日本の電機メーカーはどうすれば生き残れるのか

2012.02.09

(2012年2月9日メルマガより)



■日本の電機産業が危機的な状況に陥っています。

2月4日の日本経済新聞によると、パナソニック7800億円、ソニー22
00億円、シャープ2900億円、NEC1000億円の大幅な赤字を計上
する予想です。

日立や三菱電機は、インフラ事業へのシフトが進んでいたこともあり、赤字
は逃れるようです。

要するに、かつて世界を席巻した日本の家電分野は、もはや強みではなくな
ってしまいました。

■かつてソニーや松下が、GEやフィリップスを追いやったように、今や、
サムスン、LG、ハイアールなどの韓国・中国メーカーが、日本企業を追い
やろうとしています。

特にサムスンの勢いは凄まじい。世界2位である半導体分野での稼ぎを原資
に、テレビ、液晶パネル、携帯電話、リチウム電気で世界1位。デジカメ、
プリンターなどでもシェアを伸ばしています。

サムスンのやり方はシンプルです。ここぞと決めた分野に集中投資して、一
定の地歩を築き、その稼ぎを再成長のために投資して、規模の経済が発揮で
きるところまでやり通すという方法です。シンプルなだけに、効果も見えや
すい。

■サムスンに比較すると、日本メーカーの集中度は、いささか物足りないと
言えます。

これは、日本のメーカーのトップに決断力が足りないという問題よりも、ビ
ジネスモデルの違いです。

サムスンは、当初から世界トップを目指した投資を行っています。なぜなら、
小さい韓国内市場を押さえたとしても、日本企業に規模で勝てない。日本企
業に負けない規模を持つためには、勝てる分野を見つけて、その狭い分野で
世界展開して数的優位を作るという戦略です。

対して、世界第2位の経済規模を誇った日本では、国内市場を押さえること
が最初の命題となります。国内でそこそこのシェアをとっていたら利益は上
げられるので、焦る必要もなかったわけです。

韓国メーカーはそこを突きました。当初、日本の家電メーカーをリスペクト
していた韓国勢も「日本企業の総花的な戦略では、将来もたないだろう」と
首をかしげていたらしい。

今では誰もが、韓国企業の疑念は的を得ていると感じますが、当時は「日本
の高い品質力があれば、優位性は揺るがない」と思う向きが大勢でした。

■ニッチな分野に集中投資して、グローバル市場を席巻するサムスンのビジ
ネスモデルは「グローバルニッチ」とでもいうべきものです。

実は日本の部品メーカーには、グローバルニッチを実現しているところが少
なくありません。

日本板硝子、ファナック、京セラ、村田製作所、日本電産...
http://bit.ly/7GZwwn

こういったデバイス分野では今でも日本企業の優位性が言われています。

■これに対して、日本の家電メーカーは、圧倒的な販売力で日本国内を押さ
えこむ「ローカルメジャー」とでもいうべきビジネスモデルでした。

特に松下電器の儲ける仕組みは完璧でした。日本全国にナショナルショップ
網を張り巡らせて、生産さえすれば販売できるという体制を整えていました。

松下の戦略展開は圧倒的でしたから、他の家電メーカーも真似しようと考え
ました。基本的には、日立も三菱も東芝もシャープも松下のフォロワーでし
たし、そこそこ儲けることができたわけです。

■ところがご存じのように、日本の市場は縮小基調に入っています。ローカ
ルメジャーをこのまま続けても、企業規模をダウンサイジングせざるを得ない。

ダウンサイズするとは、多くの得意先や提携パートナーあるいは従業員を切
り離すことです。

しかも日本市場の縮小基調は急激ですから、悠長なリストラでは効き目があ
りません。

本来ならば、ダウンサイズして黒字を維持しながら、次の成長機会をモノに
しなければならないはずが、どうも、ダウンサイズで精一杯の状況になって
いる企業も多いようです。

■深刻なのは、ローカルメジャーとグローバルニッチでは、企業活動のやり
方が違うということです。要するに、国内がダメだからすぐに世界へ、とい
う簡単なものではない。

これまでの日本企業のグローバル展開は、日本で余った力を海外に出そうと
いう程度のものでしたが、それではグローバルニッチにはなれません。

ローカルメジャーの戦略は、ある一定の地域内で長期安定を目指すものです
から、地域との信頼関係を醸成し、ゼネラリスト的な人材がブームに踊らさ
れることなく着実な営業展開をしていきます。

これに対して、グローバルニッチは、勝てる分野を見極めたら短期集中的に
営業展開し、ダメならやめる、見込みがあるならさらに投資するという判断
が勝負となります。そこで必要とされるのは、戦略的思考力と尖った専門性
を持つ人材です。

必要とする人材を育成するには時間がかかりますから、すぐに切り替えよと
言われても難しいものがあります。

■基本的には、小売、卸、サービス、建築、不動産、生鮮食品などは、ロー
カルビジネスに向いています。

これに対して、メーカーがさらに成長するためには、グローバルニッチを目
指します。

総合家電メーカーがそのままグローバルに展開できて、グローバルメジャー
になれればいいですが、それはランチェスター戦略の理論に合致しておらず、
難しいというのが私の意見です。

(縮小経済下において、ローカルニッチというビジネスのあり方も重要です
が、今回はその話はしません。あくまで成長を前提としたビジネスのお話し
です)

つまり、ある程度の規模を持つ日本の家電メーカーが、グローバル展開をし
ていくためには、相当の組織変革が必要になるということです。

■部品メーカーはある意味、規模が小さいために僥倖だったのかも知れません。

ところが大企業はそうはいきません。今の人材を食わせていかなければなら
ないので、今曲がりなりにも儲かっている分野を捨ててまで、儲かるか儲か
らないか分からない分野にシフトチェンジするなんて真似は出来ません。

さらに会社には「おれが定年するまでは無事だろう」と考える自分だけよけ
ればいい派が大勢いますので、トップが焦っても、船は動きません。

このような組織を変えるのは並大抵ではない。それが出来るのは、「20世
紀最高の経営者」とまで呼ばれたGEのジャック・ウェルチぐらいかも知れ
ません。

■だとすれば、富士フィルムの事例は日本企業としては極めて珍しい特例で
すね。

最近、コダックの凋落と共に、生き残った富士フィルムの話題が経済誌に載
るようになりました。

「技術が引き起こすジレンマ~コダックはその歴史を閉じるのか 健闘する
富士フイルムとの違いは何か?」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120117/226201/

「コダック経営破たんに見る生き残りの法則 企業永続は、成長戦略を貫く
トップの胆力で決まる」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120125/226519/

この両社は、フィルム写真全盛期には、世界を二分する大企業であり、超優
良企業でした。

ところが、デジカメが開発されて、フィルムの需要がなくなってしまいます。

まさに「トヨタ自動車の車がなくなる、新日本製鐵の鉄がなくなる、それぐ
らいの未曾有の事態」になってしまったわけです。

「本業がなくなってしまったら」
http://www.createvalue.biz/column2/post-135.html

富士フィルムは、トップの古森重隆社長を中心に、大掛かりなリストラを敢
行し、事業ドメイン(生きていくべき領域)の再定義を行いました。

もちろん写真フィルムでは食えないので、プリンターや医療、化粧品、電子
部品などの分野に投資を行ったわけです。

富士ゼロックスという関係会社が存在していたという幸運もあります。そこ
からのキャッシュでずいぶん助けられたことでしょう。

しかし、その他の成長分野については、まるでベンチャー企業を育てるかの
ように、形振り構わず有望な分野を探し回ったはずです。

■富士フィルムの従業員が大変革を受け入れたのは、フィルムがなくなって
しまうという分りやすい危機が目前に迫っていたからです。

だから、危機はゆっくりではなく、急激な方が生き残るためにはいいのかも
知れません。

しかし、一方のコダックは「保有特許でなんとかなるや」と甘く考えていた
ようです。

そう思うと、やはり古森重隆社長兼CEOの強烈なリーダーシップ手腕を評
価すべきでしょう。

危機には、独裁的なリーダーが必要である。。というと、現大阪市長を思い
出しますが、それは富士フィルムの事例を見る限り、ビジネスの世界におい
ては、正しい言い方なのです。

■確かに、私にも心当たりがあります。

私の場合、中小企業とお付き合いすることが多いのですが、どんな小さな規
模であっても、一定数の人たちは「現状維持派」です。

そして大半は「様子見派」です。

私をわざわざ呼ぼうというのは、トップが「改革をしなければいけない」と
考えているからなのですが、いくら私が言葉を尽くしても、現状維持派の主
張は生存欲求に根ざしていると思えるほど強固です。

そこで、トップの強権が必要になるわけですが、それが日和見的な態度をと
るともういけません。

様子見派は、トップの顔色を見ていますから、どうも真剣ではないなと気づ
くと、一気に現状維持派に変色します。

そういう目に会うことも実は多い仕事です。楽しいことばかりではありませ
ん^^;

だからトップの決意や資質は重要です。私も、コンサルに向かう場合は、ト
ップの覚悟を吟味しなければなりません。

その変わり、徹底的に後押しをしてくれるトップに会うと、こんなに楽しい
仕事はありませんが^^

■話を戻します。

グローバル-ローカル、メジャー-ニッチ、という2軸をマトリクスにする
と、4つの象限が出来上がります。

すなわち

1.グローバルメジャー

2.グローバルニッチ

3.ローカルメジャー

4.ローカルニッチ

です。

日本の家電メーカーは、3のローカルメジャーです。日本国内における販売
力を根拠に、規模の経済性を発揮しました。当時は、世界を席巻したように
言われましたが、それはあくまで余力によるもので、世界制覇を狙ったもの
ではありませんでした。

ところが、その日本企業を研究し、勝てる分野を見つけて集中投資し、数的
優位を作ったのがサムスンのやり方であり、これは2のグローバルニッチで
す。サムスンは、最初から世界制覇を狙った展開をしています。

そう考えれば、1のグローバルメジャーは、現実的には実現は難しいのでは
ないかと思えます。確かに、GE、P&G、ネスレ、ダノンといった世界的
な複合企業もありますが、内容を見ると、それはサムスンのようにグローバ
ルニッチの集積であると思えます。

彼らは本当に範囲の経済性を発揮しているのだろか?むしろ、巨体ゆえの非
効率性、デメリットの方が大きいのではないかと思えます。

■ということは、企業が成長し、あるいは生き残っていくためには、4のロ
ーカルニッチから始まって、3のローカルメジャーになるか、2のグローバ
ルニッチになるかで、強者にならないといけません。

小売、サービス、卸、建築、不動産、生鮮食品などは、3のローカルメジャ
ーを目指すことが理に適っています。

これに対して、メーカーは、2のグローバルニッチを目指さないと、強者の
ミート戦略にやられてしまいます。

それぞれは、必要とされる経営資源が違うので、目指すべき方向性を明確に
しないと混乱して中途半端になってしまいます。

■例外はwebの世界です。

アメリカが誇るマイクロソフト、グーグル、アマゾン、フェイスブックとい
ったIT企業は、web上の顧客接点を押さえることが即ち世界を制覇するこ
とだという状況を作っています。

彼らが、リアルビジネスの段階や順序をすっ飛ばして、いきなりグローバル
な存在になるのは、彼らの異常な実力であるというよりも、ネットビジネス
ゆえのスピードによるものです。

それぐらい市場の拡大が急激であり、先手必勝が効くビジネスです。

だから、今後、この分野で日本企業が存在感を増すことがあり得るかも知れ
ません。

ただし、それは今の電機メーカーではないとは思いますが...

ちなみにアップルは普通のメーカーですからグローバルニッチを志向して
います)

■それはともかく、リアルなビジネスにおいては、やはり、グローバル-ロ
ーカル、メジャー-ニッチというマトリクスで、考えることができそうです。

日本の電機メーカーが生き延びて、かつての輝きを取り戻すためには、ロー
カルメジャーから、グローバルニッチへ戦略転換を果たすことです。

ニッチ分野は無限にあるので、可能性も無限です。原理さえ分れば、日本企
業の実直さは、世界の脅威になるはずです。

遠くない将来、無数の日本企業がグローバルニッチとして名を馳せる日が来
ると信じております。

ただし、その前に、今の大企業は、根本的な組織変革を行わなければなりま
せん。

最大の敵は組織内にあり。

まるで、日本の国そのもののようですが、優秀な日本の大企業なら見事変革
を成し遂げることでしょう。

そう信じたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■今回とりあげたマトリクスは、大企業だけに当てはまるものではなく、小
さな企業においても同じです。

実をいうと、今回のマトリクスは、私だけが考えたものではなく、前回の
「ランチェスター戦略勉強会」で提示されたものでした。
http://plaza.rakuten.co.jp/createvalue/diary/201201260000/

その時は、広島県福島市の和菓子店の事例をとりあげていました。

「ヒット商品は作らない和菓子店 売上構成比4割超で生産中止~勉強堂」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120113/226137/

この和菓子店の成功要因や戦略を考えていると、地域密着で地元ニーズを丹
念に拾い上げていくビジネスと、自社の得意商品分野を磨きに磨いて全国展
開していくビジネスでは、経営のあり方が全く違うことに気づきます。

これを混同してしまうと、余計なミスや見当違いを起してしまいかねません。

だから自社の立ち位置はなるべくシンプルに捉えて、明確にしておかなけれ
ばならないと考えた次第です。

(2012年2月9日メルマガより)



■日本の電機産業が危機的な状況に陥っています。

2月4日の日本経済新聞によると、パナソニック7800億円、ソニー22
00億円、シャープ2900億円、NEC1000億円の大幅な赤字を計上
する予想です。

日立や三菱電機は、インフラ事業へのシフトが進んでいたこともあり、赤字
は逃れるようです。

要するに、かつて世界を席巻した日本の家電分野は、もはや強みではなくな
ってしまいました。

■かつてソニーや松下が、GEやフィリップスを追いやったように、今や、
サムスン、LG、ハイアールなどの韓国・中国メーカーが、日本企業を追い
やろうとしています。

特にサムスンの勢いは凄まじい。世界2位である半導体分野での稼ぎを原資
に、テレビ、液晶パネル、携帯電話、リチウム電気で世界1位。デジカメ、
プリンターなどでもシェアを伸ばしています。

サムスンのやり方はシンプルです。ここぞと決めた分野に集中投資して、一
定の地歩を築き、その稼ぎを再成長のために投資して、規模の経済が発揮で
きるところまでやり通すという方法です。シンプルなだけに、効果も見えや
すい。

■サムスンに比較すると、日本メーカーの集中度は、いささか物足りないと
言えます。

これは、日本のメーカーのトップに決断力が足りないという問題よりも、ビ
ジネスモデルの違いです。

サムスンは、当初から世界トップを目指した投資を行っています。なぜなら、
小さい韓国内市場を押さえたとしても、日本企業に規模で勝てない。日本企
業に負けない規模を持つためには、勝てる分野を見つけて、その狭い分野で
世界展開して数的優位を作るという戦略です。

対して、世界第2位の経済規模を誇った日本では、国内市場を押さえること
が最初の命題となります。国内でそこそこのシェアをとっていたら利益は上
げられるので、焦る必要もなかったわけです。

韓国メーカーはそこを突きました。当初、日本の家電メーカーをリスペクト
していた韓国勢も「日本企業の総花的な戦略では、将来もたないだろう」と
首をかしげていたらしい。

今では誰もが、韓国企業の疑念は的を得ていると感じますが、当時は「日本
の高い品質力があれば、優位性は揺るがない」と思う向きが大勢でした。

■ニッチな分野に集中投資して、グローバル市場を席巻するサムスンのビジ
ネスモデルは「グローバルニッチ」とでもいうべきものです。

実は日本の部品メーカーには、グローバルニッチを実現しているところが少
なくありません。

日本板硝子、ファナック、京セラ、村田製作所、日本電産...
http://bit.ly/7GZwwn

こういったデバイス分野では今でも日本企業の優位性が言われています。

■これに対して、日本の家電メーカーは、圧倒的な販売力で日本国内を押さ
えこむ「ローカルメジャー」とでもいうべきビジネスモデルでした。

特に松下電器の儲ける仕組みは完璧でした。日本全国にナショナルショップ
網を張り巡らせて、生産さえすれば販売できるという体制を整えていました。

松下の戦略展開は圧倒的でしたから、他の家電メーカーも真似しようと考え
ました。基本的には、日立も三菱も東芝もシャープも松下のフォロワーでし
たし、そこそこ儲けることができたわけです。

■ところがご存じのように、日本の市場は縮小基調に入っています。ローカ
ルメジャーをこのまま続けても、企業規模をダウンサイジングせざるを得ない。

ダウンサイズするとは、多くの得意先や提携パートナーあるいは従業員を切
り離すことです。

しかも日本市場の縮小基調は急激ですから、悠長なリストラでは効き目があ
りません。

本来ならば、ダウンサイズして黒字を維持しながら、次の成長機会をモノに
しなければならないはずが、どうも、ダウンサイズで精一杯の状況になって
いる企業も多いようです。

■深刻なのは、ローカルメジャーとグローバルニッチでは、企業活動のやり
方が違うということです。要するに、国内がダメだからすぐに世界へ、とい
う簡単なものではない。

これまでの日本企業のグローバル展開は、日本で余った力を海外に出そうと
いう程度のものでしたが、それではグローバルニッチにはなれません。

ローカルメジャーの戦略は、ある一定の地域内で長期安定を目指すものです
から、地域との信頼関係を醸成し、ゼネラリスト的な人材がブームに踊らさ
れることなく着実な営業展開をしていきます。

これに対して、グローバルニッチは、勝てる分野を見極めたら短期集中的に
営業展開し、ダメならやめる、見込みがあるならさらに投資するという判断
が勝負となります。そこで必要とされるのは、戦略的思考力と尖った専門性
を持つ人材です。

必要とする人材を育成するには時間がかかりますから、すぐに切り替えよと
言われても難しいものがあります。

■基本的には、小売、卸、サービス、建築、不動産、生鮮食品などは、ロー
カルビジネスに向いています。

これに対して、メーカーがさらに成長するためには、グローバルニッチを目
指します。

総合家電メーカーがそのままグローバルに展開できて、グローバルメジャー
になれればいいですが、それはランチェスター戦略の理論に合致しておらず、
難しいというのが私の意見です。

(縮小経済下において、ローカルニッチというビジネスのあり方も重要です
が、今回はその話はしません。あくまで成長を前提としたビジネスのお話し
です)

つまり、ある程度の規模を持つ日本の家電メーカーが、グローバル展開をし
ていくためには、相当の組織変革が必要になるということです。

■部品メーカーはある意味、規模が小さいために僥倖だったのかも知れません。

ところが大企業はそうはいきません。今の人材を食わせていかなければなら
ないので、今曲がりなりにも儲かっている分野を捨ててまで、儲かるか儲か
らないか分からない分野にシフトチェンジするなんて真似は出来ません。

さらに会社には「おれが定年するまでは無事だろう」と考える自分だけよけ
ればいい派が大勢いますので、トップが焦っても、船は動きません。

このような組織を変えるのは並大抵ではない。それが出来るのは、「20世
紀最高の経営者」とまで呼ばれたGEのジャック・ウェルチぐらいかも知れ
ません。

■だとすれば、富士フィルムの事例は日本企業としては極めて珍しい特例で
すね。

最近、コダックの凋落と共に、生き残った富士フィルムの話題が経済誌に載
るようになりました。

「技術が引き起こすジレンマ~コダックはその歴史を閉じるのか 健闘する
富士フイルムとの違いは何か?」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120117/226201/

「コダック経営破たんに見る生き残りの法則 企業永続は、成長戦略を貫く
トップの胆力で決まる」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120125/226519/

この両社は、フィルム写真全盛期には、世界を二分する大企業であり、超優
良企業でした。

ところが、デジカメが開発されて、フィルムの需要がなくなってしまいます。

まさに「トヨタ自動車の車がなくなる、新日本製鐵の鉄がなくなる、それぐ
らいの未曾有の事態」になってしまったわけです。

「本業がなくなってしまったら」
http://www.createvalue.biz/column2/post-135.html

富士フィルムは、トップの古森重隆社長を中心に、大掛かりなリストラを敢
行し、事業ドメイン(生きていくべき領域)の再定義を行いました。

もちろん写真フィルムでは食えないので、プリンターや医療、化粧品、電子
部品などの分野に投資を行ったわけです。

富士ゼロックスという関係会社が存在していたという幸運もあります。そこ
からのキャッシュでずいぶん助けられたことでしょう。

しかし、その他の成長分野については、まるでベンチャー企業を育てるかの
ように、形振り構わず有望な分野を探し回ったはずです。

■富士フィルムの従業員が大変革を受け入れたのは、フィルムがなくなって
しまうという分りやすい危機が目前に迫っていたからです。

だから、危機はゆっくりではなく、急激な方が生き残るためにはいいのかも
知れません。

しかし、一方のコダックは「保有特許でなんとかなるや」と甘く考えていた
ようです。

そう思うと、やはり古森重隆社長兼CEOの強烈なリーダーシップ手腕を評
価すべきでしょう。

危機には、独裁的なリーダーが必要である。。というと、現大阪市長を思い
出しますが、それは富士フィルムの事例を見る限り、ビジネスの世界におい
ては、正しい言い方なのです。

■確かに、私にも心当たりがあります。

私の場合、中小企業とお付き合いすることが多いのですが、どんな小さな規
模であっても、一定数の人たちは「現状維持派」です。

そして大半は「様子見派」です。

私をわざわざ呼ぼうというのは、トップが「改革をしなければいけない」と
考えているからなのですが、いくら私が言葉を尽くしても、現状維持派の主
張は生存欲求に根ざしていると思えるほど強固です。

そこで、トップの強権が必要になるわけですが、それが日和見的な態度をと
るともういけません。

様子見派は、トップの顔色を見ていますから、どうも真剣ではないなと気づ
くと、一気に現状維持派に変色します。

そういう目に会うことも実は多い仕事です。楽しいことばかりではありませ
ん^^;

だからトップの決意や資質は重要です。私も、コンサルに向かう場合は、ト
ップの覚悟を吟味しなければなりません。

その変わり、徹底的に後押しをしてくれるトップに会うと、こんなに楽しい
仕事はありませんが^^

■話を戻します。

グローバル-ローカル、メジャー-ニッチ、という2軸をマトリクスにする
と、4つの象限が出来上がります。

すなわち

1.グローバルメジャー

2.グローバルニッチ

3.ローカルメジャー

4.ローカルニッチ

です。

日本の家電メーカーは、3のローカルメジャーです。日本国内における販売
力を根拠に、規模の経済性を発揮しました。当時は、世界を席巻したように
言われましたが、それはあくまで余力によるもので、世界制覇を狙ったもの
ではありませんでした。

ところが、その日本企業を研究し、勝てる分野を見つけて集中投資し、数的
優位を作ったのがサムスンのやり方であり、これは2のグローバルニッチで
す。サムスンは、最初から世界制覇を狙った展開をしています。

そう考えれば、1のグローバルメジャーは、現実的には実現は難しいのでは
ないかと思えます。確かに、GE、P&G、ネスレ、ダノンといった世界的
な複合企業もありますが、内容を見ると、それはサムスンのようにグローバ
ルニッチの集積であると思えます。

彼らは本当に範囲の経済性を発揮しているのだろか?むしろ、巨体ゆえの非
効率性、デメリットの方が大きいのではないかと思えます。

■ということは、企業が成長し、あるいは生き残っていくためには、4のロ
ーカルニッチから始まって、3のローカルメジャーになるか、2のグローバ
ルニッチになるかで、強者にならないといけません。

小売、サービス、卸、建築、不動産、生鮮食品などは、3のローカルメジャ
ーを目指すことが理に適っています。

これに対して、メーカーは、2のグローバルニッチを目指さないと、強者の
ミート戦略にやられてしまいます。

それぞれは、必要とされる経営資源が違うので、目指すべき方向性を明確に
しないと混乱して中途半端になってしまいます。

■例外はwebの世界です。

アメリカが誇るマイクロソフト、グーグル、アマゾン、フェイスブックとい
ったIT企業は、web上の顧客接点を押さえることが即ち世界を制覇するこ
とだという状況を作っています。

彼らが、リアルビジネスの段階や順序をすっ飛ばして、いきなりグローバル
な存在になるのは、彼らの異常な実力であるというよりも、ネットビジネス
ゆえのスピードによるものです。

それぐらい市場の拡大が急激であり、先手必勝が効くビジネスです。

だから、今後、この分野で日本企業が存在感を増すことがあり得るかも知れ
ません。

ただし、それは今の電機メーカーではないとは思いますが...

ちなみにアップルは普通のメーカーですからグローバルニッチを志向して
います)

■それはともかく、リアルなビジネスにおいては、やはり、グローバル-ロ
ーカル、メジャー-ニッチというマトリクスで、考えることができそうです。

日本の電機メーカーが生き延びて、かつての輝きを取り戻すためには、ロー
カルメジャーから、グローバルニッチへ戦略転換を果たすことです。

ニッチ分野は無限にあるので、可能性も無限です。原理さえ分れば、日本企
業の実直さは、世界の脅威になるはずです。

遠くない将来、無数の日本企業がグローバルニッチとして名を馳せる日が来
ると信じております。

ただし、その前に、今の大企業は、根本的な組織変革を行わなければなりま
せん。

最大の敵は組織内にあり。

まるで、日本の国そのもののようですが、優秀な日本の大企業なら見事変革
を成し遂げることでしょう。

そう信じたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■今回とりあげたマトリクスは、大企業だけに当てはまるものではなく、小
さな企業においても同じです。

実をいうと、今回のマトリクスは、私だけが考えたものではなく、前回の
「ランチェスター戦略勉強会」で提示されたものでした。
http://plaza.rakuten.co.jp/createvalue/diary/201201260000/

その時は、広島県福島市の和菓子店の事例をとりあげていました。

「ヒット商品は作らない和菓子店 売上構成比4割超で生産中止~勉強堂」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120113/226137/

この和菓子店の成功要因や戦略を考えていると、地域密着で地元ニーズを丹
念に拾い上げていくビジネスと、自社の得意商品分野を磨きに磨いて全国展
開していくビジネスでは、経営のあり方が全く違うことに気づきます。

これを混同してしまうと、余計なミスや見当違いを起してしまいかねません。

だから自社の立ち位置はなるべくシンプルに捉えて、明確にしておかなけれ
ばならないと考えた次第です。

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