「集積の経済」で再生した老舗温泉地

2025.03.08

老舗の温泉地が復活


先月の「戦略勉強会」で、城崎温泉の事例をとりあげました。


バブル期を経て、徐々に顧客を減らし続けてきた老舗温泉地が、インバウンドの隆盛で再び勢いを増しているそうですよ。

どうも外国人は、日本の鄙びた温泉旅館や温泉街を喜ぶみたいですね。

この機会を逃す手はありません。


かつて温泉地は、日本のレジャーの最前線にいた時代がありました。

大きな旅館は、大広間を設置して、社員旅行などの団体旅行ニーズに対応してきました。

ところが、団体旅行が流行らず、個人旅行の時代になると、温泉旅館はニーズに合わない古臭いものとなってしまいました。

バブル期に過剰投資したつけも回ってきてしまい、古くなった設備を新しくすることもできず、文字通り、古びたものとなってしまいました。

そんな古い温泉地こそ趣があると、外国人の注目を集めるのだから面白いものです。

各温泉地は、団体旅行から個人旅行への対応、および外国人対応で、ビジネスを盛り上げようとしています。


温泉街全体の魅力を高める


そのうちのひとつが、志賀直哉の名作小説でも有名な城崎温泉です。

比較的小規模な旅館が多かった城崎温泉は、旅館が顧客を囲い込むのではなく「まち全体で一つの旅館」というスタイルにシフトしました。

各旅館は大浴場を設けずに、宿泊客が他の旅館のお風呂(外湯)を利用できるように仕組みを変えたのです。

一つの風呂だけではなく、いくつもの風呂を巡り歩けるのですから、これは楽しいですね。

浴衣姿の顧客が温泉街を歩き、あちこちの風呂を巡るのですから、街は活気づきます。土産物屋が潤います。

また各旅館は、食事をする機能も減らしました。自分の旅館で食べてもらう必要はない、温泉街の食堂で食べてくださいというやり方です。

温泉街の飲食店も潤います。

外で食事をとる客が増える、すなわち素泊まりの客が増えると、旅館の収入は減るような気がしますが、その分、人手がかからなくて済むというメリットが生まれます。

温泉街全体の魅力を高め、客数を増やして利益を出そうという方策です。


集積の経済は高い効果を生む


皆で協力しあって魅力を高めるというのは、人口減少に見舞われる日本全体でお手本にしたい内容ではないですか。

産業集積は、規模の経済(大量生産によるコストの低下)、範囲の経済(商品サービスが多様化することで生産効率が上がる)、ネットワークの経済(顧客が増え、参加企業が増え、さらに顧客が増える)がそれぞれ高まるメリットがあります。

さらに同業種が集まると、適正な競争が生まれて、それぞれ能力が上がるという効果もあります。

これをひっくるめて「集積の経済」と考えます。

特に観光産業は、集積効果が高く、これを利用しない手はないといってもいいでしょう。

ちなみに温泉地では、やはり小規模旅館が多かった黒川温泉(熊本県)という成功例があります。

黒川温泉でも、最初は、少ない顧客を各旅館が奪い合うような状況で、ギスギスしていたそうですが、利益を独り占めしないタイプの人がリーダーになり、ブレずに地域を引っ張っていったそうですよ。


空気を読まないリーダーが必要


城崎温泉の場合、すでに黒崎温泉という成功例があったから、みなさん、ビジョンをイメージしやすかったでしょうが、他の産業ではこうはいかないかもしれません。

リーダーがビジョンを示しても、抜け駆けしたり、独り占め思考から抜け出せないメンバーが多ければ、計画は破綻してしまいます。

下り坂の集団ほどそういう自分勝手な者が多くなり、さらに下り坂となってしまう悪循環に陥ります。

内部の者でできないなら、人間関係のない外部の者をうまく使ってください。あの日産が一時期再生したのは、空気を読まない剛腕外国人が代表になった時でしたからね。

そうじゃないと「いったん完全に潰れないと再生できない」という極論をいうしかなくなります。

私はもう退場する年齢の者だとはいえ、日本全体がこのまま沈んでいくのは寂しいですから。


なお、この温泉旅館の例をみて、女性陣から「温泉を3つも4つもはしごしたくない」「メイクを落とした後は外で食事なんてできない」「喜んでいるのは若い人だけ」との声が上がったことを報告しておきます。





老舗の温泉地が復活


先月の「戦略勉強会」で、城崎温泉の事例をとりあげました。


バブル期を経て、徐々に顧客を減らし続けてきた老舗温泉地が、インバウンドの隆盛で再び勢いを増しているそうですよ。

どうも外国人は、日本の鄙びた温泉旅館や温泉街を喜ぶみたいですね。

この機会を逃す手はありません。


かつて温泉地は、日本のレジャーの最前線にいた時代がありました。

大きな旅館は、大広間を設置して、社員旅行などの団体旅行ニーズに対応してきました。

ところが、団体旅行が流行らず、個人旅行の時代になると、温泉旅館はニーズに合わない古臭いものとなってしまいました。

バブル期に過剰投資したつけも回ってきてしまい、古くなった設備を新しくすることもできず、文字通り、古びたものとなってしまいました。

そんな古い温泉地こそ趣があると、外国人の注目を集めるのだから面白いものです。

各温泉地は、団体旅行から個人旅行への対応、および外国人対応で、ビジネスを盛り上げようとしています。


温泉街全体の魅力を高める


そのうちのひとつが、志賀直哉の名作小説でも有名な城崎温泉です。

比較的小規模な旅館が多かった城崎温泉は、旅館が顧客を囲い込むのではなく「まち全体で一つの旅館」というスタイルにシフトしました。

各旅館は大浴場を設けずに、宿泊客が他の旅館のお風呂(外湯)を利用できるように仕組みを変えたのです。

一つの風呂だけではなく、いくつもの風呂を巡り歩けるのですから、これは楽しいですね。

浴衣姿の顧客が温泉街を歩き、あちこちの風呂を巡るのですから、街は活気づきます。土産物屋が潤います。

また各旅館は、食事をする機能も減らしました。自分の旅館で食べてもらう必要はない、温泉街の食堂で食べてくださいというやり方です。

温泉街の飲食店も潤います。

外で食事をとる客が増える、すなわち素泊まりの客が増えると、旅館の収入は減るような気がしますが、その分、人手がかからなくて済むというメリットが生まれます。

温泉街全体の魅力を高め、客数を増やして利益を出そうという方策です。


集積の経済は高い効果を生む


皆で協力しあって魅力を高めるというのは、人口減少に見舞われる日本全体でお手本にしたい内容ではないですか。

産業集積は、規模の経済(大量生産によるコストの低下)、範囲の経済(商品サービスが多様化することで生産効率が上がる)、ネットワークの経済(顧客が増え、参加企業が増え、さらに顧客が増える)がそれぞれ高まるメリットがあります。

さらに同業種が集まると、適正な競争が生まれて、それぞれ能力が上がるという効果もあります。

これをひっくるめて「集積の経済」と考えます。

特に観光産業は、集積効果が高く、これを利用しない手はないといってもいいでしょう。

ちなみに温泉地では、やはり小規模旅館が多かった黒川温泉(熊本県)という成功例があります。

黒川温泉でも、最初は、少ない顧客を各旅館が奪い合うような状況で、ギスギスしていたそうですが、利益を独り占めしないタイプの人がリーダーになり、ブレずに地域を引っ張っていったそうですよ。


空気を読まないリーダーが必要


城崎温泉の場合、すでに黒崎温泉という成功例があったから、みなさん、ビジョンをイメージしやすかったでしょうが、他の産業ではこうはいかないかもしれません。

リーダーがビジョンを示しても、抜け駆けしたり、独り占め思考から抜け出せないメンバーが多ければ、計画は破綻してしまいます。

下り坂の集団ほどそういう自分勝手な者が多くなり、さらに下り坂となってしまう悪循環に陥ります。

内部の者でできないなら、人間関係のない外部の者をうまく使ってください。あの日産が一時期再生したのは、空気を読まない剛腕外国人が代表になった時でしたからね。

そうじゃないと「いったん完全に潰れないと再生できない」という極論をいうしかなくなります。

私はもう退場する年齢の者だとはいえ、日本全体がこのまま沈んでいくのは寂しいですから。


なお、この温泉旅館の例をみて、女性陣から「温泉を3つも4つもはしごしたくない」「メイクを落とした後は外で食事なんてできない」「喜んでいるのは若い人だけ」との声が上がったことを報告しておきます。





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代表者・駒井俊雄が発行するメルマガ「営業は売り子じゃない!」
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