまって、ここぞという時に足元をすくわれてしまいます。

■それに対して、悔しいかな、読売の原監督は、シーズン中盤あたりから、主力を二軍に落としたり、代打を使ったり、動きすぎの感はあるものの変化をつけて戦おうとしています。

そしてここぞという時には、主力級そろい踏みで勝ちきってしまいます。

悲しいかな、阪神タイガースは、岡田監督時代から、シーズン通して同じ戦い方をして、最後に競い負けてしまうということが多かったのです。

用兵が単純すぎると相手に読まれてしまうでしょうし、同じ選手ばかりでは消耗も早くなってしまいます。

これは現場を預かる者の責任です。

だから、和田監督は、現場の責任者として、選手層の薄さなどを言い訳にしてはダメですよ。

あなたが、与えられた戦力をうまく使えていないだけやないか!

■むしろ長期戦でみた場合、阪神タイガースは弱いわけではありません。

参考:今季3位の阪神と日ハム 過去10年成績"雲泥の差"の理由
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/153572

こういう記事があるものの、私自身は、現在の阪神のフロントが昔ながらの無策でいるわけではないと考えています。

この記事にもありますし、野村氏の著作にもたびたび出てくることですが、阪神の昔の編成はひどかったらしい。

なにせスカウトの人は、自分が推した選手が入団すれば金一封をもらえるものですから、競合の少ない選手を選ぼうとします。

結果として一時期の阪神には、他球団が興味を示さないような特徴のない選手がいっぱい入ってきたようです。

これでは強くなりようがありませんわな。

今は違います。競合を怖れずに、いい選手、必要な選手をとりにいきます。

一昨年は、4球団競合の末、みごと甲子園優勝投手である藤浪晋太郎を引き当てました。

この一事をもってしても、阪神球団フロントの本気度がうかがえるというものです。

■しかし、皆が諦めていた大谷翔平を強行指名し、みごと入団させて、二刀流などという前代未聞の育成プランに取り組んでいる日本ハムとはレベルが違います。

これは比べてはダメです。

なにしろ、日本ハムは、10年前に北海道に本拠地を移したばかりの球団です。新参者ですから、強くなければ客も入りません。

フロントも生き残るためには真剣にならざるを得ません。

方や、80年近い歴史を誇る人気球団の阪神タイガースです。

勝っても勝たなくても、何をしてもしなくても、客が入って、儲からない時はありません。

そんな球団のフロントが、危機感を持つ方が不思議です。

■球界の盟主を自認する読売ジャイアンツは、彼らなりにプロ野球界の未来に危機感を抱き、「プロ野球が発展するためには、読売ジャイアンツが強くなければならない」という信念をもって、せっせと球団づくり、球界づくりに取り組んでいます。

はなはだ身勝手な信念ではあるもののその姿勢は一貫しています。

それに対して、阪神タイガースは「ジャイアンツの好敵手でいいや」という立場を動こうとしませんでした。

徹底したフォロワーです。

確かに儲かる。儲かる間は、このままでええやん。というファンをバカにした姿勢であるものの、やはり民間企業として利益を確保しようとする姿勢は一貫しています。

外国人選手にええのんを連れてきたらそこそこ勝てる。FAでもたまにええのんをとればええ。

そんな思惑が見え隠れする補強戦略ですが、企業として利益を上げているのだから一定の評価をしなければならないでしょう。

■そんな阪神のフロントが、さすがに変わり始めたのは、10年前の球界再編騒動あたりからでしょうか。

近鉄バッファローズの身売りに端を発したこの騒動は、プロ野球の収益構造が変わらざるを得ないことを晒しました。

それまでのプロ野球は、読売が作ったテレビ放映権をあてにした収益モデルでした。

ところがプロスポーツが多様化し、プロ野球だけが儲かるテレビコンテンツではなくなってきました。

読売戦のおこぼれをもらうセ・リーグの球団はまだしも、人気のないパ・リーグは縮小する収益(拡大する赤字)に耐え切れなくなっていたのです。

あの時、読売グループの総帥渡邉恒雄氏は、強引に1リーグ制にしてしまって、収益モデルはそのままに縮小均衡することで難局を乗り切ろうとしました。

それに反対したのは、フォロワーであるはずの阪神タイガースでした。1リーグになると、読売戦が減ってしまって、儲けが減るからです。

渡邉氏の思惑通りにはいかず、2リーグ制は維持されました。

その代わり、パ・リーグの諸球団は、テレビ放映権以外の収益モデルを作らざるを得なくなったのです。

それから10年。日本ハムもソフトバンクも楽天も、地方都市を拠点に、入場料収入や広告収入をもとにした地域密着型収益モデルを築きつつあります。

その様子をみていたセ・リーグの各球団が、脱読売モデルを志向するのは自然な流れです。

■先ほどの阪神と日ハムを比較した記事で、光明を見たのは、阪神フロントが実は主導的な立場で動いているというところでした

これは日本ハムの運営のやり方に通じるところがあります。

日本ハムのフロントは、選手の採用や育成に全面的に関与しています。

監督は、現場の指導者に過ぎません。

ビジネスに置き換えるまでもなく、現場レベルのマネージャーがいくら頑張っても、やれることは知れています。

戦いが始まった時点で、ほとんど勝負がついている。ということは、フロントがチーム編成をした時点で、勝負の趨勢は決まっているのです。

そればかりか、日本ハムのフロントは、采配にも口出しをしようとしているらしい。記事によると、監督が若手を使わない場合、主力のベテランを放出することも辞さない。

(糸井嘉男選手の移籍は記憶に新しいところです)

日本ハムの編成の全責任を負うのは、山田正雄GMです。

■阪神タイガースにはご存じ中村勝広GMがいます。

ところが記事によると、中村GMにほとんど権限はなく、お飾りに過ぎないとのこと。

ひどい話に思えますが、なぜかホッとしたのは私だけでしょうか^

中村GMや実直な和田監督を風除けにして、フロントがぬくぬくと過ごしているといえば、いかにも悪代官の所作のように思えますが、曲がりなりにもCSに4度挑戦という結果は残しているのです。

確かにドラフトやFAでは、日本ハムに比べて甘い部分があるようですが、現場任せにしないという姿勢は、過去の「ええ外人を連れてきたらええ」「勝つのは監督の手腕やろ」という放任主義よりよほどいいと思います。

少なくとも、14年前に、野村克也監督が久万オーナーに「チームが弱いのは、あなたの責任です!」と噛みついた頃よりは、進んでいるのではないでしょうか。

■惜しむらくは、読売ジャイアンツが強いこと。

フロントは、資金力にものをいわせていい選手をかき集めてくるし、現場の原監督は長い経験のうちに一年を戦う駆け引きを覚えて、隙がありません。

阪神フロントとしては、頑張っているし、そこそこの成績も残しているのでしょうが、それにしてはインパクトがない。

なぜかというと、シーズンの終盤やCSにおいて勝てないから、いつも未達感が残ってしまうのです。

そこそこ頑張ってこの結果では、なんとも残念です。

ここは戦略を変えるべきでしょう。

■まずは目標を変えること。

阪神タイガースは嘘か本当か「毎年優勝」を目標に掲げているようです。

無理でしょ。

それで9年間、優勝から遠ざかっているのですから、無理なんですよ。

私なら優勝など目指しません。

シーズンの優勝は、毎年、読売で結構です。

3位、できれば2位を狙う。

それで、CSで暴れまわって、日本シリーズ進出を目指します。

■そのためには、シーズン通して、愚直に正攻法をやり続けるような愚は犯しません。

とにかく阪神は手の内を晒しすぎます。

呉昇桓(オ・スンファン)をあれだけ酷使してどうすんだーということです。

シーズン終盤にこれだけ投げさせられれば、CSで打たれるのは当たり前です。

あの藤川球児でさえ、CSや日本シリーズではヘロヘロになっていたのですから。

序盤戦で、読売ジャイアンツや広島カープに通用した投手は、中盤には投げさせないで、終盤になってぶつけまくるぐらいの工夫はしてほしいものですよ。

毎回、総力戦を挑んで、終盤打つ手がなくなるようなお粗末なペナントレースは見たくない

鳥谷敬がフルイニング出場にこだわるのはわかりますが、それは個人の事情です。夏場に調子を落とすような選手を出場させ続けるわけにはいきません。

(鳥谷は、夏場になると調子を上げた金本を見習え!)

個人の記録などチームの勝利の前では取るに足らないことです。それを堂々といえる人が監督にならなければなりません。

結論としては、和田監督では役不足です。監督には、チームの勝利を最優先だと言える人。そのために、正攻法と奇策を組み合わせることができる策士を選んでほしいものです。

■記事によると、日本ハムは、3年に1度の優勝を目標に掲げているそうじゃないですか。

フロントもそのつもりで、チームを編成し、選手を育成しているようです。

そのメリハリは見習ってもらいたい。

あえて連覇など望みません。

3年に1度の優勝で十分ですから。

いや。優勝しなくてもいい。3年に1度、CSを勝ち上がって、日本シリーズに進出してもらいたい。

それが、六甲おろしをアカペラで3番まで歌う熱狂的なファンの願いです!

■確かに、お飾りのGMを置いて、風除けにするフロントというのは卑劣ですな。。。

それでも、阪神球団は、フロント主導によるイノベーションの途上にあると思いたい。

あと3年後、CSにおける常勝チームが出来上がっていることを楽しみにしておきます。

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