メルカリが破格の期待を集める5つの理由

2018.06.28

(2018年6月28日メルマガより)

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先週6月19日、フリーマーケット・アプリの展開で知られる株式会社メルカリが、東証マザーズに株式上場しました。

株価は、売り出し公募価格3000円をはるかに超える5000円の値をつけ、時価総額は、約7172億円。

これは、マザーズでは最大の時価総額で、2位のミクシィに3倍以上の差となります。

(マザーズは、ベンチャー企業向けの株式取引所です)


ちなみに株式上場とは、証券取引所で株式の売買をできるようにすることです。

一般投資家でもその株を購入できるようになるので、いい加減な会社の株を扱うわけにはいきません。証券取引所による厳しい審査がなされます。

株式上場している会社が、一定の社会的信用を得たとみなされるのは、そのためです。

もちろん未上場なのに大きな会社もあります。

特に、10億ドル以上の価値があると考えられるベンチャー企業のことをユニコーンと呼びます。

メルカリは永らく、日本のユニコーンの雄と呼ばれていました。

実際、上場してみると、10億ドル(約1090億円)どころではない値をつけたのだから大したものです。


海外での人気が高い


それにしても今回の上場に際して、驚くべきは、海外の投資家からの人気が非常に髙かったことです。


あまりに人気が高かったために、海外への割り当てを増やさざるを得ず、国内4対海外6の割合になったということです。

メルカリといえば、日本では知名度が抜群に高い企業ですが、海外ではそうでもないはず。それなのに、海外でこれほど求められたのはどうしてでしょう?

まさにメルカリが、世界で注目され、期待される理由について、考えてみたいと思います。


期待される理由(1)CtoCビジネス


メルカリは、スマートフォン上のアプリで、ユーザー同士が売買するための機能を提供しています。

いわば、フリーマーケットのスマホ版です。

フリマのような取引のことを、CtoC(Consumer to Consumer)と呼びます。

※Consumerとは、一般消費者のこと。CtoCとは、消費者同士のビジネス。

CtoCビジネスというのは、BtoCビジネス、BtoBビジネスに比べて、まだ一般的ではなく、特殊性があります。

BtoB=Business to Business(企業同士のビジネス)

BtoC=Business to Consumer(企業から消費者へ向けてのビジネス)

既存企業があまり手をつけていないCtoCビジネスは、珍しいというよりも、伸びしろがあると考えられます。

そんな中、月間利用者1054万人、月間流通額324億円の規模を持つメルカリは、際立った存在だと期待されています。


期待される理由(2)スマホ対応


もちろん、ヤフーオークションなど、ヒットしたCtoCビジネスはこれまでも存在しました。(オークションはBtoB、BtoCを含みますが...)

が、メルカリの特徴は、スマホに特化していることです。

ヤフオクは、パソコン時代の大ヒットビジネスです。今でも年間9000億円前後の取扱高があるというものの、スマホ対応に遅れて、成長を鈍化させてしまいました。

確かに、パソコンを立ち上げなければならないとイメージされ、ヤフープレミアム会員になることを条件づけられるヤフオクは、今となっては、面倒です。

それに対してメルカリは、スマホにアプリをダウンロードするだけですぐに利用できます。

出品も、スマホで写真を撮って、すぐに登録すれば簡単です。

この敷居の低さが、多くの利用者を呼び込む要因であり、これからも拡大していくと期待されているところです。


「どろぼう市」ゆえの課題


ただし、間口の広さゆえの課題もあります。

フリーマーケットの元祖ともいうべきフランスの「蚤の市」は、別名、どろぼう市と呼ばれています。

文字どおり、盗んできたものを売るような輩が多くいたとか。

メルカリのような間口の広いフリーマーケットには、同じような輩が紛れこむことが容易に想像できます。

盗品であったり、違法な品であったり、そういったものでも販売できてしまうのが、ネットの匿名性です。

実際、メルカリの上場審査に時間がかかったのは、そういう反社会的な取引の温床になるのではないかという懸念からでした。

(現金そのものを販売するなどといういかがわしい取引が相次いだことは記憶に新しいのではないでしょうか)

メルカリ側は、出品物の見回りを強化したり、出品者の身元確認を厳格化したりするなど対策をとっていますが、あまり厳しくすると、フリーマーケットの良さが失われるので痛しかゆしです。

なにせ、トイレットペーパーの芯が売買されるような自由さが、メルカリの良さですからね。

自由さと規律をいかに両立させていくかが、メルカリの課題です。


期待される理由(3)技術面での挑戦


メルカリというと、スマホでのフリマアプリというアイデアで一発当てて、大量のテレビCMによって一気にブレイクした会社だと思われるかも知れません。

確かにそういう側面はあるでしょう。

フリマアプリというのは、特段珍しいアイデアでもないですし、大量CMの効果も絶大でした。

ただメルカリの山田進太郎会長は、プロダクト志向の強い人らしく、メルカリの使い勝手やグラフィックを細かく改善し続けてきました。

こうした小さな差別化の積み重ねが、メルカリの大きな強みであり、競合他社の追随を許さない部分でした。

山田会長は「これからは技術で差別化する」と発言しており、フェイスブックのように独自のAI技術を開発・導入することで、さらなる技術バリアをつくることを目指すとしています。

そして「R4D」なる研究開発機関を立ち上げて、先進的な研究開発に取り組むことを志向しています。


いまでもメルカリにはAIが導入されていて、消費者が商品写真をあげると、商品名や推定価格が提示されるようなサービスがあります。

が、「R4D」は、単にメルカリのサービスを高度化するだけではなく、メルカリグループ全体や、その他将来的な先進技術の開発・実現を目指すそうです。

この技術面での「目線の高さ」と現実的な投資が、メルカリを単なるフリマアプリの会社に止めておかない期待感を抱かせる理由です。


期待される理由(4)本気のグローバル展開


メルカリ創業者の山田進太郎会長は、最初に立ち上げた会社(ネットゲームの会社)を売却した後、世界一周の旅に出たそうです。

その時感じた新興国の状況が、メルカリ創業の大きなきっかけになったといいます。


すなわち「生まれる国が違うだけで、海外旅行することすら難しかったりなど、教育も十分に受けられない新興国がある」

そんな中、スマホが爆発的に普及することが予想されました。

このスマホを利用して「個人同士が物がやりとりできるサービスを作れば、今は貧しい人たちも先進国水準の生活ができるようになるかもしれない」

それが創業時の大きな動機です。

つまり、メルカリは当初から世界中の人に使われることを目指して創業されたのです。

ですから創業間もない頃からの北米進出は、必然だったようです。

日本で知名度を上げて、地理的に近いアジア進出する。という方法もあったはずですが、山田会長は、その道をとりませんでした。

なぜならグーグルしかり、フェイスブックしかり「米国は様々な言語を話し文化を持つ人の集合体で、この国で受け入れられるサービスや技術は世界中で受け入れられる」という考えがあったからです。


もっとも米国市場は一筋縄ではいきません。今はうまくいっているとは言えない状況です。

そこで山田会長が米国に常駐して、陣頭指揮に当たるようです。

このグローバル展開にかける本気度が、世界の投資家の期待を集める理由になっています。


期待される理由(5)人材の豊富さ


メルカリには、業界でも有数の人材が集まってきていることで知られています。


上の記事を読むと、IT系企業の立ち上げに関わり実績を上げた人たちが、総集合といった趣です。

ベンチャー起業家というのは得難い存在です。ましてや起業してそれなりの経験を積んだ人が再出発するならば、出資してやろうという投資家は多いはずです。

そんな世界だから、IT起業家オールスターズのようなメルカリが、投資家の注目を集めるのは必然です。

なぜメルカリには、優秀な人材が集まるのか?

記事には、山田会長の人材獲得にかける情熱が書かれています。

人材マネジメントの神髄とは、つまるところ、能力のある人たちを集めてきて、彼らがチームとして実力を発揮できるようにすることです。

山田会長のこれぞと思った人材を1年以上かけて追いかけ、旅行先にまでついていって口説き落とした逸話が書かれていますが、まさにこれが優れた経営者の仕事の大きな要素です。

さらには山田会長の「目線の高さ」が指摘されています。

目線の高さとは、前項にあった、世界企業を作ろうという志の高いビジョンのことでしょう。

投資家から注目されるビジョンが、業界の優秀な人材を惹きつけ、さらに人材の豊富さが、新たな人材を呼び込む動機になり、かつ投資家の注目を集めるというプラスのスパイラルが起こっていると思えます。


起業家養成所の役割も


メルカリは、他のCtoCビジネスに投資していることでも知られています。


記事によると、いずれもCtoCビジネスを手掛けるベンチャー企業7社に出資したとあります。

記事には「メルカリ経済圏」を強化しようとしているようなことが書かれていましたが、買収するのではなく、少額出資に止まっているのは、自社の補完ではないように思います。

どちらかというと、起業家支援をして、日本のCtoCビジネスを全体として盛り上げようという意図を感じます。

投資を主導するのは、山田会長ではなく、松本龍祐執行役員です。

松本氏も御多分に漏れず、自らベンチャー企業を立ち上げ、ヤフーに売却した経験を持つ人です。

そんな松本氏ですから、立ち上げ期のベンチャーの難しさをよく理解しているのでしょう。資本を入れて、集客を支援したりしています。

いわばメルカリ起業支援所、起業家養成所みたいなものですか。

こういう我田引水さが薄いところにも、メルカリの「目線の高さ」が現れていると感じます。

メルカリのような起業経験者が多くいればいるほど、日本経済は活性化するはず。その意味でも、同社の行為は、社会的に歓迎すべきものでしょう。

メルカリの他でしたら、DMMが、若い人材に新事業開発を任せて、経営者人材の輩出に一役買っています。

ライザップもそうですね。持ち込まれた小さな企業を次々買収し、結果的に経営者育成をなそうとしています。

こうした企業によるスピード感あふれる起業支援が増えてくるのは実に素晴らしいことだと思います。


期待が高いだけに、裏切られた時が恐ろしい


しかし、気をつけなければならないのは、メルカリはまだその目標の第一歩しか達成していないということです。

アメリカ進出が成功するという保証はどこにもありません。むしろ非常に厳しいという予測が大勢でしょう。

少なくとも、これから数年は正念場が続きます。

メルカリが大成するもしないも、まだ何も決まっていないというのが現状なのです。


山田会長は言っています。

「日本のインターネット業界で海外で成功した事例はまだないし、成功できると思っている人は少ないかと思います。どこか1社が成功すれば、「うちも」と後に続く企業は出てくると思う」

この目線の高い姿勢は、やはり魅力です。応援したくなる気持ちにもうなずけます。


ただ、どこかで山田会長が「やっぱアメリカは無理。日本ローカルで稼ごう」なんて目線を下げた途端に人材の流出が起こります。そうなると没落も早いものです。

要するに、内外から期待されているメルカリだけに、期待が裏切られた時の急降下が恐ろしいと言えます。


メルカリは志半ばで倒れたが、多くの優秀な人材を残した。

なんて物語のような終わり方は望みません。


(2018年6月28日メルマガより)

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先週6月19日、フリーマーケット・アプリの展開で知られる株式会社メルカリが、東証マザーズに株式上場しました。

株価は、売り出し公募価格3000円をはるかに超える5000円の値をつけ、時価総額は、約7172億円。

これは、マザーズでは最大の時価総額で、2位のミクシィに3倍以上の差となります。

(マザーズは、ベンチャー企業向けの株式取引所です)


ちなみに株式上場とは、証券取引所で株式の売買をできるようにすることです。

一般投資家でもその株を購入できるようになるので、いい加減な会社の株を扱うわけにはいきません。証券取引所による厳しい審査がなされます。

株式上場している会社が、一定の社会的信用を得たとみなされるのは、そのためです。

もちろん未上場なのに大きな会社もあります。

特に、10億ドル以上の価値があると考えられるベンチャー企業のことをユニコーンと呼びます。

メルカリは永らく、日本のユニコーンの雄と呼ばれていました。

実際、上場してみると、10億ドル(約1090億円)どころではない値をつけたのだから大したものです。


海外での人気が高い


それにしても今回の上場に際して、驚くべきは、海外の投資家からの人気が非常に髙かったことです。


あまりに人気が高かったために、海外への割り当てを増やさざるを得ず、国内4対海外6の割合になったということです。

メルカリといえば、日本では知名度が抜群に高い企業ですが、海外ではそうでもないはず。それなのに、海外でこれほど求められたのはどうしてでしょう?

まさにメルカリが、世界で注目され、期待される理由について、考えてみたいと思います。


期待される理由(1)CtoCビジネス


メルカリは、スマートフォン上のアプリで、ユーザー同士が売買するための機能を提供しています。

いわば、フリーマーケットのスマホ版です。

フリマのような取引のことを、CtoC(Consumer to Consumer)と呼びます。

※Consumerとは、一般消費者のこと。CtoCとは、消費者同士のビジネス。

CtoCビジネスというのは、BtoCビジネス、BtoBビジネスに比べて、まだ一般的ではなく、特殊性があります。

BtoB=Business to Business(企業同士のビジネス)

BtoC=Business to Consumer(企業から消費者へ向けてのビジネス)

既存企業があまり手をつけていないCtoCビジネスは、珍しいというよりも、伸びしろがあると考えられます。

そんな中、月間利用者1054万人、月間流通額324億円の規模を持つメルカリは、際立った存在だと期待されています。


期待される理由(2)スマホ対応


もちろん、ヤフーオークションなど、ヒットしたCtoCビジネスはこれまでも存在しました。(オークションはBtoB、BtoCを含みますが...)

が、メルカリの特徴は、スマホに特化していることです。

ヤフオクは、パソコン時代の大ヒットビジネスです。今でも年間9000億円前後の取扱高があるというものの、スマホ対応に遅れて、成長を鈍化させてしまいました。

確かに、パソコンを立ち上げなければならないとイメージされ、ヤフープレミアム会員になることを条件づけられるヤフオクは、今となっては、面倒です。

それに対してメルカリは、スマホにアプリをダウンロードするだけですぐに利用できます。

出品も、スマホで写真を撮って、すぐに登録すれば簡単です。

この敷居の低さが、多くの利用者を呼び込む要因であり、これからも拡大していくと期待されているところです。


「どろぼう市」ゆえの課題


ただし、間口の広さゆえの課題もあります。

フリーマーケットの元祖ともいうべきフランスの「蚤の市」は、別名、どろぼう市と呼ばれています。

文字どおり、盗んできたものを売るような輩が多くいたとか。

メルカリのような間口の広いフリーマーケットには、同じような輩が紛れこむことが容易に想像できます。

盗品であったり、違法な品であったり、そういったものでも販売できてしまうのが、ネットの匿名性です。

実際、メルカリの上場審査に時間がかかったのは、そういう反社会的な取引の温床になるのではないかという懸念からでした。

(現金そのものを販売するなどといういかがわしい取引が相次いだことは記憶に新しいのではないでしょうか)

メルカリ側は、出品物の見回りを強化したり、出品者の身元確認を厳格化したりするなど対策をとっていますが、あまり厳しくすると、フリーマーケットの良さが失われるので痛しかゆしです。

なにせ、トイレットペーパーの芯が売買されるような自由さが、メルカリの良さですからね。

自由さと規律をいかに両立させていくかが、メルカリの課題です。


期待される理由(3)技術面での挑戦


メルカリというと、スマホでのフリマアプリというアイデアで一発当てて、大量のテレビCMによって一気にブレイクした会社だと思われるかも知れません。

確かにそういう側面はあるでしょう。

フリマアプリというのは、特段珍しいアイデアでもないですし、大量CMの効果も絶大でした。

ただメルカリの山田進太郎会長は、プロダクト志向の強い人らしく、メルカリの使い勝手やグラフィックを細かく改善し続けてきました。

こうした小さな差別化の積み重ねが、メルカリの大きな強みであり、競合他社の追随を許さない部分でした。

山田会長は「これからは技術で差別化する」と発言しており、フェイスブックのように独自のAI技術を開発・導入することで、さらなる技術バリアをつくることを目指すとしています。

そして「R4D」なる研究開発機関を立ち上げて、先進的な研究開発に取り組むことを志向しています。


いまでもメルカリにはAIが導入されていて、消費者が商品写真をあげると、商品名や推定価格が提示されるようなサービスがあります。

が、「R4D」は、単にメルカリのサービスを高度化するだけではなく、メルカリグループ全体や、その他将来的な先進技術の開発・実現を目指すそうです。

この技術面での「目線の高さ」と現実的な投資が、メルカリを単なるフリマアプリの会社に止めておかない期待感を抱かせる理由です。


期待される理由(4)本気のグローバル展開


メルカリ創業者の山田進太郎会長は、最初に立ち上げた会社(ネットゲームの会社)を売却した後、世界一周の旅に出たそうです。

その時感じた新興国の状況が、メルカリ創業の大きなきっかけになったといいます。


すなわち「生まれる国が違うだけで、海外旅行することすら難しかったりなど、教育も十分に受けられない新興国がある」

そんな中、スマホが爆発的に普及することが予想されました。

このスマホを利用して「個人同士が物がやりとりできるサービスを作れば、今は貧しい人たちも先進国水準の生活ができるようになるかもしれない」

それが創業時の大きな動機です。

つまり、メルカリは当初から世界中の人に使われることを目指して創業されたのです。

ですから創業間もない頃からの北米進出は、必然だったようです。

日本で知名度を上げて、地理的に近いアジア進出する。という方法もあったはずですが、山田会長は、その道をとりませんでした。

なぜならグーグルしかり、フェイスブックしかり「米国は様々な言語を話し文化を持つ人の集合体で、この国で受け入れられるサービスや技術は世界中で受け入れられる」という考えがあったからです。


もっとも米国市場は一筋縄ではいきません。今はうまくいっているとは言えない状況です。

そこで山田会長が米国に常駐して、陣頭指揮に当たるようです。

このグローバル展開にかける本気度が、世界の投資家の期待を集める理由になっています。


期待される理由(5)人材の豊富さ


メルカリには、業界でも有数の人材が集まってきていることで知られています。


上の記事を読むと、IT系企業の立ち上げに関わり実績を上げた人たちが、総集合といった趣です。

ベンチャー起業家というのは得難い存在です。ましてや起業してそれなりの経験を積んだ人が再出発するならば、出資してやろうという投資家は多いはずです。

そんな世界だから、IT起業家オールスターズのようなメルカリが、投資家の注目を集めるのは必然です。

なぜメルカリには、優秀な人材が集まるのか?

記事には、山田会長の人材獲得にかける情熱が書かれています。

人材マネジメントの神髄とは、つまるところ、能力のある人たちを集めてきて、彼らがチームとして実力を発揮できるようにすることです。

山田会長のこれぞと思った人材を1年以上かけて追いかけ、旅行先にまでついていって口説き落とした逸話が書かれていますが、まさにこれが優れた経営者の仕事の大きな要素です。

さらには山田会長の「目線の高さ」が指摘されています。

目線の高さとは、前項にあった、世界企業を作ろうという志の高いビジョンのことでしょう。

投資家から注目されるビジョンが、業界の優秀な人材を惹きつけ、さらに人材の豊富さが、新たな人材を呼び込む動機になり、かつ投資家の注目を集めるというプラスのスパイラルが起こっていると思えます。


起業家養成所の役割も


メルカリは、他のCtoCビジネスに投資していることでも知られています。


記事によると、いずれもCtoCビジネスを手掛けるベンチャー企業7社に出資したとあります。

記事には「メルカリ経済圏」を強化しようとしているようなことが書かれていましたが、買収するのではなく、少額出資に止まっているのは、自社の補完ではないように思います。

どちらかというと、起業家支援をして、日本のCtoCビジネスを全体として盛り上げようという意図を感じます。

投資を主導するのは、山田会長ではなく、松本龍祐執行役員です。

松本氏も御多分に漏れず、自らベンチャー企業を立ち上げ、ヤフーに売却した経験を持つ人です。

そんな松本氏ですから、立ち上げ期のベンチャーの難しさをよく理解しているのでしょう。資本を入れて、集客を支援したりしています。

いわばメルカリ起業支援所、起業家養成所みたいなものですか。

こういう我田引水さが薄いところにも、メルカリの「目線の高さ」が現れていると感じます。

メルカリのような起業経験者が多くいればいるほど、日本経済は活性化するはず。その意味でも、同社の行為は、社会的に歓迎すべきものでしょう。

メルカリの他でしたら、DMMが、若い人材に新事業開発を任せて、経営者人材の輩出に一役買っています。

ライザップもそうですね。持ち込まれた小さな企業を次々買収し、結果的に経営者育成をなそうとしています。

こうした企業によるスピード感あふれる起業支援が増えてくるのは実に素晴らしいことだと思います。


期待が高いだけに、裏切られた時が恐ろしい


しかし、気をつけなければならないのは、メルカリはまだその目標の第一歩しか達成していないということです。

アメリカ進出が成功するという保証はどこにもありません。むしろ非常に厳しいという予測が大勢でしょう。

少なくとも、これから数年は正念場が続きます。

メルカリが大成するもしないも、まだ何も決まっていないというのが現状なのです。


山田会長は言っています。

「日本のインターネット業界で海外で成功した事例はまだないし、成功できると思っている人は少ないかと思います。どこか1社が成功すれば、「うちも」と後に続く企業は出てくると思う」

この目線の高い姿勢は、やはり魅力です。応援したくなる気持ちにもうなずけます。


ただ、どこかで山田会長が「やっぱアメリカは無理。日本ローカルで稼ごう」なんて目線を下げた途端に人材の流出が起こります。そうなると没落も早いものです。

要するに、内外から期待されているメルカリだけに、期待が裏切られた時の急降下が恐ろしいと言えます。


メルカリは志半ばで倒れたが、多くの優秀な人材を残した。

なんて物語のような終わり方は望みません。


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