「孫子」を5つのポイントで整理した

2017.01.12

(2017年1月12日メルマガより)


■この正月、時間があったので、「孫子」を読み返しておりました。

私は「孫子」が好きでして、それに関するセミナーも何度もしております。

それでもたまに読みたくなります。そのたびに新しい発見があるので、さすが孫子です。

確か昨年の第一回目のメルマガも孫子に関するものだったはずですね。

参考:「孫子の兵法」を企業経営に活かす方法
http://www.createvalue.biz/column2/post-379.html

恒例、というわけではないですが、今年も最初の話題は「孫子」をとりあげたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■今年の正月、思うところがあって「孫子」を読んでいました。

参考:孫子 (講談社学術文庫)
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4061592831/lanchesterkan-22/ref=nosim

ちなみに「孫子」とはいまから2500年前に書かれた中国の兵法書です。

古今東西の兵法書の中でもとりわけ有名なもので、いまだに世界中の軍事専門家、政治家、各界のリーダーなどに読まれています。

ビジネスの世界でも「孫子」に書かれている知見は、非常に参考になるものです。

私は、仕事がら必要性を感じて読み始めたのですが、はじめて読んだ時は、その内容に衝撃を受けました。

なにが...というと、とにかく合理的なその姿勢です。

身も蓋もないぐらい合理的。

そりゃあ、初めて読んだ人は驚くはずですよ。

■一般に「兵法」というと戦争の方法や勝ち方を書いた本と思われるかも知れません

が、「孫子」はむしろ、戦争を回避すべし、と主張しています。

その戦争忌避の姿勢は最初から最後まで徹底しています。

ただしその理由が合理的です。

戦争になれば損をするから。ありていに言うと、お金がかかるからです。

じゃあ、儲かるなら戦争していいのか?というと、していい。と書かれています。

もっとも、儲かるような戦争なんてそうそうありませんから、なるべく回避しようとします。

どのように回避するのかというと、謀略で敵を内部崩壊させて、戦争にならないようにしよう。といって、スパイの使い方などを説くわけです。

■要するに「孫子」には、「論語」にあるような、「人間はこうあるべし」「社会はこうあるべし」という理想論が一切ありません。

徹頭徹尾、現実的であり、合理的な判断を説いています。

ともすると「敵は攻めてこないだろう」「礼を尽くせばわかってくれるだろう」といった都合のいい考えに陥りがちな我々に冷や水をかぶせるような内容となっています。

だから、私は、ビジネスを語る際、理想論や精神論を混ぜることに違和感を覚えてしまいます。

ビジネスで生き残るには、そんなもの必要ない、どこまでも現実的で客観的でなければならない。「孫子」がそう語っているからです。

■戦国武将の武田信玄は、孫子を読み込んでいたと言われています。(旗印の風林火山は、孫子からとった言葉です)

だからその家臣であった真田昌幸やその子息である真田幸村も孫子を参考にしていたことでしょう。

彼らだけではなく、戦国時代の武将の戦い方には、「孫子」の影響が見られます。

あるいは、現実として生き残るために行動するならば「孫子」に似てこざるを得ないということかも知れません。

彼らは、軽々しく戦うことはせず、常に慎重に、調略や謀略を駆使して、自らは損をせずに生き抜くことに腐心しています。

それが戦乱の時代の現実的な姿なのです。

■その「孫子」の中で最も有名な文といえば「彼れを知りて己を知らば、百戦して殆(あや)うからず」(謀攻篇)ではないでしょうか。

「孫子」といえば誰もが思い浮かべる文章ですよね。

ちなみにその文章の前後を加えると、こうなります。

「故に兵は、彼れを知りて己を知らば、百戦して殆(あや)うからず。彼れを知らずして己を知らば、一勝一負す。彼れを知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし」

(したがって軍事においては、相手の実情を知って自己の実情も知っていれば、百たび戦っても危険な状態にはならない。相手の実情を知らずに自己の実情だけを知っていれば、勝ったり負けたりする。相手の実情も知らず自己の実情も知らなければ、戦うたびに必ず危険に陥る)←上記の「孫子」(講談社学術文庫) を参考にしています。

■ビジネスにおいては、この文を読んで、情報を収集し現状分析をする大切さを再確認する経営者や管理者が多いと思います。

しかしどのような情報を収集し、どのように分析すればいいのか、まで「孫子」には書かれていることを知らない人も多いのではないでしょうか。

この文章の前は、こうなっています。

「故に勝を知るに五あり。而て戦うべきと戦うべからざるとを知るは勝つ。衆寡の用を知るは勝つ。上下の欲を同じうするは勝つ。虞を以て不虞を待つは勝つ。将の能にして君の御せざるは勝つ。この五者は勝を知るの道なり。」(謀攻篇)

(そこで勝利を予知するのに5つの要点がある。

(1)戦ってよい場合と戦ってならない場合を分別しているのは勝ち、

(2)大兵力と小兵力それぞれの運用法に精通しているのは勝ち、

(3)上下の意思統一を成功しているのは勝ち、

(4)計略を仕組んでそれに気づかずにやってくる敵を待つのは勝ち、

(5)将軍が有能で君主が余計な干渉をしないのは勝つ。

これら5つの要点こそ、勝利を予知する方法である。)

この5つについて、自社と他社のいずれが優れているか、劣っているのかを情報収集し、分析することが、「彼を知り己を知る」という意味なのです。

■この部分は極めて重要だと私は考えています。なぜなら、この5つによって、孫子の全文を整理することができる。それほど核心をついた5つのポイントだからです。

まず(1)戦ってよい場合と戦ってならない場合を分別しているというのは、情報収集と現状分析の重要性を示すものです。

「孫子」には、べつの箇所(計篇)に、現状分析の方法として五事七計なるものが提示されています。

詳しくは説明しませんが「道天地将法」が五事、「君主、将、天地、法令、民衆、士卒、賞罰」が七計となります。

これらの分析に必要な情報を間諜(スパイ)などを使って収集します。

その上で、勝てる敵か、勝てる場所か、勝てる時期かを判断することが大切だと「孫子」は言っています。

※ソフトバンクの孫正義氏などは、この「道天地将法」に20文字を足して、独自の戦略方針を作っていますので、ご参考に。

参考:孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学 (PHP文庫)
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4569676219/lanchesterkan-22/ref=nosim

■(2)大兵力と小兵力それぞれの運用法とは、用兵の法。いわゆる戦略です。

大人数の軍隊と少人数の軍隊では、勝つために戦う方法が違ってきます。

ランチェスター戦略でいうと「強者の戦略」と「弱者の戦略」を適切に使い分けなければなりません。

「孫子」には、戦略的な考え方や用兵の方法について、詳しく書かれています。

ただし、あくまで「孫子」は、派手で無理な戦略行動をとることを戒めています。

「善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり」(形篇)

(戦巧者とは、容易に勝てるときに勝つ者である)

ここでいう「とき」とは、時期であり、場所であり、敵の状況のことを指しています。

一か八かの勝負をして勝ったとしても、それは戦巧者とは認められません。

絶対に勝てるという算段があるときにだけ戦う。それ以外は、守りを固めて、外交交渉や謀略で相手が攻めてこないような状況を作ることが、「孫子」の姿勢です。

■(3)上下の意思統一とは、組織が一体化している状態を指しているものと考えます。

つまり組織マネジメントの充実度を示しています。

「孫子」が明確に言っているのは、末端の兵士の能力を頼みにしないということです。

「善く戦う者は、これを勢に求めて人に責めず、故に善く人を択(えら)びて勢に任ぜしむ」(勢篇)

(巧みに戦う者は、個人の働きには頼らずに「勢」で戦う。したがって、適材を適所に配置し、「勢」に従わせるようにする)

「勢」とは、勢い、流れといったものを指すものだと思われます。

軍隊にも組織体制があるように、企業組織にも形態があります。企業の場合、ターゲット顧客、業界、ビジネスモデルによって形態は様々ですが、それぞれ相応しい組織の形を持っているはずです。

ところが形というものは時間を経るごとに硬直化していきます。最初は市場に適合していたはずなのに、組織を守る(ありていに言えば、組織内の既得権益を守る)ためにパワーを使うようになります。

そんな時、末端の社員に、顧客対応、競合対応の責任を押し付けるのは、上層部に能がないということにほかなりません。

そこで「孫子」は「勢」という概念を提示します。

組織に何らかの勢いを起こすためには、一方向へ向かう流れを作ることが肝要です。

つまり、組織が掲げた目標を全体で共有し、それに向かうためにコミュニケーションを密にすることが、組織が一体になって大きなパワーを持つことにつながります。

■(4)計略を仕組んでそれに気づかずにやってくる敵を待つ。とは、現場の戦闘における作戦行動を指していると考えます。

「兵とは詭道なり」(計篇)

(戦争とは相手を騙す行為である)

現場の戦闘行為においても、「孫子」はまともに正面からぶつかるよりも、相手を欺き、油断させ、混乱させ、隙を突くような戦いを推奨します。

なぜならその方が、損害が少なく、合理的だからです。

この現場でどう戦うかという部分に最も多くの文を費やしており、行軍の方法や様々な地形での対処、いろんな状況に陥った時の戦い方などが言及されています。

■(5)将軍が有能で君主が余計な干渉をしない。

将軍とは現場を預かるリーダー。君主とはオーナーや経営責任者のことになるでしょうか。

現場のことは現場に任せよ。というのが「孫子」の考えです。

君主の命令に背いてでも、現場の状況に従って行動すべし。と説いており、そのような将軍は国の宝だとまで言っています。

つまり経営トップは方針を示して組織の一体化を図り、現場での実際の動きは現場を知る者に任せるという現実的に組織を動かす方法論です。

■このように「孫子」は極めて現実的観点から書かれたものです。

この本が2500年もの期間、古びずに生き残ってきたのは、そこに腐りやすい生もの(時代の倫理観や正義感)を一切含んでいないからでしょう。

実は私はこの正月、「孫子」の全文を、上記5つのポイントで整理する作業をしておりました。

すると、全文がきれいにおさまることを確認しました。

つまり「孫子」は、現実的かつ優れて体系的に書かれた書物でした。

いずれその成果を披露したいと思っております。


(2017年1月12日メルマガより)


■この正月、時間があったので、「孫子」を読み返しておりました。

私は「孫子」が好きでして、それに関するセミナーも何度もしております。

それでもたまに読みたくなります。そのたびに新しい発見があるので、さすが孫子です。

確か昨年の第一回目のメルマガも孫子に関するものだったはずですね。

参考:「孫子の兵法」を企業経営に活かす方法
http://www.createvalue.biz/column2/post-379.html

恒例、というわけではないですが、今年も最初の話題は「孫子」をとりあげたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■今年の正月、思うところがあって「孫子」を読んでいました。

参考:孫子 (講談社学術文庫)
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4061592831/lanchesterkan-22/ref=nosim

ちなみに「孫子」とはいまから2500年前に書かれた中国の兵法書です。

古今東西の兵法書の中でもとりわけ有名なもので、いまだに世界中の軍事専門家、政治家、各界のリーダーなどに読まれています。

ビジネスの世界でも「孫子」に書かれている知見は、非常に参考になるものです。

私は、仕事がら必要性を感じて読み始めたのですが、はじめて読んだ時は、その内容に衝撃を受けました。

なにが...というと、とにかく合理的なその姿勢です。

身も蓋もないぐらい合理的。

そりゃあ、初めて読んだ人は驚くはずですよ。

■一般に「兵法」というと戦争の方法や勝ち方を書いた本と思われるかも知れません

が、「孫子」はむしろ、戦争を回避すべし、と主張しています。

その戦争忌避の姿勢は最初から最後まで徹底しています。

ただしその理由が合理的です。

戦争になれば損をするから。ありていに言うと、お金がかかるからです。

じゃあ、儲かるなら戦争していいのか?というと、していい。と書かれています。

もっとも、儲かるような戦争なんてそうそうありませんから、なるべく回避しようとします。

どのように回避するのかというと、謀略で敵を内部崩壊させて、戦争にならないようにしよう。といって、スパイの使い方などを説くわけです。

■要するに「孫子」には、「論語」にあるような、「人間はこうあるべし」「社会はこうあるべし」という理想論が一切ありません。

徹頭徹尾、現実的であり、合理的な判断を説いています。

ともすると「敵は攻めてこないだろう」「礼を尽くせばわかってくれるだろう」といった都合のいい考えに陥りがちな我々に冷や水をかぶせるような内容となっています。

だから、私は、ビジネスを語る際、理想論や精神論を混ぜることに違和感を覚えてしまいます。

ビジネスで生き残るには、そんなもの必要ない、どこまでも現実的で客観的でなければならない。「孫子」がそう語っているからです。

■戦国武将の武田信玄は、孫子を読み込んでいたと言われています。(旗印の風林火山は、孫子からとった言葉です)

だからその家臣であった真田昌幸やその子息である真田幸村も孫子を参考にしていたことでしょう。

彼らだけではなく、戦国時代の武将の戦い方には、「孫子」の影響が見られます。

あるいは、現実として生き残るために行動するならば「孫子」に似てこざるを得ないということかも知れません。

彼らは、軽々しく戦うことはせず、常に慎重に、調略や謀略を駆使して、自らは損をせずに生き抜くことに腐心しています。

それが戦乱の時代の現実的な姿なのです。

■その「孫子」の中で最も有名な文といえば「彼れを知りて己を知らば、百戦して殆(あや)うからず」(謀攻篇)ではないでしょうか。

「孫子」といえば誰もが思い浮かべる文章ですよね。

ちなみにその文章の前後を加えると、こうなります。

「故に兵は、彼れを知りて己を知らば、百戦して殆(あや)うからず。彼れを知らずして己を知らば、一勝一負す。彼れを知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし」

(したがって軍事においては、相手の実情を知って自己の実情も知っていれば、百たび戦っても危険な状態にはならない。相手の実情を知らずに自己の実情だけを知っていれば、勝ったり負けたりする。相手の実情も知らず自己の実情も知らなければ、戦うたびに必ず危険に陥る)←上記の「孫子」(講談社学術文庫) を参考にしています。

■ビジネスにおいては、この文を読んで、情報を収集し現状分析をする大切さを再確認する経営者や管理者が多いと思います。

しかしどのような情報を収集し、どのように分析すればいいのか、まで「孫子」には書かれていることを知らない人も多いのではないでしょうか。

この文章の前は、こうなっています。

「故に勝を知るに五あり。而て戦うべきと戦うべからざるとを知るは勝つ。衆寡の用を知るは勝つ。上下の欲を同じうするは勝つ。虞を以て不虞を待つは勝つ。将の能にして君の御せざるは勝つ。この五者は勝を知るの道なり。」(謀攻篇)

(そこで勝利を予知するのに5つの要点がある。

(1)戦ってよい場合と戦ってならない場合を分別しているのは勝ち、

(2)大兵力と小兵力それぞれの運用法に精通しているのは勝ち、

(3)上下の意思統一を成功しているのは勝ち、

(4)計略を仕組んでそれに気づかずにやってくる敵を待つのは勝ち、

(5)将軍が有能で君主が余計な干渉をしないのは勝つ。

これら5つの要点こそ、勝利を予知する方法である。)

この5つについて、自社と他社のいずれが優れているか、劣っているのかを情報収集し、分析することが、「彼を知り己を知る」という意味なのです。

■この部分は極めて重要だと私は考えています。なぜなら、この5つによって、孫子の全文を整理することができる。それほど核心をついた5つのポイントだからです。

まず(1)戦ってよい場合と戦ってならない場合を分別しているというのは、情報収集と現状分析の重要性を示すものです。

「孫子」には、べつの箇所(計篇)に、現状分析の方法として五事七計なるものが提示されています。

詳しくは説明しませんが「道天地将法」が五事、「君主、将、天地、法令、民衆、士卒、賞罰」が七計となります。

これらの分析に必要な情報を間諜(スパイ)などを使って収集します。

その上で、勝てる敵か、勝てる場所か、勝てる時期かを判断することが大切だと「孫子」は言っています。

※ソフトバンクの孫正義氏などは、この「道天地将法」に20文字を足して、独自の戦略方針を作っていますので、ご参考に。

参考:孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学 (PHP文庫)
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4569676219/lanchesterkan-22/ref=nosim

■(2)大兵力と小兵力それぞれの運用法とは、用兵の法。いわゆる戦略です。

大人数の軍隊と少人数の軍隊では、勝つために戦う方法が違ってきます。

ランチェスター戦略でいうと「強者の戦略」と「弱者の戦略」を適切に使い分けなければなりません。

「孫子」には、戦略的な考え方や用兵の方法について、詳しく書かれています。

ただし、あくまで「孫子」は、派手で無理な戦略行動をとることを戒めています。

「善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり」(形篇)

(戦巧者とは、容易に勝てるときに勝つ者である)

ここでいう「とき」とは、時期であり、場所であり、敵の状況のことを指しています。

一か八かの勝負をして勝ったとしても、それは戦巧者とは認められません。

絶対に勝てるという算段があるときにだけ戦う。それ以外は、守りを固めて、外交交渉や謀略で相手が攻めてこないような状況を作ることが、「孫子」の姿勢です。

■(3)上下の意思統一とは、組織が一体化している状態を指しているものと考えます。

つまり組織マネジメントの充実度を示しています。

「孫子」が明確に言っているのは、末端の兵士の能力を頼みにしないということです。

「善く戦う者は、これを勢に求めて人に責めず、故に善く人を択(えら)びて勢に任ぜしむ」(勢篇)

(巧みに戦う者は、個人の働きには頼らずに「勢」で戦う。したがって、適材を適所に配置し、「勢」に従わせるようにする)

「勢」とは、勢い、流れといったものを指すものだと思われます。

軍隊にも組織体制があるように、企業組織にも形態があります。企業の場合、ターゲット顧客、業界、ビジネスモデルによって形態は様々ですが、それぞれ相応しい組織の形を持っているはずです。

ところが形というものは時間を経るごとに硬直化していきます。最初は市場に適合していたはずなのに、組織を守る(ありていに言えば、組織内の既得権益を守る)ためにパワーを使うようになります。

そんな時、末端の社員に、顧客対応、競合対応の責任を押し付けるのは、上層部に能がないということにほかなりません。

そこで「孫子」は「勢」という概念を提示します。

組織に何らかの勢いを起こすためには、一方向へ向かう流れを作ることが肝要です。

つまり、組織が掲げた目標を全体で共有し、それに向かうためにコミュニケーションを密にすることが、組織が一体になって大きなパワーを持つことにつながります。

■(4)計略を仕組んでそれに気づかずにやってくる敵を待つ。とは、現場の戦闘における作戦行動を指していると考えます。

「兵とは詭道なり」(計篇)

(戦争とは相手を騙す行為である)

現場の戦闘行為においても、「孫子」はまともに正面からぶつかるよりも、相手を欺き、油断させ、混乱させ、隙を突くような戦いを推奨します。

なぜならその方が、損害が少なく、合理的だからです。

この現場でどう戦うかという部分に最も多くの文を費やしており、行軍の方法や様々な地形での対処、いろんな状況に陥った時の戦い方などが言及されています。

■(5)将軍が有能で君主が余計な干渉をしない。

将軍とは現場を預かるリーダー。君主とはオーナーや経営責任者のことになるでしょうか。

現場のことは現場に任せよ。というのが「孫子」の考えです。

君主の命令に背いてでも、現場の状況に従って行動すべし。と説いており、そのような将軍は国の宝だとまで言っています。

つまり経営トップは方針を示して組織の一体化を図り、現場での実際の動きは現場を知る者に任せるという現実的に組織を動かす方法論です。

■このように「孫子」は極めて現実的観点から書かれたものです。

この本が2500年もの期間、古びずに生き残ってきたのは、そこに腐りやすい生もの(時代の倫理観や正義感)を一切含んでいないからでしょう。

実は私はこの正月、「孫子」の全文を、上記5つのポイントで整理する作業をしておりました。

すると、全文がきれいにおさまることを確認しました。

つまり「孫子」は、現実的かつ優れて体系的に書かれた書物でした。

いずれその成果を披露したいと思っております。


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