ヴィレッジヴァンガードは、なぜかつての輝きを失ったのか?

2024.10.10

独特の世界観を売る店


先月の「戦略勉強会」でヴィレッジヴァンガードをとり上げました。

元ネタはこちらの記事です。


変わり種の本屋さんとして人気の高いヴィレッジヴァンガード(ヴィレヴァン)が、業績を悪化させ続けているということです。

ヴィレヴァンは1986年創業。本屋の店員だった創業者が、本と同時に、雑貨や楽器やジャンルの違う商材を同時に陳列し、本屋らしくない本屋をはじめて話題になりました。

私が見たところ雑貨屋にお洒落な本が置いてある印象です。

本を売りたいのか、雑貨を売りたいのかよくわからない。でも、本と雑貨の相乗効果で、独特の世界観を作り出すことができます。

店主の陳列のセンスが問われますが、ばちっとはまれば、世界観が深まり、モノの価値以上の特別な何かを購入しているような気分になれます。

出版不況の中にあって、書店関連で勢いのあるのはヴィレヴァンだけという人気を博し、2003年には株式上場を果たしました。

ちなみに、ヴィレッジヴァンガードとは、ニューヨークの老舗ジャズクラブの名前です。創業者のセンスを表していますね。


成長・拡大するうちに魅力を失った


ヴィレヴァンの魅力は、その世界観の演出です。陳列は、各店舗の店長に委ねられ、それぞれが好きな陳列で表現するスタイルでした。

初期のヴィレヴァンには、その運営方針に賛同したセンスのいい人材が集まりました。店舗を増やすことで、彼らの活躍する場を提供するというプラスの拡大が見込めました。

だから店によって陳列も表現する世界観も違います。違うからこそ魅力があるというものです。

全国各地の店舗を訪ね歩き、それぞれの違いを楽しむようなコアなファンもいたらしい。

ただし、株式上場することで、一気に店舗を増やしすぎたきらいがあります。

店舗数の増加に人材育成が追い付かず、独特の個性が店舗に反映されなくなったようです。

今やヴィレヴァンは、ショッピングモールの定番店舗となり、どこにでもある冴えない雑貨屋になってしまった感があります。

2024年5月期の決算をみると、売上高は約247.9億円で、前期の約252.8億円から約2%の減少。営業利益は9.15億円の赤字で、11.4億円もの最終赤字となっている。

不調は、店舗数にも現れている。一時期、ヴィレヴァンは全国に400店舗ほどを展開するまでになった。しかし、現在ではそこから100店舗ほどが閉鎖。2024年5月期こそ、店舗数は純増1となったが、それ以前の3年間はそれぞれ9、16、11店舗の減少。

このまま赤字が続けば、スピンオフショップを含めても、300店舗を割り込みそうな状況になっている。

上場企業としてはお粗末なことになってしまったようです。


成長のステージごとに変化するのは必然


では、どうすればよかったのか。

記事では、店舗をここまで急激に増やさずに、独特の陳列センスが全店に発揮できる範囲に止めておけばよかった、あるいは、センスを継承するような従業員教育がほしかったといわれています。

それはその通りでしょう。ということは、成長を求められる株式上場を選んだことが間違いだったということです。

成長・拡大を目指したために、初期の輝きを失ってしまうチェーン店は多く、その度に繰り返される議論ですね。


ただ、一部、成長・拡大を目指しながらも、極端な赤字に陥らない企業も当然ながら存在します。

例えば、「ドン・キホーテ」を擁するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスはどうでしょうか。

ドン・キホーテも、初期は、圧縮陳列を最大の特徴とする「何が並べてあるかわからない宝探しのような楽しみがある」バラエティショップでした。

ところが今は、むしろ「定番品がやたら安い」「季節品はさらに安い」王道ディスカウントショップです。

店舗数が多くなれば、現場担当者の能力を均一に担保できなくなるのは当然で、初期のような圧縮陳列、現場仕入れだけで立ちいかなくなるのは仕方ないことです。

そうなると、本部の管理力が求められることになり、ガバナンスをつくり直さなければなりません。

成長のステージに応じて、企業の在り方を変化させていくというのは、必然のことなのです。

ユニクロも同じ。宇部の小さな店舗から世界企業になっていく過程では、目まぐるしく店舗の特徴を変えてきた歴史があります。


ユニクロ
杉本 貴司
日経BP
2024-04-04


ということは、ヴィレヴァンは、成長のステージにおいて、うまく変化することに失敗したのではないかと思えます。

最近では、各店舗での仕入れは復活しつつあるというが、取材をしていると「たしかに仕入れはできるが、売り切らないと、翌月の予算を下げられてしまう」という話も聞く。「それじゃあ誰もリスクを取らないよ」という感じだ

こうした声からは、本部と現場の関係がうまくいっていないことが伝わってきます。

環境が変わると、企業の在り方を変えなければなりません。徹底して現場主導を貫き通すのか、あるいは本部主導の新たな強みを作るのか、決めるのは本部です。

要するに、今は本部の戦略が機能していないと言わざるを得ません。

げに成長は難しい。

これは成長の過程であって、そのうち本部の戦略が機能しだすと思いたいものですな。

上の記事とは違う結論ですが、「戦略勉強会」で話し合ううちに、こうした見解を持つに至りました。


独特の世界観を売る店


先月の「戦略勉強会」でヴィレッジヴァンガードをとり上げました。

元ネタはこちらの記事です。


変わり種の本屋さんとして人気の高いヴィレッジヴァンガード(ヴィレヴァン)が、業績を悪化させ続けているということです。

ヴィレヴァンは1986年創業。本屋の店員だった創業者が、本と同時に、雑貨や楽器やジャンルの違う商材を同時に陳列し、本屋らしくない本屋をはじめて話題になりました。

私が見たところ雑貨屋にお洒落な本が置いてある印象です。

本を売りたいのか、雑貨を売りたいのかよくわからない。でも、本と雑貨の相乗効果で、独特の世界観を作り出すことができます。

店主の陳列のセンスが問われますが、ばちっとはまれば、世界観が深まり、モノの価値以上の特別な何かを購入しているような気分になれます。

出版不況の中にあって、書店関連で勢いのあるのはヴィレヴァンだけという人気を博し、2003年には株式上場を果たしました。

ちなみに、ヴィレッジヴァンガードとは、ニューヨークの老舗ジャズクラブの名前です。創業者のセンスを表していますね。


成長・拡大するうちに魅力を失った


ヴィレヴァンの魅力は、その世界観の演出です。陳列は、各店舗の店長に委ねられ、それぞれが好きな陳列で表現するスタイルでした。

初期のヴィレヴァンには、その運営方針に賛同したセンスのいい人材が集まりました。店舗を増やすことで、彼らの活躍する場を提供するというプラスの拡大が見込めました。

だから店によって陳列も表現する世界観も違います。違うからこそ魅力があるというものです。

全国各地の店舗を訪ね歩き、それぞれの違いを楽しむようなコアなファンもいたらしい。

ただし、株式上場することで、一気に店舗を増やしすぎたきらいがあります。

店舗数の増加に人材育成が追い付かず、独特の個性が店舗に反映されなくなったようです。

今やヴィレヴァンは、ショッピングモールの定番店舗となり、どこにでもある冴えない雑貨屋になってしまった感があります。

2024年5月期の決算をみると、売上高は約247.9億円で、前期の約252.8億円から約2%の減少。営業利益は9.15億円の赤字で、11.4億円もの最終赤字となっている。

不調は、店舗数にも現れている。一時期、ヴィレヴァンは全国に400店舗ほどを展開するまでになった。しかし、現在ではそこから100店舗ほどが閉鎖。2024年5月期こそ、店舗数は純増1となったが、それ以前の3年間はそれぞれ9、16、11店舗の減少。

このまま赤字が続けば、スピンオフショップを含めても、300店舗を割り込みそうな状況になっている。

上場企業としてはお粗末なことになってしまったようです。


成長のステージごとに変化するのは必然


では、どうすればよかったのか。

記事では、店舗をここまで急激に増やさずに、独特の陳列センスが全店に発揮できる範囲に止めておけばよかった、あるいは、センスを継承するような従業員教育がほしかったといわれています。

それはその通りでしょう。ということは、成長を求められる株式上場を選んだことが間違いだったということです。

成長・拡大を目指したために、初期の輝きを失ってしまうチェーン店は多く、その度に繰り返される議論ですね。


ただ、一部、成長・拡大を目指しながらも、極端な赤字に陥らない企業も当然ながら存在します。

例えば、「ドン・キホーテ」を擁するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスはどうでしょうか。

ドン・キホーテも、初期は、圧縮陳列を最大の特徴とする「何が並べてあるかわからない宝探しのような楽しみがある」バラエティショップでした。

ところが今は、むしろ「定番品がやたら安い」「季節品はさらに安い」王道ディスカウントショップです。

店舗数が多くなれば、現場担当者の能力を均一に担保できなくなるのは当然で、初期のような圧縮陳列、現場仕入れだけで立ちいかなくなるのは仕方ないことです。

そうなると、本部の管理力が求められることになり、ガバナンスをつくり直さなければなりません。

成長のステージに応じて、企業の在り方を変化させていくというのは、必然のことなのです。

ユニクロも同じ。宇部の小さな店舗から世界企業になっていく過程では、目まぐるしく店舗の特徴を変えてきた歴史があります。


ユニクロ
杉本 貴司
日経BP
2024-04-04


ということは、ヴィレヴァンは、成長のステージにおいて、うまく変化することに失敗したのではないかと思えます。

最近では、各店舗での仕入れは復活しつつあるというが、取材をしていると「たしかに仕入れはできるが、売り切らないと、翌月の予算を下げられてしまう」という話も聞く。「それじゃあ誰もリスクを取らないよ」という感じだ

こうした声からは、本部と現場の関係がうまくいっていないことが伝わってきます。

環境が変わると、企業の在り方を変えなければなりません。徹底して現場主導を貫き通すのか、あるいは本部主導の新たな強みを作るのか、決めるのは本部です。

要するに、今は本部の戦略が機能していないと言わざるを得ません。

げに成長は難しい。

これは成長の過程であって、そのうち本部の戦略が機能しだすと思いたいものですな。

上の記事とは違う結論ですが、「戦略勉強会」で話し合ううちに、こうした見解を持つに至りました。


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