ホンダの巨額赤字から学ぶ「中小企業の生き残り戦略」

2026.04.02



先月の「戦略勉強会」では、ホンダの巨額赤字についてとり上げま
した。

ホンダが最大6900億円の最終赤字、26年3月期 EV損失で上場来初
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB126KH0S6A310C2000000/

従来予測は、3000億円の黒字だったそうですが、9900億円も下振れするというから大事です。

私はホンダ車のきびきびした動きが好きで、免許をとってからずっとホンダに乗り続けています。

そんなホンダファンの私ですから、聞き捨てならないニュースでした。

いったい何があったというのでしょうか。


ホンダの「誤算」と戦略的な「膿出し」


ホンダの赤字の主因は、北米でのEV需要の急減速です。

「2040年までに脱ガソリン」という高い理想を掲げたものの、現実はインフラ不足や消費者のEV離れという壁に突き当たりました。

もっとも、EVシフトの見直しを迫られているのは、欧米各社も同じなので、致し方ない面もあります。

むしろ、この時期に「目標の達成は現実的に困難」と認め、上場来初の赤字を受け入れてまで、損失を今期に集中させた「戦略的撤退」を評価すべきだと思います。


トヨタが「独り勝ち」を続ける理由


このことにより、いっそうトヨタの独り勝ちが目立っています。

トヨタはずっと「全方位戦略」を貫いています。

世界中がEVシフトに傾く時も流されず、ハイブリッド、水素、ガソリン車の選択肢を消しませんでした。

EVシフトが危うくなった現在、ハイブリッド人気という実需を根こそぎさらっている形です。

そのハイブリッド車で稼いだ巨額のキャッシュを、全固体電池などの次世代投資へ回しており、将来への布石にも抜かりありません。

この守りに重点を置きながら、攻める構造が、トヨタの強さです。


「強者の戦略」vs「弱者の戦略」


しかし、この結果をみて「全方位戦略」は優れていて、「一点集中戦略」はだめだと結論付けるわけにはいきません。

ランチェスター戦略でいうと、トヨタは「強者の戦略」をとり、その他のメーカーは「弱者の戦略」をとりました。

弱者の戦略にはリスクが伴います。そうじゃないと強者に勝てません。その分、外れた時には大きなダメージを被ります。

今回、どうしてもトヨタに勝ちたい世界の自動車メーカー(特に欧米各社)は、法律を変えさせてでもEVシフトに舵を切りました。

誤算は、EVの技術が思ったほど進展しなかったこと、トヨタの代わりに中国メーカーの台頭を招いたことです。

いわば、賭けに負けたということですな。

いっぽう強者の戦略は、資金がかかりますが、リスクを減らし、「大きく負けない」ことを狙います。

もし、欧米の思惑通りEVシフトが進んでいたら、トヨタは相対的に地位を落していたでしょう。が、今回はそうはなりませんでした

敵失による結果の勝利というやつです。

この消極的な姿勢は「無策」ととらえられることもありますが、トヨタは欧米の反発を恐れて「勝ち過ぎない」ことを意識しているようなので、意図したものだととれます。


中小企業のための「ランチェスター×孫子」ハイブリッド戦略


ここからわれわれは何を学ぶべきでしょうか。

巨大なトヨタの真似はできず、かといってホンダのような「一点集中」の失敗は、中小企業にとっては致命傷になりかねません。

両者のエッセンスをどう組み合わせていきましょう。

(1)「不敗の態」を固めてから撃って出る

孫子は「負けない状態(不敗の態)を作り、敵の隙を待て」と説きます。

ホンダが巨額赤字でも配当を維持できるのは、4兆円の手元資金があるからです。

新規事業(一点集中)に挑む前に、まずは本業のキャッシュフローを安定させ、「ここまでなら失敗しても潰れない」というラインを築くことが先決です。

(2)「正」で守り、「奇」で勝つ

「正」(基盤事業): 既存顧客や既存技術は、トヨタのように手堅く、全方位で守りを固める。

「奇」(新規事業): 新分野ではリソースを分散させず、ランチェスター戦略に基づき、「特定のニッチ領域」に集中する。

この使い分けが重要です。

(3)局地戦のシェア奪取と「拙速」な撤退

ランチェスターにおける弱者の戦略の基本は、戦域を限定することです。

大手企業が目をつけない狭い領域で圧倒的なシェアを獲り、高い利益率を確保します。

そして、もしその領域で勝機がないと判断すれば、ホンダのように「拙速(迅速)」に撤退することです。サンクコストへの未練を捨てて、次の戦地へ移動する機動力こそが、中小企業の武器となります。

「守りは全方位、攻めは一点集中」

ホンダの赤字は、私たちに「理想と現実のバランス」と「引き際の重要性」を教えてくれると思う次第です。

今一度、自社の「攻め」と「守り」、「不敗の態」を点検する機会にしていただければ幸いです。



先月の「戦略勉強会」では、ホンダの巨額赤字についてとり上げま
した。

ホンダが最大6900億円の最終赤字、26年3月期 EV損失で上場来初
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB126KH0S6A310C2000000/

従来予測は、3000億円の黒字だったそうですが、9900億円も下振れするというから大事です。

私はホンダ車のきびきびした動きが好きで、免許をとってからずっとホンダに乗り続けています。

そんなホンダファンの私ですから、聞き捨てならないニュースでした。

いったい何があったというのでしょうか。


ホンダの「誤算」と戦略的な「膿出し」


ホンダの赤字の主因は、北米でのEV需要の急減速です。

「2040年までに脱ガソリン」という高い理想を掲げたものの、現実はインフラ不足や消費者のEV離れという壁に突き当たりました。

もっとも、EVシフトの見直しを迫られているのは、欧米各社も同じなので、致し方ない面もあります。

むしろ、この時期に「目標の達成は現実的に困難」と認め、上場来初の赤字を受け入れてまで、損失を今期に集中させた「戦略的撤退」を評価すべきだと思います。


トヨタが「独り勝ち」を続ける理由


このことにより、いっそうトヨタの独り勝ちが目立っています。

トヨタはずっと「全方位戦略」を貫いています。

世界中がEVシフトに傾く時も流されず、ハイブリッド、水素、ガソリン車の選択肢を消しませんでした。

EVシフトが危うくなった現在、ハイブリッド人気という実需を根こそぎさらっている形です。

そのハイブリッド車で稼いだ巨額のキャッシュを、全固体電池などの次世代投資へ回しており、将来への布石にも抜かりありません。

この守りに重点を置きながら、攻める構造が、トヨタの強さです。


「強者の戦略」vs「弱者の戦略」


しかし、この結果をみて「全方位戦略」は優れていて、「一点集中戦略」はだめだと結論付けるわけにはいきません。

ランチェスター戦略でいうと、トヨタは「強者の戦略」をとり、その他のメーカーは「弱者の戦略」をとりました。

弱者の戦略にはリスクが伴います。そうじゃないと強者に勝てません。その分、外れた時には大きなダメージを被ります。

今回、どうしてもトヨタに勝ちたい世界の自動車メーカー(特に欧米各社)は、法律を変えさせてでもEVシフトに舵を切りました。

誤算は、EVの技術が思ったほど進展しなかったこと、トヨタの代わりに中国メーカーの台頭を招いたことです。

いわば、賭けに負けたということですな。

いっぽう強者の戦略は、資金がかかりますが、リスクを減らし、「大きく負けない」ことを狙います。

もし、欧米の思惑通りEVシフトが進んでいたら、トヨタは相対的に地位を落していたでしょう。が、今回はそうはなりませんでした

敵失による結果の勝利というやつです。

この消極的な姿勢は「無策」ととらえられることもありますが、トヨタは欧米の反発を恐れて「勝ち過ぎない」ことを意識しているようなので、意図したものだととれます。


中小企業のための「ランチェスター×孫子」ハイブリッド戦略


ここからわれわれは何を学ぶべきでしょうか。

巨大なトヨタの真似はできず、かといってホンダのような「一点集中」の失敗は、中小企業にとっては致命傷になりかねません。

両者のエッセンスをどう組み合わせていきましょう。

(1)「不敗の態」を固めてから撃って出る

孫子は「負けない状態(不敗の態)を作り、敵の隙を待て」と説きます。

ホンダが巨額赤字でも配当を維持できるのは、4兆円の手元資金があるからです。

新規事業(一点集中)に挑む前に、まずは本業のキャッシュフローを安定させ、「ここまでなら失敗しても潰れない」というラインを築くことが先決です。

(2)「正」で守り、「奇」で勝つ

「正」(基盤事業): 既存顧客や既存技術は、トヨタのように手堅く、全方位で守りを固める。

「奇」(新規事業): 新分野ではリソースを分散させず、ランチェスター戦略に基づき、「特定のニッチ領域」に集中する。

この使い分けが重要です。

(3)局地戦のシェア奪取と「拙速」な撤退

ランチェスターにおける弱者の戦略の基本は、戦域を限定することです。

大手企業が目をつけない狭い領域で圧倒的なシェアを獲り、高い利益率を確保します。

そして、もしその領域で勝機がないと判断すれば、ホンダのように「拙速(迅速)」に撤退することです。サンクコストへの未練を捨てて、次の戦地へ移動する機動力こそが、中小企業の武器となります。

「守りは全方位、攻めは一点集中」

ホンダの赤字は、私たちに「理想と現実のバランス」と「引き際の重要性」を教えてくれると思う次第です。

今一度、自社の「攻め」と「守り」、「不敗の態」を点検する機会にしていただければ幸いです。

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代表者・駒井俊雄が発行するメルマガ「営業は売り子じゃない!」
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