携帯電話版三国志

2006.12.21


(2006年12月21日メルマガより)

■劉備玄徳に三顧の礼で迎えられた諸葛孔明は、強大な魏を破る秘策として
「天下三分の計」と言われる戦略を授けます。

志だけは高く、仲間に恵まれながらも、先見性に欠けるためか、乱世に翻弄
され続けてきた劉備玄徳は、この戦略を得て、はじめて歴史の表舞台に立ち
ます。

巨大な「志」に方向性を得た劉備玄徳と、過剰なほどの「能力」に志という
命を吹き込まれた諸葛孔明の出会いは、三国志演義の中でもハイライトのひ
とつです。

それはともかく。

孔明の基本方針は、1位の魏に対抗するために、2位の呉と提携して、その
間に3位の地位を固め、3国で均衡状態を作り上げ、その後、各国を各個撃
破するというものでした。

■2006年、日本の大きな話題となった携帯電話事業者の競争を三国志に
喩える向きもあります。

9月末の契約件数で言うと(日経新聞による)

トップのNTTドコモが、5200万件(約56%)

2位のKDDIが、2600万件(約28%)

そして3位のソフトバンクモバイルが、1500万件(約16%)

市場シェアで見ると、NTTドコモは絶対的強者であり、独占状態に入って
います。

理論的には、2位、3位の企業に勝ち目はなく、2位は思い切った差別化で
現状維持を目指し、3位は撤退を考えなければなりません。

KDDIは、「着うた」などで若い層にターゲットを絞り、特徴を出すこと
でシェアを伸ばしていますが、このレベルでは、NTTドコモが慌てる必要
はありません。

少々の波風では、揺るがない地位を占めている堂々の強者です。

■しかし、ソフトバンクは、1兆7500億円を投じてボーダーフォンを買
収したわけですから、今さら撤退戦略はありません。(ソフトバンク本体を
担保にしたという噂が本当なら、まさに背水の陣です)

まともにやっては勝ち目はない。どうも、KDDIは現状で満足しており、
NTTドコモとつるんでいる。。と思ったのか、思わないのか。

ソフトバンクは「予想外割引」なんてことをやりました。

なんで大人になりきれなかったのだろう。と巷ではギャグにされていました
が、当然、こんなことでシェアアップできるとは考えていないでしょう。

まあ、話題になったし、大きな落ち込みも防げたし、存在感は見せることが
できたかなというぐらいです。

(本音で言うと、相当、計算違いがあったと見ていますが...)

■三国志ではないですが、こういう場合、3位の企業は2位と組まないと、
勝ち目はありません。(少なくとも、2位と1位を争わせないとダメです)

実際、光ファイバー接続料金に関する公聴会では、KDDIとソフトバンク
は協調して、NTTを攻撃しています。

しかし、今回の割引騒動では、NTTドコモとKDDIの共闘を招いてしま
いました。これはまずい策だったと言わざるを得ません。

そうでなくても、かつての自民党と社会党のように和んでしまっていると思
えなくもない2社ですから、ソフトバンクとしては、調略でも謀略でも使っ
て、ゆさぶりをかけないとダメです。

まあ、今後は、そういう方針でいくしかないでしょう。

■強い相手に正面攻撃を仕掛けるのは愚策です。

弱者の基本戦略は差別化です。

ただでさえ、体力のない3位企業が、価格勝負などかけてはいけません。差
別化を行い自社の得意分野で勝負するしかないのです。

大前研一氏は早くから、ソフトバンクの可能性を「インターネットサービス、
固定電話、携帯電話を統合した」サービスにあると言っています。

ソフトバンクは、ヤフーというポータルサイト、ヤフーBBというインター
ネットプロバイダー、ソフトバンクテレコムという固定電話事業を持ってい
ますから、これらを組み合わせたサービスを作り上げれば、独自の価値を消
費者に提供することができるはずだというわけです。

なにしろ、NTTは東西分割された上に、事業ごとに別々の展開をしている
から、簡単にはサービス提供できないらしいですしね。

ソフトバンクとしては、ここは一旦持久戦に持ち込み、自社にしかできない
サービスを地道に作り上げるべきです。

■ただし、KDDIとすれば「足下の敵攻撃の原則」で、ソフトバンクを攻
撃するのは理に適っています。

限られたパイの中で、3位が育ってきた時、最も割を食うのが2位の企業で
す。

成熟化が明瞭な日本の携帯電話市場です。差別化戦略で、NTTドコモのシ
ェアを微妙に奪っているところに、3位の企業に割り込まれては、迷惑この
上ないでしょうから。

3位企業が、大人しくフォロワーとしておこぼれを拾っている間はいいので
すが、無茶をする弱者は叩いておかなければなりません。

そうしないと、自動車業界におけるホンダと日産のような関係になってしま
います。

弱者は叩き、その上で、強者とは差別化で戦う。これが2位のとるべき戦略
です。

実は、KDDIは携帯電話事業でほとんどの利益を稼ぎ出しています。だか
ら、この砦は死守しないと将来がありません。

3位の企業を放置するような余裕などないわけですね。

それにしても、KDDIの携帯電話市場における牙城は危ういものです。

現状のシェアで安定的な利益はいつまでも見込めません。だから、携帯電話
事業のアガリに頼っている現状は脆いものだと言わざるを得ません。

フォロワーのような気持ちでいると、早晩、凋落してしまうことでしょう。

■世界に目を向ければ、群雄割拠しています。NTTドコモといえども、世
界的には弱者です。

日本は、高機能サービスが主流であるという特殊性から、擬似鎖国のような
状況になっていますが、永遠に均衡状態が続くとは思えません。

低機能、低料金を求める層は確実にいます。消費者が求めるならば、政府が
規制をし続けるわけにはいかないでしょうから、市場が一気に開放した時、
特に、2位、3位の企業は、このままでは苦しいでしょう。

■例えば、スカイプ電話のような、インターネット回線を使った携帯電話の
普及もすぐそこに迫っています。これは、基本的に無料で世界中に電話でき
るものですから、本格的に商品化されると爆発的に売れることは間違いあり
ません。

無線LANのアクセスポイント設置に多大な投資がかかるというので、未だ
実現が見えてきませんが、既存の携帯電話とのハイブリッド型などできない
ものでしょうか。

これこそ、KDDI、ソフトバンク、イーアクセス、ウィルコムなどが、共
同して取り組むべき事業だと思うのですが、いかがでしょうか。

そうなれば、NTTドコモといえども安穏としてはいられないでしょう。

■日本の3社は、携帯電話を家電ネットワークの窓口にしようとしています
から、市場シェア死守は至上命令です。

今後は、携帯電話の機能だけではなく、固定電話、インターネット、その他
家電製品を巻き込んだシステム競争になってきますから、ますます様相は複
雑化してきますね。

ある意味、三国志演義ぐらい面白いかも知れませんよ。


(2006年12月21日メルマガより)

■劉備玄徳に三顧の礼で迎えられた諸葛孔明は、強大な魏を破る秘策として
「天下三分の計」と言われる戦略を授けます。

志だけは高く、仲間に恵まれながらも、先見性に欠けるためか、乱世に翻弄
され続けてきた劉備玄徳は、この戦略を得て、はじめて歴史の表舞台に立ち
ます。

巨大な「志」に方向性を得た劉備玄徳と、過剰なほどの「能力」に志という
命を吹き込まれた諸葛孔明の出会いは、三国志演義の中でもハイライトのひ
とつです。

それはともかく。

孔明の基本方針は、1位の魏に対抗するために、2位の呉と提携して、その
間に3位の地位を固め、3国で均衡状態を作り上げ、その後、各国を各個撃
破するというものでした。

■2006年、日本の大きな話題となった携帯電話事業者の競争を三国志に
喩える向きもあります。

9月末の契約件数で言うと(日経新聞による)

トップのNTTドコモが、5200万件(約56%)

2位のKDDIが、2600万件(約28%)

そして3位のソフトバンクモバイルが、1500万件(約16%)

市場シェアで見ると、NTTドコモは絶対的強者であり、独占状態に入って
います。

理論的には、2位、3位の企業に勝ち目はなく、2位は思い切った差別化で
現状維持を目指し、3位は撤退を考えなければなりません。

KDDIは、「着うた」などで若い層にターゲットを絞り、特徴を出すこと
でシェアを伸ばしていますが、このレベルでは、NTTドコモが慌てる必要
はありません。

少々の波風では、揺るがない地位を占めている堂々の強者です。

■しかし、ソフトバンクは、1兆7500億円を投じてボーダーフォンを買
収したわけですから、今さら撤退戦略はありません。(ソフトバンク本体を
担保にしたという噂が本当なら、まさに背水の陣です)

まともにやっては勝ち目はない。どうも、KDDIは現状で満足しており、
NTTドコモとつるんでいる。。と思ったのか、思わないのか。

ソフトバンクは「予想外割引」なんてことをやりました。

なんで大人になりきれなかったのだろう。と巷ではギャグにされていました
が、当然、こんなことでシェアアップできるとは考えていないでしょう。

まあ、話題になったし、大きな落ち込みも防げたし、存在感は見せることが
できたかなというぐらいです。

(本音で言うと、相当、計算違いがあったと見ていますが...)

■三国志ではないですが、こういう場合、3位の企業は2位と組まないと、
勝ち目はありません。(少なくとも、2位と1位を争わせないとダメです)

実際、光ファイバー接続料金に関する公聴会では、KDDIとソフトバンク
は協調して、NTTを攻撃しています。

しかし、今回の割引騒動では、NTTドコモとKDDIの共闘を招いてしま
いました。これはまずい策だったと言わざるを得ません。

そうでなくても、かつての自民党と社会党のように和んでしまっていると思
えなくもない2社ですから、ソフトバンクとしては、調略でも謀略でも使っ
て、ゆさぶりをかけないとダメです。

まあ、今後は、そういう方針でいくしかないでしょう。

■強い相手に正面攻撃を仕掛けるのは愚策です。

弱者の基本戦略は差別化です。

ただでさえ、体力のない3位企業が、価格勝負などかけてはいけません。差
別化を行い自社の得意分野で勝負するしかないのです。

大前研一氏は早くから、ソフトバンクの可能性を「インターネットサービス、
固定電話、携帯電話を統合した」サービスにあると言っています。

ソフトバンクは、ヤフーというポータルサイト、ヤフーBBというインター
ネットプロバイダー、ソフトバンクテレコムという固定電話事業を持ってい
ますから、これらを組み合わせたサービスを作り上げれば、独自の価値を消
費者に提供することができるはずだというわけです。

なにしろ、NTTは東西分割された上に、事業ごとに別々の展開をしている
から、簡単にはサービス提供できないらしいですしね。

ソフトバンクとしては、ここは一旦持久戦に持ち込み、自社にしかできない
サービスを地道に作り上げるべきです。

■ただし、KDDIとすれば「足下の敵攻撃の原則」で、ソフトバンクを攻
撃するのは理に適っています。

限られたパイの中で、3位が育ってきた時、最も割を食うのが2位の企業で
す。

成熟化が明瞭な日本の携帯電話市場です。差別化戦略で、NTTドコモのシ
ェアを微妙に奪っているところに、3位の企業に割り込まれては、迷惑この
上ないでしょうから。

3位企業が、大人しくフォロワーとしておこぼれを拾っている間はいいので
すが、無茶をする弱者は叩いておかなければなりません。

そうしないと、自動車業界におけるホンダと日産のような関係になってしま
います。

弱者は叩き、その上で、強者とは差別化で戦う。これが2位のとるべき戦略
です。

実は、KDDIは携帯電話事業でほとんどの利益を稼ぎ出しています。だか
ら、この砦は死守しないと将来がありません。

3位の企業を放置するような余裕などないわけですね。

それにしても、KDDIの携帯電話市場における牙城は危ういものです。

現状のシェアで安定的な利益はいつまでも見込めません。だから、携帯電話
事業のアガリに頼っている現状は脆いものだと言わざるを得ません。

フォロワーのような気持ちでいると、早晩、凋落してしまうことでしょう。

■世界に目を向ければ、群雄割拠しています。NTTドコモといえども、世
界的には弱者です。

日本は、高機能サービスが主流であるという特殊性から、擬似鎖国のような
状況になっていますが、永遠に均衡状態が続くとは思えません。

低機能、低料金を求める層は確実にいます。消費者が求めるならば、政府が
規制をし続けるわけにはいかないでしょうから、市場が一気に開放した時、
特に、2位、3位の企業は、このままでは苦しいでしょう。

■例えば、スカイプ電話のような、インターネット回線を使った携帯電話の
普及もすぐそこに迫っています。これは、基本的に無料で世界中に電話でき
るものですから、本格的に商品化されると爆発的に売れることは間違いあり
ません。

無線LANのアクセスポイント設置に多大な投資がかかるというので、未だ
実現が見えてきませんが、既存の携帯電話とのハイブリッド型などできない
ものでしょうか。

これこそ、KDDI、ソフトバンク、イーアクセス、ウィルコムなどが、共
同して取り組むべき事業だと思うのですが、いかがでしょうか。

そうなれば、NTTドコモといえども安穏としてはいられないでしょう。

■日本の3社は、携帯電話を家電ネットワークの窓口にしようとしています
から、市場シェア死守は至上命令です。

今後は、携帯電話の機能だけではなく、固定電話、インターネット、その他
家電製品を巻き込んだシステム競争になってきますから、ますます様相は複
雑化してきますね。

ある意味、三国志演義ぐらい面白いかも知れませんよ。

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