iPhone vs iPhone

2011.10.20

(2011年10月20日メルマガより)



■スティーブ・ジョブズが亡くなってから早二週間が経ちました。

彼に関する報道も一段落してきたようです。

それにしても、一経営者の死に際して、これほど多くの報道がなされるとい
うのは異例ではないでしょうか。

改めて、その存在の大きさと影響力を見た気がします。

■スティーブ・ジョブズ報道について面白いのは、礼賛一色ではないという
ことです。

普通、亡くなった人を批判するようなことは書きにくいものですが、ジョブ
ズの場合、それもあてはまらないらしい。

傲慢であるとか、盗用が多いなどと生前に批判されていた内容がそのまま報
道されたり、あるいは、少なくとも賞賛するばかりでいいのか、などといっ
たバランスをとろうとする記事がありました。

異例づくめの人なんですね。それはそれで影響力の大きさが偲ばれるという
ものです。

ちなみに私は、彼が引退した時、このメルマガで既に書いていたので、新た
に書こうとはしませんでした。

「さらばスティーブ・ジョブズ」
http://www.createvalue.biz/column2/post-196.html

しばらく経ってからまた書くかも知れませんが...

■iPhone4Sは、発売されてから3日で、400万台を売り上げたそうですね。

彼の死が売上に影響しているとすれば、まさにアップルへの置き土産になっ
たということでしょうか。

最後まで、タイミングのいいことですな^^

■ご存知の通り、日本では、ソフトバンクに続いて、auもiPhoneの扱いを始
めました。

auの携帯電話とiPhone3Gの2台を持っている私としては「ラッキーー!」っ
てなものです^^

早速、auのiPhoneに切り替えよう。コスト低減になるぜーーと単純に思って
いた私ですが、いや、待てよ。。。と思い直しました。

気になるのは、現行iPhoneの電池の持ちの悪さです...

確かにiPhoneは便利です。パソコンがなければできなかった調べものやちょ
っとした問い合わせなどは、iPhoneで事足ります。

しかし電池が持たない。使用量にもよりますが、一日に何度も充電しなけれ
ばならない時があります。

これでは、通信手段としての用を満たすことができません。

それに比べて従来型のシンプルな携帯電話は、2,3日は電源が持つ(あまり
使わないからなのですが...)ので、とりあえず、通信手段を確保すること
ができます。

早計は禁物です。そのまま2台持つのか。1台に集約するのか。もう少し見
極めたいと思います^^

■そんな個人的な事情はどうでもいい。

今回は、なぜauがiPhoneの扱いに踏み切ったのかを書きたいと思います。

■市場シェアの推移を見てみましょう。

参考→http://www.losttechnology.jp/k-tai/

ソフトバンクが携帯電話事業に参入した2006年当初の市場シェアは

ドコモ:56%、au:28%、ソフトバンク:16%

というものでした。

それが2011年10月のシェアを見ると

ドコモ:48%、au:27%、ソフトバンク:22% です。

なんと、ソフトバンクは、6ポイントもアップし、ドコモが8ポイント下げ
ています。

(残り3%はイーモバイルです)

auは1ポイントしか下げてないやんけ、と思われるかも知れませんが、市場
シェアの意味を考えると事情が異なります。

ランチェスター戦略の「射程距離理論」によると、広域シェアにおいては、
ルート3倍(1.73倍)の差をつけると逆転が困難になるとされています。

ということは、2006年当時、auはソフトバンクに、逆転困難であるとさ
れる差をつけていたのに、現在は射程距離に捉えられています。

ところが、ドコモとauの差は、ルート3倍以上離れています。

auは、とても厳しい立場に置かれているということです。

■そもそも、ソフトバンクが参入してきて、直接的な影響を受けたのはauで
した。

当時、多機能で大画面という売れ筋の携帯電話を押えていたのがドコモです。

それに対してauは、デザインや音楽機能を重視した若者向け携帯電話を得意と
していました。

この2社はうまく棲み分けができていたのです。

そこへ参入してきたソフトバンクは、ドコモに正面から戦いを挑むような愚
は犯しませんでした。

当然ながら、より戦いやすい2番手のauを狙い撃ちしてきます。

端的にいうと、auがお得意様としていた若者に照準を絞って、戦略を組み立て
ました。

■大勢の人が、ソフトバンクは安売り攻勢でシェアを奪ったのだ、という印
象を持っているようです。

しかし、私はそうは思いません。ソフトバンクのやり方を見ていると、非常
にシンプルな方向性を持って、しかもブレていません。

彼らは、まずデザイン重視の携帯電話を志向しました。

24色から選べるというパントーン携帯がその象徴です。

これが売れたのかどうか知りませんが、その後も、ソフトバンクの携帯端末
は、若者を標的としています。

同時に、可処分所得の少ない若者や学生向けの料金プランとして「ホワイト
プラン」を発表します。

基本料金980円、しかもソフトバンク同士の通話とメールが、一定の時間
を除いて無料になるわけですから、インパクトが強い。(他社の携帯に電話
することを思えば、実は高くなる、という批判もありますが...)

いかにも安売り企業という印象を与えたのかも知れませんが、若者が買いや
すいような施策を打つという方針はブレていません。

そして極めつけは、2008年のiPhoneの発売です。孫正義自身が「最大の
武器」だと言った同機種の扱いにより、若者向けの携帯電話の代表を得たと
いいっていいでしょう。

■困ったのはauです。

若者に強いauというイメージで売っていたのに、その地位をソフトバンクに
奪われてしまったのです。

そこでauは、若者向けだけではなく、高齢者向け、子供向け、一般向けにそ
の矛先を向けていきます。

ドコモが得意としていた一般の多機能携帯にも力を入れるようになりました
ので、ドコモも割を食ってしまいました。

バイタリティがある、といえば聞こえはいいですが、実際のところ、auの方
向性はバラバラです。

この時期、auショップの方にお聞きすると、朝令暮改は当たり前。出される
指示が支離滅裂だとさえ思われることもあり、まさにau自身が迷走していた
ような印象を受けます。

■2位の企業がやるべきことは、1位の真似をすることではありません。

3位以下を叩くことです。

ランチェスター戦略では、これを「足下の敵攻撃の原則」と呼んでいます。

だからauがやるべきは、ドコモと料金体系を並べることではなく、ソフトバ
ンクに対抗した料金体系にすることでした。

今になって、iPhoneの発売、au同士通話料金無料(特定時間除く)という施
策を打ち出していますが、遅きに失した感があります。

今やソフトバンクは、勢いのある手ごわい競争相手になってしまっています。

簡単にミートして潰せる相手ではありません。

■どの業界でもそうだとは言いませんが、2位の企業は1位のフォロワーに
なり、馴れ合って、利益を確保する傾向があります。

そうなれば、業界は活力を失ってしまいます。

ソフトバンクのような果敢なチャレンジャーが現れた時、最も悪い影響を受
けてしまうのは、2位のフォロワーです。

そうならないためには、自分の地位をよく見極めた上で、生き残るための戦
略を常に練っておかなければなりません。

auもようやくやる気になったということですね^^

■今後、携帯電話業界はどうなっていくのか。

ドコモは、50%近いシェアを持っているのですから、基本的には安泰です。

売れ筋であるスマートフォンの品揃えを充実させながら、簡単携帯などもフ
ルラインで広げていくでしょう。

できればiPhoneも品揃えとして欲しいところですが、扱いには制約も多いと
いうことですから、アンドロイド携帯を前面に押し出していくことになるの
でしょう。

auは、ソフトバンクと全面戦争を決意していることでしょうね。

品揃えでも、価格でも、法人対応でも、丹念にミートするしつこさが必要です。
戦時下体制をしばらくはとり続けなければなりません。

(そのわりには、覚悟が足りない...と指摘する声が聞こえてくるのが心配です)

一方のソフトバンクは、auといちいちぶつかるのは厄介ですから、何らかの
差別化を志向してくるはずです。

なにしろ、孫正義氏はランチェスター戦略を自分の戦略に取り入れていると
公言している方なので、そのあたりは十分に理解していることでしょう。

iPhoneに変わる武器を早急に作るのか、あるいは販売方法でauにはできない
ことをやってくるのか。

お手並み拝見というところですかね。

イーモバイルはニッチ需要を捉えて独自の道を行っています。

実は同社の千本倖生会長は、ランチェスター協会の理事も勤められていた戦
略通ですから、独自の「弱者の戦略」を展開しています。

だから、同社の戦い方は、非常に参考になるはずですよ。

今回は余裕がありませんが、またいつか、イーモバイルについては書きたい
と思いますので。

■というわけで各社とも、戦略的にならざるを得ないような流動的な業界に
なっています。

他人からすれば面白い業界ですね。

また顧客からすれば、ますますサービスが多様化して、有難い市場です。

皆さん、頑張ってくださいね^^

(2011年10月20日メルマガより)



■スティーブ・ジョブズが亡くなってから早二週間が経ちました。

彼に関する報道も一段落してきたようです。

それにしても、一経営者の死に際して、これほど多くの報道がなされるとい
うのは異例ではないでしょうか。

改めて、その存在の大きさと影響力を見た気がします。

■スティーブ・ジョブズ報道について面白いのは、礼賛一色ではないという
ことです。

普通、亡くなった人を批判するようなことは書きにくいものですが、ジョブ
ズの場合、それもあてはまらないらしい。

傲慢であるとか、盗用が多いなどと生前に批判されていた内容がそのまま報
道されたり、あるいは、少なくとも賞賛するばかりでいいのか、などといっ
たバランスをとろうとする記事がありました。

異例づくめの人なんですね。それはそれで影響力の大きさが偲ばれるという
ものです。

ちなみに私は、彼が引退した時、このメルマガで既に書いていたので、新た
に書こうとはしませんでした。

「さらばスティーブ・ジョブズ」
http://www.createvalue.biz/column2/post-196.html

しばらく経ってからまた書くかも知れませんが...

■iPhone4Sは、発売されてから3日で、400万台を売り上げたそうですね。

彼の死が売上に影響しているとすれば、まさにアップルへの置き土産になっ
たということでしょうか。

最後まで、タイミングのいいことですな^^

■ご存知の通り、日本では、ソフトバンクに続いて、auもiPhoneの扱いを始
めました。

auの携帯電話とiPhone3Gの2台を持っている私としては「ラッキーー!」っ
てなものです^^

早速、auのiPhoneに切り替えよう。コスト低減になるぜーーと単純に思って
いた私ですが、いや、待てよ。。。と思い直しました。

気になるのは、現行iPhoneの電池の持ちの悪さです...

確かにiPhoneは便利です。パソコンがなければできなかった調べものやちょ
っとした問い合わせなどは、iPhoneで事足ります。

しかし電池が持たない。使用量にもよりますが、一日に何度も充電しなけれ
ばならない時があります。

これでは、通信手段としての用を満たすことができません。

それに比べて従来型のシンプルな携帯電話は、2,3日は電源が持つ(あまり
使わないからなのですが...)ので、とりあえず、通信手段を確保すること
ができます。

早計は禁物です。そのまま2台持つのか。1台に集約するのか。もう少し見
極めたいと思います^^

■そんな個人的な事情はどうでもいい。

今回は、なぜauがiPhoneの扱いに踏み切ったのかを書きたいと思います。

■市場シェアの推移を見てみましょう。

参考→http://www.losttechnology.jp/k-tai/

ソフトバンクが携帯電話事業に参入した2006年当初の市場シェアは

ドコモ:56%、au:28%、ソフトバンク:16%

というものでした。

それが2011年10月のシェアを見ると

ドコモ:48%、au:27%、ソフトバンク:22% です。

なんと、ソフトバンクは、6ポイントもアップし、ドコモが8ポイント下げ
ています。

(残り3%はイーモバイルです)

auは1ポイントしか下げてないやんけ、と思われるかも知れませんが、市場
シェアの意味を考えると事情が異なります。

ランチェスター戦略の「射程距離理論」によると、広域シェアにおいては、
ルート3倍(1.73倍)の差をつけると逆転が困難になるとされています。

ということは、2006年当時、auはソフトバンクに、逆転困難であるとさ
れる差をつけていたのに、現在は射程距離に捉えられています。

ところが、ドコモとauの差は、ルート3倍以上離れています。

auは、とても厳しい立場に置かれているということです。

■そもそも、ソフトバンクが参入してきて、直接的な影響を受けたのはauで
した。

当時、多機能で大画面という売れ筋の携帯電話を押えていたのがドコモです。

それに対してauは、デザインや音楽機能を重視した若者向け携帯電話を得意と
していました。

この2社はうまく棲み分けができていたのです。

そこへ参入してきたソフトバンクは、ドコモに正面から戦いを挑むような愚
は犯しませんでした。

当然ながら、より戦いやすい2番手のauを狙い撃ちしてきます。

端的にいうと、auがお得意様としていた若者に照準を絞って、戦略を組み立て
ました。

■大勢の人が、ソフトバンクは安売り攻勢でシェアを奪ったのだ、という印
象を持っているようです。

しかし、私はそうは思いません。ソフトバンクのやり方を見ていると、非常
にシンプルな方向性を持って、しかもブレていません。

彼らは、まずデザイン重視の携帯電話を志向しました。

24色から選べるというパントーン携帯がその象徴です。

これが売れたのかどうか知りませんが、その後も、ソフトバンクの携帯端末
は、若者を標的としています。

同時に、可処分所得の少ない若者や学生向けの料金プランとして「ホワイト
プラン」を発表します。

基本料金980円、しかもソフトバンク同士の通話とメールが、一定の時間
を除いて無料になるわけですから、インパクトが強い。(他社の携帯に電話
することを思えば、実は高くなる、という批判もありますが...)

いかにも安売り企業という印象を与えたのかも知れませんが、若者が買いや
すいような施策を打つという方針はブレていません。

そして極めつけは、2008年のiPhoneの発売です。孫正義自身が「最大の
武器」だと言った同機種の扱いにより、若者向けの携帯電話の代表を得たと
いいっていいでしょう。

■困ったのはauです。

若者に強いauというイメージで売っていたのに、その地位をソフトバンクに
奪われてしまったのです。

そこでauは、若者向けだけではなく、高齢者向け、子供向け、一般向けにそ
の矛先を向けていきます。

ドコモが得意としていた一般の多機能携帯にも力を入れるようになりました
ので、ドコモも割を食ってしまいました。

バイタリティがある、といえば聞こえはいいですが、実際のところ、auの方
向性はバラバラです。

この時期、auショップの方にお聞きすると、朝令暮改は当たり前。出される
指示が支離滅裂だとさえ思われることもあり、まさにau自身が迷走していた
ような印象を受けます。

■2位の企業がやるべきことは、1位の真似をすることではありません。

3位以下を叩くことです。

ランチェスター戦略では、これを「足下の敵攻撃の原則」と呼んでいます。

だからauがやるべきは、ドコモと料金体系を並べることではなく、ソフトバ
ンクに対抗した料金体系にすることでした。

今になって、iPhoneの発売、au同士通話料金無料(特定時間除く)という施
策を打ち出していますが、遅きに失した感があります。

今やソフトバンクは、勢いのある手ごわい競争相手になってしまっています。

簡単にミートして潰せる相手ではありません。

■どの業界でもそうだとは言いませんが、2位の企業は1位のフォロワーに
なり、馴れ合って、利益を確保する傾向があります。

そうなれば、業界は活力を失ってしまいます。

ソフトバンクのような果敢なチャレンジャーが現れた時、最も悪い影響を受
けてしまうのは、2位のフォロワーです。

そうならないためには、自分の地位をよく見極めた上で、生き残るための戦
略を常に練っておかなければなりません。

auもようやくやる気になったということですね^^

■今後、携帯電話業界はどうなっていくのか。

ドコモは、50%近いシェアを持っているのですから、基本的には安泰です。

売れ筋であるスマートフォンの品揃えを充実させながら、簡単携帯などもフ
ルラインで広げていくでしょう。

できればiPhoneも品揃えとして欲しいところですが、扱いには制約も多いと
いうことですから、アンドロイド携帯を前面に押し出していくことになるの
でしょう。

auは、ソフトバンクと全面戦争を決意していることでしょうね。

品揃えでも、価格でも、法人対応でも、丹念にミートするしつこさが必要です。
戦時下体制をしばらくはとり続けなければなりません。

(そのわりには、覚悟が足りない...と指摘する声が聞こえてくるのが心配です)

一方のソフトバンクは、auといちいちぶつかるのは厄介ですから、何らかの
差別化を志向してくるはずです。

なにしろ、孫正義氏はランチェスター戦略を自分の戦略に取り入れていると
公言している方なので、そのあたりは十分に理解していることでしょう。

iPhoneに変わる武器を早急に作るのか、あるいは販売方法でauにはできない
ことをやってくるのか。

お手並み拝見というところですかね。

イーモバイルはニッチ需要を捉えて独自の道を行っています。

実は同社の千本倖生会長は、ランチェスター協会の理事も勤められていた戦
略通ですから、独自の「弱者の戦略」を展開しています。

だから、同社の戦い方は、非常に参考になるはずですよ。

今回は余裕がありませんが、またいつか、イーモバイルについては書きたい
と思いますので。

■というわけで各社とも、戦略的にならざるを得ないような流動的な業界に
なっています。

他人からすれば面白い業界ですね。

また顧客からすれば、ますますサービスが多様化して、有難い市場です。

皆さん、頑張ってくださいね^^

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