いま業績絶好調の任天堂だが、アフターコロナのステージをどのように思い描いているのか?

2021.09.02

(2021年9月2日メルマガより)



コロナ禍の中、全体として業績を伸ばしたのが、ゲーム関連業界です。

2021年3月期の決算によると、ゲーム大手7社(任天堂、バンダイナムコ、スクウェア・エニックス、セガサミー、コナミ、カプコン、コーエーテクモ)のうち、6社が増益、6社とも、営業利益または純利益の部分で過去最高を更新したと発表しています。

唯一の減益がセガサミーです。こちらは、ゲームセンター事業が大きいので、自粛社会のマイナスの影響を受けてしまいました。

また、ゲーム会社のカテゴリーにはないもののゲーム関連事業としては最大手であるソニーも2020年3月期の決算は、過去最高の純利益となりました。

まさに、ゲーム関連業界は我が世の春、といった状況で、ご同慶の至りです。

ただし、このたびの好業績は、コロナ禍による巣ごもり需要を受けた特殊状況下によるものです。

コロナ禍により、新作ゲームを作ることができずに、その分の経費が浮いたという事情もあります。

このまま好業績が永続していくわけではありません。



ゲームビジネスのパイオニア 任天堂


ゲーム機販売の世界3大メーカーといえば、ソニー、任天堂、マイクロソフトです。

ゲーム関連事業の売上高でいえば、ソニーは2兆6047億円。任天堂は1兆7589億円。マイクロソフトが1兆2651億円です。

この分野では日本が強いんですね。

ちなみに、世界のゲームの市場規模が約19兆円。日本国内市場が約2兆円ですから、10%以上を占めています。

日本はゲーム大国だということです。


ここまで日本が強くなった要因として、やはり、ゲームビジネスのパイオニアとして、任天堂の功績をあげなければなりません。

任天堂の創業は、1889年(明治22年)、当初は花札やトランプの製造を行う会社でした。

飛躍したのが、1983年(昭和58年)、家庭用テレビゲーム機であるファミリーコンピュータ(ファミコン)を開発発売してからです。

それまで、喫茶店などに設置するテレビゲームは存在しましたし、家庭用テレビゲームもあるにはありました。

しかし、それまでのゲーム機は、基本的に、機械に内蔵されているゲームしかできない形式でした。

そこに、現れたのが、様々なゲームのカセットを差し込んで軌道させる任天堂の方式です。

ゲーム機本体とソフトを分離したわけで、いわば、当初から任天堂の機械は、ゲームを動かすためのプラットフォームを目指したのです。

これが、多くのゲームソフト開発者をやる気にさせました。腕に覚えのある開発者が、ファミコン上で動くゲームの開発に乗り出したため、ファミコンには上質のソフトが多く集まり、当時の若者を熱狂させることになりました。

まさに、任天堂のひとり勝ちです。

ファミコンの空前のヒットにより、京都の花札製造会社は、押しも押されぬグローバル企業として飛躍していくことになったのです。


ハード志向でトップに立ったソニー


任天堂が、当初からファミリー向けのゲームを志向したことは覚えておかなければなりません。

これは、花札やトランプの会社であったDNAが生きていたと考えるべきなのでしょうかね。

潮目が変わったのは、1994年に、家電大手のソニーが、プレイステーションを持ってゲーム業界に参入してからです。

いまさらゲーム機に参入しても勝ち目ないだろ、という社内の反対の声を押し切って事業を立ち上げた中心人物は、当時、変人が多いといわれていたソニーの中でも飛びぬけて変人だったと言われています。

ファミコンの機能に不満を抱いていたその人物は、ソニーらしい高度な映像とデジタル技術を駆使した高性能なゲーム機を作り上げました。

常に最先端の技術を活用するポリシーのプレイステーションが、これまた腕に覚えのあるソフト開発者を刺激したようです。

ファミコンでは不可能だった表現が可能なプレイステーションには、やはり最先端の技術を持つソフト開発者が集まり、より本格的なゲームを多く作りました。

この姿勢が、コアなゲームファンの心をとらえて大ヒットとなり、ソニーは一躍ゲームのトップ企業に躍り出ます。

あれほど隆盛を誇った任天堂が、2位に落ちるなど考えていませんでしたから、当時は本当に驚いたものです。

その後も、プレイステーションは、これでもか、というほどに、最新の技術を盛り込んだ後継機を作り続け、最先端の機能を知りたければプレイステーションを見よ、という状況を続けています。

そんな高性能機器を家庭用に売り出すなんて大赤字必至のはずですし、その通りなんでしょうが、ソニーは、サブスクのネットワーク会員を世界中に持つことで、収益を上げる仕組みを作りあげています。

機械売りからの脱却です。

いまのソニーの好業績は、ゲーム事業を中心とした、映画、音楽などのコンテンツを繰り返し有効活用するエコシステムによるところが大です。

ソニーに関しては、アップルになり損ねた企業なんて揶揄をされることもありますが、ゲーム機を中心に、それなりのシステムを作ったのだから、よしと言わねばなりますまい。


ソフト路線を明確にした任天堂


話は前後しますが、まだ1位だった頃の任天堂は、ソニーのプレイステーションに対抗するために、高性能機器「ニンテンドー64」の開発に乗り出します。

しかし、結果は散々たるもの。開発は遅れに遅れ、発売した時には値引き販売を前提としなければならない程でした。

この高性能機器の失敗により、任天堂は2位に転落してしまいます。

2位を受け入れた任天堂は、その後、実に理に適った戦略展開を進めます。

任天堂はもともとファミリー向けのビジネスを志向する会社です。それなのに、コアなファンを満足させるような高性能機器を目指したことが間違いでした。

自社のミッションを「ゲームをさらに普及させること」「ゲーム人口を増やすこと」と規定した任天堂は、その流れから、使い勝手を重視した携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」や、ファミリーゲームを多くした「Wii」などの開発に向かっていきます。

これらの特徴は、機能を高度化させるよりも、従来の技術を活用することで、使い勝手や、画面の見え方を刷新していることです。

ニンテンドーDSは、5歳から95歳まで使えるゲーム機を目指し、わかりやすさ、使いやすさを追求し、大ヒットしました。

Wiiは、コントローラにバランス機能や振動機能を搭載することで、バーチャルスポーツの扉を開きました。こちらも大ヒットです。

ソニーの本格路線、ハード路線に対して、任天堂はファミリー路線、ソフト路線です。

これが功を奏して、任天堂の業績は急回復します。もっとも、Wiiを引っ張りすぎたためか、5年程で低迷してしまいました。

その後、2017年に発売した携帯もできるゲーム機「ニンテンドースイッチ」が、巣ごもり需要の恩恵を受けて大ヒット、現在の好業績につながっています。


ただし、任天堂のビジネスの弱点は、ゲーム機の売上に業績が大きく左右されるということです。

ゲーム機がヒットすれば、業績は大きく上向きますし、外れれば、低迷します。数十年の業績推移をみれば明らかです。

これに対してソニーは、ネットワーク対応を世界で進め、サブスク(月額料金を徴収)ビジネスにシフトしつつあり、収益の安定化を進めています。

つまりソニーは、機器の販売が入口で、そこから長く続く携帯電話のようなビジネスを作ろうとしています。

任天堂は、そこに遅れており、脱モノ売りが果たせていません。継続的な収益の仕組みを作ることが急務となっています。


スマホゲームへはいつ参入するのか?


もっとも、任天堂やソニーが得意とするゲーム機ビジネスの売上は、ゲーム市場全体の28%に過ぎません。

実に半分以上、52%(約10兆円)が、携帯やスマホなどで行うモバイルゲームの売上です。

ソニーは、スマホゲームではできない表現を追求する姿勢だからとりあえずいいとしても、一般ユーザーに広く訴求したい任天堂としては、このままゲーム機にこだわるのは、リスクをはらみます。

だから任天堂は、スマホゲームへの志向をたびたび言及していますし、スマホゲーム会社(DeNA、サイゲーム)への投資などを実施しています。

ポケモンGOのような位置ゲームにキャラクターを貸し出したのも、スマホゲームへの興味の表れでしょう。


ただ、これは痛しかゆしです。スマホゲームに傾倒してしまうと、現在の収益の柱であるゲーム機中心のビジネスが疎かになってしまいます。それはできません。

かといって、このままでは、ガラパゴス状態になってしまう恐れがあります。

難しい舵取りですが、今のところは、投資先や別会社を作って参入し、スマホゲームの最新動向に乗り遅れないようにしておくこと。そして、時期を見て、スマホゲームへの本格参入を目指していくことになりそうです。

とりあえずは、DeNAへの出資をもう少し増やし、近い将来の買収合併に向けて布石を打っておきたいところです。


野田クリスタルのクソゲーを発売


と思っていると、面白い記事を見ました。


日経新聞の記事ですが、お笑い芸人の野田クリスタルが作るゲームが、ニンテンドースイッチで発売され、しかも売れているということです。

昨年のM-1優勝者マジカルラブリーの漫才は、全く面白いとは思いませんが、ピン芸人野田クリスタルのクズゲームネタは、以前から面白いと思っていました。

この方、多能な方で、独学でプログラミングを学び、自分でゲームを作っています。そのゲームが実にくだらない。そのくだらなさを笑いのネタにしています。

ここに任天堂は目をつけたのでしょう。そのくだらないゲームをパッケージにして、発売しているというのです。

記事によると、ゴールまで1兆マスもある「凄六(すごろく)」とか、駒が多すぎてどれが王将かもわからない「将棋Ⅱ」とか、お笑いのネタそのままです。

絵柄も雑で落書きみたいだし、バグはやたら多いし、それも含めてネタ込みのゲームのようです。

これは、単に、お笑い芸人を使ったスイッチのプロモーションなのでしょうか。

どうやら違うらしい。野田クリスタルは、クラウドファンディングで開発資金を集めたようですし、本気度がうかがえます。


ゲーム業界のユーチューブになる?


単なる広告宣伝で人気芸人を起用したのだとしたらつまらない。ここは、任天堂のミッションを押し進めた先にある戦略だと考えたいところです。

ゲーム人口を増やすというのが、任天堂のミッションです。その方向性を進めると、ユーザーだけではなく、製作者も一般化し、増加させるという方向性が出てきます。

つまり、野田クリスタルという異能の人物を起用することで「個人でも売れるゲームは作れるんだよ」と知らしめるのが、任天堂の意図だとしたら面白い。

記事によると、今は、ミニゲームでも制作費用100万円はかかるということです。これは、一般人にはハードルが高いので、下げることが必要です。

そのためには、ゲームを簡単に作るソフトを開発提供し、一般人でもアイデアとセンスさえあれば、気軽に開発できて、上梓することも可能だという体制を整備することです。

案外、素人のアイデアが大ヒットにつながるかもしれない、というのは、ユーチューバーの成功が示していますからね。

つまり行きつくところは、ゲーム制作をユーチューブのように一般素人に解放するという試みです。

素人がゲームを作り、素人がゲームで遊ぶ。その時代を先取りするというのは、実に面白い。ソニーにはできない戦略です。

そこまで思いきれれば、任天堂も将来性があるのになあと思いますね。偉そうに言って申し訳ないですが。


スマホゲームの世界では、テンセント(中国)が、2兆6225億円の売上規模を持っており、ダントツです。

日本勢は売上の桁が一つ違います。これは、スマホ機器そのものに弱い国内ビジネスの構造を示していますね。

任天堂が、汎用ゲームのトップを目指すならば、スマホゲームを制覇するか、あるいは、ゲーム機そのものをスマホ以上のシェアにしなければなりません。

そのためには、製作者も消費者も一般化するためのプラットフォームを作っていくことだと思う次第ですが、どうでしょうか。


(2021年9月2日メルマガより)



コロナ禍の中、全体として業績を伸ばしたのが、ゲーム関連業界です。

2021年3月期の決算によると、ゲーム大手7社(任天堂、バンダイナムコ、スクウェア・エニックス、セガサミー、コナミ、カプコン、コーエーテクモ)のうち、6社が増益、6社とも、営業利益または純利益の部分で過去最高を更新したと発表しています。

唯一の減益がセガサミーです。こちらは、ゲームセンター事業が大きいので、自粛社会のマイナスの影響を受けてしまいました。

また、ゲーム会社のカテゴリーにはないもののゲーム関連事業としては最大手であるソニーも2020年3月期の決算は、過去最高の純利益となりました。

まさに、ゲーム関連業界は我が世の春、といった状況で、ご同慶の至りです。

ただし、このたびの好業績は、コロナ禍による巣ごもり需要を受けた特殊状況下によるものです。

コロナ禍により、新作ゲームを作ることができずに、その分の経費が浮いたという事情もあります。

このまま好業績が永続していくわけではありません。



ゲームビジネスのパイオニア 任天堂


ゲーム機販売の世界3大メーカーといえば、ソニー、任天堂、マイクロソフトです。

ゲーム関連事業の売上高でいえば、ソニーは2兆6047億円。任天堂は1兆7589億円。マイクロソフトが1兆2651億円です。

この分野では日本が強いんですね。

ちなみに、世界のゲームの市場規模が約19兆円。日本国内市場が約2兆円ですから、10%以上を占めています。

日本はゲーム大国だということです。


ここまで日本が強くなった要因として、やはり、ゲームビジネスのパイオニアとして、任天堂の功績をあげなければなりません。

任天堂の創業は、1889年(明治22年)、当初は花札やトランプの製造を行う会社でした。

飛躍したのが、1983年(昭和58年)、家庭用テレビゲーム機であるファミリーコンピュータ(ファミコン)を開発発売してからです。

それまで、喫茶店などに設置するテレビゲームは存在しましたし、家庭用テレビゲームもあるにはありました。

しかし、それまでのゲーム機は、基本的に、機械に内蔵されているゲームしかできない形式でした。

そこに、現れたのが、様々なゲームのカセットを差し込んで軌道させる任天堂の方式です。

ゲーム機本体とソフトを分離したわけで、いわば、当初から任天堂の機械は、ゲームを動かすためのプラットフォームを目指したのです。

これが、多くのゲームソフト開発者をやる気にさせました。腕に覚えのある開発者が、ファミコン上で動くゲームの開発に乗り出したため、ファミコンには上質のソフトが多く集まり、当時の若者を熱狂させることになりました。

まさに、任天堂のひとり勝ちです。

ファミコンの空前のヒットにより、京都の花札製造会社は、押しも押されぬグローバル企業として飛躍していくことになったのです。


ハード志向でトップに立ったソニー


任天堂が、当初からファミリー向けのゲームを志向したことは覚えておかなければなりません。

これは、花札やトランプの会社であったDNAが生きていたと考えるべきなのでしょうかね。

潮目が変わったのは、1994年に、家電大手のソニーが、プレイステーションを持ってゲーム業界に参入してからです。

いまさらゲーム機に参入しても勝ち目ないだろ、という社内の反対の声を押し切って事業を立ち上げた中心人物は、当時、変人が多いといわれていたソニーの中でも飛びぬけて変人だったと言われています。

ファミコンの機能に不満を抱いていたその人物は、ソニーらしい高度な映像とデジタル技術を駆使した高性能なゲーム機を作り上げました。

常に最先端の技術を活用するポリシーのプレイステーションが、これまた腕に覚えのあるソフト開発者を刺激したようです。

ファミコンでは不可能だった表現が可能なプレイステーションには、やはり最先端の技術を持つソフト開発者が集まり、より本格的なゲームを多く作りました。

この姿勢が、コアなゲームファンの心をとらえて大ヒットとなり、ソニーは一躍ゲームのトップ企業に躍り出ます。

あれほど隆盛を誇った任天堂が、2位に落ちるなど考えていませんでしたから、当時は本当に驚いたものです。

その後も、プレイステーションは、これでもか、というほどに、最新の技術を盛り込んだ後継機を作り続け、最先端の機能を知りたければプレイステーションを見よ、という状況を続けています。

そんな高性能機器を家庭用に売り出すなんて大赤字必至のはずですし、その通りなんでしょうが、ソニーは、サブスクのネットワーク会員を世界中に持つことで、収益を上げる仕組みを作りあげています。

機械売りからの脱却です。

いまのソニーの好業績は、ゲーム事業を中心とした、映画、音楽などのコンテンツを繰り返し有効活用するエコシステムによるところが大です。

ソニーに関しては、アップルになり損ねた企業なんて揶揄をされることもありますが、ゲーム機を中心に、それなりのシステムを作ったのだから、よしと言わねばなりますまい。


ソフト路線を明確にした任天堂


話は前後しますが、まだ1位だった頃の任天堂は、ソニーのプレイステーションに対抗するために、高性能機器「ニンテンドー64」の開発に乗り出します。

しかし、結果は散々たるもの。開発は遅れに遅れ、発売した時には値引き販売を前提としなければならない程でした。

この高性能機器の失敗により、任天堂は2位に転落してしまいます。

2位を受け入れた任天堂は、その後、実に理に適った戦略展開を進めます。

任天堂はもともとファミリー向けのビジネスを志向する会社です。それなのに、コアなファンを満足させるような高性能機器を目指したことが間違いでした。

自社のミッションを「ゲームをさらに普及させること」「ゲーム人口を増やすこと」と規定した任天堂は、その流れから、使い勝手を重視した携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」や、ファミリーゲームを多くした「Wii」などの開発に向かっていきます。

これらの特徴は、機能を高度化させるよりも、従来の技術を活用することで、使い勝手や、画面の見え方を刷新していることです。

ニンテンドーDSは、5歳から95歳まで使えるゲーム機を目指し、わかりやすさ、使いやすさを追求し、大ヒットしました。

Wiiは、コントローラにバランス機能や振動機能を搭載することで、バーチャルスポーツの扉を開きました。こちらも大ヒットです。

ソニーの本格路線、ハード路線に対して、任天堂はファミリー路線、ソフト路線です。

これが功を奏して、任天堂の業績は急回復します。もっとも、Wiiを引っ張りすぎたためか、5年程で低迷してしまいました。

その後、2017年に発売した携帯もできるゲーム機「ニンテンドースイッチ」が、巣ごもり需要の恩恵を受けて大ヒット、現在の好業績につながっています。


ただし、任天堂のビジネスの弱点は、ゲーム機の売上に業績が大きく左右されるということです。

ゲーム機がヒットすれば、業績は大きく上向きますし、外れれば、低迷します。数十年の業績推移をみれば明らかです。

これに対してソニーは、ネットワーク対応を世界で進め、サブスク(月額料金を徴収)ビジネスにシフトしつつあり、収益の安定化を進めています。

つまりソニーは、機器の販売が入口で、そこから長く続く携帯電話のようなビジネスを作ろうとしています。

任天堂は、そこに遅れており、脱モノ売りが果たせていません。継続的な収益の仕組みを作ることが急務となっています。


スマホゲームへはいつ参入するのか?


もっとも、任天堂やソニーが得意とするゲーム機ビジネスの売上は、ゲーム市場全体の28%に過ぎません。

実に半分以上、52%(約10兆円)が、携帯やスマホなどで行うモバイルゲームの売上です。

ソニーは、スマホゲームではできない表現を追求する姿勢だからとりあえずいいとしても、一般ユーザーに広く訴求したい任天堂としては、このままゲーム機にこだわるのは、リスクをはらみます。

だから任天堂は、スマホゲームへの志向をたびたび言及していますし、スマホゲーム会社(DeNA、サイゲーム)への投資などを実施しています。

ポケモンGOのような位置ゲームにキャラクターを貸し出したのも、スマホゲームへの興味の表れでしょう。


ただ、これは痛しかゆしです。スマホゲームに傾倒してしまうと、現在の収益の柱であるゲーム機中心のビジネスが疎かになってしまいます。それはできません。

かといって、このままでは、ガラパゴス状態になってしまう恐れがあります。

難しい舵取りですが、今のところは、投資先や別会社を作って参入し、スマホゲームの最新動向に乗り遅れないようにしておくこと。そして、時期を見て、スマホゲームへの本格参入を目指していくことになりそうです。

とりあえずは、DeNAへの出資をもう少し増やし、近い将来の買収合併に向けて布石を打っておきたいところです。


野田クリスタルのクソゲーを発売


と思っていると、面白い記事を見ました。


日経新聞の記事ですが、お笑い芸人の野田クリスタルが作るゲームが、ニンテンドースイッチで発売され、しかも売れているということです。

昨年のM-1優勝者マジカルラブリーの漫才は、全く面白いとは思いませんが、ピン芸人野田クリスタルのクズゲームネタは、以前から面白いと思っていました。

この方、多能な方で、独学でプログラミングを学び、自分でゲームを作っています。そのゲームが実にくだらない。そのくだらなさを笑いのネタにしています。

ここに任天堂は目をつけたのでしょう。そのくだらないゲームをパッケージにして、発売しているというのです。

記事によると、ゴールまで1兆マスもある「凄六(すごろく)」とか、駒が多すぎてどれが王将かもわからない「将棋Ⅱ」とか、お笑いのネタそのままです。

絵柄も雑で落書きみたいだし、バグはやたら多いし、それも含めてネタ込みのゲームのようです。

これは、単に、お笑い芸人を使ったスイッチのプロモーションなのでしょうか。

どうやら違うらしい。野田クリスタルは、クラウドファンディングで開発資金を集めたようですし、本気度がうかがえます。


ゲーム業界のユーチューブになる?


単なる広告宣伝で人気芸人を起用したのだとしたらつまらない。ここは、任天堂のミッションを押し進めた先にある戦略だと考えたいところです。

ゲーム人口を増やすというのが、任天堂のミッションです。その方向性を進めると、ユーザーだけではなく、製作者も一般化し、増加させるという方向性が出てきます。

つまり、野田クリスタルという異能の人物を起用することで「個人でも売れるゲームは作れるんだよ」と知らしめるのが、任天堂の意図だとしたら面白い。

記事によると、今は、ミニゲームでも制作費用100万円はかかるということです。これは、一般人にはハードルが高いので、下げることが必要です。

そのためには、ゲームを簡単に作るソフトを開発提供し、一般人でもアイデアとセンスさえあれば、気軽に開発できて、上梓することも可能だという体制を整備することです。

案外、素人のアイデアが大ヒットにつながるかもしれない、というのは、ユーチューバーの成功が示していますからね。

つまり行きつくところは、ゲーム制作をユーチューブのように一般素人に解放するという試みです。

素人がゲームを作り、素人がゲームで遊ぶ。その時代を先取りするというのは、実に面白い。ソニーにはできない戦略です。

そこまで思いきれれば、任天堂も将来性があるのになあと思いますね。偉そうに言って申し訳ないですが。


スマホゲームの世界では、テンセント(中国)が、2兆6225億円の売上規模を持っており、ダントツです。

日本勢は売上の桁が一つ違います。これは、スマホ機器そのものに弱い国内ビジネスの構造を示していますね。

任天堂が、汎用ゲームのトップを目指すならば、スマホゲームを制覇するか、あるいは、ゲーム機そのものをスマホ以上のシェアにしなければなりません。

そのためには、製作者も消費者も一般化するためのプラットフォームを作っていくことだと思う次第ですが、どうでしょうか。


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