こんな創業は失敗する

2020.10.01

(2020年10月1日メルマガより)


創業事業の10年生存率は1割程度だといわれています。

ビギナーズラックに恵まれたとしても、10年継続できる事業はわずかです。

いや、ビギナーズラックにあうこともなく、そのまま消えてしまう事業も多いはず。創業というのは希望ばかり大きくて、実際の利益は少ないものです。

それでも創業する人はするもの。止むにやまれぬ気持ち...というべきか。

創業予定者の目は、みな、未来への決意に満ち溢れています。その希望が叶うことを願ってやみません。


創業の成否なんて、結局のところ運だ。という人もいます。生存率1割なのに、開業者を増やそうとする政府の政策をみていると、国全体で「運だ」と言っているように思えます。

確かに、成功者を見ていて「なんでこの人が成功したのだろう?」と首をかしげたくなるような人はいます。だけど、やはり、失敗する人はするべくしてしています。

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」(by野村克也)とはよく言ったものです。

実際に創業する人は、少しでも成功確率を上げるよう準備をして、万全の態勢で創業に臨んでほしい。

ゆめゆめ、創業者自身が「創業なんて運だ。何とかなる」なんて思って、勢いで創業することのないようにしてください。

いい加減な計画で創業し、散々に苦労した私からの心を込めたアドバイスでございます。


思いが強すぎる


創業計画を見ていて多いと感じるのが、思いが強すぎて、独りよがりになっている計画です。

思いが強いのは悪いことではありません。いやむしろ、強くなければ、創業しても続けることなどできないことでしょう。

何か解決したい問題がある、実現したい目標があるから創業するのはしごく健全なことであって、今の会社に不満があるから逃避のように創業する人よりはよほどましです。

ただ、その思いが「自己実現」になってしまうと、事業は歪んでしまいます。

言うまでもなく、事業維持に最も大切なのは顧客からの支持です。

顧客がその事業の商品やサービスを利用しようと思うから、維持するための収益が上がるわけです。

ところが、事業計画をみていると、顧客が求めているかどうかわからないような謎のサービスや設備が盛り込まれていることがよくあります。

むりやりの差別化なのか、特徴を出そうという意識が強すぎるのかと思っていると、実は、どうしてもこの設備を所持してみたかった。超一流の家具を店に置きたかった。見晴らしのいい場所にオフィスが欲しかった。などと、単なる自分の満足のためにしているのです。

当たり障りのないこだわりならいいですが、むしろ創業者のこだわりありきで、それに合わせて、顧客選定も、収益計画も、資金計画も立てなければならない場合だってあるほどです。

何で、創業者のこだわりに、顧客が合わせなければならないのか。本末転倒というものです。

素直に、現実の顧客に合わせて事業を作ればもっと簡単なのに、と残念になる計画が多いということを知っておいてください。


あいまいな顧客


繰り返しになりますが、事業にとって最も大切なのは、顧客の支持です。

ところが、その大切な顧客のことがよく分からずに計画を立てている例も多くみられます。

勝手知ったる業界で創業する人に、顧客をよく見ていない場合が多いと言えば、意外に思うでしょうか。

でも、本当です。まるで自分の庭のようなものだという業界で創業したのに、顧客に支持されずに頓挫する事業は多いのです。

そういう人の話を聞いてみると、どうやら、業界経験が長いゆえに、顧客の存在を当たり前のものと考えているふしがあります。

たとえば、前の会社で新規顧客獲得の方法論ができている場合、創業しても同じように顧客獲得できると思い込んでしまうようです。

同じな広告宣伝や展示会参加で、顧客獲得できると思っていたのに、思うようにならなかった。というのは考えてみれば当たり前で、業歴のある会社と創業事業者では、信用力が違います。扱い商品の幅も深さも違うし、アフターサービスの範囲も違います。電話窓口の対応力も違うし、返信の速さも違います。

要するに違う会社なのに、同じ方法で顧客獲得できると考える方がおかしいのです。

ここはやはり創業の原点に戻り、顧客の絞り込みをきっちりと行い、顧客像を明確にしたうえで、顧客獲得の方法を設計しなければなりません。

そもそも、同じ業界で後発事業を行う場合、まともに同じ顧客を相手にしていたら、競争上不利になります。市場を細分化し、その中でも、自分の強みが発揮できるような顧客を見つけなければなりません。

マーケティングの教科書に書いてあることは、最初からバカにせずに、真面目に試してみるべきですよ。


特定の顧客に頼りすぎる


逆に、顧客設定が現実的すぎて卑小になってしまった計画もあります。

特定の顧客からの受注を確実視してしまう創業です。

創業において、確実に受注が見込める顧客を持つことは間違いではありません。いや、それがなければ創業してはいけないと思います。

しかし、特定の顧客だけを頼りにしてしまうと、あてが外れた時には、即死してしまいます。

これは私にも経験がありますが、これから創業しようと頑張っている人には「応援するよ」「困ったら言ってこいよ」などという声が贈られます。

ありがたい話ですが、「おれが最初の顧客になるから」「〇千万円は発注するから安心して」などとリップサービスが過ぎる人もいます。

本人には悪気はないのでしょうが、創業に向けて藁をもすがる気持ちの者には、罪な軽口ですよ。

はっきり言います。創業前に交わす口約束の殆どは空手形です。

創業経験者は、知っているはずですよね。真に受けて、計画に盛り込んでしまうと、地獄を見ること確実です。

仮に、約束が果たされたとしても、特定の顧客に頼る創業は長生きできません。

顧客ターゲットを絞るのはいいのですが、特定の顧客だけに頼らないようにしましょう。


デジタル過信


営業経験のない事業者に多いのが、SNSなどを使った集客のみで顧客獲得しようという計画です。

SNSの威力を知り尽くし、徹底して使いこなす覚悟で計画しているのであれば、文句も言いませんが、実際のところ、単に営業に苦手意識があるので、SNS集客でお茶を濁したような計画が多いのはいただけません。

僭越ながら私めもSNSやその他デジタルツールを拙いながらも活用しています。が、その使い方は、自分なりの営業方法を組み立てた上で、デジタルに代替できる部分を置き換えるやり方です。

営業の本質は、リアルでもデジタルでも変わらないと思います。

だから、営業が苦手だと避けて、表面だけデジタルに置き換えるてもうまく回るはずがありません。

まずは、営業が回るしくみを組み立てて、それぞれの要素の中でデジタルツールに置き換えられる部分は置き換えていきます。

創業時は人的パワーに難があるので、デジタルツールの活用は不可欠です。それがうまく回るようになれば、生産性が上がるので、デジタルツールを使うこと自体は大いに賛成します。

ただ、営業ができないからSNSで。などという計画は、認めるわけにはいきませんな。


経験不足


構想が壮大すぎて、ほら話のようになった計画がたまにあります。

夢を持つのはいいことですが、そういう計画を作る人の多くが、実務経験に欠ける若者であることが、いい部分でも悪い部分でも気になります。

常識にとらわれない発想ができるのはいいことです。なまじ実務経験があると、枠にはまった発想しかできなくなり、どうしても常識的な計画になってしまいます。その点、怖いもの知らずな発想は、現実を変える起爆剤になるかも知れません。

しかし、現実をみない計画は、実現不可能であることが殆どです。

単純なプロジェクト一つにしても、実際に動かすには、組織を作り、関係性を築き、実行して調整することが必要となります。

人を動かすのは簡単ではありません。理屈では正しくても、感情的にこじれてしまえば、たちまち機能不全に陥ります。机上では素晴らしい計画も、理屈にならないつまづきが頻発して、進まなくなる事業は多々あるものです。

そんな簡単なことさえできないのに、壮大な創業計画を完遂できるはずがありません。

心肺機能も脚力もないのに、いきなりフルマラソンを走ろうとするようなもので、無謀というほかありません。

創業計画においては、実務経験を重視する所以です。

しかし、経験がない者をすべて否定していたら、イノベーションが起きないじゃないか。という意見もわかります。

つまるところ、創業の成否は自己責任なのだから、好きなように創業して、結果は自分で被ればいいやん。というのは正論です。

それを踏まえて、お聞きください。

創業予定者の殆どは舞い上がっていて、普通の状態ではありません。周りの皆が「おかしい」「危ない」と思っていることにも気づいていないものなのです。

一度、立ち止まって、周りからどう見えているのだろうかと考えてみるのも、悪くはありませんよ。

長い人生です。焦る必要はありません。


(2020年10月1日メルマガより)


創業事業の10年生存率は1割程度だといわれています。

ビギナーズラックに恵まれたとしても、10年継続できる事業はわずかです。

いや、ビギナーズラックにあうこともなく、そのまま消えてしまう事業も多いはず。創業というのは希望ばかり大きくて、実際の利益は少ないものです。

それでも創業する人はするもの。止むにやまれぬ気持ち...というべきか。

創業予定者の目は、みな、未来への決意に満ち溢れています。その希望が叶うことを願ってやみません。


創業の成否なんて、結局のところ運だ。という人もいます。生存率1割なのに、開業者を増やそうとする政府の政策をみていると、国全体で「運だ」と言っているように思えます。

確かに、成功者を見ていて「なんでこの人が成功したのだろう?」と首をかしげたくなるような人はいます。だけど、やはり、失敗する人はするべくしてしています。

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」(by野村克也)とはよく言ったものです。

実際に創業する人は、少しでも成功確率を上げるよう準備をして、万全の態勢で創業に臨んでほしい。

ゆめゆめ、創業者自身が「創業なんて運だ。何とかなる」なんて思って、勢いで創業することのないようにしてください。

いい加減な計画で創業し、散々に苦労した私からの心を込めたアドバイスでございます。


思いが強すぎる


創業計画を見ていて多いと感じるのが、思いが強すぎて、独りよがりになっている計画です。

思いが強いのは悪いことではありません。いやむしろ、強くなければ、創業しても続けることなどできないことでしょう。

何か解決したい問題がある、実現したい目標があるから創業するのはしごく健全なことであって、今の会社に不満があるから逃避のように創業する人よりはよほどましです。

ただ、その思いが「自己実現」になってしまうと、事業は歪んでしまいます。

言うまでもなく、事業維持に最も大切なのは顧客からの支持です。

顧客がその事業の商品やサービスを利用しようと思うから、維持するための収益が上がるわけです。

ところが、事業計画をみていると、顧客が求めているかどうかわからないような謎のサービスや設備が盛り込まれていることがよくあります。

むりやりの差別化なのか、特徴を出そうという意識が強すぎるのかと思っていると、実は、どうしてもこの設備を所持してみたかった。超一流の家具を店に置きたかった。見晴らしのいい場所にオフィスが欲しかった。などと、単なる自分の満足のためにしているのです。

当たり障りのないこだわりならいいですが、むしろ創業者のこだわりありきで、それに合わせて、顧客選定も、収益計画も、資金計画も立てなければならない場合だってあるほどです。

何で、創業者のこだわりに、顧客が合わせなければならないのか。本末転倒というものです。

素直に、現実の顧客に合わせて事業を作ればもっと簡単なのに、と残念になる計画が多いということを知っておいてください。


あいまいな顧客


繰り返しになりますが、事業にとって最も大切なのは、顧客の支持です。

ところが、その大切な顧客のことがよく分からずに計画を立てている例も多くみられます。

勝手知ったる業界で創業する人に、顧客をよく見ていない場合が多いと言えば、意外に思うでしょうか。

でも、本当です。まるで自分の庭のようなものだという業界で創業したのに、顧客に支持されずに頓挫する事業は多いのです。

そういう人の話を聞いてみると、どうやら、業界経験が長いゆえに、顧客の存在を当たり前のものと考えているふしがあります。

たとえば、前の会社で新規顧客獲得の方法論ができている場合、創業しても同じように顧客獲得できると思い込んでしまうようです。

同じな広告宣伝や展示会参加で、顧客獲得できると思っていたのに、思うようにならなかった。というのは考えてみれば当たり前で、業歴のある会社と創業事業者では、信用力が違います。扱い商品の幅も深さも違うし、アフターサービスの範囲も違います。電話窓口の対応力も違うし、返信の速さも違います。

要するに違う会社なのに、同じ方法で顧客獲得できると考える方がおかしいのです。

ここはやはり創業の原点に戻り、顧客の絞り込みをきっちりと行い、顧客像を明確にしたうえで、顧客獲得の方法を設計しなければなりません。

そもそも、同じ業界で後発事業を行う場合、まともに同じ顧客を相手にしていたら、競争上不利になります。市場を細分化し、その中でも、自分の強みが発揮できるような顧客を見つけなければなりません。

マーケティングの教科書に書いてあることは、最初からバカにせずに、真面目に試してみるべきですよ。


特定の顧客に頼りすぎる


逆に、顧客設定が現実的すぎて卑小になってしまった計画もあります。

特定の顧客からの受注を確実視してしまう創業です。

創業において、確実に受注が見込める顧客を持つことは間違いではありません。いや、それがなければ創業してはいけないと思います。

しかし、特定の顧客だけを頼りにしてしまうと、あてが外れた時には、即死してしまいます。

これは私にも経験がありますが、これから創業しようと頑張っている人には「応援するよ」「困ったら言ってこいよ」などという声が贈られます。

ありがたい話ですが、「おれが最初の顧客になるから」「〇千万円は発注するから安心して」などとリップサービスが過ぎる人もいます。

本人には悪気はないのでしょうが、創業に向けて藁をもすがる気持ちの者には、罪な軽口ですよ。

はっきり言います。創業前に交わす口約束の殆どは空手形です。

創業経験者は、知っているはずですよね。真に受けて、計画に盛り込んでしまうと、地獄を見ること確実です。

仮に、約束が果たされたとしても、特定の顧客に頼る創業は長生きできません。

顧客ターゲットを絞るのはいいのですが、特定の顧客だけに頼らないようにしましょう。


デジタル過信


営業経験のない事業者に多いのが、SNSなどを使った集客のみで顧客獲得しようという計画です。

SNSの威力を知り尽くし、徹底して使いこなす覚悟で計画しているのであれば、文句も言いませんが、実際のところ、単に営業に苦手意識があるので、SNS集客でお茶を濁したような計画が多いのはいただけません。

僭越ながら私めもSNSやその他デジタルツールを拙いながらも活用しています。が、その使い方は、自分なりの営業方法を組み立てた上で、デジタルに代替できる部分を置き換えるやり方です。

営業の本質は、リアルでもデジタルでも変わらないと思います。

だから、営業が苦手だと避けて、表面だけデジタルに置き換えるてもうまく回るはずがありません。

まずは、営業が回るしくみを組み立てて、それぞれの要素の中でデジタルツールに置き換えられる部分は置き換えていきます。

創業時は人的パワーに難があるので、デジタルツールの活用は不可欠です。それがうまく回るようになれば、生産性が上がるので、デジタルツールを使うこと自体は大いに賛成します。

ただ、営業ができないからSNSで。などという計画は、認めるわけにはいきませんな。


経験不足


構想が壮大すぎて、ほら話のようになった計画がたまにあります。

夢を持つのはいいことですが、そういう計画を作る人の多くが、実務経験に欠ける若者であることが、いい部分でも悪い部分でも気になります。

常識にとらわれない発想ができるのはいいことです。なまじ実務経験があると、枠にはまった発想しかできなくなり、どうしても常識的な計画になってしまいます。その点、怖いもの知らずな発想は、現実を変える起爆剤になるかも知れません。

しかし、現実をみない計画は、実現不可能であることが殆どです。

単純なプロジェクト一つにしても、実際に動かすには、組織を作り、関係性を築き、実行して調整することが必要となります。

人を動かすのは簡単ではありません。理屈では正しくても、感情的にこじれてしまえば、たちまち機能不全に陥ります。机上では素晴らしい計画も、理屈にならないつまづきが頻発して、進まなくなる事業は多々あるものです。

そんな簡単なことさえできないのに、壮大な創業計画を完遂できるはずがありません。

心肺機能も脚力もないのに、いきなりフルマラソンを走ろうとするようなもので、無謀というほかありません。

創業計画においては、実務経験を重視する所以です。

しかし、経験がない者をすべて否定していたら、イノベーションが起きないじゃないか。という意見もわかります。

つまるところ、創業の成否は自己責任なのだから、好きなように創業して、結果は自分で被ればいいやん。というのは正論です。

それを踏まえて、お聞きください。

創業予定者の殆どは舞い上がっていて、普通の状態ではありません。周りの皆が「おかしい」「危ない」と思っていることにも気づいていないものなのです。

一度、立ち止まって、周りからどう見えているのだろうかと考えてみるのも、悪くはありませんよ。

長い人生です。焦る必要はありません。


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代表者・駒井俊雄が発行するメルマガ「営業は売り子じゃない!」
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