日本茶も海外進出している

2009.12.03

(2009年12月3日メルマガより)

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■ドイツを中心としたEU諸国で「KEIKO」というブランドの製品が売
れているのをご存知でしょうか。

何の製品だと思います?

私もテレビに採り上げられているのを見て知ったぐらいです。

ご存知の方も多いでしょうね。

■実は「KEIKO」とは緑茶のブランドです。

鹿児島市にある下堂園(しもどうぞの)という会社が輸出しています。

テレビで観る限り、ドイツの方々は、まるでイギリス人が3時のティータイ
ムを楽しむように緑茶を嗜んでいました。

ガーデンテラスに一家が集まって、その家のご主人が急須のお茶を家族皆の
湯呑に注いでいる場面が映し出されていました。

ものすごく高尚な楽しみをしているような気がします^^

すべてのドイツ人がこのような楽しみ方をしているかどうかはともかくとし
て、その緑茶が高級品として売られているだろうことは想像できます。

■ついに緑茶も海外進出を果たしたんだーーーと感慨深いですね。

紅茶が日本に浸透したんだから、緑茶がEUに進出しても全く変ではありま
せん。

むしろ遅かったぐらいです。

確かに消費財を扱う企業にとって1億2千万人の人口を抱える日本は、内需
だけで十分な売上を見込むことができましたから、無理をして海外販売をす
ることもなかったわけです。

ただ人口縮小局面に至って、多くの消費財が海外に新市場を求めるのは自然
な流れです。

これからは、このような海外進出事例が増えていくんでしょうね。

■それにしても、鹿児島の日本茶が海外進出しているということに驚かれま
せんか?

意外かも知れませんが、鹿児島は日本で2番目の茶所だそうです。

1番はもちろん静岡です。

1番と2番では、知名度に差があるのは当然ですが、それにしても意外では
ないでしょうか。

鹿児島県が茶葉の生産に力を入れだしたのは、1960年代からだそうです。
1970年代には、日本第2位となっています。

生産量が第2位なのに、知名度に劣るというのは、国内でブランド化が進ん
でいないということです。

付加価値をつけることができずに利益確保に苦労しているのではないかと推
察いたしますが、いかがでしょうか。。。

■そんな中、下堂園という日本茶問屋さんは、生産農家と共同で「ゆたかみ
どり」という品種の改善、改良に乗り出します。

渋くて苦いといわれた同品種の栽培方法や煎り方を工夫して、強い香りと甘
みのある緑茶を開発します。

この特長ある商品の存在が、同社の地位を押し上げたことは想像に難くあり
ません。

やはり創業期に、差別化された商品を持つことは、生き残るための大きな条
件となることは否定できません。

同社が、この商品を武器に、東京進出を果たすのが1970年代後半です。

■1980年、創業社長が他界し、2代目の現社長が引き継ぎます。

2代目社長は、東京市場の開拓を強化しようとしますが、どうも一筋縄では
いかなかったようです。

というのも、お茶の世界で、静岡のブランドは強力です。

鹿児島の美味しいお茶を広めようとしても、容易に信用してもらえません。

「着味、着香では」と疑われたぐらいですから、根が深い。

このあたり「いい商品が売れるとは限らない」という数多ある実例の一つで
すね。

■下堂園がこの時、事態を打破したのは、無料サンプリング作戦です。

数万個のサンプルを小売店に配り、消費者に渡してもらいました。

消費者に「ゆたかみどり」の味を知ってもらい、ファンになってもらった上
で、小売店に要望してもらおうという試みです。

これも、新しい味や機能の商品を販売する際にはよく行う方法です。

古くは、コカコーラを日本で販売する際にはガソリンスタンドなどで無料配
布を行いました。

あるいはフジッコが煮豆を売り出した時にも、大量のサンプルを小売店に配
布したそうです。

最近では、キットカットが、受験生用パッケージを作った際にも、無料配布
を徹底しています。

このように「新しい味」「新しい機能」を消費者に覚えてもらうには、無料
サンプルというのは有効な方法です。

「ゆたかみどり」のように、他商品にはないインパクトのある場合は尚更で
す。

結果として、同商品は東京の消費者に認知され、小売店開拓に有効に機能し
ました。

(その他にもいろいろ苦労と工夫はあったのですが省略します...)

■さて地盤を固めつつある下堂園でしたが、市場の縮小という事態には如何
ともしがたいものがあります。

何しろ人口が減って、お茶を飲む人そのものが減ってきているのです。

ペットボトルのお茶飲料というのは確かに伸びてきており、量も多いのです
が、原料供給という形では、利益を確保するのは困難なようです。

もともと問屋が出自の下堂園は、メーカーポジションと最終顧客の確保(川
上化と川下化)を命題としてきたように見受けられます。

いくら東京市場で売れているといっても、小売店の顔色を見ながらのビジネ
スでは、情報収集にも事欠きます。

自分で作って、自分で売る。これが理想のビジネスです。

■その答えの一つが、日本茶カフェ「ティー・スペース・ラサラ」の運営で
す。

これは、消費者に接して、情報を得ると同時に、最終消費者に日本茶の楽し
み方を知ってもらおうという試みでしょう。

特にそのネーミングから、次世代を担う若者に日本茶の美味しさや文化を伝
えていこうという意図が見えます。

短期的な利益には殆ど貢献しない試みでしょうが、将来を見据えると意義の
大きな試みです。

鹿児島の日本茶問屋がこのような戦略性や使命感をもってビジネスに取り組
んでいることに驚きます。

■もう一つが、海外進出です。

ドイツの厳格な残留農薬規制をクリアするために、栽培方法から見直さなけ
ればならないなど多大な時間と労力をかけて取り組んできたようですから、
こちらも簡単ではありません。

しかも、現状、海外売上は4~5千万円だということですから、全体の業績
(2009年1月期売上52億円)には全く影響がありません。

しかしこのビジネスによって、下堂園は念願の「高付加価値ブランド」を手
にしています。

国内では、静岡茶ブランドの後塵を拝したとはいえ、EUでは第一ブランド
となることができたわけです。

このインパクトは大きいでしょう。

現在、下堂園は、EUに続いて、中国やロシアへの本格進出を目指している
ようです。

■老舗である静岡ではなく、鹿児島から海外進出のパイオニア企業が現れた
というのは象徴的です。

イノベーションは常に周辺から起きるという経験則にそのまま則した事例と
なっています。

確かに日本における日本茶葉市場は成熟しているかも知れませんが、海外に
おいては市場そのものが出来上がっていません。

今後、市場が大きくなるかどうかは、後に続く企業が現れるかどうかにかか
っているでしょう。

1番手を行く強者企業としては、入ってきてくれた方が得策であるわけです。
ただし、強者の戦略を理解して、丁寧に対応しなければなりませんが。

■今後、日本茶関連企業は縮小市場においてどうすべきなのか。

下堂園の事例が示すように、海外に新市場を求めるのが一つの方法です。
(新市場開拓)

また日本の若者に浸透させるというのも一つですね。(市場浸透)

もう一つは、お茶関連商品を開発して、既存顧客に販売するという方法です。
(新製品開発)

あまり知識がないので恐縮ですが、健康食品、医薬品、美容用品などに応用
することは不可能ではないと思います。

そういえば、一部、消臭商品などに利用されていますね。

茶葉販売と比べると、数量が少ないからやってられないと言われるかも知れ
ませんが、そういう考えではイノベーションは起きません。

ぜひともゼロベースで取り組んでいただきたいと思います。

参照記事 日経オンライン「【隠れた世界企業】有機で拓く鹿児島茶の道


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■今回の事例は、11月の「戦略勉強会」で採り上げたものです。

いろいろ示唆に富んだ事例なので、メルマガにも書かせていただいた次第で
す。

■ところで、下堂園が、早いうちから東京進出を図ったことに、私は違和感
を覚えました。

なぜ地理的にも近い関西に行かなかったのか?

あるいは、弱者の戦略として、地方都市を攻めようとしなかったのか?

■勉強会に参加していた方からお聞きしたのですが、鹿児島の企業というか
人々は、東京進出に対する心理的障壁が非常に小さいそうですね。

もちろん明治維新の頃の歴史から来ています。

お爺さんや親戚が東京で活躍している人が多いでしょうし、歴史的にも負い
目に感じることはない。むしろ自分の庭だと思っているかも知れない。

そう聞くと納得です。

鹿児島の人にとって、東京へ行くことは自然な流れなんですね。


(2009年12月3日メルマガより)

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■ドイツを中心としたEU諸国で「KEIKO」というブランドの製品が売
れているのをご存知でしょうか。

何の製品だと思います?

私もテレビに採り上げられているのを見て知ったぐらいです。

ご存知の方も多いでしょうね。

■実は「KEIKO」とは緑茶のブランドです。

鹿児島市にある下堂園(しもどうぞの)という会社が輸出しています。

テレビで観る限り、ドイツの方々は、まるでイギリス人が3時のティータイ
ムを楽しむように緑茶を嗜んでいました。

ガーデンテラスに一家が集まって、その家のご主人が急須のお茶を家族皆の
湯呑に注いでいる場面が映し出されていました。

ものすごく高尚な楽しみをしているような気がします^^

すべてのドイツ人がこのような楽しみ方をしているかどうかはともかくとし
て、その緑茶が高級品として売られているだろうことは想像できます。

■ついに緑茶も海外進出を果たしたんだーーーと感慨深いですね。

紅茶が日本に浸透したんだから、緑茶がEUに進出しても全く変ではありま
せん。

むしろ遅かったぐらいです。

確かに消費財を扱う企業にとって1億2千万人の人口を抱える日本は、内需
だけで十分な売上を見込むことができましたから、無理をして海外販売をす
ることもなかったわけです。

ただ人口縮小局面に至って、多くの消費財が海外に新市場を求めるのは自然
な流れです。

これからは、このような海外進出事例が増えていくんでしょうね。

■それにしても、鹿児島の日本茶が海外進出しているということに驚かれま
せんか?

意外かも知れませんが、鹿児島は日本で2番目の茶所だそうです。

1番はもちろん静岡です。

1番と2番では、知名度に差があるのは当然ですが、それにしても意外では
ないでしょうか。

鹿児島県が茶葉の生産に力を入れだしたのは、1960年代からだそうです。
1970年代には、日本第2位となっています。

生産量が第2位なのに、知名度に劣るというのは、国内でブランド化が進ん
でいないということです。

付加価値をつけることができずに利益確保に苦労しているのではないかと推
察いたしますが、いかがでしょうか。。。

■そんな中、下堂園という日本茶問屋さんは、生産農家と共同で「ゆたかみ
どり」という品種の改善、改良に乗り出します。

渋くて苦いといわれた同品種の栽培方法や煎り方を工夫して、強い香りと甘
みのある緑茶を開発します。

この特長ある商品の存在が、同社の地位を押し上げたことは想像に難くあり
ません。

やはり創業期に、差別化された商品を持つことは、生き残るための大きな条
件となることは否定できません。

同社が、この商品を武器に、東京進出を果たすのが1970年代後半です。

■1980年、創業社長が他界し、2代目の現社長が引き継ぎます。

2代目社長は、東京市場の開拓を強化しようとしますが、どうも一筋縄では
いかなかったようです。

というのも、お茶の世界で、静岡のブランドは強力です。

鹿児島の美味しいお茶を広めようとしても、容易に信用してもらえません。

「着味、着香では」と疑われたぐらいですから、根が深い。

このあたり「いい商品が売れるとは限らない」という数多ある実例の一つで
すね。

■下堂園がこの時、事態を打破したのは、無料サンプリング作戦です。

数万個のサンプルを小売店に配り、消費者に渡してもらいました。

消費者に「ゆたかみどり」の味を知ってもらい、ファンになってもらった上
で、小売店に要望してもらおうという試みです。

これも、新しい味や機能の商品を販売する際にはよく行う方法です。

古くは、コカコーラを日本で販売する際にはガソリンスタンドなどで無料配
布を行いました。

あるいはフジッコが煮豆を売り出した時にも、大量のサンプルを小売店に配
布したそうです。

最近では、キットカットが、受験生用パッケージを作った際にも、無料配布
を徹底しています。

このように「新しい味」「新しい機能」を消費者に覚えてもらうには、無料
サンプルというのは有効な方法です。

「ゆたかみどり」のように、他商品にはないインパクトのある場合は尚更で
す。

結果として、同商品は東京の消費者に認知され、小売店開拓に有効に機能し
ました。

(その他にもいろいろ苦労と工夫はあったのですが省略します...)

■さて地盤を固めつつある下堂園でしたが、市場の縮小という事態には如何
ともしがたいものがあります。

何しろ人口が減って、お茶を飲む人そのものが減ってきているのです。

ペットボトルのお茶飲料というのは確かに伸びてきており、量も多いのです
が、原料供給という形では、利益を確保するのは困難なようです。

もともと問屋が出自の下堂園は、メーカーポジションと最終顧客の確保(川
上化と川下化)を命題としてきたように見受けられます。

いくら東京市場で売れているといっても、小売店の顔色を見ながらのビジネ
スでは、情報収集にも事欠きます。

自分で作って、自分で売る。これが理想のビジネスです。

■その答えの一つが、日本茶カフェ「ティー・スペース・ラサラ」の運営で
す。

これは、消費者に接して、情報を得ると同時に、最終消費者に日本茶の楽し
み方を知ってもらおうという試みでしょう。

特にそのネーミングから、次世代を担う若者に日本茶の美味しさや文化を伝
えていこうという意図が見えます。

短期的な利益には殆ど貢献しない試みでしょうが、将来を見据えると意義の
大きな試みです。

鹿児島の日本茶問屋がこのような戦略性や使命感をもってビジネスに取り組
んでいることに驚きます。

■もう一つが、海外進出です。

ドイツの厳格な残留農薬規制をクリアするために、栽培方法から見直さなけ
ればならないなど多大な時間と労力をかけて取り組んできたようですから、
こちらも簡単ではありません。

しかも、現状、海外売上は4~5千万円だということですから、全体の業績
(2009年1月期売上52億円)には全く影響がありません。

しかしこのビジネスによって、下堂園は念願の「高付加価値ブランド」を手
にしています。

国内では、静岡茶ブランドの後塵を拝したとはいえ、EUでは第一ブランド
となることができたわけです。

このインパクトは大きいでしょう。

現在、下堂園は、EUに続いて、中国やロシアへの本格進出を目指している
ようです。

■老舗である静岡ではなく、鹿児島から海外進出のパイオニア企業が現れた
というのは象徴的です。

イノベーションは常に周辺から起きるという経験則にそのまま則した事例と
なっています。

確かに日本における日本茶葉市場は成熟しているかも知れませんが、海外に
おいては市場そのものが出来上がっていません。

今後、市場が大きくなるかどうかは、後に続く企業が現れるかどうかにかか
っているでしょう。

1番手を行く強者企業としては、入ってきてくれた方が得策であるわけです。
ただし、強者の戦略を理解して、丁寧に対応しなければなりませんが。

■今後、日本茶関連企業は縮小市場においてどうすべきなのか。

下堂園の事例が示すように、海外に新市場を求めるのが一つの方法です。
(新市場開拓)

また日本の若者に浸透させるというのも一つですね。(市場浸透)

もう一つは、お茶関連商品を開発して、既存顧客に販売するという方法です。
(新製品開発)

あまり知識がないので恐縮ですが、健康食品、医薬品、美容用品などに応用
することは不可能ではないと思います。

そういえば、一部、消臭商品などに利用されていますね。

茶葉販売と比べると、数量が少ないからやってられないと言われるかも知れ
ませんが、そういう考えではイノベーションは起きません。

ぜひともゼロベースで取り組んでいただきたいと思います。

参照記事 日経オンライン「【隠れた世界企業】有機で拓く鹿児島茶の道


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■今回の事例は、11月の「戦略勉強会」で採り上げたものです。

いろいろ示唆に富んだ事例なので、メルマガにも書かせていただいた次第で
す。

■ところで、下堂園が、早いうちから東京進出を図ったことに、私は違和感
を覚えました。

なぜ地理的にも近い関西に行かなかったのか?

あるいは、弱者の戦略として、地方都市を攻めようとしなかったのか?

■勉強会に参加していた方からお聞きしたのですが、鹿児島の企業というか
人々は、東京進出に対する心理的障壁が非常に小さいそうですね。

もちろん明治維新の頃の歴史から来ています。

お爺さんや親戚が東京で活躍している人が多いでしょうし、歴史的にも負い
目に感じることはない。むしろ自分の庭だと思っているかも知れない。

そう聞くと納得です。

鹿児島の人にとって、東京へ行くことは自然な流れなんですね。


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