スタジオアリスがさらに成長するための方法

2018.05.31

(2018年5月31日メルマガより)

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スタジオアリスの記事を久しぶりにみました。



スタジオアリス様 ずいぶんご無沙汰して申し訳ございません。

それもそのはず。うちも子供が大きくなりましたからね。子供専用写真館のスタジオアリスと縁遠くなるのは仕方ありません。

子供が小さい頃は大変お世話になりました。

お宮参り、七五三、入園入学と、折々のハレの日によく撮影していただいたものです。


記事によると、2019年2月期の売上高見通しは、411億円の過去最高の見込みであるそうです。

店舗数は全国に510店舗。その殆どが直営店です。

子供用写真館のシェアは約6割。

最近は子会社への投資がかさんで利益は伸び悩んでいるとのことですが、2016年12月期の決算では、経常利益14%でした。

しかも無借金経営です。

これを優良企業と言わずして、何と呼ぶのでしょうか。


「子供写真館」というブルーオーシャンを開拓


スタジオアリスの前身は、大阪にあったDPE店(写真現像所)のチェーンでした。

デジカメの普及により、先行き不安だった同社は、1992年、新規事業として「子供専用写真館」を立ち上げます。

当時の社長は「新入社員の女の子二人に勝手にやらせたら、こんな店を作りよったんや」ととぼけた言い方をしておりましたが、それほど業界の常識に囚われない斬新な新規事業であったということでしょう。

なにしろ写真館という業態そのものが斜陽産業の最たるものです。デジカメ普及の前に、コンパクトカメラの普及が、写真館を追い込みました。DPEチェーン店の興隆は、写真館の没落の上に立つものだったはずです。

そこにわざわざ「子供専用」などと顧客を狭く絞る写真館なんて狂気の沙汰だといわれても仕方なかったでしょう。

しかし、これが当たりました。

子供専用にしたことで、子供写真に必要な技術やサービスを先鋭化できたからです。

あふれるばかりの貸衣装や撮影小道具はすべて無料。

メルヘンチックな店内の雰囲気は、子供だけでなく、大人もワクワクさせるものです。

それになんといっても、気難しい子供の機嫌をとって最高の一枚を撮影させる店員の技術は他に代えがたいものがありました。

スタジオアリスの最大のノウハウは、写真撮影の技術ではなく、子供をあやす技術だったのです。


子供写真館という業態の可能性に着目した同社は、おもちゃ小売りチェーンのトイザらスと提携し、本格的にチェーン展開していきました。

当初はトイザらス店内に併設する形で展開。後には、イオンなどのショッピングセンターのテナントとして店舗数を拡大していきました。

現在、店舗数の63%がショッピングセンター内のテナントとなっています。

同社が、直営店を中心に展開しながら、無借金経営ができる理由がここにありそうです。


同社の成功を受けて、多くの競合他社が子供専用写真館を立ち上げましたが、スピード出店の賜物か、市場の約6割をスタジオアリスが占めています。

市場シェア6割というと、ほぼ完全独占状態です。

この状態になると、競合他社がいっぱい現れて頑張ってくれるほど、トップ企業に脚光が当たり、ますます儲かります。

このへんのメカニズムは、ぜひランチェスター戦略を学んで知っておいてください。


スタジオアリスの成功要因


スタジオアリスがなぜこれほどの成功を収めたのか。

一つは、少子化ゆえの消費行動があります。

少子化の時代だからこそ、一人の子供にかける費用が上がっています。特に子供の写真は、親だけではなく祖父母の需要があります。

スタジオアリスの平均客単価は約3万円だということですが、1枚5千円の写真を2カット撮るだけでは1万円にしかなりません。

が、ここに両方の祖父母のために写真を焼き増しするとなると一気に3万円となります。

おそらく負担しているのは祖父母側なんでしょうね。孫需要です。


二つ目は、子供にはハレの日需要があるということです。

お宮参り。お食い初め。七五三。入園入学。と、子供には写真を撮りたくなるポイントが多数あります。

そのうち撮ろうという程度では誘引されませんが、ハレの日の縁起物であれば、高い撮影費を払う動機となります。


三つ目は、先ほども挙げた子供撮影なりの仕掛けやノウハウが必要なことです。

撮影用の衣装や小道具は、子供専用だからこそ揃えられるものです。店内のメルヘンチックな雰囲気づくりもしかりです。

撮影のために子供あやす行為も、子供専用だからこそ。隣りで見合い写真を撮影していたら、子供をあやしてなどいられませんわね。

だからスタジオアリスの従業員の殆どは女性です。女性の生来の子供を扱う能力を活用したビジネスです。

しかも業界のパイオニアであり、店舗数が多いので、日々新たなノウハウが蓄積されていっていることでしょう。


そして四つ目は、横展開しやすいことです。

同社にノウハウがあるといっても、それは特殊な訓練が必要なものではないはずです。

特に撮影に関して、熟練のカメラマンでなければ撮れないものではありません。

プロ写真ぽく見えるのは、照明と背景のおかげです。デジカメだから大量に撮影しても費用はかかりません。

スタジオの背景と照明の中、何十枚、何百枚も撮れば、いい写真も撮れるというものですよ。

しかも何十枚の中から選択するのはユーザーです。自分で選んだのだから文句は言えません。そこもノウハウですな。

熟練の技術を必要としないビジネスモデルなので、横展開しやすくなります。


写真館は、いわゆる装置産業です。

設備にそれなりの投資が必要ですが、一度作ってしまえば、利益率は高くなります。

顧客さえ確保できれば儲かるビジネスであり、子供のハレの日需要というブルーオーシャンを掴んだスタジオアリスが、我が世の春を謳歌できたのも自明だったのです。


市場は既に飽和している?


しかし、いくら孫にお金を出すといっても、少子化なのですから、市場規模には限界があります。

いつ飽和状態になっても不思議ではありません。

いや、すでに飽和しているのではないか?


今回の過去最高売上高見込みの発表にしても、来年2月期の売上高ですよ。なぜ今の時期に10カ月先の売上高見込みを高らかと発表する意味があるんだろう?と勘繰りたくなります。

スタジオアリスは、決算期を変更したので、昨期は、2017年1月から2018年2月という変則決算となっています。

その売上高は430億円でした。

ただしこれは14カ月の変則決算です。もしこれを単純に12カ月に縮小すると368億円となり、前年割れとなります。

もちろん季節要素があるので単純に×12÷14で計算するのは無理があります。

が、スタジオアリス自体、ここ数年、店舗数や売上高の伸びが鈍化している状況を鑑みると、10カ月後の過去最高売上高予測を疑いたくなる気持ちになってきます。


実際、2016年12月期の1店舗あたり年間売上高は75.5百万円ですが、5年前の2011年12月期の1店舗あたり年間売上高は79.8百万円となっており、430万円減少していることがわかります。

店舗売上高の落ち込みを店舗数拡大でカバーしている状態だったということですが、それも維持できないとすれば深刻です。


ニッチビジネスが乱立する写真館事業


要するにスタジオアリスが切り開いた「子供専用写真館」というブルーオーシャン市場は、早晩、飽和する運命にあり、同社は次の新規事業をものにしなければ成長できないということです。

それは同社も充分承知のはず。上の記事にもありますが、新規事業として、出張撮影やアプリでの写真注文、海外展開などにも取り組んでいます。

そのほか、ペット用写真館、ブライダルやマタニティ写真、ベビー写真などにも手を出しています。

まあ、正直言って、どれもイマイチです。上場企業が手掛けるような大きなビジネスにはなりそうもありません。


他の写真館はどうしているのでしょうか?

ネットなどを見ていて目立つのは、就活、婚活、終活、の3大活動写真ですね。

就活:就職活動の履歴書に貼る写真を撮影するサービス。ヘアメイク、メイク、姿勢、表情なども指導してくれます。1枚1万円超と証明写真としては高いですが、就職活動者にとっては、必須アイテムだそうです。

婚活:言わずと知れた婚活です。プロフィール写真を盛ることは当然ですね。こちらはさらに高額なサービスになるでしょうが、そんなところをケチっていたら結婚などできません。

終活:遺影に使う写真を撮るサービス。老人ホームなどに出張して撮影するサービスもあり。

その他、地元の写真屋さんなどは、学校と契約して、運動会や遠足などの行事に随行し、写真を撮影するサービスなど地道に行っているところもあります。

いずれも規模が小さいビジネスなので、町の写真屋さんが手掛けるにはちょうどいいのでしょうが、スタジオアリスの次の成長を担うようなスケールはありません。


敢えて言うなら、スタジオアリスのブランド力を利用して、町の写真屋さんや市井のカメラマンのプラットフォームを作り、出張撮影の窓口になる、という方法はあるかも知れません。

出張撮影は範囲が広いので、イベント撮影、ペット撮影、就活、婚活、終活、すべてに対応できます。思わぬニーズを発見する可能性もあります。

仲介業務だけなので利益はそれほど高くないでしょうが、顧客データを収集することはできます。


スタジオアリスの新規事業が成立する3つの条件


スタジオアリスが手掛けるならば、以下の3つの要件にあてはまることが望ましいといえます。

(1)需要があること。相応の規模があること。さらにいうと、写真を撮るきっかけが強いものがいい。子供写真におけるハレの日需要です。

(2)リソースが使えること。現在同社が持っている設備や人材、ブランド力が使えることが望ましい。

同社の人材にはプロカメラマンは少ないでしょう。だから出張撮影などには向かないと思います。

(3)横展開しやすいこと。仕組みさえ出来上がれば、多店舗展開できるビジネスが望ましい。そうじゃないと、大きなビジネスになりませんので。


そう考えてみると、規模もあり、ハレの日需要があり、プロの技術がいらず、多店舗展開できた子供専用写真館というのは優れたビジネスなんですね。そうそう二匹目のどじょうはいないのかも知れません。


なぜ海外進出に失敗したのか?


常識的に考えて、日本国内のトップ企業が飽和した後、さらなる成長を求めるのは海外市場です。

スタジオアリスもそれは同じなのですが、どうにもうまくいっていません。

記事によると、20年ほど前から韓国や台湾に進出してきた同社ですが、鳴かず飛ばすで、今は韓国に3店舗という状況だそうです。

「七五三に該当するような行事がなく、正直に言えば圧倒的な差別化もできていない」と自己分析していますが、それでいいのでしょうか?

一人っ子政策が続いた中国では、日本以上に子供にお金をかけると言われていますから、需要がないとは思えません。

もし七五三のようなハレの日需要がないなら、作ればいいのです。

バレンタインデーを国民的イベントにしたお菓子会社のマーケティングを見習えってことです。


そもそも台湾や中国には写真館というビジネスは皆無なのでしょうか?

そんなことはありません。中国にも台湾にも「変身写真館」なるものが多く見受けられます。

観光客相手に、中国の民族衣装やその他様々なキャラクターに扮することができる写真をスタジオで撮影してくれるサービスです。(衣装貸出やメイク込み)

あるいは中国の人たちも、変身写真を楽しむ習慣があるのかも知れません。

子供専用か、観光客相手かでターゲットは分かれるもののスタジオアリスのリソースを活用できるビジネスなのではないかと想像します。

勝手がわからなければ現地の写真館を買収するなど手があるはずです。

つまり、海外進出に失敗したのは、需要がなかったのではなく、現地の需要をつかみ切れなかったということです。

インバウンドを狙え


日本には現在、月間260万人の訪日客があります。年間だと3000万人を超えるでしょう。

私の事務所がある心斎橋も、中国系の観光客であふれていて、まともに歩けないほどです。

この勢いを逃す手はありません。

心斎橋商店街の中心に訪日客専用のスタジオアリスを作れば、確実に流行るだろうなーと思います。

日本版変身写真です。侍や忍者、お姫様。あるいは、ポケモンやエヴァや日本のアニメのキャラクターに変身できる写真を撮影するサービスです。

何なら忍者の姿のまま心斎橋商店街を歩いてもらってもいいじゃないですか。

このビジネスはすぐに横展開できます。東京、大阪、京都など訪日客が集まりそうなところに10数店舗はできそうです。

さらにいいのは、訪日客にとって、日本滞在の毎日がハレの日であるということです。せっかく日本に来たのだから忍者のコスプレをして記念写真をとろうという気持ちにもなろうというものです。

まさに規模、ハレの日、リソース、横展開と、新規事業の要件に合致しています。


悲願の海外進出を成功させよ


そのまま訪日客の動きにあわせて全国展開を狙うのもいいでしょう。

しかし、本線は、訪日客相手のビジネスから得たニーズ、ノウハウ、知名度をもとに、再度海外展開を目指すことです。

ニーズによっては、中国にいきなり出店することもあるでしょう。あるいはインドネシアやベトナムや他のアジア諸国に展開する方がいいかも知れません。

場合によっては、現地の写真館チェーンを買収する。

その上でイケると思えば、多店舗展開していけばいいのです。

いずれにしろ、海外展開をこのまま諦める手はありません。

上場企業として成長を目指すならば、なんとしても海外進出を成功させていただきたいと思います。


というわけで、スタジオアリス様。

まずは、日本版変身写真館に進出することをお勧めいたします。

その先には、悲願の海外進出の成功が待っています。


(2018年5月31日メルマガより)

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スタジオアリスの記事を久しぶりにみました。



スタジオアリス様 ずいぶんご無沙汰して申し訳ございません。

それもそのはず。うちも子供が大きくなりましたからね。子供専用写真館のスタジオアリスと縁遠くなるのは仕方ありません。

子供が小さい頃は大変お世話になりました。

お宮参り、七五三、入園入学と、折々のハレの日によく撮影していただいたものです。


記事によると、2019年2月期の売上高見通しは、411億円の過去最高の見込みであるそうです。

店舗数は全国に510店舗。その殆どが直営店です。

子供用写真館のシェアは約6割。

最近は子会社への投資がかさんで利益は伸び悩んでいるとのことですが、2016年12月期の決算では、経常利益14%でした。

しかも無借金経営です。

これを優良企業と言わずして、何と呼ぶのでしょうか。


「子供写真館」というブルーオーシャンを開拓


スタジオアリスの前身は、大阪にあったDPE店(写真現像所)のチェーンでした。

デジカメの普及により、先行き不安だった同社は、1992年、新規事業として「子供専用写真館」を立ち上げます。

当時の社長は「新入社員の女の子二人に勝手にやらせたら、こんな店を作りよったんや」ととぼけた言い方をしておりましたが、それほど業界の常識に囚われない斬新な新規事業であったということでしょう。

なにしろ写真館という業態そのものが斜陽産業の最たるものです。デジカメ普及の前に、コンパクトカメラの普及が、写真館を追い込みました。DPEチェーン店の興隆は、写真館の没落の上に立つものだったはずです。

そこにわざわざ「子供専用」などと顧客を狭く絞る写真館なんて狂気の沙汰だといわれても仕方なかったでしょう。

しかし、これが当たりました。

子供専用にしたことで、子供写真に必要な技術やサービスを先鋭化できたからです。

あふれるばかりの貸衣装や撮影小道具はすべて無料。

メルヘンチックな店内の雰囲気は、子供だけでなく、大人もワクワクさせるものです。

それになんといっても、気難しい子供の機嫌をとって最高の一枚を撮影させる店員の技術は他に代えがたいものがありました。

スタジオアリスの最大のノウハウは、写真撮影の技術ではなく、子供をあやす技術だったのです。


子供写真館という業態の可能性に着目した同社は、おもちゃ小売りチェーンのトイザらスと提携し、本格的にチェーン展開していきました。

当初はトイザらス店内に併設する形で展開。後には、イオンなどのショッピングセンターのテナントとして店舗数を拡大していきました。

現在、店舗数の63%がショッピングセンター内のテナントとなっています。

同社が、直営店を中心に展開しながら、無借金経営ができる理由がここにありそうです。


同社の成功を受けて、多くの競合他社が子供専用写真館を立ち上げましたが、スピード出店の賜物か、市場の約6割をスタジオアリスが占めています。

市場シェア6割というと、ほぼ完全独占状態です。

この状態になると、競合他社がいっぱい現れて頑張ってくれるほど、トップ企業に脚光が当たり、ますます儲かります。

このへんのメカニズムは、ぜひランチェスター戦略を学んで知っておいてください。


スタジオアリスの成功要因


スタジオアリスがなぜこれほどの成功を収めたのか。

一つは、少子化ゆえの消費行動があります。

少子化の時代だからこそ、一人の子供にかける費用が上がっています。特に子供の写真は、親だけではなく祖父母の需要があります。

スタジオアリスの平均客単価は約3万円だということですが、1枚5千円の写真を2カット撮るだけでは1万円にしかなりません。

が、ここに両方の祖父母のために写真を焼き増しするとなると一気に3万円となります。

おそらく負担しているのは祖父母側なんでしょうね。孫需要です。


二つ目は、子供にはハレの日需要があるということです。

お宮参り。お食い初め。七五三。入園入学。と、子供には写真を撮りたくなるポイントが多数あります。

そのうち撮ろうという程度では誘引されませんが、ハレの日の縁起物であれば、高い撮影費を払う動機となります。


三つ目は、先ほども挙げた子供撮影なりの仕掛けやノウハウが必要なことです。

撮影用の衣装や小道具は、子供専用だからこそ揃えられるものです。店内のメルヘンチックな雰囲気づくりもしかりです。

撮影のために子供あやす行為も、子供専用だからこそ。隣りで見合い写真を撮影していたら、子供をあやしてなどいられませんわね。

だからスタジオアリスの従業員の殆どは女性です。女性の生来の子供を扱う能力を活用したビジネスです。

しかも業界のパイオニアであり、店舗数が多いので、日々新たなノウハウが蓄積されていっていることでしょう。


そして四つ目は、横展開しやすいことです。

同社にノウハウがあるといっても、それは特殊な訓練が必要なものではないはずです。

特に撮影に関して、熟練のカメラマンでなければ撮れないものではありません。

プロ写真ぽく見えるのは、照明と背景のおかげです。デジカメだから大量に撮影しても費用はかかりません。

スタジオの背景と照明の中、何十枚、何百枚も撮れば、いい写真も撮れるというものですよ。

しかも何十枚の中から選択するのはユーザーです。自分で選んだのだから文句は言えません。そこもノウハウですな。

熟練の技術を必要としないビジネスモデルなので、横展開しやすくなります。


写真館は、いわゆる装置産業です。

設備にそれなりの投資が必要ですが、一度作ってしまえば、利益率は高くなります。

顧客さえ確保できれば儲かるビジネスであり、子供のハレの日需要というブルーオーシャンを掴んだスタジオアリスが、我が世の春を謳歌できたのも自明だったのです。


市場は既に飽和している?


しかし、いくら孫にお金を出すといっても、少子化なのですから、市場規模には限界があります。

いつ飽和状態になっても不思議ではありません。

いや、すでに飽和しているのではないか?


今回の過去最高売上高見込みの発表にしても、来年2月期の売上高ですよ。なぜ今の時期に10カ月先の売上高見込みを高らかと発表する意味があるんだろう?と勘繰りたくなります。

スタジオアリスは、決算期を変更したので、昨期は、2017年1月から2018年2月という変則決算となっています。

その売上高は430億円でした。

ただしこれは14カ月の変則決算です。もしこれを単純に12カ月に縮小すると368億円となり、前年割れとなります。

もちろん季節要素があるので単純に×12÷14で計算するのは無理があります。

が、スタジオアリス自体、ここ数年、店舗数や売上高の伸びが鈍化している状況を鑑みると、10カ月後の過去最高売上高予測を疑いたくなる気持ちになってきます。


実際、2016年12月期の1店舗あたり年間売上高は75.5百万円ですが、5年前の2011年12月期の1店舗あたり年間売上高は79.8百万円となっており、430万円減少していることがわかります。

店舗売上高の落ち込みを店舗数拡大でカバーしている状態だったということですが、それも維持できないとすれば深刻です。


ニッチビジネスが乱立する写真館事業


要するにスタジオアリスが切り開いた「子供専用写真館」というブルーオーシャン市場は、早晩、飽和する運命にあり、同社は次の新規事業をものにしなければ成長できないということです。

それは同社も充分承知のはず。上の記事にもありますが、新規事業として、出張撮影やアプリでの写真注文、海外展開などにも取り組んでいます。

そのほか、ペット用写真館、ブライダルやマタニティ写真、ベビー写真などにも手を出しています。

まあ、正直言って、どれもイマイチです。上場企業が手掛けるような大きなビジネスにはなりそうもありません。


他の写真館はどうしているのでしょうか?

ネットなどを見ていて目立つのは、就活、婚活、終活、の3大活動写真ですね。

就活:就職活動の履歴書に貼る写真を撮影するサービス。ヘアメイク、メイク、姿勢、表情なども指導してくれます。1枚1万円超と証明写真としては高いですが、就職活動者にとっては、必須アイテムだそうです。

婚活:言わずと知れた婚活です。プロフィール写真を盛ることは当然ですね。こちらはさらに高額なサービスになるでしょうが、そんなところをケチっていたら結婚などできません。

終活:遺影に使う写真を撮るサービス。老人ホームなどに出張して撮影するサービスもあり。

その他、地元の写真屋さんなどは、学校と契約して、運動会や遠足などの行事に随行し、写真を撮影するサービスなど地道に行っているところもあります。

いずれも規模が小さいビジネスなので、町の写真屋さんが手掛けるにはちょうどいいのでしょうが、スタジオアリスの次の成長を担うようなスケールはありません。


敢えて言うなら、スタジオアリスのブランド力を利用して、町の写真屋さんや市井のカメラマンのプラットフォームを作り、出張撮影の窓口になる、という方法はあるかも知れません。

出張撮影は範囲が広いので、イベント撮影、ペット撮影、就活、婚活、終活、すべてに対応できます。思わぬニーズを発見する可能性もあります。

仲介業務だけなので利益はそれほど高くないでしょうが、顧客データを収集することはできます。


スタジオアリスの新規事業が成立する3つの条件


スタジオアリスが手掛けるならば、以下の3つの要件にあてはまることが望ましいといえます。

(1)需要があること。相応の規模があること。さらにいうと、写真を撮るきっかけが強いものがいい。子供写真におけるハレの日需要です。

(2)リソースが使えること。現在同社が持っている設備や人材、ブランド力が使えることが望ましい。

同社の人材にはプロカメラマンは少ないでしょう。だから出張撮影などには向かないと思います。

(3)横展開しやすいこと。仕組みさえ出来上がれば、多店舗展開できるビジネスが望ましい。そうじゃないと、大きなビジネスになりませんので。


そう考えてみると、規模もあり、ハレの日需要があり、プロの技術がいらず、多店舗展開できた子供専用写真館というのは優れたビジネスなんですね。そうそう二匹目のどじょうはいないのかも知れません。


なぜ海外進出に失敗したのか?


常識的に考えて、日本国内のトップ企業が飽和した後、さらなる成長を求めるのは海外市場です。

スタジオアリスもそれは同じなのですが、どうにもうまくいっていません。

記事によると、20年ほど前から韓国や台湾に進出してきた同社ですが、鳴かず飛ばすで、今は韓国に3店舗という状況だそうです。

「七五三に該当するような行事がなく、正直に言えば圧倒的な差別化もできていない」と自己分析していますが、それでいいのでしょうか?

一人っ子政策が続いた中国では、日本以上に子供にお金をかけると言われていますから、需要がないとは思えません。

もし七五三のようなハレの日需要がないなら、作ればいいのです。

バレンタインデーを国民的イベントにしたお菓子会社のマーケティングを見習えってことです。


そもそも台湾や中国には写真館というビジネスは皆無なのでしょうか?

そんなことはありません。中国にも台湾にも「変身写真館」なるものが多く見受けられます。

観光客相手に、中国の民族衣装やその他様々なキャラクターに扮することができる写真をスタジオで撮影してくれるサービスです。(衣装貸出やメイク込み)

あるいは中国の人たちも、変身写真を楽しむ習慣があるのかも知れません。

子供専用か、観光客相手かでターゲットは分かれるもののスタジオアリスのリソースを活用できるビジネスなのではないかと想像します。

勝手がわからなければ現地の写真館を買収するなど手があるはずです。

つまり、海外進出に失敗したのは、需要がなかったのではなく、現地の需要をつかみ切れなかったということです。

インバウンドを狙え


日本には現在、月間260万人の訪日客があります。年間だと3000万人を超えるでしょう。

私の事務所がある心斎橋も、中国系の観光客であふれていて、まともに歩けないほどです。

この勢いを逃す手はありません。

心斎橋商店街の中心に訪日客専用のスタジオアリスを作れば、確実に流行るだろうなーと思います。

日本版変身写真です。侍や忍者、お姫様。あるいは、ポケモンやエヴァや日本のアニメのキャラクターに変身できる写真を撮影するサービスです。

何なら忍者の姿のまま心斎橋商店街を歩いてもらってもいいじゃないですか。

このビジネスはすぐに横展開できます。東京、大阪、京都など訪日客が集まりそうなところに10数店舗はできそうです。

さらにいいのは、訪日客にとって、日本滞在の毎日がハレの日であるということです。せっかく日本に来たのだから忍者のコスプレをして記念写真をとろうという気持ちにもなろうというものです。

まさに規模、ハレの日、リソース、横展開と、新規事業の要件に合致しています。


悲願の海外進出を成功させよ


そのまま訪日客の動きにあわせて全国展開を狙うのもいいでしょう。

しかし、本線は、訪日客相手のビジネスから得たニーズ、ノウハウ、知名度をもとに、再度海外展開を目指すことです。

ニーズによっては、中国にいきなり出店することもあるでしょう。あるいはインドネシアやベトナムや他のアジア諸国に展開する方がいいかも知れません。

場合によっては、現地の写真館チェーンを買収する。

その上でイケると思えば、多店舗展開していけばいいのです。

いずれにしろ、海外展開をこのまま諦める手はありません。

上場企業として成長を目指すならば、なんとしても海外進出を成功させていただきたいと思います。


というわけで、スタジオアリス様。

まずは、日本版変身写真館に進出することをお勧めいたします。

その先には、悲願の海外進出の成功が待っています。


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